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「待て! そんな子供を!」
 叫んだ瞬間、張られた頬。
 そして引き戻された現実、目の前にいたミュウの長。
(ジョミー・マーキス・シン…)
 してやられたな、とキースが歪めた唇。
 ミュウの長はもう、いないけれども。
 心の中に飛び込まれてしまった動揺の原因、自然出産児だというミュウの子供も。
 ガラス張りのドームのような牢獄、此処に囚われてどのくらいになるか。
 助けがやって来る気配も無ければ、この牢獄から出る方法すら見付からない。
 出られさえすれば、逃走可能なルートは頭の中にあるのに。
(…あのミュウの女…)
 自分と同じイメージを持った、盲目らしい女。
 マザー・イライザかと驚いたくらい、よく似ていた。
 その女が漏らした船の構造、どう走ったら格納庫なのかは掴めたのに。
(これでは、どうにもなりはしないか…)
 何度調べても、蟻の這い出る隙間さえも発見出来ない牢獄。
 それでも諦めたら無いのが未来。
 なんとしてでも、と脱出の機会を窺う間に、またもジョミーに心を読まれた。
 一度目はジルベスター・セブンに墜落させられ、意識を取り戻した瞬間。
 さっきので二度目、きっとジョミーは見ただろう。
 自分自身でさえ、日頃は殺している感情。
 システムに対する疑問や反感、そういったものの集大成を。


 不覚だったと思うけれども、あれが真実。
 自分の心の中にあるもの。
(…いくらミュウだと断定されても…)
 本当に殺すべきなのかどうか、あんな子供を。
 「もうしません」と泣きじゃくる子を、許す代わりに通報する教師。
 社会の秩序を乱すからだ、と。
 通報されれば、ミュウかどうかは直ぐ分かる。
 ただの子供なら、多分、叱られて終わるのだろうに。
 養父母の家へと連れ帰られて、説教程度で済むのだろうに。
(…ミュウの子供だと…)
 武装した兵士に連れてゆかれて、撃ち殺される。虫けらのように。
 その子が何もしていなくても。
 ただ泣くことしか出来ない子でも。
(…酷いシステムだ…)
 人類とミュウは相容れないけども、幼い子供を殺すのはどうか。
 子供に罪があるとしたなら、ミュウに生まれたということだけ。
 たったそれだけ、けれども処分されるのがミュウ。
 かつて自分が、シロエの船を落としたように。
 マザー・イライザに命じられるままに、撃ち落とすしかなかったように。
(しかし、シロエは…)
 確固たる意志を持っていた。
 このシステムには従えないと、機械の言いなりにはならないと。
 明確だった反逆の意志。
 それを口にすればどうなるかさえも、シロエは充分承知していた。
 知っていて逆らい、消されたシロエ。
 彼は自分の立場を承知で、殺されてもいいと逆らい続けて、宇宙に散った。


 シロエもMのキャリアだった、と後に聞いたけれど。
 処分せねばならないミュウだったけれど、幼い子供ではなかったシロエ。
(ああいうミュウなら、仕方ないのかもしれないが…)
 放っておいたら、システムが綻びかねないから。
 シロエの強い意志に引かれて、人類までもがシステムの矛盾に気付きそうだから。
 けれど、幼い子供は違う。
 単にミュウだというだけのことで、何の脅威にもならない子供。
 成人検査で発覚したなら、相応の年と言えるわけだし、数ヶ月も経てばシロエのようにもなる。
 システムに反抗し始めたならば厄介だから、と消すのも分かる。
 処分すべきだということも。
(だが、子供は…)
 ジョミーに心に入り込まれた時、自分が見た夢。
 あれも一種の夢なのだろう、実際に目にした映像だから。
 ミュウと戦うことを想定して、軍で訓練を受けていた時に。
(…皆は平気で見ていたのに…)
 平静なふりをするのが精一杯だった自分。
 あの時に叫びたかった言葉を、ジョミーに聞かれた。
 「待て」と「そんな子供を」と叫んだ自分。
 それはあんまりだと、幼い子供にすべきではないと。
 映像の中で殺された子供は、何も分かっていなかったろうに。
 どうして自分が殺されるのかも、ミュウという言葉も、まるで分からない幼い少女。
 何故、殺さねばならないのか。
 敵でもなければ、反逆の意志も持っていないような、泣くだけの子供。
 そのやり方は間違っている、と本当に叫びそうだった。
 かつてシロエを、この手で殺めた自分でさえも。
 友になれたかもしれないシロエを、殺してしまった過去を持っていても。


 あまりに惨いと思うシステム。
 いくら相容れない人種と言っても、其処までせねばならないのかと。
 自分の行動に責任を持てる年になるまで、見逃してやれはしないのかと。
 ミュウは人類の敵だけれども、まだ敵とさえも呼べない子供。
 幼い子供をミュウと断じて、それだけの理由で命を奪う。
 本当にそれが正しいだなどと、一度も思ったことなどは無い。
 あんな子供でも殺すと言うなら、何故育てたのか。
 もっと早くにミュウの因子を取り除ければ、とさえ考えてしまう。
(…ミュウの因子があるならば、だがな…)
 最初から生まれて来なかったならば、幼い子供は殺されないから。
 泣くだけの子を撃ち殺さずとも、社会の秩序は保たれるから。
(…私が甘いのか、他の奴らが狂っているのか…)
 何度も繰り返し考えたけれど、今も答えは出ないまま。
 疑問を抱えて生きてゆくだけで、とうとう此処まで来てしまった。
 ミュウに囚われ、その船の中へ。
 逃げ出そうにも、方法が見えない牢獄の中へ。
(挙句の果てに読まれるとはな…)
 ジョミー・マーキス・シンは、きっと見た筈。
 「待て」と叫んでいた自分を。
 「そんな子供を」と、叫んだ本音を。
 だから余計に腹立たしい。
 自分でも答えが出せていないのに、あっさりと読まれてしまった心。
 「人類とミュウは相容れない」と言い捨てたけども、今も投げ出せない疑問。
 システムを頭から信じられない、罪も無い子を殺すシステム。
 他の者たちは当然のように、あの映像を見ていたのに。
 見終わった後には、一刻も早くミュウを殲滅しなければ、と高揚していたくらいなのに。


 手放しで賛同出来ないシステム。
 けれども、ミュウは倒さなければならない敵。
 現に自分も囚われの身だし、ミュウは危険な存在だろう。
(星の自転も止められるほどの…)
 力を、サイオンを秘めた化け物。
 だから排除する、其処までは分かる。
 そのために自分が来たのだけれども、この船にはきっと…。
(幼い子供が何人も…)
 さっきジョミーが連れて来た子供、幼児と呼ぶのが相応しい子供。
 映像の中で撃ち殺された少女の方が、ずっと大きい。
 トォニィという名の、あの子供。
 他にも何人か生まれているらしい、自然出産児のミュウの子供たち。
 彼らを何のためらいも無く殺せるのか、と尋ねられたら答えは否。
 「待て」と叫んだ自分だから。
 「そんな子供を」と、何度叫んだか知れないから。
 あの映像を見せられた日から、今日までに。
 夢に見た時は、いつも叫んでしまうから。
(やはり私は甘すぎるのか…?)
 ジョミーは其処まで読んだだろうか、自分の心を。
 ミュウといえども、幼い子供を殺すことには疑問があると。
 自分にその任が回って来たなら、やり遂げる自信はあるのだけれど。
 ためらわずに引き金を引くだろうけれど、きっと自分は忘れない。
 罪も無い子の血で、染まった手を。
 遠い昔にシロエの血で赤く染まった罪の手、その手が再び重ねた罪を。
 どうしてこういうことになるのかと、きっと繰り返し見るのだろう。
 この手で幼い子を殺めたと、自分はそういう宿命なのかと。


