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カテゴリー「地球へ…」の記事一覧

「百八十度回頭」
 トォニィがそう命じた声に、問い返したツェーレン。「地球を後にするの?」と。
 それに応えてトォニィは言った、「そうだ」と。
 「もう、ぼくらに出来ることは何もない」と。
 フィシスも話した、カナリヤの子たちに。「ここ、何処なの?」と尋ねた子供に。
 「あなたたちを連れてゆく箱舟の中」と。
 「何処へ?」と問われて、「清らかな大地へ」と。
 そしてシャングリラは旅立って行った、地球を離れて遠い宇宙へ。
 …人の未来へ。


 残されたものは揺れ動く地球で、其処に人影は見えないけれど。
 何一つ見えはしないのだけれど、去って行った船が見落としたもの。
 トォニィもフィシスも、他の誰もが、気付かないままで行ってしまったもの。
「箱の最後には…」
 希望が残っているものなのに、とジョミーが呟くパンドラの箱。
 禍をもたらすパンドラの箱は開いたけれども、箱の底には希望があると。
「そうだな…。あんな地球でもな」
 しかし、気付けと言う方が無理だ、とキースが零した深い溜息。
 人は目に見えるものが全てで、見えないものは信じないから。
 壊れ、滅びゆこうとしている地球の姿が全てだから。


 地球の地の底、最期まで共に戦ったからこそ分かること。
 この星も、人も、これからだと。
 どんなに無残に壊れようとも、人も大地も、また立ち上がると。
 今直ぐには、とても立てなくても。
 立ち上がる術さえ見付からなくても、人は必ず歩き出すから。
 二本の足が使えなくとも、先へと進む力があるから。


 人だけが持ち得る、パンドラの箱に残った希望。
 それは未来を夢見る力。
 明けない夜など無いということ、夜の先には光があること。それこそが希望。
 今は見えなくても、希望は誰もが持っているもの。
 自分自身が気付かなくても、箱の中を覗くことが無くても。
 いつか希望は顔を出すもの、人が未来を目指したならば。
 災いの箱が開いた後でも、また立たねばと思う時が来たなら。


 だからシャングリラも、いつか戻って来るだろう。
 母なる地球へ、人を生み出した水の星へと。
 清らかな大地が其処に無くとも、その上にそれは戻る筈だと。
 人が希望を持っていたなら、母なる地球を忘れなければ、いつか未来は訪れるから。
 パンドラの箱は開いたけれども、人の未来はきっと来るから。
 今は揺れ動く地球の大地に、裂けてしまった地面の上に。
 惨く引き裂かれた星の上にも、希望は残っているのだから。


「キース、どのくらいかかると思う?」
 人は強いと思うけれども、というジョミーの問い。
「彼らの心次第だろう。…立ち上がるのも、未来を築き始めるのも」
 だが、見えるような気がするな…、と語り合う間にも地球は揺れるのだけれど。
 崩れゆこうとするのだけれど。
 パンドラの箱の底には必ず、希望があるもの。
 人も、大地も、また立ち上がる。
 そして其処には、緑の丘が、人々の笑顔が蘇る筈。
 人だけが持ち得る、未来への思い。
 誰の心にも在る希望の光が、人の未来を掴み取るから。
 今は闇しか見えないとしても、明けない夜など、何処にもありはしないのだから…。

 

        地球の緑の丘・了

※4月14日の熊本地震と、4月16日の地震と。
 「地球へ…」のラストに重ねて応援、熊本も九州も、一日も早く立ち直りますように。
 只今、16日の午後4時です。これ以上酷くならないように、と祈りながらUP。





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(化け物の力も使いようだ)
 マツカは役に立つだろうな、とキースの唇に浮かんだ笑み。
 丁度いいモノが手に入ったと。
 ミュウの調査に出掛けるためには、お誂え向きと言ってもいい。
(可哀相だ、と助けてしまったが…)
 サムが、シロエが重なったから。
 怯え、震えるマツカの上に。
 「そうなれなかった」と叫んだ顔に、その声に。
 単なる気まぐれ、一匹くらいは生かしておいてもいいだろうと。
 ミュウを相手に戦うのならば、きっとマツカは役立つから。
 その辺の兵士などよりも。
 対サイオンの訓練を知らない者よりは、よほど。
 だからマツカを連れてゆこうという心づもり。
 グレイブが何を言って来ようが、あれを連れて、と。


 あと一時間もすれば出発、ジルベスター行きの船にマツカも乗せる。
 誰にも文句を言わせはしないし、マツカの力を役立てるために。
 そういうつもりでいるのだけれども…。
(……違うな……)
 本当の理由は別にあるのだ、と自分でも分かる。
 マザー・システムの目から逃れて、生きていたミュウ。
 劣等生だったと泣いていたマツカ。
 彼の向こうに、どうしても見えるミュウの少年。
 何処もマツカに似ていないのに。
 むしろ逆だと言っていいほど、気性が激しかったのに。
(…シロエ…)
 自分が処分した少年。
 E-1077の卒業間際に、マザー・イライザの命令で。
 「撃ちなさい」という冷たい声で。
 シロエが乗った船を撃ち落とした、自分の手で。
 追われていたのを匿ったほどに、話したいとも思ったシロエを。
 あの時は何も知らなかったけれど、メンバーズになってから聞かされたこと。
 シロエはMのキャリアだったと、ミュウだったのだと。


