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カテゴリー「突発ネタ」の記事一覧

「お前に会えて良かった…」
 地球の地の底、暗闇の中でキースが言うから、「ぼくもだ」と素直に返したジョミー。
 自分もキースも全力で生きたし、後悔することは何も無いから。
 会えて良かったと思うから。
 パンドラの箱を開けてしまったけれども、箱の最後には希望がある筈。
 それをキースに伝えておこう、と薄れゆく意識の中で「キース」と呼び掛けた。
「うん…?」
 声に応じてキースがこちらを向く気配。
 「ジョミー?」と声も返って来たから、ずいぶん頑丈に出来ているらしい。自分の方は、肉声はもう無理なのに。思念波が精一杯なのに。
(ぼくよりも先に刺されたくせに…)
 なんという体力と生命力、と思考がズレた所へ、聞こえて来たのがキースの声。
「そういえば、一つ訊きたかったんだが…」
『え…?』
 あんまり時間を取らせないで欲しい、と自信が無いのが生命力。キースの質問に答えた後にも、命は残っているのだろうか?
 「箱の最後には希望が残ったんだ」とキースに伝えるためには…。
(前後の文脈ってヤツも大切で…)
 まるで繋がらない言葉を言ったとしたって、キマらない。辞世の句ならぬ最期の言葉は、それにしようと決めているのに。
(質問するなら、早くしてくれ…!)
 こっちの答えも出来るだけ短く切り上げるから、と内心イラッとしていたら…。
 「グランパと呼んだな、あの若者は」
(…へ?)
 トォニィがどうかしたのだろうか、と相槌も打たずに守った沈黙。「早くしやがれ」と。
 真面目に命がリーチな具合で、じきに死にそうな感じだから。
 なのに…。


「お前もジジイだったのだな」
 斜めな台詞を吐いたのがキース、感慨深げに。「年を取ったのは、私だけではなかったか」と。
『……ジジイ?』
 それは何処から、と「最期の言葉」を言うのも忘れて訊き返した。
 「ジジイだって?」と、不愉快な気持ち満載で。キースは老けて皺もあるけれど、自分は若くて青年だから。
「お前はグランパなのだろう?」
 あれはジジイという意味だしな、と無駄に体力自慢のキースは続けてくれた。
 「ジジイの割には若作りだが、お前に会えて良かった」とも。
『ちょ、ジジイって…!』
 誤解だから、と言い終わる前に迎えたタイムリミット、まるで無かった延長戦。すなわち此処でタイムオーバー、タイムアップとも言うかもしれない。
 キースにまるっと誤解されたままで終わった命。
 あまつさえ最期の言葉さえもが、カッコよくキメて終わる代わりに「ちょ、ジジイって…!」。
(…なんでこういうことになるわけ!?)
 最悪な最期だったんだけど、と泣きの涙で死んだ途端に…。
「ようこそ、ジョミー・マーキス・シン」
 さあ、天国に参りましょう、と現れた天使。
 真っ白な翼に、光り輝く純白の衣。何処から見たって神の御使い、天国ガイドらしいけれども。
「ちょっと待って欲しい…!」
 まだ死ねないから、と踏ん張った。
 最期の言葉も酷かったけれど、キースがかました「ジジイ」なる言葉。
 トォニィが「グランパ」呼ばわりしてくれたせいで、とんでもない流れになったのだから。


 何としてでも、此処は戻ってやり直し。「ジジイ」の件は仕切り直したい。
 キースは恐らくまだ生きているし、ちょっと戻って解きたい誤解。
「この手、離してくれないかな…!」
 急ぎの用があるもんで、と振り払おうとした天使の手。
「ジョミー?」
「急いでいると言っただろう! 今のままだと、ぼくはジジイで終わりだから!」
 ぼくを身体に、地球に帰せ、と怒鳴ってやった。昔、似たような台詞があったと思いながら。
 あの時は相手がブルーだったと、「ぼくをアタラクシアに、家に帰せ!」と叫んだよね、と。
「ですが、あなたは、もう天国に…」
「天国が何だって言うんだよ!」
 これじゃ死んでも死に切れないから、と天使にぶつけた怒り。
 最期の言葉は「ちょ、ジジイって…!」で、キースには「ジジイ仲間だ」と誤解されたまま。
 それというのも、トォニィが何度も「グランパ」と呼んだせいなのだから…。
(孫末代まで祟ってやる、っていうヤツは…)
 こういう時にピッタリかもね、と思ったら慌てたのが天使。「なんということを…!」と。
「ジョミー、その思考は危険です…!」
 孫末代まで祟るだなんて、天国の扉が閉ざされますよ、と諭されたけれど、危険な思考、上等。
 元々、危険思想の持ち主がミュウで、それで人類と派手に戦争していたのだから。
「だったら、危険思想でいいから!」
 天国も説教も後でいいから、とにかく離せ、と大暴れした。「ぼくを帰せ!」と空中で。
 そうしたら…。
「あっ…!」
 どうしましょう、という天使の声を最後に、真っ逆様に空から落っこちて行って…。