 もしもジョミーに読まれていたら、と自分でも恐れる心の弱さ。
 ミュウは敵だから殺すけれども、幼い子でも殺せるけれど。
(…そう訓練をされているだけのことで…)
 自分の意志で動いていいなら、子供を逃がしてやるだろう。
 いつかは殺さねばならないけれども、今ではないと。
 もっと成長して、シロエのように逆らい始めてからで充分だ、と。
 明らかに「敵」と認識出来るような存在。
 そう育つまでは見逃すべきだと、子供に罪は無いのだからと。
(…さっきの子供…)
 トォニィが自分に牙を剥くなら、考えを変えねばならないけれど。
 幼くてもミュウは危険なのだと、殺すべきだと思うけれども、今はまだ…。
(…この船を爆破する気にはなれんな)
 上手い具合に逃げられたとしても、船を丸ごと爆破できる方法があったとしても。
 幼い子供も乗せている船、それを壊そうとは思わない。
 それでは自分も、あの映像の兵士たちと何処も変わらないから。
 幼い少女を容赦なく撃った、血も涙もない兵士と同じになってしまうから。
(…ジョミー・マーキス・シン…)
 何処まで私の心を読んだ、と忌まわしいミュウの長を思い浮かべる。
 この考え方まで読まれていたなら、戦わずして負けだから。
 「どうせ、あいつには何も出来ない」と、高笑いされるだけだから。
 幼い子供がいるというだけで、船の爆破も出来ない腰抜け。
 メンバーズと言ってもその程度なのかと、ならば囚われているがいいと。


(…ミュウの子供か…)
 とんでもないものに出会ってしまった、と舌打ちをする。
 知らなかったならば、逃げ出せたら直ぐに、艦隊を連れて戻るのに。
 ミュウを星ごと殲滅するのも厭わないのに、船にいた子供。
 きっと自分は殺せない。
 幼い子供は、ただ泣くことしか出来ないから。
 そんな子供を殺す役目が回って来たなら、逃がしてやりたくなるのだから。
(マザー・システムのお膝元なら、それは無理だが…)
 此処に監視している者はいないから、自分は子供を見逃すのだろう。
 泣くだけの子供、幼い子供を自分は撃てない。
 いくら敵だと教えられても、子供に罪は無いのだから。
 ミュウに生まれたというだけのことで、殺意などは持っていないのだから…。

 

          殺せない子供・了

※ジョミーが心に飛び込んだ時にキースが見た夢。ミュウの少女が撃ち殺されたわけですけど。
 「待て」と叫ぶんですよね、キース。こういう部分もきっとある筈、と思ったり…。





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(わあっ…!)
 懐かしいなあ、とジョミーが目を留めたもの。たまたま入った倉庫の奥で。
 今日も今日とて、長老たちから大目玉。訓練に身が入っていないとか、集中力がどうだとか。
 なんとも腹が立って仕方ないから、午後はサボリを決め込んだ。正確に言えば、午後のお茶にと出掛けた長老、その間に逃亡したわけで…。
 此処なら見付かるまでに多少は時間が、と身を隠したのが備品倉庫の一つ。シャングリラの中に幾つもあるから、こういう時に隠れる定番。
 さて、と伸びをして見回していたら、目に入ったそれ。
(スピードウィル…)
 早い話がローラーブレード、昔の言葉で言うならば。
 シャングリラに連れて来られる前には、よく使っていた。学校へ急いでいる時に。目覚めの日の前日もそれで走った、お蔭で朝から食らった呼び出し。
(あの日は二回も…)
 カウンセリングルームに呼び出されたっけ、と今はそれさえ懐かしい。口うるさかった担任教師のお小言だって、サッカーの最中に「オフサイド」と繰り返した憎い審判ロボットだって。


(…もう、あの頃には戻れないよね…)
 ミュウの船まで来てしまったから、どうしようもない今の状況。
 自分はソルジャー候補とやらで、このシャングリラをいずれは一人で…。
(背負って行けって?)
 酷い話だ、と思うけれども、これまたどうしようもない。明らかにミュウだと分かった以上は、もう帰れないアタラクシア。両親と暮らしていた家にも。
(どうせ、帰れはしないんだけどね…)
 ミュウでなくても、成人検査が終わったら。記憶を消されて教育ステーション行きで、やっぱり家には帰れない。分かっているから余計に悔しい、「どうして、ぼくが」と。
 ソルジャー候補にされるくらいなら、成人検査をパスした方が…。
(人生、平和だった気がする…)
 きっとなんにも知らないままで、今頃は教育ステーション。
 もしかしたら、こういうスピードウィルを履いて、元気に走っていたかもしれない。ルール違反だと叱られながらも、「早ければいい」と。
 サッカーの試合で「オフサイド」と言われて、審判ロボットを壊すとか。


 そっちだったら良かったのに、と思わないでもない人生。たとえ記憶を消されていたって、社会ではそれが普通だから。両親もそうだし、サムやスウェナも、いずれその道を行くのだから。
(ブルーだって、偉そうなことを言うけど…)
 成人検査を妨害しに来たソルジャー・ブルー。自分をソルジャー候補に決めてしまったミュウの長。彼は自分に「根無し草になるな」と言ったけれども、その彼だって…。
(記憶、すっかり無いくせに…)
 成人検査よりも前の記憶はスッパリ無いのがソルジャー・ブルー。
 それでも立派にソルジャーなんぞをやっているから、過去の記憶がまるで無くても、きっと人生なんとかなる。そう思うからこそ、腹が立つわけで…。
(ホントだったら、ぼくは今頃…)
 スピードウィルで走ってたんだよ、と脱ぎ捨てたブーツ。こんな靴よりスピードウィル、と。
 幸い、足にピタリと合ったスピードウィル。丁度サイズが良かったらしい。
(うん、この感じ!)
 懐かしいよね、と倉庫の中を走り始めた。シャーッ、シャーッと、風を切って。
 積み上げられた荷物を避けつつ、気持ち良く。こんな風にぼくは走ってたんだと、本当だったら今だってきっと、と。
 そうしたら…。