(偶然、成人検査をパスしただけ…)
 マツカと同じ。
 そうそういない筈の人間、シロエは例外の筈だった。
 二人目、三人目のシロエに出会うことなど、けして無いだろうと思っていた。
 けれど、出会ってしまったマツカ。
 シロエと同じに、成人検査をパスしたミュウ。
 見た目も中身も違うけれども、其処だけは同じ。
 それからマザー・システムが施す教育、それに順応出来ない所も。
(…二人目のシロエ…)
 まるで違うのに、似ているマツカ。
 何処が似ているかと問われたならば、境遇だけしか似ていないのに。
 シロエが辺りを焼く劫火ならば、マツカは消えそうな風の前の灯。
 劇薬のような毒を振りまく者がシロエなら、マツカは湖に落ちた一滴の薬。
 それほどに違う、二つの存在。
 なのに重なる、不思議なほどに。
 マツカの怯えた表情の上に、シロエの皮肉な表情が。
 ただ泣いていたマツカの涙に、勝ち誇ったシロエの笑い声が。


 だから助けた、と本当は分かっている真実。
 マツカを殺さず、生かした理由。
 それはシロエの身代わりなのだと。
 遠い日に自分が殺したシロエ。
 マザー・イライザに逆らえないまま、命を奪ってしまったシロエ。
 あの時、自分が強かったならば、シロエの船を見逃がせた筈。
 何処へなりと行けと、機首を返して。
 船のエネルギーが尽きる所まで、思いのままに飛んでゆくがいいと。
(…放っておいても、シロエの船は…)
 何処へも行けはしなかった。
 練習艇に積まれた燃料、それだけで地球は目指せないから。
 何処の星へも、辿り着くことは不可能だから。
 エネルギーが尽きた時点で、断たれてしまう酸素の供給。
 シロエの命は其処で潰えて、けして何処にも辿り着けない。
 永遠に宇宙を漂い続ける船と一緒に、シロエもまた。
(…なのに、私は…)
 その選択肢を選べなかった。
 あまりにも真面目すぎたから。
 マザー・イライザに、システムに疑問を抱いていたのに、漠然としたものだったから。
 今ならば分かる、今ならば出来る。
 シロエの船を見送ることも。
 何処までも飛べと、撃墜しないで機首を返すことも。


 かつて自分が出来なかったこと。
 思い付きさえしなかったことが、今なら出来る。
 シロエと同じに成人検査をパスして来たミュウ、それを生かしておくことが。
 マザー・システムの監視を振り切り、手元に隠しておくことが。
(私の側が何処よりも安全なんだ…)
 まさかミュウなど、生かすようには見えないから。
 冷徹無比な破壊兵器と、皆が言うような存在だから。
(…私にも情があるなどと…)
 誰も思うまいな、と苦い笑みが浮かぶ。
 「らしくないな」と、「キース、お前は何をしたい?」と。
 答えなら、とうに持っている。
 とうに出ている、「マツカを生かし続ける」こと。
 それが自分のやりたいこと。
 シロエのようにはさせないことが。
 上手く生かして、自分の役に立てて、マツカの評価も上げてゆくこと。
 マザー・システムが、けしてマツカを疑わぬよう。
 誰一人として、彼がミュウだと気付かないよう。
(……私なら出来る)
 マザー・システムを、軍を欺くことも。
 一生、マツカを匿い続けて、人類の世界に置いてやることも。


 もう決まっている自分の道。
 今日から自分はマザーを裏切る、ミュウを側に置いて。
 処分させずに、素知らぬふりで。
(…ミュウの調査に行くのだがな…)
 それとこれとは別の話だ、と自分の中に引いた一本の線。
 自分の側に入ったミュウは殺さない。
 誰にも殺させたりはしないし、命ある限り匿い続ける。
 それがマザー・イライザへの自分の復讐、マザー・システムに対する反抗。
 このくらいしか出来ないから。
 今の自分に出来そうなことは、まだそれだけしか無いのだから。
(…しかし、この線の向こうのミュウは…)
 敵だ、と断じる心もある。
 人類とミュウは相容れないから、ミュウは危険な生き物だから。
 追い詰めて狩り出し、処分すべきモノ。
 それもまた、自分の行くべき道。
 …今の所は。
 天が、歴史がミュウを選ぶまでは、ミュウに与する日が来るまでは。
 ミュウの前に自分が膝を折る日が、首を垂れて跪く時が訪れるまでは。


