(マザー・イライザ…)
それが何さ、とシロエが顰めた顔。
ステーションE-1077、其処で与えられた自分の部屋で。
SD体制の時代の教育の要、エリートを育成するための最高学府。
(…こんな所になんか…)
来たくなかった、いつまでも故郷にいたかった。
十四歳の誕生日を迎えた子供は、大人の世界へ旅立つとは知っていたけれど。
目覚めの日とはそういうものだと、学校で何度も習ったけれど。
(……誰も教えてくれなかった……)
その日に受ける成人検査が何なのか。
受ければ何が起こるというのか、自分はどうなってしまうのか。
(…荷物は持って行けないって…)
そういう規則は知っていたものの、「邪魔になるから」だと思っていた。
成人検査は健康チェックのような検査で、それには荷物が邪魔なのだろう、と。
(だから、注意されたら置けばいい、って…)
そう考えて、大切な本を持って出掛けた。
両親がくれた宝物。
幼い頃から大事にしてきた、ピーターパンの本を鞄に入れて。
(…だけど、ぼくには…)
これしか残らなかったんだ、と机の上の本を見詰める。
ピーターパンの本は自分と一緒に来たのだけれども、他のものは全部置いて来た。
大好きな両親も、懐かしい故郷も、何もかも。
子供時代の記憶と一緒に失くした全て。
憎い機械に、テラズ・ナンバー・ファイブに消された、「捨てなさい」と。
「忘れなさい」と命じた機械。
そうして全て失くしてしまった、ピーターパンの本以外は。
E-1077に連れて来られて、既に何日も経ったのだけれど。
同じ船で此処に着いた者たちや、同じ日に到着した者たち。
共にガイダンスを受けた同級生たち、彼らは此処に馴染んでゆくのに…。
(…こんな薄気味悪い場所…)
嫌だ、としか思えないステーション。
頼りなく宇宙に浮いていることより、足の下に地面が無いことよりも…。
(…みんな、平気で…)
誰も振り返りはしない過去。
自分と同じに、過去を失くした筈なのに。
子供時代の記憶は薄れて、もう漠然としたイメージくらいしか無い筈なのに。
なのに平気な同級生たち、それが気味悪くてたまらない。
おまけに此処は、機械が治めているという。
(マザー・イライザ…)
そういう名前で呼ばれる機械。多分、巨大なコンピューター。
恐らくはきっと、あの憎らしいテラズ・ナンバー・ファイブと同じ。
(気味悪い顔で…)
顔の左右が歪んだような、醜く恐ろしい姿。
見た者を石に変えると言われる、メデューサのように忌まわしい顔。
(髪の毛が全部、蛇になっていても…)
驚かないよ、と思うほど。
どうせ会ったら、そういう姿だろうから。
テラズ・ナンバー・ファイブなどより、ずっと醜いだろうから。
そんな姿だ、としか思えない機械。
出来れば会わずにいたい機械が、マザー・イライザ。
もう機械などと話したいとは思わないから。
テラズ・ナンバー・ファイブで懲りたし、二度と関わりたくもないから。
(…会うもんか…)
絶対に会ってやるもんか、と心で繰り返していたら、けたたましく部屋に鳴り響いた音。
此処では嵌めているのが規則の、手首の輪から。
(マザー・イライザ…!)
この音がコールサインなのだと教わった。
コールされたら、行かねばならない。…マザー・イライザが待つ場所へ。
呼ばれる理由は実に様々、叱られるのだと聞いている。
けれど自分は今の所は無失点だし、呼ばれる理由は何も無い筈。
(……なんで……)
どうして、と手首を睨んでみたって、コールサインは止まらない。
マザー・イライザに会いに行かない限りは、この音はけして消えないという。
引き摺ってでも連れてゆかれる、自分の足で行かないのなら。
「マザー・イライザがお呼びだ」と、音を聞きつけた職員たちに捕まって。
あるいはプロフェッサーに言われて、渋々出掛けてゆくしかない。
(…そのくらいなら…)
行ってやるさ、と蹴り付けた机。
醜い機械と御対面だと、呼び付けた理由を正してやると。
何もしていないのに何故呼んだのかと、憎まれ口の限りを叩いて。
立ち上がったら、鳴り止んだコール。
まるで心を読んでいるよう。
(……気味が悪いったら……)
それとも監視カメラだろうか、如何にも機械がやりそうなこと。
気付かれないよう、機械の瞳で全てを監視し続ける。
(…部屋に帰ったら…)
そいつを見付けて壊してやるさ、と鼻で嗤った。
機械が監視すると言うなら、こちらもそれに対処するまで。
この部屋の中を端から探して、監視カメラを見付けて微塵に打ち砕くか…。
(…偽の映像でも流せるようにしてやろうかな?)