「ジョミー・マーキス・シン!!」
 フルネームで呼ばれてしまった名前。怒鳴った声は怒れるブラウ航海長で、彼女の声が聞こえるからには、他の長老たちもいるわけで…。
(見付かった…!)
 サボリどころかスピードウィル。膝を抱えて蹲っていたなら、情状酌量の余地はあっても、この姿では言い訳不可能。もう間違いなく吊るし上げになって、ブルーの所にも報告が行って…。
 激しくヤバイ、と頭はパニック、アッと思ったら迫っていた壁。
「うわぁぁぁーっ!!?」
 日頃のトレーニングの成果は出なかった。サイオンでピタリと止まれもしなくて、瞬間移動など出来もしなくて、そのまま真っ直ぐ…。
 バァン!!! と派手に突っ込んで行って、目から飛び散ったお星様。
(……お星様だ……)
 アルテメシアの成層圏まで駆け上がった時も、星だけは綺麗だったよね、と遠ざかる意識。何もかもあそこから始まったよねと、あんなことさえしなかったなら、と。
 もしもシャングリラから「家に帰せ」と言わなかったら、少なくとも今よりマシだった筈。
 不本意ながらもミュウだと認めて、船で大人しくしていたら…。


 あの時、ぼくは間違えたんだ、と痛む額に手をやった。ズキンズキンと痛む頭に。
(…ぼくって、馬鹿だ…)
 最初の選択肢を誤った上に、今度は訓練のサボリがバレた。部屋の天井が見えるけれども、この後はきっと説教だろう。スピードウィルで激突した壁、そのまま気絶したのだから。
(…ゼルに、ブラウに…)
 ヒルマンにエラ、と訪ねて来るだろう面子を思うと、更に激しくなる頭痛。おまけにブルーにも報告が行くし、夜には青の間で説教を食らう。この件について。
(……ホントに最悪……)
 ツイていない、と痛む頭を押さえている間に開いた扉。
(来た、来た…)
 もう早速にやって来たぞ、と覚悟したのに。
『ジョミー。…よく眠れましたか?』
 声ではなくてリオの思念波。ちょっとラッキー、と思ってしまった。リオは何かと庇ってくれる兄貴分だし、心強い気分。このままリオに、長老たちの所へしょっ引かれるとしても。
 助かった、と顔を上げたら、「キュウ!」とナキネズミまでが飛んで来たから、嬉しい気持ちは更にアップで。
「あっ、お前…!」
 一緒に叱られてくれるんだ、と肩に纏わりつくナキネズミに頬が緩んだ所へ。
『あなたを恋しがって鳴くので』
(えっ!?)
 なんだか変だ、と目を見開いた。…この台詞、ずっと昔に聞いた…?


 ナキネズミが背中などを駆け回るから、「くすぐったい!」と笑いながら、ふと気付いたこと。
(ぼくの服…)
 それはとっくに無い筈の服で、目覚めの日に初めて袖を通した服。アルテメシアの成層圏から落下するブルーを追ってゆく時、燃えて無くなってしまった服。
(…なんで、この服が…?)
 まさか、と見回す自分をリオが連れて行った先には、柔和な顔のヒルマンがいた。どう考えても怒り狂っている筈のヒルマン、さっきのサボリとスピードウィルで。
 なのに…。
「待っていたよ、ジョミー。まあ、座りたまえ」
 君はミュウについてどれほど知っているかな、と質問されたから、慌てて答えた。
「えっと…。人類に追われる新人種…です、サイオンを持った」
「ほう…。たった一日で其処まで理解してくれたのかね」
 嬉しいね、と笑顔のヒルマン。飲み込みが早くて助かるよ、と。
(…たった一日って…?)
 どうなってるんだ、と途惑っていたら、「それでは、聞いてくれたまえ」と始まった講義。この船に来て直ぐに受けた講義と全く同じ。
 講義の後のリオの話も。「この船は…」という、シャングリラについての説明。


(もしかしなくても…)
 時を飛び越えちゃったんだ、と分かった現実。
 スピードウィルで激突した壁、目からお星様が散った瞬間、タイムリープをしたらしい。そうとなったら、この先は…。
(船から出ようとしたら駄目なわけで…)
 大人しくするのが一番なんだ、と決意した。
 どうせだったら、成人検査の前まで戻りたかった気もするけれど。ソルジャー・ブルーがやって来たって、知らないふりしてパスしたかった気もするのだけれども…。
(贅沢を言ったらキリがないよね…)
 これでもマシになった状況、船の雰囲気はきっと和らぐ。同じソルジャー候補にしたって、長老たちの覚えも目出度くなる筈だから。
(よーし、明日から…!)
 ぼくの周りを変えて行こう、と積極的に打って出たジョミー。時を飛び越えて戻ったとはいえ、能力はついて来てくれたから。思念波もサイオンも、それなりに。
 だからキムたちとも喧嘩は起こらず、すっかりマブダチ。
 さっさと青の間に出掛けたお蔭で、ソルジャー・ブルー直々に皆に紹介して貰えたし…。
(ぼくの人生、まるで違うよ…!)
 同じミュウでもこうも違うか、と人生薔薇色、そんなこんなで過ぎて行った日。


 ソルジャー・ブルーは健在だったから、皆に親しまれるソルジャー候補になれた。うまい具合に行っているよね、と思っていたのに、失敗してしまったシロエというミュウの子供の救出。
「やはり、ぼくは無力です…」
 アルテメシアからも逃げる羽目になって、すっかり落ち込んでいたのだけれど。
(…ひょっとして…?)
 もう一度、時を飛び越えられるかも、と急いだ備品倉庫の奥。スピードウィルが仕舞われていて、あの時と同じだったから…。
(これを履いて、壁に思いっ切り…)
 もちろんスピードはMAXで、と突っ込んだ壁に頭をぶつけて、目から飛び散ったお星様。
(えーっと…?)
 何処だ、と見れば直ぐ前にシロエ、「嫌だ、ぼくは行かない」と言っているから。
(喋っている間に、シロエのお母さんが戻る筈だし…)
 それでシロエがブチ切れるんだ、と思い出した流れ。けれどもシロエの説得は無理で、そのまま置き去りにしたわけだから…。
「ごめんよ、シロエ…!」
 とにかくネバーランドに行こう、とシロエを攫って飛び出した。窓の向こうで光った空。それにシロエが気を取られた隙に、強引に。
 そうして戻ったシャングリラはといえば、衛星兵器で攻撃されている真っ最中だったから…。
 シロエは納得してくれた。「あそこにいたら殺されていた」という説明に。


(スピードウィル…)
 あれは凄すぎ、と考えたから、備品倉庫の係に頼んだ。アタラクシアで履いていたから、あれを譲ってくれないかと。もちろん「駄目だ」と言われはしなくて、貰えてしまって。
 それから後は、失敗したらタイムリープで戻って行った。スピードウィルがいつでも足にピタリと合うよう、サイズを調整して貰いながら。
 キースの脱出騒ぎが起きた時にも、上手い具合に修正出来た。キースは逃げて行ったけれども、船に被害は出なかったから。
(トォニィは無傷で、カリナも無事で…)
 よくやった、と思っている間に、今度はメギドが来たのだけれど。
(此処でナスカから、全員、脱出…)
 逆らってシェルターに残ろうとした連中、それが出来ないようシェルターの鍵を壊しておいた。入れないのでは残留不可能、全員が船に戻ったから。
「キャプテン、ワープ!」
 メギドの第一波が飛んで来る寸前、シャングリラはナスカを後にしていた。つまり人的被害などゼロで、ソルジャー・ブルーも乗っけたままで。