 けれど、自分はもう決めた。
 マザー・システムへの裏切りを。
 遠い日に「撃ちなさい」と命じたマザー・イライザ、あの機械への復讐を。
 弱いマツカを生かしておくこと、それが自分の一生の使命。
 システムにマツカを殺されたならば、また同じことの繰り返しだから。
 二人目のシロエを失くしてしまって、深い後悔に苛まれるだけ。
 だから負けない、この戦いには負けられない。
(…マツカが最後のミュウになろうが…)
 生かすのだから、と誓う相手は自分の心。
 マザー・システムに忠誠を誓った、同じ心に違う誓いを。
(私が生きている限り…)
 マツカは誰にも殺させない、と固めた決意。
 二人目のシロエは、もう沢山だと。
 それをこの目で見るくらいならば、ミュウをいくらでも殺してみせる。
 心の中に引いた一本の線の、向こう側にいるミュウならば。
 端から殺して焼き払ってみせる、それも自分の行く道だから。
 たとえ、矛盾していようとも。
 マツカを生かし続ける隣で、何万のミュウが死のうとも。


 線の向こうと、こちらの側と。
 恨み言なら、線を越えてから言うがいい。
 こちら側へと渡り、踏み越えて。
 それから責める言葉を浴びせて怒り狂うがいい、そう出来るミュウがいるのなら。
 この線を越えるミュウがいるなら。
 こちら側へと踏み越えたならば、そう、そのミュウは殺さない。
 自分自身に誓ったから。
 二人目のシロエは見たくないから。
(…本当に越えて来たならな…)
 そのミュウもまた、生かしておく。
 マザー・システムを裏切り、騙し、欺いて。
 「実に役立つ、いい部下です」と涼しい顔をし、軍の者もまた欺いてやる。
 そうすると、もう決めたから。
 遠い昔に出来なかったこと、それが出来るだけの強さを自分は持っているから…。

 

        生かしたいミュウ・了

※キースがマツカを見逃がした理由。どうしてマツカを生かしておくのか、ちょっと捏造。
 本当はもっと単純でしょうけど、せっかくシロエがミュウなんだから、と。…ダメ?





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(嫌…。嫌だ…!)
 来るな、と叫んでも消えてくれない忌まわしい機械。
 子供時代の記憶を消してしまった、テラズ・ナンバー・ファイブの姿。
 苦しみ続けるシロエは知らない、自分が何処にいるのかを。
 これは夢ではないことを。
 フロア001、進入禁止セクションに足を踏み入れた報い。
 囚われた末にサイオン・チェックの最中だとは。
 本当に記憶の中を探られ、掻き回されているのだとは。
(…助けて!)
 何度目に叫んだ時だったろうか、不意に姿を見せた少年。
 金色の髪に赤いマントの、幼かった頃に出会った少年。
(ピーターパン!!)
 きっと彼なら助けてくれる、と思った途端に軽くなった身体。
 まるで翼が生えたかのように。
 ピーターパンと一緒に空へ舞い上がって、何処までも飛んでゆけるかのように。


(…今の…)
 飛べた、と見回した瞳に映った、自分のカメラ。
 それを手にして何処へ行ったのか、少しも思い出せないけれど。
(ぼくのカメラ…!)
 取り戻さなきゃ、と思ったら宙を飛んで来たカメラ。
 腕の中にストンと収まるように。
 それを抱き締め、ホッとついた息。
(良かった…)
 カメラにはケーブルが繋がれたままで、誰かが見ようとしている中身。
 大切なものが入っているのに。
 けして中身を見せるわけにはいかないのに。
(このケーブル…)
 ケーブルを抜いて捨てるのがいいか、中身を抜いてカメラを捨てるか。
 一瞬迷って、選んだ中身。
 それさえあったら、もうカメラには用は無いから。
 中のチップが大切だから。


 そして抜き出したカメラのチップ。
 もう要らない、と放り出したカメラ、それは床へと落ちたから。
(落ちちゃ駄目だ…!)
 せっかく空を飛べたのに、とトンと蹴った宙。
 飛ぼうと、ぼくの部屋まで、と。
 此処にいたなら、また捕まってしまうから。
 ピーターパンが飛ばせてくれた空から、床に引き戻されるから。
 引き戻されたら、待っているのは恐ろしい機械。
 テラズ・ナンバー・ファイブの手先で、頭を、記憶を掻き回す悪魔。
 だから逃れた、空へ、部屋へと。
 きっと飛べると、ピーターパンが来てくれたから、と。
(ぼくの部屋まで…!)
 飛べる筈だよ、と宙を蹴って飛んで、ストンと床に着いた足。
 其処は自分の部屋だった。
 明かりは灯っていなかったけれど。
 薄暗い闇に覆われたままで、空気も冷えていたけれど。