(生き返った!?)
 戻ったみたい、とガッツポーズを取るよりも前に、隣でキースが吐いている台詞。
 「最後まで私は一人か…」と、格好をつけて。
(させるかぁーーーっ!!!)
 誤解を解いていないんだから、と戻って来たジョミー・マーキス・シン。
 戻ったからにはパワーMAX、キースにも生きて貰わねば。
 上からドーン! と落ちて来た岩、その下敷きにはさせなくて…。
「………???」
 なんだ、とキースは目を剥いた。「此処は何処だ?」と真っ暗な中で。
「さっきのジジイだ! 言い直せ!」
 あれは思い切りの誤解だからな、と肉体の声で売ってやった喧嘩。「まだ死なせるか」と。
 「ちょっと顔を貸せ」と、「シャングリラまで来て貰おうか」と。
「ほら、其処だ!」
「なにぃ…!?」
 馬鹿な、と落ちたキースの顎。
 どうしたわけだか、地の底深くから飛び出す羽目になったから。ジョミーともども。
「いいから、さっさと来るんだ、キース!」
 ジジイの件を説明させて貰うから、とジョミーが飛び込んで行ったシャングリラ。腕にキースをしっかり抱えて、どちらも致命傷コンビのままで。
「グランパ!?」
 よく無事で、とトォニィがやった「グランパ」呼び。途端に力が抜けたけれども…。
「そのグランパ…」
 やめてくれる、と辛うじて告げて、其処で意識がブラックアウト。
 とはいえ、天使は来なかったから…。


(ぼくもキースも…)
 生きられそうだし、後でゆっくり片をつけよう、と算段しているジョミー。
 まずはキースの誤解を解くこと、お次がトォニィの「グランパ」呼びを直させること。
(もう戦いは終わったんだし…)
 そっちの方へと時間を割いてもいいだろう。こうして生きて戻れたから。
 長年「グランパ」と呼ばれたけれども、直させるなら…。
(もっと若さをアピールで…)
 かつ偉そうに「兄上」なんかがいいだろうか、とジョミーは真面目に考え続ける。
 「それがピタリと嵌まりそうかな」と、「グランパよりかは兄上だよね」と。
 トォニィの台詞に当て嵌めてみても、まるで違和感が無かったから。
 「早くしなけりゃ、グランパが死んじゃう!」を、「兄上が死んじゃう!」に換えたって。
 「グランパを置いてなんか行けない!」を、「兄上を置いてなんか行けない!」とやったって。
(…いいかも、「兄上」…)
 これにしよう、とジョミーが決めたお蔭で、暫く経ったシャングリラでは…。
「ごめんなさい、兄上…。ぼくの言い方が悪かったです…」
 ちゃんとキースに説明します、とトォニィがションボリ項垂れていた。
 大好きなグランパは生きて戻ってくれたけれども、もう「グランパ」とは呼べないから。
 これから先は呼ぶなら「兄上」、キースの誤解を解く役目までが「兄上」からの命令だから。
(頼むぞ、トォニィ…!)
 ぼくが自分で説明するより確実だからな、とベッドでほくそ笑むジョミー。
 ジジイのままで死んでたまるもんかと、悲惨な最期はもう二度と御免蒙ると…。

 

         グランパは嫌だ・了

※キースにしてみりゃ、「グランパ」呼びは意味が不明だろうな、と思ったわけで…。
 そしたら「ジジイは嫌だ」なジョミーが出て来たオチ。「兄上」だそうです。






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『箱の最後には……希望が残ったんだ』
 それがキースの心に届いた、ジョミーが紡いだ最期の思念。
 肉声は「キース」と呼び掛けて来たのが最後で、飛び去ってしまったジョミーの魂。
 ようやっと真の友が出来たと思ったのに。最後まで共に戦った仲間、本当の友を得られて心から満足したというのに。
 だからキースがついた溜息。「最後まで……私は一人か」と、悲劇のヒロイン気取りで。
 そう、ヒーローではなくてヒロイン、そんな感じで。一人残されて岩の下敷き、考えるだに気の毒な最期なのだから。誰も看取ってくれはしなくて、悲しむ人もいないのだから。
(マツカの方が恵まれていたな…)
 チラリと頭を掠めた思い。マツカも大概な最期だったけれど、自分が看取ってやったのだし…。
(セルジュもパスカルもあの場にいたぞ)
 それに比べて私はどうだ、と可哀想すぎる自分の最期を思いながら逝ったわけなのだけれど。
 とうとう岩が落ちて来たかと、多分、押し潰されたのだけれど…。