そういう勝負なら負けないよ、と唇に浮かべた勝ち誇った笑み。
相手は所詮、機械だから。
どんなに優れたコンピューターでも、人間には劣る筈だから。
(勝たせて貰うよ)
このぼくが、と固めた決意。
自分は機械に負けはしないし、言いなりにだって、なったりはしない。
監視するなら、そうされないよう手を打てばいいだけのこと。
カメラが無ければ、機械の目など無いのと同じなのだから。
けしてこの部屋を覗けはしないし、先回りだって出来ないから。
(帰って来たら…)
最初にやることは、監視カメラの発見と破壊。
それで防げる機械の盗み見、マザー・イライザの視線は消える筈だから。
ぼくは負けない、と部屋を出てから進んだ通路。
マザー・イライザはこの先にいる、と教わった場所へ真っ直ぐに。
(…出て来い、機械…!)
お前なんかに負けるもんか、と扉の奥へと踏み込んだ途端に、止まった息。
もう文字通りに止まった呼吸。
息をすることさえも忘れてしまって、懐かしさに胸が高鳴った。
目の前に故郷の母がいたから。
二度と会えないと思っていた母、顔さえもぼやけてしまった母が。
「ママ…!!」
どうしてママが此処にいるの、と叫んで駆け寄ったのだけど。
母に抱き付こうとしたのだけれども、すり抜けてしまった自分の腕。
「……ママ……?」
ママの身体が透き通ってる、と見開いた瞳。
いったい母はどうしたのだろう、それとも立体映像だろうか…?
「ママ……?」
急にこみ上げて来た不安。
故郷の母に何か起きたか、父に何かがあったのか。
それで知らせが来たのだろうか、立体映像で自分宛にと。
(……ママ……?)
何があったの、と尋ねたいのに声が喉から出て来ない。
あまりの不安に押し潰されて、すっかり声が嗄れてしまって。
マザー・イライザのコールの理由はこれだったのかと、恐ろしくて。
故郷で何が起こったのかと、母はいったい、何を知らせに来たのかと。
ただ怯えながら待っていた言葉。
母の映像が告げに来た何か、きっと良くない何かの兆し。
それは間違ってはいなかったけれど、不安は当たっていたのだけども…。
「…ようこそ。セキ・レイ・シロエ」
あなたの心が不安定なのでコールしました、と微笑んだ母。
「…ママ……?」
コールって何、と驚いて見詰めた母の顔。
母の言葉とも思えないから、こんな言い回しを母はしなかった筈だから。
(ぼくのこと、ママは「あなた」だなんて…)
呼ばなかった、と途惑う間に、母は優しい笑顔で続けた。
「コールサインで来たのでしょう? …セキ・レイ・シロエ」
私の名前は、マザー・イライザ。
このステーション、E-1077のメイン・コンピューターです。
あなたが来るのを待っていました、と母は澱みなく話し続ける。
「お母さんの姿に似ているでしょう?」と、笑みを湛えて。
「見る者が親しみを覚える姿で現れることも、私の大切な役目なのです」と。
(……嘘だ……!)
お前なんかはママじゃない、と叫びたいのに、動かない舌。
身体ごと全部凍ってしまって、床に縫い止められたよう。
(…ママ、助けて…!)
パパ、と心で悲鳴を上げても、母の手が頬に触れて来る。…マザー・イライザの手が。
「いらっしゃい、シロエ」
あなたの心を私に見せて、と微笑む機械に逆らえない。
こうする間に、意識が薄れて消えてゆくから。
マザー・イライザが触れた頬から、身体中の力が抜けてゆくから。
目覚めた時には、やはり同じに目の前に母。
「大丈夫ですか?」と、「ずいぶん深く眠っていました」と。
気分はどうです、と慈愛に満ちた笑みを浮かべる母を激しく怒鳴り付けた。
「お前なんか」と、「ぼくは機械は大嫌いだ!」と。
「……まあ、シロエ……」
あなたは混乱していますね、と機械は叱り付けさえしない。
母ならば、きっと叱るのに。
「ママに向かって怒鳴るだなんて」と、「パパが帰ったら言わなくちゃ」と。
(…まだ、そのくらいのことは覚えているよ…!)
こんな機械には騙されない、と駆け出したけれど。
後をも見ないで逃げ出したけれど、シロエは気付いていなかった。
幾つかの記憶を消されたこと。
一部を書き換えられたこと。
(…何なんだ、あのマザー・イライザって…!)