(…ピーターパン…?)
 来てくれたよね、と思うのに、誰もいない部屋。
 自分一人が立っているだけ、制服さえも失くしてしまって。
 手の中にはチップ、カメラに仕込んでいた筈のもの。
(…どうして此処に?)
 それにカメラは、と俄かに覚えた激しい恐怖。
 自分の身に何が起こっていたかを、思い出したから。
 捕まったのだと、フロア001で、と。
(それじゃ、どうして…?)
 自分は此処にいるのだろう?
 どうやって逃れて来られたのだろう、あの悪魔たちが潜む部屋から。
 頭を、記憶を掻き回す機械、其処に囚われていた筈なのに。
 自分の力で出られるわけなど、無い筈なのに。
 カメラのチップにしても、そう。
 どうやってそれを取り戻せたのか、何故、手の中に持っているのか。
(…覚えていない…?)
 何も。
(…誰がぼくを…?)
 分かるわけがない。
 けれど、確かに逃げ出した自分。此処は自分の部屋なのだから。


 考えても思い出せないこと。
 何処だったのかも謎の監獄から、気付けば此処に戻っていた。
 奪われた筈の、カメラのチップを取り戻して。
 悪魔のような機械の牢獄、其処から自由の身になって。
(……ぼくは、どうして……)
 何も覚えていないけれども、一つだけ、今も確かなこと。
 きっと悪魔は諦めていない、自分を捕えて苦しめることを。
 カメラのチップを取り上げることも。
(…隠さなきゃ…)
 自分が見付けた、キースの秘密。
 それを収めた大切なチップ、これを誰にも捜せない場所へ。
 何処へ、と考えなくても分かる。
 いつも自分と一緒だった本、ピーターパンの本がいい。
 あの本はいつも一緒だから。
 どんな時でも、きっとこれからも、けして自分は離さないから。


(ピーターパン…)
 もう顔さえも思い出せない、両親がくれた大切な本。
 この本を失くす時があるなら、離れる時が来るのなら…。
 それは自分が死んだ時だけ、そうだと心に決めている本。
 此処に隠せば、離れない。
 きっと誰にも見付からないから、この中に隠しておくのがいい。
(…ごめんなさい…)
 ぼくを許して、と剥がしたピーターパンの本の見返し。
 「セキ・レイ・シロエ」と、自分の名前が書いてある箇所。
 其処を剥がして、隠したチップ。
 元通りにそっと貼って戻して、見返しの下に。
(これで大丈夫…)
 もう見付からない、と安堵したけれど。
 チップは本に隠せたけれども、此処にいたなら、来るだろう悪魔。
(隠れなきゃ…)
 逃げ切らなくちゃ、と潜り込んだ床下。
 前に其処から下へと潜って、ステーションの奥まで入ったから。
 通風孔を伝って行ったら、きっと何処かへ出る筈だから。


 逃げてみせる、と入って隠れて、やり過ごした保安部隊の捜索。
 けれど分からない、自分が此処まで逃げられた理由。
 あの悪魔から。
 地獄のような牢獄から。
 カメラのチップも無事に取り戻して、部屋まで戻って来られた理由。
(…ぼくは、どうやって…?)
 分からないけれど、まるで見当もつかないけれど。
 きっとこうだ、と立てた推論。
 あの部屋で何か騒ぎが起こって、それに乗じて逃げ出せた。
 けれども熱にうかされていたか、でなければ混乱していたか。
 この部屋に戻るまでの記憶を失くして、今、此処にいるに違いない。
 だから追われているのだと。
 保安部隊が捜していると、姿を隠した逃亡犯の自分を、と。
(逃げなくちゃ…)
 そしてキースにこのチップを、と抱えた本。
 大切なピーターパンの本。
 あいつにチップを突き付けてやると、これを見ればキースも終わりだと。
 澄ましたエリートの顔は崩れて、きっとパニックになるだろうと。


 そうするまでは捕まらない、と上げた通風孔の蓋。
 此処を抜けてと、なんとしてでもキースに会ってこれを見せねばと。
 そのために自分はこんな目に遭って、今も追われているのだから。
 地獄の責め苦を受けたのだから。
(キース・アニアン…)
 見付けてやる、と進むシロエは、まるで知らない。
 自分が何をしたのかを。
 どうやって悪魔の手から逃れて、自分の部屋まで飛んだのかを。
 カメラのチップを取り戻せたのも、空を飛べたのも、全部自分のサイオンなのに。
 夢で出会ったピーターパンから、その切っ掛けを貰ったのに。
 ピーターパンはミュウの長だから。
 サイオンを使った思念波通信、シロエはそれに晒されたから。


 呼応するように目覚めたサイオン、その力で空へ飛び立った。
 瞬間移動で機械の壁をすり抜け、カメラからチップを抜き取って。
 宙を蹴って飛んで、自分の部屋へ。
 そうして移動したというのに、自分では覚えていなかった力。
 覚えていたなら、変わったろうに。
 サイオンを自由に扱えたのなら、その後の運命も変わったろうに。
 けれど、シロエは気付かないまま。
 目覚めた力を使いこなせたら、呼べていただろうピーターパン。
 直ぐ其処に来ていた白い鯨を、シャングリラという名のミュウの箱舟を。
 かつて自分が乗り損ねた船、それに乗ることも出来ただろうに。