 そんな具合で、スピードウィルで壁に向かって何度も激突、ついに地球まで辿り着いた。地球に降りる時にもスピードウィルを持参で、カッコ良く肩に掛けていたから。
「なんだ、それは?」
 グランド・マザーに会うというのに、妙な靴など持って行くな、と睨んだキース。秘密兵器だと知るわけがないし、当然と言えば当然のことで…。
「後で分かってくれる……かもしれない。分からなかったら、その方がいい」
 とにかく、ぼくはこのスタイルで、と地の底まで運んだスピードウィル。それはやっぱり…。
「その傷でそれを履いてどうする…」
 死ぬぞ、とキースが止めにかかるから、「放っておいても死ぬじゃないか」と真顔で返した。
 キースは剣でグッサリやられて致命傷だし、自分も同じ。
 此処は走って軌道修正、壁に当たって目からお星様でも死ぬよりはマシで…。
(何がなんでも、やり直してみせる…!)
 瓦礫の中でも当たって砕けろ、とサイオンも乗せてスピードウィルで真っ直ぐ走った。何処かに当たれば目からお星様、またやり直しが出来るから。
 どうすればベストな道を行けるか、答えはとっくに出ていたから。
 そして…。


 グランド・マザーはキースが止めた。「言い直せ!」と叱ってやったから。
 「何故、私が」と仏頂面だから、「その台詞は誤解されるから」と言葉でガンガン攻めて。
 「人類は我を必要や否や」、それの答えは「要りません」だと。
 元からキースはそういうつもりで、不幸なミスが重なった挙句に悲惨な結末になっただけ。
 ゆえに「あなたは不要だ」というキースの一言、グランド・マザーはアッサリ止まった。宇宙に広がるマザー・ネットワークも、ついでに停止してしまったから…。
「…終わったようだな。ところで、お前が持っているソレは…」
 いったい何の役に立つんだ、とキースが指差したスピードウィル。相も変わらず、肩から掛けたままだったから。
「ああ、これかい? 分からなかったら、その方がいいと言ったじゃないか」
 ぼくのラッキーアイテムでね、と返してやったら、呆れ顔のキース。「それだけのことか」と、「そういうことなら早く言え」と。
 何か誤解をされているけれど、あえて訂正する気もしない。
(本当にラッキーアイテムだしね?)
 これから先もよろしく頼むよ、とポンと叩いたスピードウィル。
 自分一人が痛い目を見たら、全ては丸く収まるから。目からお星様、それだけだから。


 最強の相棒はスピードウィルだと、タイムマシンだとジョミーは信じているのだけれど。
 今も疑いもしないのだけれど、本当は少し違ったらしい。
 スピードウィルは単なる切っ掛け、壁に激突した途端にショックで発動するサイオン。
 実はジョミーは、タイムリープの能力を持ったミュウだった。
 誰も気付いていないけれども、本人も知らないままだけど。
 そしてジョミーは今日も突っ走る、平和になった世界のシャングリラの中を。
 最強の相棒のスピードウィルを履いて、鼻歌交じりで、ぐんぐん走るスピードを上げて。
 平和な世界では、ただのスピードウィルだから。
 アタラクシアで走っていたのと同じで、何処までも楽しく走れるのだから…。

 

        時をかける少年・了

※キムタクのタイムリープ説が話題になった時、「なんでもアリだな」と思った管理人。
 昔、その手のSF好きだったけどさ、自分が書くとは思わなかったよ、タイムリープを…。





拍手[2回]

(……シロエ……)
 ぼくが殺した、とキースが机に叩き付けた拳。
 マザー・イライザからの撃墜命令、それに従うしかなかった自分。
 シロエを乗せた練習艇を撃ち落とした後、戻ったE-1077。
 まだMの思念波攻撃の余波が残っていたから、誰にも声を掛けられることなく、自分の部屋まで戻れたけれど。
(…此処にいたんだ…)
 昨日、シロエはこの部屋にいた、と入った途端に気付かされた部屋。
 シロエを匿い、手当てしていた。シロエはこの部屋で、保安部隊に逮捕されて…。
(…誰も覚えていなかった…)
 昨日の練習飛行のことも、Mの思念波攻撃のことも。…シロエのことも。
 練習飛行のことを皆に尋ねて回れば、「勉強のしすぎか?」と言われる始末。下級生にシロエのことを訊いたら、「そんな子、知りませんけど」と途惑うような声が返った。
 誰一人覚えていなかったシロエ。
 同じクラスだった筈の下級生たちも、「幼馴染に似ている」と言っていた筈のサムも。
(……マザー・イライザ……)
 シロエが存在したという事実は消されてしまった。ステーションE-1077から。
 誰もシロエを覚えていなくて、きっとこの先も思い出さない。
(…ぼくしか覚えていないのか…)
 シロエを殺した自分だけしか。
 ステーションの何処にもシロエの記録は無いのだろう。何もかも全部、消されてしまって。
 命どころか、存在すらも消されたシロエ。
 彼が生きていた証ですらも。


 もう残ってはいないのだ、とアクセスしてゆくステーションの記録。
 何処を捜しても、出て来はしないシロエのデータ。
 「セキ・レイ・シロエ」という存在自体が、無かったことになっているから。
 名簿ごと消されて、何処にも無いから。
(…此処も駄目なのか…)
 此処も、此処も、と端から調べてゆくのだけれども、データも写真の一つも無くて。
 何度目の溜息を吐き出したことか、「此処も駄目だ」と。
 そして、ふと気付いた監視カメラが捉えた画像。
(カメラだったら…)
 もしかしたら、とアクセスしてみた。
 膨大な画像がある筈なのだし、シロエを捉えているかもしれない。
(レクリエーション・ルーム…)
 あそこでシロエと腕を競って、それからシロエを殴ってしまって…、と心当たりのある日付けを開いてみたけれど。
(……マザー・イライザ……!)
 監視カメラが捉えた画像は、自分一人が映っているだけ。淡々と的を射てゆく姿が。
 隣にいた筈のシロエはいなくて、ゲームを終えた後の自分は…。
(…此処までやるのか…!)
 サムと一緒に帰ってゆく姿。
 腕を引っ張られてゆくのではなくて、何事も無かったかのように肩を並べて。


 監視カメラの画像までが処理されているなら、もう手も足も出ないのだろう。
 シロエは本当に消えてしまって、命も、彼の存在すらも…。
(無かったことにされているんだ…)
 今はもう、記憶の中にいるだけ。この自分の。
 彼を殺した自分しか覚えていないだなんて、世界はどれほど残酷なのか。
 マザー・システムは何処まで酷いことをするのか、と噛んだ唇。
 何もかも消してしまうなんて、と。
(…確かに昨日、此処にいたのに…)
 この部屋にいた筈なんだ、とアクセスした監視カメラの映像。
 昨日の自分の部屋のデータを覗いてみても…。
(……いない……)
 早送りしてみても、巻き戻してみても、シロエは映っていなかった。
 自分は一人で部屋に入って、普通の一日を送っていただけ。
(…何も残っていないんだな…)
 本当に何も、と眺めた映像。
(キース・アニアン…)
 お前がシロエを殺したんだ、と心で呟いた自分の名前。
 ついでにその名を打ち込んだ。
 シロエを殺した男のデータを、罪深い自分を眺めてやろうと。
(父、フル…。母、ヘルマ…)
 何も覚えていないんだが、とデータを表示させていったら…。