「…どの辺がどう気の毒なんだか…」
 悲劇のヒロインぶられても、と容赦なく頭を蹴り飛ばされた。ジョミーのブーツで。
 恐らく天国、もう見るからにそれっぽい雲の絨毯の上で、ゲシッと、「ていっ!」と。
「何をする!?」
 痛いじゃないか、と起き上がったら、其処で腕組みしていたジョミー。偉そうな態度でこちらを見下ろし、「自覚が無いのが酷すぎだから」と吐き捨てた。
「誰が言ったんだったっけ…。シロエだっけか、幸福なキースっていうヤツは」
 君は本当に幸福すぎだ、と睨み付けているジョミーの後ろから、シロエがヒョイと覗かせた顔。
「そうです、それで合ってます。幸福なキースは、ぼくの台詞ですよ」
 登録商標ではないんですけど、と謙遜しつつも、自慢の言葉ではあるらしい。遠い昔にシロエが罵倒してくれた、「幸福なキース」なるヤツが。
「…この期に及んで、それが何だと?」
 成人検査を通過したかどうか、そんなのは細かいことだろう、と言ったのに。
 死んで天国までやって来たのに、重箱の隅をつつくようなことをしなくても…、と考えたのに。
「甘いね、君は。…本当に甘くて、もう「幸福なキース」としか…」
 言えやしない、とジョミーは上から目線で続けた。思い切りハッピーエンドな最期だったのに、贅沢をぬかす奴なんて、と。
「あれがハッピーエンドだと!? 私のか!?」
 違うよな、とキースは噛み付いた。SD体制は崩壊したから、人類とミュウにとっては、きっとハッピーエンドだろう。ああいう悲惨な死に方でも。
 けれど自分にとってもそうかと言われたら…。
(全力で生きた者にも後悔は無いが、ハッピーエンドなら、もっとこう…)
 希望があってもいいと思うし、「箱の最後に残った」ような希望では困る。パンドラの箱など、死んだ後には何の役にも立たないから。希望は「生きてこそ」なのだから。


 そんなわけだから、「違う」と思ったハッピーエンド。人柱よろしく斃れた自分は、もう絶対にハッピーエンドを迎えてはいない。バッドエンドの方だろう、と自信満々だったのに…。
「まあ、そうだとも言えるだろう。君にはあれが全てなんだし、気の毒なのかもしれないが…」
 でも天国に来たら、こんなテキストが…、とジョミーが、シロエが持っている本。
 いったい何の本だろうか、と見詰めてみたら、『地球へ…』と書かれたタイトル。何処かで目にした覚えがあるな、と思うけれども、おぼろな記憶。死んだはずみに、ブッ飛んだかも。
(地球というのは、あの地球だろうが…)
 私が岩の下敷きになって死んだ場所だな、と理解はしても、結び付かない本との関係。あの本に何の意味があるのか謎だし、タイトルの記憶もナッシング。
 けれどジョミーが、シロエが繰っているページ。互いに頷き合いながら。
 「なんて幸せな男なんだ」と、「ええ、幸福なキースですよね」と。
(どういう意味だ…?)
 サッパリ分からん、とボーッとしていたら、「このタコがあ!」とジョミーに張り飛ばされた。
 「テメエの人生、ちゃんと自分で確かめやがれ」と、「この本がオリジナルだから!」と。
(…オリジナル……?)
 それは伝説のタイプ・ブルー・オリジンとは別物なのか、と思ったオリジナル。手渡された本をパラパラめくると、其処に見付けた「タイプ・ブルー・オリジン」。そう、伝説の。
(こんな所にソルジャー・ブルーが…?)
 私が知らない時代のだな、と伝記っぽい本を読んでゆく。文字オンリーではなくて、見るからに娯楽なコミックだけど。何処から見たって漫画だけれど。
 そうしたら…。
(…へ?)
 此処で終わりか、と仰天したソルジャー・ブルーの最期。
 驚いたことに、アルテメシア、いやアタラクシアという星でジョミーを後継者に据えた途端に、彼の命は終わったらしい。ご丁寧にガラスの柩に入って、花まで背負って。
(…いや、こう見えて、実は死んでいなくて…!)
 白雪姫の童話よろしく、ガラスの柩から復活だろう、と考えたのに甘かった。舞台は其処で暗転だから、もう本当に死んだっぽい。…ソルジャー・ブルーは、綺麗サッパリ。