(…キース・アニアン…)
 あいつ、とシロエは追い続ける。
 通風孔の中を這って進んで、キースが来そうな場所へ出ようと。
 ピーターパンの本を抱えて、チップを仕込んだ本を手にして。
 もしもキースを忘れたならば、彼の代わりに、ピーターパンを思い出したなら…。
(…ぼくは必ず…)
 キースの奴を、と憎む代わりに、子供の心を捕まえたなら。
 ネバーランドに行きたかった夢を、ピーターパンを追っていたならば。
 きっと全ては変わるのに。
 ピーターパンは、白い鯨は、直ぐ近くまで来て飛んでいるのに。
 今、呼んだならば、それは必ず、シロエを救いに来てくれるのに。
 気付かないから、ただひたすらに進んでゆく。
 ピーターパンの本と一緒に、破滅へと。
 もう一度空へ飛び立つ代わりに、二度と戻れない道へ向かって…。

 

       目覚めたサイオン・了

※シロエがサイオン・チェックから逃げたルートは謎だよな、と前から思っていたわけで。
 どう考えてもサイオンを使った脱出マジック、けれど本人には自覚ゼロ。自覚してればね…。





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(伝説のタイプ・ブルー…)
 あれがオリジン、とキースの脳裏に浮かんだ顔。
 旗艦エンデュミオンの一室、指揮官用にと設えられた部屋で。
 モビー・ディックの中で出会ったアルビノの男、ソルジャー・ブルー。
 実在するとは思わなかった。
 今もなお生きていたなどとは。
 かつて確かに存在したモノ、けれど途絶えたその痕跡。
 モビー・ディックがアルテメシアを離れた後には、掴めなくなった彼の消息。
(…ジョミー・マーキス・シンの方なら…)
 自分も確かにこの目で見たから、ジルベスター星系に来る前に既に知っていた。
 ソルジャー・ブルーの次のソルジャー、ミュウの長だと。
 彼が自らそう名乗ったから、E-1077を思念波攻撃した時に。


 あの頃、自分は知らなかったM。ミュウを示す言葉。
 メンバーズとしてミュウを学ぶまでには、暫くかかった。
 其処で教えられた、ソルジャー・ブルー。
 彼が最初に発見されたと、最強のタイプ・ブルーだったと。
 ただし、アルテメシアを出てゆくまでは。
 それよりも後の消息は不明、恐らく死亡したのだろうと。
 今のミュウの長は、別人だから。
 ジョミー・マーキス・シンなのだから。


 モビー・ディックに囚われてからも、その名を耳にしなかった。
 だから「いない」と信じていた。
 もう死んだのだと、過去のものだと。
 彼がどれほど強かろうとも、死んだのでは何の意味もない。
 敵として出会うことなどは無いし、今のソルジャーでは足りない手応え。
 伝説の男は強かったろうかと、それとも彼もこの程度かと嗤ってもいた。
(…いくら私を捕えても…)
 心を読むことも出来ない男が、ソルジャー・シン。
 ミュウの長でも、その程度。
 子供を使って入り込むのが精一杯。
 それ以上のことは出来はしないと、自分の敵とも言えはしないと。
 何も情報を引き出せないなら、ミュウに勝機は無いのだから。
 たとえ自分を殺したとしても、代わりは幾らでもいるのだから。


 そう思ったから、嘲笑ったミュウ。
 いずれ殲滅されるだろうと、その人柱でもかまわないと。
 自分の消息が此処で消えたら、次は艦隊がやって来るから。
 有無を言わさず殲滅するから、そうなるのを待っているがいいと。
(…だが、あの男…)
 死んだとばかり思った男。
 伝説と言われたタイプ・ブルー・オリジン、ソルジャー・ブルー。
 彼に出会って、負けを悟った。
 勝てはしないと、自分の負けだと。
 たまたま運良く生き残れただけ、ミュウの女が何かしただけ。
 どういうわけだか自分を庇った、同じ記憶を持つ女。
 あれが自分を庇わなければ、きっと殺されていただろう。
 防ぐ間も無く、あの一瞬で。
 頭の中身を木っ端微塵に打ち砕かれたか、心臓を握り潰されたか。
 そんな所だと分かっている。
 「アレなら出来る」と、「私の力では防げなかった」と。
 彼がそうすると読めなかったから。
 殺意の欠片も見せることなく、あの男はそれを放って来たから。