(シロエ…!)
 いた、と食い入るように見詰めた画面。
 カメラが捉えたこの部屋の映像、其処にシロエが映っていた。
 「マザー・イライザが作った人形なんだ」と笑っていた時の、あのシロエが。
 着せてやったシャツを「あなたの匂いがする」と嫌った、シロエの姿が。
(…消去ミスか…?)
 きっとそうだ、と直ぐに気付いた。
 個人データの中にあるから、消去した係が見落としたデータ。
 けれど、自分が見付けたからには…。
(処理されてしまう…)
 もう間違いなく、マザー・イライザに知れているから。
 明日か、早ければ次の瞬間、このデータは…。
(今しかない…!)
 シロエの姿を残すなら。
 彼が確かに生きた証を、存在した証を残したいなら。
 シロエを殺した自分がやるとは、なんとも皮肉な話だけれど。
 皮肉どころか残酷だけれど、シロエがこのまま消えてしまうのは…。
(…許せない…!)
 マザー・イライザも、その命令に逆らえなかった自分の罪も。
 シロエの存在、それが消えるのを黙って見過ごすということも。
 だから迷いはしなかった。
 見付けたシロエを、彼の姿を引き出して残しておくことを。


 引き出した後に、もう一度アクセスしてみたデータ。
(……やっぱり……)
 消えてしまっていたシロエ。
 部屋には自分だけしかいなくて、シロエの影も形も無かった。
 それでも残せた、と見詰めた写真。
 監視カメラが捉えたシロエの映像、その一瞬をプリントアウトしたもの。
 ベッドの上から、こちらを見ている鋭い視線。
(…こういう目だった…)
 シロエはこんな瞳をしていた、と写真をノートに挟み込んだ。
 いつも講義に持ってゆくノート、この中に入れておきさえすれば…。
(誰も手出しは出来ない筈で…)
 シロエの写真が消え去ることは無いだろう。
 きっと残しておけるのだろう、これから先も。
(マザー・イライザが気付いたとしても…)
 まさか、これまでは消しに来るまい。
 其処までしようと言うのだったら、自分の記憶はとうに無いから。
 シロエの船を撃ったことさえ、綺麗に忘れているだろうから。
(紙媒体が最強の筈なんだ…)
 アナログの極みと言えるけれども、これは機械が消せないデータ。
 機械の力でこれを消すには、シュレッダーにかける以外に無い。
 でなければ焼却、どちらにしても…。
(マザー・イライザの手では、処分出来ない…)
 何処にでも姿を現すけれども、あれは幻影に過ぎないから。
 誰かに命令しない限りは、紙に刷られた写真を消すことは不可能だから。


 そうして残った、シロエの写真。
 たった一枚きりの写真を、マザー・イライザは消しに来なかった。
 わざとだったのか、そうでないのか、それはキースにも分からないまま。
 写真を無事に手にしたままで、E-1077を卒業出来た。
 メンバーズ・エリートになった後にも、シロエを忘れはしなかった。
 機械は此処までやるのだから、と何度も肝に銘じるために。
 シロエが残したメッセージに出会い、E-1077を処分した後も。
(私はシロエを忘れまい…)
 国家主席に昇り詰めても、やはり持ち続けたシロエの写真。
 生涯、誰にも見せることなく、自分だけが手に取れる場所に隠し続けて。
 けれども、ミュウとの交渉で地球に降りる前、旗艦ゼウスにキースはそれを残した。
 置き忘れたのか、意図があったかは分からないけれど。
 地球に降りて、戻って来なかったキース。
 彼の命は地球の地の底で尽きたから。
 グランド・マザーに翻した反旗、ミュウの側へと与した末に。
 キースの名前は伝説となった。
 偉大な国家主席がいたと。


 旗艦ゼウスはメギドと共に消えたけれども、キースの遺品は持ち出された。
 マードック大佐が下した退艦命令、国家主席の私物も運び出しておけ、と伝えられたから。
 無傷だったキースの遺品を整理した部下、彼らが見付けたシロエの写真。
 誰もその顔を知らない少年。
「誰なんだ…?」
「さあ…? ずいぶん古い写真らしいが…」
 閣下の大切な人だろうか、と語り合った部下たち。
 キースのシャツを羽織ったシロエは、薄暗い部屋のベッドの上。
 幾つか外れたシャツのボタンと、覗いた胸元。
 何の予備知識も持たずに見たなら、どう考えても怪しかったから。
 恋人だろう、と部下たちは噂し合った。
 「そう言えば閣下にはマツカがいた」と、「閣下の愛人だったのか」と。
 この少年がいなくなったから、代わりにマツカを、と。
 マツカよりも前にキースが愛した、最期まで写真を持ち続けた少年。
 それが誰かも分からないまま、恋人なのだと思い込んだ部下たち。
 「閣下はロマンチストだった」と、「遺品の中に恋人の写真が」と。


 特に口止めもされなかったから、口から口へと伝わった噂。
 じきにスウェナの耳に入って、取材に出て来た凄腕ジャーナリスト。
 キースの最後のメッセージを流した、自由アルテメシア放送のトップが彼女だったから…。
「この写真ですが」
 スタージョン中尉が差し出した写真、スウェナは見るなりシロエと見抜いた。
 彼女は記憶を消されないまま、E-1077を出て行ったから。
「セキ・レイ・シロエ…!?」
「誰ですか、それは?」
「E-1077…。キースの下級生だった子よ」
 でも、存在を消されちゃったの、と寂しげな笑みを浮かべたスウェナ。
 「彼のことは誰も覚えていないわ」と。


 其処から先はスウェナの出番で、彼女にもあった心当たり。
(どおりで、私に冷たかった筈ね。…キース)
 振られるわけだわ、と今頃になって彼女は知った。
 キースに振り向いて貰えなかったから、結婚するために逃げるように去ったE-1077。
(…女に興味が無かったんだわ)
 私の一人相撲だったのね、と納得したスウェナだったけれども。
(シロエのことは、スキャンダルと言うより…)
 美談だわね、と考えた。
 存在も消されてしまった少年、シロエを忘れず愛し続けたキースだから。
 最期まで写真を持ち続けたまま、誰にも話さず逝ったのだから。
(…この話はきっと売れるわよ…)
 出来ればシロエの養父母も見付けて、生きているなら是非とも取材してみたい。
 そして全力で出版しよう。
 若かりし日の国家主席のロマンスを。
 マザー・システムに消された少年、シロエを愛したキースの優しい横顔を。


 スウェナはシロエの養父母を見付け、子供時代の話を聞けた。
 養父母は忘れずに覚えていたから、シロエのことを。
 「頭のいい子だったけれども、夢見がちだった」と、「ネバーランドを夢見ていた」と。
(それで、ピーターパンだったんだわ…)
 あの本は、とスウェナが思い出す本。
 キースに渡したシロエの遺品。
(あの本は、どうなったのかしら…)
 そちらも調べて回ったけれども、出なかった答え。
(きっとキースは、シロエに返してあげたんだわ)
 E-1077の処分に向かった記録は、今も消えずに残っていたから。
 キースがシロエを愛していたなら、本を返しに行きそうな場所。
 ステーションにあった、シロエの部屋へと。
(…いい話だわね…)
 そういう風に書いておきましょ、とスウェナは本を書き進めてゆく。
 ロマンチストな国家主席には、その展開が相応しいから。