機械のくせに、と走り込んだ部屋で机に叩き付けた拳。
母を真似るなど許しはしないと、反吐が出そうなコンピューターだと。
そうして怒り続けるけれども、戦いを決意するのだけれど。
『……全て、私のプログラム通り……』
あなたはそのままでいいのです、と部屋を視ているマザー・イライザ。
シロエの中から、監視カメラを破壊する決意を消したから。
それを消されたことさえ知らずに、シロエは孤独な戦いの道へと踏み出したから…。
母を真似る機械・了
※シロエには「ママ」に見える筈なのが、マザー・イライザ。母に似た姿で現れる機械。
最初の出会いはどうだっただろう、と考えていたら、こういうことに。シロエ、可哀相。
「なんじゃとぉ!?」
お前は阿呆か、と炸裂したゼルの怒鳴り声。シャングリラ中に響き渡りそうな勢いで。
「まったくだよ。どの面下げて、ノコノコ戻って来たんだい?」
もう馬鹿としか思えないね、とブラウも容赦しなかった。
「…で、でも…。ブルーがそうしろって…」
だから戻って来たんだけど、とジリジリと後ずさりするジョミー。そう、格納庫で。
メギドの炎に襲われたナスカ、それをブルーと防いだけれど。ナスカで生まれた七人の子たちも協力してくれたけれど、其処から後。
ブルーが「この子たちを連れて船に戻りたまえ」と言うから、このシャングリラに戻って来た。なにしろブルーの言葉なのだし、それは素直に。「ごもっともです」と、子供たちを連れて。
いったい何処が悪いと言うのか、自分はブルーの言う通りにしただけなのに。
(…どうして吊るし上げられるわけ?)
子供たちは一人残らず連れて戻った筈なのに、と途惑っていたら。
「まだ分からんのか、阿呆めが!」
はい、そうですかと聞くような馬鹿が何処におるんじゃ、と怒りMAXのゼル。シュンシュンと沸騰する薬缶さながら、頭から湯気が立ちそうなほど。
「だけど、ブルーの命令で…!」
「それがいかんと言っておるのに、まだ言うか!!」
こんな阿呆に言うだけ無駄じゃ、と蹴り出されてしまった宇宙空間。
格納庫の向こうは宇宙だからして、思いっ切りの勢いで。ちゃっかりシールドを張り巡らした、ゼルとブラウにはオサラバで。
そして届いた二人の思念波、「反省しやがれ!」と。
「テメエの不始末はこっちでキッチリ片付けるから、ナスカの方を頑張って来い」と。
曰く、「生き残った連中は全員回収して来い」と、「それも出来ない馬鹿は要らん」と。
宇宙に放り出されたジョミーは、ナスカにダイブして行ったけれど。
いくらソルジャーでも、長老たちに逆らう根性は無くて、大慌てで降りて行ったけれども…。
「えらいことをしてくれおったわ…。あのド阿呆が!」
「ブルーは昔から、言い出したら聞かないタイプだけどねえ…」
今回ばかりは従えないね、とブラウも頭を振っている。「早いトコ、回収しに行かないと」と。
そんな二人が戻ったブリッジ、報告を受けたキャプテンの顎もガクンと落ちた。
「なんだって!? ソルジャー・ブルーがいらっしゃらない!?」
「そうなんじゃ。ジョミーの阿呆が、ノコノコと船に戻って来おったわ」
格納庫から蹴り出したがのう、とゼルが指差すナスカの方向。「今はあそこじゃ」と。
「それで、ソルジャー・ブルーの方は…?」
いったい何処へ行かれたのです、とエラも案じるブルーの行方。言われてみれば、ナスカ上空にあったサイオン反応、それが一つだけ消えていたから。…かなり早くに。
「よりにもよってメギドなんだよ、厄介な…」
一人でアレを止めるつもりさ、とブラウはお手上げのポーズ。「無茶すぎるってね」と。
「で、では、ソルジャー・ブルーは、お一人で…」
なんということだ、とハーレイが天井を仰いだけれども、「それじゃ」とゼルが上げた声。
「急いで回収しに行かんと…。ジョミーは納得したかもしれんが、ワシらはのう…」
「無理ってもんだよ、打つ手はまだまだあるんだからさ」
アンタも分かっているんだろう、とハーレイにズズイと迫るのがブラウ。
「このシャングリラを舐めるんじゃないよ」と、「ミュウにはミュウのやり方がある」と。
それから間もなく、急発進した一機のギブリ。
いわゆるミュウのシャトルだけれども、普通のとはかなり違っていた。
「今こそ、キャプテン・ゼルの出番じゃ!」
改造しまくった甲斐があったわ、と操縦席に座るのはゼル。隣の席にはブラウだって。
やたらとメカに強いのがゼル、趣味とばかりに改造を重ねていたギブリ。暇さえあったら、弄りまくって。最初に載せたのがワープドライブ、ついにはステルス・デバイスまでも。
早い話が、これで飛んだらアッと言う間にジルベスター・エイト、メギドがある場所。
ステルス・デバイス搭載なのだし、人類軍の船には捕捉されない仕組み。
かてて加えて、秘密兵器な人材が一人乗っていた。…ブラウの他に。
「いいかい、トォニィ? ワープアウトしたら後は頼むよ」
「分かってる! ブルーを助ければいいんだね?」
任せといて、と張り切るトォニィ。
子供たちの中では最年長だけに、まだ充分にあった体力。目指す宙域に到着したなら、ブルーの行方を探すのが役目。まずは発見、それから回収。…瞬間移動で。
「さてと…。後はトォニィに任せとくとして…」
ランデブーポイントをどうするかねえ、とブラウが検討している座標。
恐らくメギドの第二波が来るし、それよりも前にナスカを離れないとヤバイのがシャングリラ。
よって何処かで合流するのがベストな方法、あちらもこちらもワープしてから。
「適当でええじゃろ、そう簡単に事故は起こらんわい」
そのために辺境星域に決めて来たんじゃ、と応じたゼル。「アバウトにワープで充分じゃ」と。
合流地点にと選んだ宙域、其処に出てから連絡を取れば落ち合えるわ、と。
間違ってはいないゼルの方針、ワープするなら避けるべきなのが衝突事故。
けれど宇宙は広いわけだし、シャングリラが如何に巨大な船でも、ギブリ程度の小型艇とは…。
(そうそう衝突しないんじゃ…!)