(…本当に、よくも助かったものだ…)
 死なずに此処へ来られたとは。
 ミュウの殲滅に向かう艦隊、その指揮権を任されるとは。
 本当だったら、自分は生きて此処にはいない。
 ソルジャー・ブルーが放った一撃、あれに息の根を止められて。
 死骸になって宇宙に棄てられ、それをマツカが拾えたかどうかも危ういくらい。
 「行方不明」とだけ上がる報告、後はグランド・マザーの判断。
 やはりあの星は怪しいと。
 ミュウの巣だから滅ぼすべきだと、彼らが宇宙に広がる前に、と。
 きっと同じにメギドは用意されただろう。
 こうして自分が依頼せずとも、グランド・マザー直々に。
 星さえ砕けばミュウは消せるし、モビー・ディックも破壊出来るから。
(…私は運が良かっただけだ…)
 人質に取った、あの女。
 あれがいなければ死んでいたのだと、負けだったのだと分かっている。
 易々と心に入られたから。
 心の中身を読み取られたから、ソルジャー・ブルーに。


 なんとも無様な負けっぷり。
 ミュウの女に庇われたのなら、それで危険に気付くだろうに。
 次は何かと構えるだろうに、その前に読まれていた心。
 誰も読めない筈なのに。
 ジョミー・マーキス・シンには、無理だったのに。
(あのまま、いたなら…)
 どうなっていたか、今頃は。
 人質を二人取っていたから、辛うじて逃げ延びられただけ。
 「人質を一人、解放しよう」と、子供を放り投げたから。
 ソルジャー・ブルーの注意を逸らして、その隙に船に逃げ込めたから。
 もう一人、人質を引き連れたままで。
 ミュウの女を放さないままで。
(…もしも、人質が一人だったら…)
 そんな姑息な手は使えなくて、ソルジャー・ブルーに殺されていたか、捕えられたか。
 心を読めるくらいなのだし、ソルジャー・シンよりも遥かに強い。
 彼とまともに対峙していたら、きっと命は無かっただろう。
 人質無しで出会っていたら。
 その人質がいたとしたって、一人しか連れていなかったなら。


 尻尾を巻いて逃げるしか無かった、あの格納庫。
 余裕の欠片もありはしなくて、それから後も運が良かっただけ。
 たまたまマツカが来合わせただとか、人質が価値あるモノだったとか。
 ソルジャー・シンが自ら飛んで来たほど、大切らしいあの女。
(…あれが下っ端の女だったら…)
 やはり無かったろう命。
 躊躇いもなくミサイルが来るとか、遠隔操作で船ごと爆破されるとか。
 「シールドすれば助かる筈だ」と、「ミュウの女なら出来るだろう」と。
 重要人物だったからこそ、ミュウどもが手出しを躊躇っただけ。
 他に手段が何か無いかと、いきなり爆破は無礼すぎると。


(…本当に、運が良かっただけだ…)
 自分が生きて此処にいるのは。
 メギドを携え、ジルベスター星系へとミュウを滅ぼしに行けるのは。
(そして、あそこには…)
 今もソルジャー・ブルーがいる筈。
 あれで終わるとは思えない。
 きっと彼なら出て来るのだろう、他の者では手に負えないと知ったなら。
 メギドの炎で燻し出したら、あの時、自分に向けた闘志を此方へと向けて。
 今の長では、まるで話にならないから。
 人類に勝てはしないから。
(私一人が逃げ出しただけで…)
 大混乱だった船の中。
 彼がきちんと指揮していたなら、あんなことにはならないから。
 ソルジャー・ブルーが出て来なかったら、自分はまんまと逃げおおせていた筈だから。


 敵と呼べるのは、きっとソルジャー・ブルーだけ。
 自分と戦い、勝ちを収めることが出来るのも、きっとソルジャー・ブルーしかいない。
 そんなつもりは無いけれど。
 彼に容易く倒される気は無いけれど。
(…しかし、アレなら…)
 自分を殺す力を持っているのだろう。
 現に自分は殺されかけたし、生きているのが不思議なほど。
 アレにもう一度会いたいと思う、真正面から。
 一対一で彼に会ったら、どちらが死ぬのか、どちらが生きるか。
 それを無性に知りたいと思う、生き残れるのは何方なのかと。
 ソルジャー・ブルーか、自分なのかと。


(…負けたままでは…)
 尻尾を巻いて逃げたままでは、きっと一生、彼に勝てない。
 メギドの炎が彼を焼いても、星ごと砕いてしまっても。
 それは自分の力ではなくて、メギドの破壊力だから。
 自分は「発射!」と命令するだけ、他の者でも、それこそ部下でも出来るのだから。
(……ソルジャー・ブルー……)
 此処へ出て来い、と握り締めた拳。
 メギド如きに滅ぼされるなと、生きて私の前に立てと。
 そうすれば、仕切り直せるから。
 今度こそ自分が勝ちを収めて、真の勝者となってやるから。


(…私を殺せるような男を…)
 敵に出来たら、そして勝てたら、きっと爽快だろうから。
 ジルベスターまで来た価値があるから、もう一度チャンスが欲しいと思う。
 あの伝説のタイプ・ブルーと、ソルジャー・ブルーと戦える場所。
 それが欲しいと、たとえ負けても構わないからと。
 彼ともう一度向き合えなければ、戦えなければ、ずっと負け犬のままだから。
 尻尾を巻いて逃げて行ったと、運が良かっただけの男だと、きっと嗤われるだけだから。
 ソルジャー・ブルーに、あの男に。
 自分を窮地に追い込んだ男、殺すことさえ出来る力を秘めた男に。
 「地球の男は、あの程度か」と。
 メギドに頼らねば勝てないのかと、よくも偉そうな口を叩けたと。
 そうならないよう、今はチャンスを願うだけ。
 ソルジャー・ブルーが出て来ることを。
 メギドの炎に滅ぼされずに、生きて再び自分を殺しにやって来ることを…。