 それから間もなく、売り出された本。
 『国家主席が愛した少年』、その本はベストセラーとなった。
 若き日のキースとシロエのロマンス、悲恋に終わってしまった恋。
 読んだ誰もが涙を流して、キースを、それにシロエを思った。
 なんと悲しい恋だろうかと、切なくて泣ける話だと。
 国家主席は実は優しい人だったのだと、生涯、シロエを忘れなかったと。
「あの本、読んだ?」
「読んだわよ…。SD体制のロミオとジュリエットでしょ?」
 シロエはミュウだったらしいものね、と話題の一冊。
 帯には本当にそう刷られていた、「悲しきロミオとジュリエット」と。
 誤解から生まれた本だけれども、感動を呼んだベストセラー。
 『国家主席が愛した少年』、訂正する人は誰もいなかったから。
 皆がまるっと信じてしまって、ロミオとジュリエットの恋に涙したから…。

 

       主席が愛した少年・了

※前半だけで止めておいたら、立派にシリアス路線な話。きっと真っ当なショートが1話。
 それにせっせと砂をかけてゆく話、だって後半が先に降って来たから仕方ないんだ…!





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「チョロイね。シークレットゾーンのくせに」
 ぼくにかかれば簡単なこと、とシロエが足を踏み入れた部屋。
 E-1077のフロア001、此処にキースの秘密がある筈。
 マザー・イライザのメモリーバンクから盗んだ情報、ME5051C。
 無機質な記号、どうやら、それがキースのことらしいから。
 「キース・アニアン」という名前ではなくて、「ME5051C」と呼ばれるモノ。
 やっと見付けたと躍った心。
 機械の申し子、キースはまさにその名の通りだったから。
 フロア001から作り出される、マザー・イライザの人形そのもの。
 だから確かめにやって来た。
 キースにも真実を見せてやろうと、撮影用のカメラも準備して。
(…アンドロイドの製造室…)
 そういう部屋だと思った場所。
 フロア001でパーツを作って、組み立てるのだと。
 其処にあるのは、精巧な人形を作り上げるための設備だろうと。
 なのに…。
(…これは…?)
 打ち捨てられた部屋かと思った、暗い空間。
 ほのかに青く発光している、何かが入ったガラスケースたち。
(…何なんだ、此処は?)
 見上げた頭上のガラスケース。それは小さめで、奥へゆくほど大きなケース。
 天井ではなくて壁際に並ぶ、幾つものガラスケースの中には…。


 まさか、と思わず見開いた瞳。
 頭上のケースに入っているモノ、それは機械のパーツではなくて。
(……胎児……)
 明らかに人間だと分かる物体、人工子宮で育てられるモノ。
 生育過程を示すかのように、尾のあるモノから尾が消えたモノまで。
 胎児はともかく、其処よりも奥に並んでいるモノ。
(…キース・アニアン…)
 それともME5051Cと呼ぶべきだろうか、彼は此処から生まれたから。
 とうに呼吸を止めている標本、その顔はキースそのものだから。
(機械じゃなかった…)
 幼児から今のキースに瓜二つのモノまで、並んだ標本。
 こういうモノが存在するなら、キースはアンドロイドではない。
 機械仕掛けの人形どころか、もっと精巧だろう物体。
 人間と全く同じ身体で、血だってきっと流れている。
 此処にあるような、標本になっていないなら。
 呼吸して動き回っているなら、キースは人間なのだろう。
 ME5051Cだとしても。
 此処で生まれて、ガラスケースで育ったとしても。
(これがME5051C…)
 ならば、向かい側に並ぶケースは何だろう?
 キースと同じにME5051Cの筈だけれども、そちらは女性。
 二体あるとは思わなかった、とME5051Cを眺める。
 これらはいったい何だろうかと、どういう理由で此処にあるのかと。


 機械だとばかり思っていたから、まるで予想もしなかった胎児。
 その胎児から育つ物体、それがME5051C。
 男だったら、キースになる。
 女性の場合はなんと名付けるのか、全くの謎。
(ステーションでは見掛けない顔…)
 こんな顔をした女性は知らない。
 標本の女性は長い髪だけれど、それをショートに切ってあっても…。
(同じ顔がいれば分かる筈…)
 現にキースに育つ物体、そちらの髪も長いから。
 身長と同じくらいに伸びているから。
 ME5051Cは二種類、男性と女性。
 男性の方はキースだけれども、女性の方は見たことが無い。
 とうに育ってステーションから出て行ったのか、それとも完成していないのか。
(どっちなんだ…?)
 首を捻っても、標本だけでは分からない。
 それに、ME5051C。
 どうやってこれを作り出すのかも、どういう生まれのモノなのかも。
(…多分、クローンだ…)
 男性も女性も、どちらも同じ顔ばかりだから。
 胎児の間は顔の区別もつかないけれども、育ち始めたらハッキリと分かる。
 幼い顔立ちか、もっと大きく育っているかの違いだけ。
 男性の顔は全部キースで、女性の方も同じ顔立ちばかり。
 つまりはクローンなのだろう。
 最初の一体を写し取っては、次のを作ってゆく仕組み。
 そっくり同じなDNAを持つ、男性と、それに女性とを。


 やっと分かったキースの正体。ME5051Cの名を持つ物体。
(…最初の一体が鍵なんだ、きっと)
 恐らく最高に優秀な人間、マザー・イライザが選んだのだろう組み合わせ。
 本来はランダムに行われる筈の、卵子と精子の交配過程で。
 これだと見込んだ卵子を一つ。
 精子も特別に優れたものを。
 きっと機械なら、把握しているだろうから。
 無限大とも言える卵子と精子のデータの全てを、それが育ったらどうなるかを。
(とても優秀になる筈のモノ…)
 男性も女性も、他とは比較にならない能力を持っている筈のモノ。
 最初の一体をそうやって作り、後はコピーを作ってゆくだけ。
 全く同じ遺伝子データのクローンたちを。
 此処のガラスケースの中で育てて、何らかの方法で施す教育。
 キースは此処から作り出された。
 ランダムに交配するのではなくて、明らかな意図で為された交配。
 こうなるだろうと、こう育つと。
(マザー・イライザの最高傑作…)
 それがキースと呼ばれる人間。
 フロア001で作られ、ステーションへと送り出された。
 本当の名前はME5051Cなのに。
 此処で作られたクローンの一つで、申し分なく育った一体。
 だからキースは世に出て来た。
 標本にならずに、候補生として。
 将来を嘱望されるエリート、マザー・イライザが自ら育てた傑作として。