とにかくトンズラ、そちらが肝心。ソルジャー・ブルーを回収したなら、即、ワープ。
そうこうする間に到着したのがジルベスター・エイト、人類軍の船とメギドが見えたから…。
「頼むぞ、トォニィ!」
お前が頼りじゃ、と言い終わらない内に、トォニィの姿は消えていた。
一方、メギドの制御室では…。
「これで終わりだ…!」
ソルジャー・ブルーを銃で撃ちまくったキース、彼が格好をつけた瞬間。
撃った弾はブルーのシールドを突き抜け、赤く煌めく右の瞳を微塵に砕く筈だったけれど…。
「キース…!」
此処は危険です、と駆けて来たマツカ。キースを抱えて瞬間移動で逃げたその時、入れ替わりに飛び込んで来たのがトォニィ。
「ブルー!」
危ない、と叫んだ「できる」トォニィ、弾をしっかり止めていた。
ブルーの方では気付きもしないで、バーストさせたサイオンを床に叩き付けるという有様。
助けが来るとは思っていないし、最初から死ぬつもりだから。…そういう予定だったから…。
(ジョミー…!)
みんなを頼む、と遺言よろしく最期の言葉を紡いだ所へ、かかった「待った」。
いきなり意識がブラックアウトで、本人的には「死んだ」と自覚したのだけれど…。
「連れて来たーっ!」
血だらけだから仮死状態にして来たよ、とトォニィが抱えて来たブルー。
もっともトォニィは子供なのだし、「抱える」という表現は相当に無理がある感じ。
「おお、よくやった! …しかし、ボロボロじゃのう…」
ノルディがかなり手こずりそうじゃ、と嘆きながらもゼルは大満足で、ブラウも笑顔。
「いいじゃないか、無茶をやらかしたって自覚して貰わないとね」
あたしたちの苦労が無駄になっちまう、と打ち込んでゆく座標、ギブリはそのままワープした。丁度その頃、ナスカの方でも…。
「キャプテン、ワープ!!」
やっと全員回収できた、と戻ったジョミーの一声、シャングリラの方もワープして消えて…。
メギドはと言えば、ブルーの破壊活動のせいで下がってしまった照射率。
その上、なんとか撃った先には、もうシャングリラの影さえも無くて、ミュウの被害は第一波で死んだ運の悪い者だけ。シェルターに残った頑固な面々、それもジョミーが回収したから。
そんなこんなで終わった惨劇、じきに合流することになった、ゼルのギブリとシャングリラ。
「どうじゃ、ワシらが本気を出したら、こうなるんじゃ!」
ソルジャー・ブルーは生きておるわい、とゼルは大威張りで、トォニィも浴びている称賛。
「まだ小さいのに、よく頑張った」と、「流石は俺たちのナスカの子だ」と。
一方、立つ瀬が無いのがジョミーで、まるで初めてシャングリラに来た頃のよう。
「あいつのせいで、ソルジャー・ブルーは…」とヒソヒソ陰口、「見捨てて船に戻ったらしい」などと針の筵な船の中。
(…ブルー、なんとか言って下さい…!)