 

        伝説のミュウ・了

※自分が本当にソルジャー・ブルーのファンなのかどうか、疑われそうなブツを書いた気が…。
 ブルーのファンには間違いないです、根っからのブルー・ファンです。マジで…。





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「ただいま、シロエ」
「パパ!」
 開いた扉の向こうに、父。
 駆け寄って行けば、父は高々と抱き上げてくれた。
 まるで重さなど無いかのように、シロエの身体を高く、高く。
 クルクルと回ってくれる父。
 もう嬉しくてたまらないから、歓声を上げて回り続けた。
 父と一緒に、クルリクルリと何回も。
「さあさあ、パパもシロエも、御飯にしましょ」
 母が呼んでくれて、下り立った床。
「わあ!」
 美味しそう、と眺めたテーブルの上。
 母の得意な料理が並んで、今日は御馳走。
(ふふっ、御褒美…)
 きっと、この間のテストの点数。
 誰も満点を取れなかったのに、自分は満点だったから。
 学校の先生も褒めてくれたし、父も母も喜んでくれたから。
 いただきます、とパクリと頬張った。
 とても美味しくて、頬っぺたが落っこちてしまいそう。
(すごく幸せ…)
 こんな日はきっと、夜になったら…。
(ピーターパンが来てくれるかも!)
 いい子でベッドに入ったら。
 「おやすみなさい」と、ベッドに入って目を閉じていたら。
 そのまま寝ないで待っていたら、きっと…。


 だから寝ないで待つんだもん、と頑張ったのに。
 知らない間に眠ってしまって、素敵な夜は過ぎてしまって…。
(もう朝なの!?)
 嘘、と目覚めたベッドの上。
 目覚まし時計を止めようとしたら、伸ばした自分の手に驚いた。
(えっ…?)
 ぼくの手、と凍ってしまった瞳。
 夢の中の自分の手とは違って、もっと大きくなっているから。
 子供と言うより、大人に近い手。
 どうしてなの、と見詰めたけれども、鳴り続けている目覚ましの音。
 冷たい音で、規則正しく。
 急き立てるように、けたたましく。
(…マザー・イライザ…)
 途端に引き戻された現実、此処は自分の家ではなかった。
 E-1077、エネルゲイアから遠く離れた教育ステーション。
 其処で目覚めた、十四歳の自分。
 幼かった日は消えてしまって、今の自分は…。
(パパ、ママ…)
 何処、と見回しても、いる筈がない父と母。
 自分の家ではないのだから。
 故郷からは遠く離れてしまって、帰る道も、もう…。
(覚えていないよ…)
 帰れないよ、と零れた涙。
 目覚ましだけは止めたけれども、もう戻れない夢の中。
 せっかく父に会えたのに。
 懐かしい母が作る御馳走、それを美味しく食べられたのに。


(ぼくって馬鹿だ…)
 どうして眠ってしまったのだろう、あの夢の中で。
 もしも眠らずに起きていたなら、飛べていたかもしれないのに。
 夜の間に、ピーターパンが来てくれて。
 一緒に空へと舞い上がれていて、今頃はきっと、ネバーランドへ。
 あのまま空を飛んで行ったら、きっと此処にはいないのだろう。
 子供が子供でいられる世界へ、ネバーランドへ、高く高く空を飛んで出掛けて。
(…こんな所から…)
 逃れて、焦がれ続けた空へ。
 ネバーランドへ旅立って行って、二度と戻らずに済んだのだろうに。
(…パパとママだって…)
 離れずに済んでいたのだろう。
 ネバーランドに飛んで行っても、会いたくなったら、きっと帰れる。
 心でそれを願ったならば。
 「パパとママに会いに帰りたいよ」と、ピーターパンに言ったなら。
 子供の味方は、子供を泣かせはしないから。
 ピーターパンなら、夢を叶えてくれるから。
(…パパ、ママ…)
 ぼくはどうして寝てしまったの、と叫びたい気分。
 どうして起こしてくれなかったのと、ピーターパンを待っていたのにと。
(…寝る前に、ちゃんと頼んでおいたら…)
 父が揺すってくれただろう。
 「今夜は起きて待つんだろう?」と。
 母だって、きっと起こしてくれた。
 「眠っちゃ駄目よ」と、「起きたまま待っているんでしょう?」と。