(…せっかくだから…)
 データの方も見せて貰おう、とコントロールユニットに繋いだケーブル。
 どういう卵子と精子を使って、ME5051Cを作ったか。
 その卵子たちは、他の人間を生み出すためにも使われているモノなのか。
(交配はあくまでランダムな筈…)
 けれども、マザー・イライザがこだわるからには、選り抜きの卵子と精子がある筈。
 優秀だからと選び出された、ME5051Cを生み出す卵子と精子。
 最初の一体はどう作ったのか、この世界にはME5051Cの兄弟たちもいるのか、と。
 単純に知りたかっただけ。
 キースの「兄弟」や「姉妹」はいるのか、いたのか。
 過去には何人もいた筈だけれど、これから先も生まれるのかと。
 優秀な卵子と精子が残っているのなら。
 普通の人間を生み出すためにと、交配システムに戻されたなら。
(…ぼくがキースの兄弟だったら、最悪だけどね…)
 その可能性もゼロとは言えない。
 卵子か精子か、どちらかがキースと同じだったというケース。
(それだけは勘弁願いたいね)
 キースの情報を抜き取ったならば、簡単に調べがつくだろう。
 自分を生み出した卵子と精子のデータの方も、きっとハッキング出来るから。
(あいつと兄弟だったら最悪…)
 もしもそうだと答えが出たなら、自業自得というものだけれど。
 自分の墓穴を掘るわけだけれど、此処まで入り込んだ以上は、土産にデータ。
 キースは、ME5051Cはどう生まれたか。
 ズラリと並んだ標本たちの、最初の一体はどう作ったのか。


 そう考えただけだったのに。
 興味本位でデータを取ろうとしただけなのに…。
(……そんなことが……)
 愕然と見詰めた、ME5051Cに関するデータ。
 卵子も精子も、提供されてはいなかった。
 マザー・イライザは何も交配しはしなかった。
(…本当に人形だったんだ…)
 正真正銘、マザー・イライザが作った人形。それがME5051C。
 三十億もの塩基対を繋ぎ、DNAという鎖を紡ぐ。
 キースは無から生まれたモノ。
 対になるのだろう女性体の方も、全くの無から作られたモノ。
 どちらにもいない、兄弟たち。いたことすらない、兄弟や姉妹。
 卵子も精子も無いのでは。
 それを提供した、人間すらも存在しないのでは。
(人間でさえもなかったなんてね…)
 機械が無から作ったモノ。
 何度もコピーし、作り続けて、最高傑作としてケースから送り出したキース。
 本当の名前はME5051C、その後に続く記号は作り出された順を示しているもの。
(…これがぼくなら…)
 どうするだろうか、人でさえもないと知ったなら。
 自分は無から作られたのだと、人形だったと知らされたなら。
(…アンドロイドでした、というのも衝撃だけど…)
 こっちの方がもっと酷い、と見回したフロア001。
 人間なのに、人ではないから。
 その肉体は人間なのに、作り出された人形だから。


 きっとガラガラと崩れるだろう存在意義。
 人ですらないと言われたら。
 無から生まれた人形なのだと、恐ろしい真実を突き付けられたら。
(…きっと、キースでも…)
 その衝撃には耐えられないに違いない。
 泣き叫ぶのか、狂ったように笑い続けるのか、声も失くして崩れ落ちるか。
 マザー・イライザの、機械の申し子。
 本当にそうだと知らされたならば、キースはいったいどうするのだろう?
(…楽しみだね…)
 思った以上の収穫があった、と取り出したカメラ。
 これを撮影して、キースに見せる。
 その瞬間のキースの顔を思うと、もう可笑しくてたまらない。
「見てますか、キース・アニアン。此処が何処だか分かります?」
 …フロア001。あなたの「ゆりかご」ですよ。
 そういう言葉で始めた撮影。
(ゆりかご、ね…)
 自分でも言い得て妙だと思う。
 本物の人間の赤ん坊なら、ゆりかごの中で育つのに。
 母の手で優しく揺すって貰って、成長してゆくものなのに。
 キースには無かった、本物のゆりかご。
 見るがいい、と回してゆくカメラ。
 これがお前の正体だ、と。
 マザー・イライザが作ったのだと、真実を知って心ごと壊れてしまうがいいと…。

 

        見付けた真実・了

※何の説明もなくフロア001の中身を知ったら、クローンだと思うのが普通だよな、と。
 シロエにガイドはいなかったしね、とお得意のハッキングをして貰いました~。





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(ジョミー、すまない…。君を選んで…)
 心からすまなく思って…いる…。
「ブルー! ソルジャー・ブルー!!」
 アルテメシアの遥か上空、落下してゆくブルーの身体。
 もちろんジョミーは追ったけれども…。
(追い付けない…!)
 ブルーの落下速度を追い掛けたら死ぬ。
 絶対に死ねる、そういう予感。
 なにしろ力に目覚めたばかりで、ジョミーにはコントロールが出来ない。
 自由落下で追うにしたって、追い付く頃には…。
(ぼくの力じゃ止まれないんだ…!)
 もう間違いなく二人揃って地上に激突、そういうコース。
 分かっているから自然と踏んでしまったブレーキ、いや、自動車ではないけれど。
 自転車やバイクでもないのだけれども、人間にだってブレーキはある。
 サイオンは心のパワーだから。
 精神の力で操るのだから、ヤバイと思えばかかるブレーキ、それも無意識に。


「ソルジャー・ブルー!!!」
 追わなきゃいけない、それは分かっているけれど。
 自分が行かねば誰が行くのか、それも重々、承知なのだけれど。
(追い付けない…!)
 ガッツリと踏んでしまったブレーキ、速度は全然出なかった。
 追い付くどころか、ぐんぐん間が開いてしまって…。
(……嘘……)
 見失った、と愕然とした時には、既に手遅れ。
 先に落ちて行ったブルーの姿はまるで見えなくて、ジョミーの方はゆっくり降下中で。
(もしかして、場所もズレちゃってるとか…?)
 どうやら、そういう雰囲気っぽい。
 ブルーが「周りをよく見たまえ」と言った時には、見下ろした星は平和そのもの。
 雲海が広がる平穏な星で、「ちょっと地球みたい」と思ったくらい。
 ところが今では、遥か下の方で…。


(なんかドンパチやってるし…)
 自分を追って来ていた爆撃機が大量にいる感じ。
 次第に近付いてくるそれは、どう見ても…。
(ヤバすぎだって…!)
 集中攻撃を受けているのはシャングリラだった。
 ミュウの母船で、ソルジャー・ブルーに任されたばかりのミュウたちが乗っているわけで。
(あそこに帰れって!?)
 でもって事態を収拾なわけ、と泣きそうだけれど、どうにもならない。
 戻ってゆくしかなさそうだから。
 其処に戻って、まずは止めねばならないドンパチ。
 それが済んだら、「すみませんでした」とお詫び行脚しか無さそうだから。
(ぼくに、どうしろと…!)
 落ちて行ったブルーに訊きたいけれども、肝心のブルーは見失った後。
(降りる場所、ズレていないよね…?)
 ズレていたなら針の筵で、もう間違いなくミュウの連中に…。
(殺されるかも…)
 もしもブルーが戻らないまま、ノコノコ帰って行ったなら。
 行方不明のままだったなら。