早く意識を取り戻して、皆に「違う」と言ってやって下さい、とジョミーは泣きの涙だけれど。
ブルーの意識が戻りさえしたら、みんなも分かってくれる筈だ、と思う毎日だけれど。
「…ブルーの方も、ガツンと叱ってやらないとねえ…」
単独行動で迷惑かけてくれたんだから、というブラウの意見に長老たちは賛成だった。
キャプテンも全く反対しないし、どうやらブルーは「みっちりと」叱られるらしい。
先の指導者の立場も忘れて、好き放題をやらかしたから。
今や「阿呆」と評判のジョミー、彼にも負けていない「阿呆」で、大迷惑な老人だから…。
老人とメギド・了
※「7月28日はブルー生存ネタの日なんだぜ!」と、2011年から戦っていた管理人。
ハレブル転生ネタを始めた2014年からサボッてましたが、久しぶりに。
2016年7月28日記念作品、何故だか「その2」。ネタ系で書くとは思わなかったよ…。
(地球を……見たかった)
そう、今も。あの青い星を。
辿り着けないままに、命尽きようとしている今も。
あの青なのだ、とブルーの心を占めるもの。
キースに撃たれて右の瞳を失くしたけれども、それでも「違う」と思う青。
視界を覆い尽くす光は、この青は地球の青ではないと。
(…沈むがいい)
忌まわしい青を帯びたメギドは、地獄の劫火は、自分と共に燃え尽きるがいい。
暗い宇宙に沈むがいい。
こんなモノなど、誰も欲しいと思わないから。
死と破壊しかもたらさないもの、滅びの炎を吐くものなどは。
(同じ青でも…)
どうして、これほどまでに違う青なのか。
焦がれ続けた地球の青とは、まるで違った魔性の青。
滅びるがいい、と心から思う。
この青は自分が連れて逝くから、船は地球へと旅立つがいい。
長く暮らした、あの白い船。
楽園という名のミュウの箱舟、シャングリラはどうか、青い地球まで…。
不思議なくらいに凪いでいる心、そうして伸びてゆく時間。
じきに全てが終わるのに。
この命の灯は消えるというのに、まだ紡がれてゆく想い。
(ジョミー…)
皆を頼む、と叫んだ思念は、ジョミーの許に届いたろうか。
フィシスに託した記憶装置も、ジョミーの手へと渡るだろうか。
(…フィシスなら、きっと…)
きっと分かってくれると思う。
あれを残して行った理由を、彼女はあれをどうすべきかを。
青い地球を抱いた神秘の女神。
無から作られた者と知りながら、ミュウだと偽り、手に入れたフィシス。
(皆を騙して…)
フィシスにも嘘をついたけれども、そうまでしても欲しかった地球。
彼女だけが持つ青い地球が欲しくて、それを見たくて犯した罪。
(…本物の地球を見られないのは…)
そのせいだろうか、「地球が欲しい」と欲張ったから。
白い箱舟の皆を騙して、地球を抱くフィシスを欺いてまで。
青い地球まで辿り着けないのが、罪の報いと言うのなら。
罪ゆえに此処で終わると言うなら、この身で罪を償った後。
メギドと共に滅びた後には、どうか地球まで飛ばせて欲しい。
魂だけでも、青い地球まで。
肉眼では地球を見られなくても、この魂に焼き付けるから。
青く美しい星の姿を、母なる地球を。
(…地球へ…)
どうか地球へ、と宇宙(そら)へ舞い上がる想い。
神にも慈悲があると言うなら、あの青い星へ。
魂は何処へ飛び去ろうとも、何億年という旅をしようと、旅の終わりが地球ならばいい。
あの青い星を、一目だけでも見られればいい…。
それがブルーの最期の願い。
暗い宇宙を彷徨おうとも、青い地球へと。
幾千億の塵と化した後でも、ひとひらでいい、地球に辿り着ければ、と。
この魂を乗せた欠片が巡り巡って、あの青い星に着けたなら…。
どうか、と願い、その身は滅びたけれど。
魂は宇宙(そら)へ飛び去ったけれど、その旅の終わり。
(…地球か…?)
そうなのか、と再び目覚めた意識。
ずいぶんと長く旅をしたような、星の瞬きほどだったような、定かではない流れた時。
(……ああ、地球は……)
あの直ぐ側に在ったのか、と見上げたメギド。
すっかり風化しているけれども、地球の大地に突き刺さったそれ。
(意外と頑丈だったのだな…)
爆発したかと思ったのに、と青い空を仰ぐブルーは知らない。
あれから気の遠くなるほどの時が流れ去ったことも、そのメギドは別のものだとも。
ただ、分かることは「地球」ということ。
今の自分は花になったこと、風に揺られる淡い桃色の花に。
そう、人の身ではないのだけれども、満ちてゆくのは幸せな想い。
願いは叶えられたから。
青い地球に咲く花になれたから、地球をこの目で見られたから…。
青い星まで・了
※「7月28日はブルー生存ネタの日なんだぜ!」と、2011年から戦っていた管理人。
ハレブル転生ネタを始めた2014年から、記念作品はサボっていたんですけど…。
2016年7月28日の記念作品、ハレブルじゃないから此処に置かせて下さいです。
(…人間ですらもなかったとはな…)
いや、人間だと言うべきなのか、とキースが強く握った拳。
自分の他にはマツカしかいない小型艇。