 パパとママに頼み損なっちゃった、と呪った夢。
 きちんと頼んで眠っていたなら、今頃はきっと別の世界にいただろうから。
 E-1077は丸ごと消えてしまって、ネバーランドを飛び回って。
(…ネバーランドに行きたいよ、ママ…)
 パパ、と呟いて、気付いたこと。
 夢の世界で確かに会った。
 顔もぼやけてしまった両親、夢ではハッキリ見えていた顔。
 何処も霞んでいなかった。
 家も、テーブルも、母が作った御馳走も。
 料理を口にした時の美味しさだって、何もかも全部、みんな本物。
 夢の世界で見ていた全ては、きっと本当にあったもの。
(…ぼくが忘れてしまっただけで…)
 成人検査で奪われただけで、あれは全部、自分が見ていたもの。
 両親の顔も、父が入って来た扉だって。
(…どんな扉だっけ…?)
 パパはどうやって入って来たっけ、と考えても思い出せない扉。
 父の顔だって覚えていなくて、母の顔だって記憶に無くて。
(……ママの御馳走……)
 並んでいた料理も思い出せない、大好物だった筈なのに。
 とても美味しくて、顔が綻んだ筈なのに。
(…夢の中でしか、見られないの…?)
 目覚めた途端に消えてしまう夢、その中でしか。
 夢を見ている間だけしか、きっと見付からない真実。
 自分は何処で暮らしていたのか、両親はどんな顔だったのか。
 どういう日々を過ごしていたのか、楽しかったことは何だったのか。
(……そんなの、酷い……)
 本当のことは、夢の中にしか無いなんて。
 目覚めた途端に消える泡沫、パチンと壊れるシャボン玉だなんて。


 あんまりだよ、と思うけれども、これが現実。
 自分の記憶は機械に消されて、目覚めたら忘れる夢の中のこと。
 嫌な夢なら、起きた後にも心の中に残っているのに。
 「捨てなさい」と迫る、テラズ・ナンバー・ファイブなら。
 「忘れなさい」と記憶を消してしまった、忌まわしい機械の夢の時なら。
 そっちの方こそ忘れたいのに、忘れないままで目が覚める。
 何度も自分の悲鳴で飛び起き、その度に怖くて泣き続ける夢。
 「パパ、ママ…」と肩を震わせて。
 失くしてしまった記憶を取り戻したくて、両親のいた家に帰りたくて。
 両親だったら、きっと守ってくれるから。
 「怖いよ」と自分が怯えていたなら、「大丈夫」と抱き締めてくれる筈だから。
 それなのに、思い出せない両親。
 家があった場所も、家の扉も、テーブルだって。
 何もかも自分は忘れてしまって、夢で出会っても、また忘れた。
 目覚ましの音が鳴った途端に、本当のことを。
 自分が子供でいられた時代を、子供の視点で見ていたことを。
 それこそが、きっと真実なのに。
 今も何処かに、本当のことはある筈なのに。
(……パパもママも、家も……)
 エネルゲイアに今もそのままで、自分だけが此処に放り出された。
 ピーターパンの本だけを持って、独りぼっちになってしまって。
 本当のことを全部忘れて、夢に見たって、掴み取れずに。


(……もう一度……)
 眠り直したなら、夢の世界に戻れるだろうか。
 講義に出ないで眠り続けたら、もう一度あの夢に入れるだろうか。
(もしも、戻れたら…)
 今度こそ寝ないで、夢の中で待とう。
 両親に頼んで起こして貰って、ピーターパンがやって来るまで。
 夜の空を飛んでネバーランドへ、ネバーランドよりも素敵な地球へ。
(…飛んで行かなきゃ…)
 もう一度だけ、と切った目覚まし。
 チャンスは掴み取りたいから。
 テラズ・ナンバー・ファイブの夢が来たって、かまわない。
 少しでも希望が残っているなら、それに賭けたいと思うから。
 機械の言いなりになって講義に出るより、今日は機械を無視したいから。
(今日の講義くらい、出なくても…)
 遅れは直ぐに取り戻せるから、夢の世界へ戻ってゆこう。
 夢の世界が本物だから。
 子供が子供でいられた時代は、確かにあった筈なのだから。
(パパとママに会って、御馳走を食べて…)
 夜は寝ないでネバーランドへ、と目を閉じて戻った上掛けの中。
 運が良ければ、きっと真実が見えるから。
 怖い夢が来たってかまわないから、夢の世界へ飛び立とう。
 父と母がいた時代へと。
 本当のことがあった世界へ、機械がすっかり消してしまった子供時代へ。
 その世界への扉が開いたら、真っ直ぐに飛んでゆこうと思う。
 夜は寝ないでピーターパンを待って、ネバーランドへ、ネバーランドよりも素敵な地球へ。
 夢の世界は本物だから。
 真実はきっと其処にあるから、夢に隠れている筈だから…。

 

        戻りたい夢・了

※成人検査で消された記憶は、何処かに残っている筈で…。何かのはずみに出て来る筈。
 だったら夢でも出て来るかもね、と書いてみたけど、シロエ、可哀相…。夢、見られたかな?





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