 それだけは嫌だ、と叫びたい気持ちで、泣きたい気持ち。
 もう確実に殺される、とパニックになったジョミー、心のタガが吹っ飛んだ。
 「誰か助けて」と、「死にたくないし!」という絶叫と共に。
 途端に弾けた強力なサイオン、タイプ・ブルーだけに半端ないから。
「高熱源体、上空より急速接近中!」
「新手か!?」
「いえ、攻撃機より更に上からです!」
 大慌てなのがシャングリラの中で、キャプテン・ハーレイが叫ぶ羽目になった。
 「操舵士、面舵いっぱーい!」と。
 シャングリラを攻撃していた爆撃機だって、上へとミサイルを放ったけれども…。
(誰か、助けてーーーっ!!!)
 大爆発したジョミーのサイオン、一瞬の内に蒸発したのが爆撃機の群れ。
 シャングリラはポツンと取り残されて、何が起こったかと呆然としたのがミュウたちで。
「あっ、あれは!」
「ジョミー…?」
 フワフワと宙に浮いているジョミー、ブルーの姿は無かったけれど。
「すぐにジョミーを収容! その後、救助艇とのランデブーポイントに向かう!」
 そう命令したキャプテン・ハーレイ。
 ジョミーがいるなら、きっとブルーもその辺にいると思ったから。
 他のミュウたちも、信じて疑わなかったから。
 けれど、その頃…。


 ブルーが落ちて行った真下の辺り。
 高層ビルが立ち並んでいるエネルゲイアで、子供が空を見上げていた。
 ビルの一つのベランダに立って、夜空の星を観察中で。
(いい子の所には、ピーターパンが迎えに来るんだよ)
 だから、いつでもネバーランドへ行けるように準備しておくこと。
 それが子供のポリシーだった。
 名前はセキ・レイ・シロエと言う。
 夢見る年頃で無垢な十歳、ピーターパンが飛んで来ないかと見ていたら…。
(何か光った?)
 青い光が、と見詰めた雲。あの中で青く光ったよ、と。


 雲の中では、意識を失くしたブルーが落下中だった。
 誰も止めに来てくれないわけだし、速度は上がる一方だったけれど。
 そのまま落ちたら地面に当たって即死だけれども、なんと言ってもタイプ・ブルー。
 おまけに三百年以上も生きただけあって、生存本能も桁外れだった。
 「このままでは死ぬ」と判断した身体、意識はなくてもかかったブレーキ。
 その瞬間に光ったサイオン、青い光が身体を包んで…。
 落下速度は一気に低下で、後はフワフワ落ちてゆくだけ。
 地面に落ちても死なないように。
 骨の一本も折れないようにと、それはゆっくりと。
 例えて言うなら…。


「親方、空から女の子が!」
 この名台詞を知らない人がいたら、「ラピュタ」を調べて頂きたい。
 ツイッターの「バルス祭り」で有名なアニメ、まず一発で出るだろうから。
 それの冒頭、空から降って来る女の子。
 飛行石とやらの力で夜空から降りて来るのだけれども、そういう感じ。
 ブルーの落下は、まさにラピュタの名シーンだった。
 あまつさえ、彼がそうやって落ちて行った先は…。


「ママ、パパ、空からピーターパンが!」
 落ちて来ちゃった、とベランダで大騒ぎしているシロエ。
 空を見ていたら、ピーターパンが落ちて来たから。
 紫のマントのピーターパンが、フワフワと。
 「ピーターパンだ!」と、ベランダからちょっと手を伸ばしてみたら…。
 上手い具合に、受け止められたピーターパン。
 サイオンでフワフワ落下中だから、小さな子供の力でも。
 そんなわけで、シロエはブルーを拾って…。


「なんだと、ソルジャー・ブルーを見失ったぁ!?」
 死んで詫びろや、という状態のシャングリラ。
 ジョミーのサイオンに救われたことなど、誰もがまるっと忘れていた。
 「テメエのせいだ」と、長老からヒラまでがジョミーを囲んでフルボッコ。
 ソルジャーは何処に行かれたのかと、この始末をどうつけるのかと。
「す、すみません…!」
 泣きの涙で土下座したって、「すみませんで済んだら、警察は要らんわ」状態な周り。
 もうこのままでは殺される、とジョミーが命の危機を感じていたら…。


『すまない、みんな迷惑をかけた』
 ぼくなら無事だ、と聞こえた思念波。
 それは間違いなくソルジャー・ブルーで、彼の思念波が言う所では…。
「車でこっちに向かっておるじゃと!?」
「シロエというのは誰なのです?」
「さ、さあ…?」
 私にも分からん、と言いつつ、キャプテン・ハーレイが指示した航路。
 ソルジャー・ブルーはシロエという子と一緒らしいから。
 シロエの父親が運転する車、それで郊外へ向かっているという話だから。


「ピーターパン、ぼくたち何処へ行くの?」
「ネバーランドだよ」
「パパとママも一緒に行けるんだね?」
「うん。お父さんたちが、ぼくを助けてくれたからね」
 ネバーランド行きの船に乗れるよ、とシロエに説明しているソルジャー・ブルー。
 車を運転しているシロエの父は…。
「こうなるとは思いませんでしたよ。サイオニック研究所には辞表を出して来ましたが…」
「いいじゃないの、あなた。シロエのためよ」
 ミュウの船でも、何処でも行きましょ、とシロエの母は肝っ玉母ちゃんだった。


 かくして、エネルゲイアから思い切り離れた郊外、ソルジャー・ブルーは船に戻った。
 ミュウの子供と、その養父母とを引き連れて。
 ソルジャー・ブルーを拾ったミュウの子供は、船の中では小さな英雄扱いで…。
「聞いたよ、ソルジャー・ブルーを助けたんだって?」
「小さいのに凄いミュウなんだねえ!」
 あのジョミーとは全然違うよ、とシロエの人気は急上昇。
 だから人類なシロエの両親も、船のミュウたちは大歓迎で好待遇。
 一方、ブルーを見失って船に戻ったジョミーは…。


「何をぐずぐずしとるんじゃ! それでも次のソルジャー候補か!」
 ちっとはシロエを見習わんかい、とシゴキな毎日、仲間たちからは陰口の日々。
 「ヘタレなジョミーが歩いてるぞ」と、「あいつ、ソルジャーも守れないでさ…」と。
 ジョミーとしては、ソルジャー候補の名前をシロエに譲りたいけれど…。
(なんでシロエは、タイプ・ブルーじゃないんだよーーーっ!!!)
 ぼくの人生、この先メチャクチャになりそうだけど、と泣けど叫べど、どうにもならない。
 シロエにバトンを渡したくても、サイオン・タイプが違うから。
 いくら人生、針の筵でも、ソルジャー候補をやって行くしか道は無いから。


(誰か、助けてーーー!!!)
 お願い、と今日も泣き叫ぶジョミー。
 どうしてこうなっちゃったんだろうと、ぼくの所にもピーターパンが来ればいいのに、と。
 けれど人生、そう簡単には、「親方、空から女の子が!」とはいかないもの。
 だからジョミーは頑張るしかない、船の英雄はシロエでも。
 ソルジャー・ブルーを救った小さな英雄、彼が絶大な人気を誇っていようとも…。

 

        空からの帰還・了

※2016年1月24日の記録的な寒波。鹿児島で13センチを記録した大雪、その最中。
 「鹿児島で雨と灰以外が降って来るなんて、空から女の子が降って来るより確率が低い」。
 そうツイートしたのが鹿児島市民で、「面白すぎる」と吹き出したのが管理人。
 気付けばこういう話になっていたオチ、まさか寒波がネタになるとは…。





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