これで出て来た基地に戻るまで、「私の部屋には近付くな」と命じてある、忠実なマツカ。
でないと、いったい何を仕出かすか分からないから。
冷静なように見えていたって、心に渦巻く嫌悪感。
…そう、嫌悪。
その言い回しが相応しいだろう、今の自分の感情には。
しかも、マツカに向けたものならまだしも、この嫌悪感が向かう先には自分自身。
さっき見て来たサンプルと同じ、まるで変わらない姿の自分。
(…違うのは年齢くらいなものだ)
私との違いは其処だけだな、と思うよりない標本たち。
マザー・イライザが残したサンプル、それをE-1077ごと処分した。
自分を生み出したフロア001、シロエが「ゆりかご」と呼んでいた場所を。
この船室に閉じこもっていても、背を這ってゆく気味悪さ。
此処にいる自分も、サンプルと何処も違わない。
たまたま選び出された一体、そうなのだろうと思わざるを得ないのが自分。
(…何が最高傑作だ…)
私の努力でそうなったのではないのだからな、と反吐が出そうなマザー・イライザの言葉。
自分というモノが作られた時に、巡り合わせが良かっただけ。
たまたま出来が良かっただけ。
処分されずに、サンプルに回されることもないまま、こうして成長したというだけ。
…無から生まれた人形が。
人間と呼んでいいのかどうかも、自分では自信が持てないモノが。
(…シロエは人形だと言っていたが…)
実際の所はどうなのだろうか、自分はヒトか、それとも作られた人形なのか。
まさか、此処までとは思わなかった。
人間ですらもなかったとは。
自分を生み出す元になる「ヒト」が、世界の何処にもいなかったとは。
遠い昔に、シロエに「お人形さんだ」と罵倒された後。
自分なりに答えを探そうとした。
マザー・イライザに向かって尋ねて、得られないままで終わった答え。
ならばと目指した、シロエから聞いたフロア001という場所。
けれども辿り着けないまま。
いつも何らかの邪魔が入って、行けないままに離れてしまった、あのE-1077。
卒業したら、もういられないから。
用も無いのに、戻ってゆくことは不可能だから。
まして廃校になった後には尚更、けれど何処かでホッとしてもいた。
(…成長する人形など、有り得ないからな…)
どんなに精巧なアンドロイドでも、知能以外は成長しない。
E-1077にいた間ならば、マザー・イライザが細工出来たかもしれないけれど…。
(…離れた後には、もう不可能だ)
少しずつ年齢を重ねる身体を、新しいものに取り替えるのは。
「キース・アニアン」と呼ばれる人間、それに相応しく外見を作り替えるのは。
だから「人間だ」と弾き出した答え。
シロエの言葉にあった「人形」、それは何かの例えなのだと。
「マザー・イライザが作った人形」、シロエは確かにそう言った。
自分の中の「何処か」は作られたものだろうけれど、恐らくはほんの一部分。
基本的には人形ではなくヒトなのだ、と思った、自分自身という存在。
(…遺伝子レベルで操作したとか…)
あるいは何らかの手段を用いて、高度な知識を大量に流し込んだとか。
そんな所だ、と考えていた。
どう転がっても「ヒト」は「ヒト」だと、アンドロイドでは有り得ないと。
E-1077を離れた後にも、きちんと重ねてゆく年齢。
(怪我で血が出る程度なら…)
アンドロイドに細工も可能だけれども、年を重ねる人形は無理。
計画的に器を取り替えなければ、機械仕掛けの頭脳を移してやらなければ。
そう思ったから、「ヒトだ」と安心した自分。
どんな生まれでも、人間だと。
遺伝子を組み換えた存在だろうが、脳に直接、データをインプットされていようが。
(…そっちだったら…)
まだマシだった、と思える自分の正体と生まれ。
遺伝子を好きに弄ってあろうが、頭蓋骨に怪しい傷があろうが。
ヒトはヒトだし、ベースになった「ヒト」は何処かにいるのだから。
もしくは過去に「居た」のだから。
けれど、何処にも「居なかった」それ。
自分は機械が無から作った人間、元になったヒトなどいはしない。
三十億もの塩基対を合成し、DNAという鎖を紡ぐ。
たったそれだけ、「ヒト」は何処にも介在しない。
ゆえに神の手も働いてはいない、「ヒト」が関わらないのだから。
神の領域にまでも踏み込んだ機械、それが自分を作っただけ。
生命の神秘も、神に祝福された命も、自分の中には、その欠片すらも…。
(…まるで入ってはいないのだ…)
こうして「頭脳」は「考える」のに。
今も「心」は「乱される」のに、それさえも神の手の中には無い。
あえて言うなら機械の手の中、機械が自分の「造物主」だから。
自分を作った「神」がいるなら、その神はマザー・イライザだから。
不完全とさえ言えない生命。
この世に生まれる価値も無いモノ、これを本物の神が見たなら。
自らの手が働かなかったものなら、神はこちらを「見もしない」だろう。
神が差し伸べる救いの手さえも、自分のためには伸びては来ない。
救う価値すら無いモノだから。
「存在してはならない生命」、それこそがまさに自分のこと。
神は自分を作っていないし、元になった「ヒト」さえいなかったから。
機械が冒した禁忌の産物、それが自分という生命。
(…こんな醜い化け物などに比べたら…)
ミュウどもの方が遥かにマシだ、と認めざるを得ない自分の「価値」。
神にどちらかを選ばせたならば、間違いなくミュウが選ばれるから。
ミュウが選ばれ、神の導く道をゆくなら、自分を待つのは地獄だから。
(…そして、本当に地獄なのだな)
私の道は、と唇に浮かんだ自嘲の笑み。
ミュウと人類、分がありそうなのはミュウの方だと分かっている。
なのに自分は人類の指導者、そうなるように作り出されたから。
明らかにミュウに劣る種族を、人類を率いてゆく者だから。
どう進んだとて、茨の道。
最後は地獄に落ちるしかない、自分を作った機械もろとも。
ミュウたちが神に選ばれた時に。
彼らが勝者となった途端に。
(…マザー・イライザは一足先に…)
地獄に落ちて行ったのだがな、と処分したE-1077を思う。
惑星の大気圏に落下し、燃え尽きていったステーション。
マザー・イライザの悲鳴は地獄に消えたけれども、いつか自分も落ちるのだろう。
「存在してはならない生命」、そんなモノには神は救いを寄越さないから。
血を吐くような祈りを捧げてみたって、神は応えもしないのだろう。
「ヒトではない」者の祈りには。
神が作らなかったモノには、きっと視線も投げたりはしない。
その生命に、いくら「心」があろうとも。
今は神など要らないけれども、いつか「欲しい」と願ったとしても。
(……ミュウどもにも劣る生命体か……)
そもそも生きているのかどうか、と自虐的にしかならない考え。
この呼吸は本当に生の証かと、心臓の鼓動はどうなのかと。
血管の中を流れる血さえも、全て機械が作ったもの。
これでも自分は「生命」なのかと、「人間」だと言っていいのかと。
(…しかし、私は…)
生きるようにと作り出されて、これからも生きてゆかねばならない。
行く手に地獄が待っていようと、神の目には全く映らない生であろうとも。
だから生きる、と思うけれども、生き抜く覚悟はあるのだけれど。
そうは思っても、まだ暫くは…。
(……出られないな……)
マツカの前に、と鍵を掛けた部屋でついた溜息。
生命としての存在意義なら、マツカの方が上だから。
ミュウであろうが、化け物だろうが、マツカは「ヒト」に違いないから。
もう一度、自分が優位に立つまで、「上だ」と確信出来る時まで、此処からは出ない。
一歩たりとも出てはならない、完璧なままでいたければ。
誰もが敬意を抱くエリート、キース・アニアンの姿を保ちたければ。
自分に自信を持てるまで。
真に優れた存在なのだと、自分をも騙しおおせるまでは…。
作られた生命・了
※キースが自分の正体を知って、何も思わない筈がないよな、という捏造。
いくらキースがエリートだろうが、いや、エリートだけに考え込みそうな気がします…。
(…ぼくは若いと思うんだけど…)
一応、若い筈なんだけど、とジョミーの自信は揺らいでいた。
気付けば「祖父」になっていたから。
今の時代は死語な「グランパ」、そういう名前で呼ばれる自分。
それは素敵に若い者から。
トイレトレーニングの真っ最中のような子供から。
(…グランパって…)
グランパって何だよ、と叫びたいけれど、とうに叫んでしまった後。
その名前を聞いた瞬間に。
最初の自然出産児のトォニィ、彼に「グランパ!」と懐かれた時に。
(…ぼくのことだと思わなくって…)
グランパは何処か、と見回した次第。
肩に乗っているナキネズミかと、レインに渾名がついたのか、と。
けれど、真っ直ぐ見ていたトォニィ。
「グランパ!」と見上げてくる瞳。
何かが変だ、とトォニィの側にいたカリナに訊いた。「グランパって?」と。
そういう言葉は初耳だけれど、グランパとは何のことだろうか、と。
質問しつつも、ちょっぴり生まれていた期待。
自分が知らない言い方なだけで、「グランパ」は「イケメン」の意味だとか、と。
カリナやユウイは若い世代で、シャングリラで育った子供たち。
彼らの間だけで通じるスラング、そういったものもあるかもよ、と。
(癪だけど、ぼくより若いから…)
スラングだって充分、有り得る。
今の「グランパ」もそれの一つで、イケてる人には「グランパ!」かも、と。
胸を膨らませて待っていたのに、「それは…」と言い淀んでしまったカリナ。
やはりスラングに違いない。
自分たちだけの間の言葉がバレてしまった、とカリナは焦っているのだろう。
そう思ったから、「どういう意味?」と笑顔で尋ねた。
「ぼくのことなら気にしないで」と、「ぼくは怒ったりしないから」と。
若い世代だけの言葉があっても、細かいことは気にしない。
ゼルたちのような頑固な年寄り、何かと言ったら「若い者たちは…」と嘆く連中。
あんな風には出来ていないし、頭の出来も柔らかいから。
そう、怒る気はまるで無かった。
「グランパ」の意味が何であっても、若い世代の発想だから。
赤いナスカを開拓するには、柔軟な頭も要るのだから。
それでワクテカ、「どういう意味かな?」と待っていた答え。
「グランパ」の意味は「イケメン」だろうかと、あるいは「お兄ちゃん」かも、と。
胸がワクワク期待MAX、カリナの顔を見詰めていたら…。
「……おじいちゃん、です…」
「え?」
おじいちゃんって、とキョトンと見開いた瞳。
それは「年寄り」のことだろうかと、昔話やお伽話に「昔々…」と出て来るヤツ。
「ある所に、おじいさんと、おばあさんが…」と始まる、お約束。
グランパはソレで、もしや自分が「おじいちゃん」かと。
嘘だよね、と指差した自分の顔。
「おじいちゃん?」と。
そしたら、「ごめんなさい!」と、ガバッと頭を下げたのがカリナ。
「ソルジャー、本当にごめんなさい」と。
もうトォニィは覚えてしまって、グランパで定着しちゃったんです、と。
よりにもよって、「おじいちゃん」。
「グランパ」の意味はイケメンどころか、「ジジイ」と宣告されたのも同じ。
だから愕然としつつ叫んだ、「グランパって何だよ!」と。
怒らないとは言ったけれども、それとこれとは別次元。
どうして自分が「グランパ」なのか、「おじいちゃん」と呼ばれることになるのか。
其処の所を確認しないと、どうにも納得出来ない「グランパ」。
自分はまだまだ若い筈だし、「おじいちゃん」な年ではないのだから。
これがソルジャー・ブルーだったら、「おじいちゃん」でもいいのだけれど。
見かけはともかく中身が年寄り、誰が聞いても「おじいちゃん」だから。
(…絶対、何かの間違いだって…)
トォニィが覚え間違っただけ、と考えたのに。
そうだと自分に言い聞かせたのに、カリナの答えはこうだった。
「…訊かれたんです、トォニィに…。パパとママのパパは誰なの、って…」
「パパ?」
「はい。トォニィのパパはユウイで、ママは私になりますから…」
その私たちのパパとママは、と質問されたものですから、と謝ったカリナ。
つい出来心で、「ソルジャーなのよ」と教えました、と。
カリナが言うには、トォニィにとっては「いるのが当然」のパパとママ。
まだ幼くて、世の中の仕組みを知らないから。
もちろん出産も知りはしないし、管理出産などは理解の範疇外。
それで無邪気にカリナに質問、「ママたちのパパとママは誰なの?」と。
(…スルーしといてくれればいいのに…)
心の底からそう思うジョミー。
なにも真面目に答えなくてもと、あんな小さな子供に、と。
けれど、とっくに手遅れな今。
カリナは真剣に考えた末に、トォニィに教えてしまったから。
「私たちの生みの親って、ソルジャーよね?」と。
「命を作ろう」と決めた自然出産、それに賛成してくれたから。
とはいえ、「おじいちゃん」は流石にどうかと、一応、思いはしたらしい。
そう思ったならやめてくれればいいのに、つい出来心。
魔が差したとでも言うのだろか、教えたくなった「おじいちゃん」。
今の世の中、「おじいちゃん」はとうに死語だから。
何処を探しても「祖父」はいなくて、いたら「オンリーワン」だから。
(…オンリーワンでも…)
キツイんだけど、と抱え込みたくなる頭。
この年でもう「孫」がいるのかと、自分はトォニィの「祖父」なのか、と。
(グランパって言い方まで、探して来て貰っちゃって…)
その気遣いが余計にキツイ、と泣きたいキモチ。
「おじいちゃん」ではあんまりだろう、とカリナが教えた言葉が「グランパ」。
ヒルマンに頼んで、データベースで探して貰って。
「おじいちゃん」よりはソフトに、と。
ちょっとお洒落に「グランパ」の方がいいだろう、と。
お蔭でトォニィが覚えた「グランパ」、「次に会ったら呼ばなくちゃ」と。
「ぼくのおじいちゃんはソルジャーだけれど、ぼくのグランパなんだもの」と。
そして炸裂した「グランパ」呼び。
無垢な笑顔で、明るい声で。
「グランパ!」と。
ソルジャーはぼくの「おじいちゃん」だと、だから「グランパ」と呼ぶんだよ、と。
怒らない、と言ってしまったから、どうにもならない「グランパ」呼び。
今の御時世、確かに「祖父」など何処にもいないし、もう文字通りにオンリーワン。
カリナが「おじいちゃんよ」と教えた気持ちも、分からないではないけれど…。
(…この年で孫で、おまけに宇宙の何処を探しても…)
おじいちゃんは他にいないんだ、とドッと百ほど老け込んだ気分。
いやいや、二百か三百だろうか、それとも四百くらいだろうか。
(……ブルーでも、おじいちゃんじゃないのに……)
ぼくがグランパ、と尽きない「グランパ」なジョミーの嘆き。
いくらなんでも惨すぎるから。
本物のジジイのブルーがいるのに、若い自分がオンリーワン。
宇宙にたった一人の「グランパ」、「おじいちゃん」になってしまったから。
SD体制の時代が始まって以来、初めての「おじいちゃん」だから…。
最初のグランパ・了
※アニテラではスルーされてたのが、「グランパ」呼びの理由。「原作を読め」と。
「初めての孫」がトォニィだったら、ジョミーが初の「おじいちゃん」になるよね…。