 はて…、とページをめくってみたら、颯爽と登場した自分。サムもセットで。ついでにシロエも一緒に登場、何処か違った世界なE-1077。
(…これはどういう本なのだ?)
 私の人生が描かれている本なのか、と読み進めたら、またしても衝撃の展開。まだ少年のような自分が、フロア001にいた。シロエが「ゆりかごですよ」と言っていた場所に、その直後に。
(知るのが、やたらと早すぎないか!?)
 ジルベスターの後まで知らなかったが、と愕然とさせられた出生の秘密。
 自分の場合は、「マザー・イライザが無から作った生命」だなんて、中年に差し掛かるまで全く知らなかったから。
(…えらくまた、苦労性な私もいたものだ…)
 こんなに早く知ってどうする、と驚きながらも読んでゆく『地球へ…』。もうあちこちで何かが違うし、見て来たものとは別世界。天国に来るまでに生きた人生、それとも激しくズレまくり。
 そうやって辿り着いた終幕、なんとジョミーを撃ち殺したから驚いた。そう、自分が。
 自分の名誉のために言うなら、自分の意志ではないけれど。グランド・マザーに操られた末に、及んだ凶行。平たく言うなら心神喪失、多分、責任は問われない。そうは言っても…。
(これはあまりに…)
 強烈すぎる、とガクブルしながら読んでいったら、トドメの一撃。
 グランド・マザーの次に控えた、「コンピューター・地球(テラ)」という有難い機械。地球を滅びから救える機械を、せっせと止めている自分。「もう決めたんだ」と、せっせ、せっせと。
(いったい、此処の私は何を…!)
 それを止めたら地球は終わりで…、と思った通りに、ドえらい惨事に見舞われた地球。
 その一方で自分はといえば、「この世をば、どりゃお暇に線香の煙と共にハイ、さようなら」と言わんばかりに、この世にオサラバしてしまっていた。十返舎一九ではないけれど。
 自分が暴走して殺したジョミーに、「俺を殺せ」と格好をつけて、サックリと。
 かくして終わった自分の人生、やたらと苦労が多そうだけれど。
 最後の最後まで友はいなくて、「私は一人か」を極めた感じが、もうMAXに漂うけれど。


(これはいったい…)
 何なのだ、とガン見した『地球へ…』。運命を左右する「予言の書」というブツにも見えるし、あるいは冗談、いやいや悪魔の仕業なのかも…、とも思っていたら。
「分からないかな、オリジナルだと言ったけど?」
 ジョミーがフンと鼻を鳴らして、のたまった。「本来、君の人生はそういうヤツらしい」と。
 若い頃からドップリ苦悩で、死ぬまでひたすら苦労の連続。そう生きるのがキース・アニアン、「最後まで……私は一人か」などと寝言も言えずに、ドツボな人生。
 なのに全く違う生き方、「お気楽極楽、そういう感じで生きなかったか?」と、イヤンな指摘。
 自分の生まれを知りもしないで、ノホホンと生きた若かりし日々。それこそやりたい放題で。
 メギドは持ち出す、ソルジャー・ブルーもなぶり殺すで、人生エンジョイしたろうが、と。
 自分の生まれを知った後にも、まるで無かった反省の色。
 グランド・マザーと戦う時さえ、「私は自分のしたいようにする」と銃をぶっ放していた程度。やっぱり変わらず好き放題だし、苦労の「く」の字も無かったわけで…、と。
「い、いや、それは…。それは間違いないんだが…!」
 あれが私の精一杯の抵抗で…、と食い下がったけれど、弱すぎる立場。オリジナルの方と比べてみたなら、「何もしていない」も同然の自分。…情けないことに。
 銃をぶっ放したまでは良しとしたって、グランド・マザーに粛清されて剣でグッサリ。あえなくリタイヤ、後はジョミーに丸投げしたのが自分というヤツ。
(…ただ転がっていて、グダグダ喋っていただけだとか、なんとか言わないか…?)
 そうだったかも、と青ざめた顔。「頑張りがかなり、足りないのでは…?」と。
 苦労知らずでぬくぬく育って、最後はサックリ退場だから。
 あれこれ御託を並べていたって、剣で刺されて、まるで虫ピンで留められた虫。動きもしないで「くっちゃべっていた」と切り捨てられたら、「ハハーッ!」と土下座で詫びるしかない。
(…確かに、「幸福なキース」なのかもしれん…)
 この人生に比べたら…、とガクガクブルブル。オリジナルだという『地球へ…』を手にして。
 「私の人生は、本来こうか」と、「悲劇を気取って申し訳ない」と。


 ジョミーに、シロエに、詰られたって仕方ないのだな、とブルッていたら、ポンと叩かれた肩。
 「久しぶりだね」と、後ろから。
(誰だ!?)
 今度は誰がやって来たんだ、と振り返った所に、立っていたのがソルジャー・ブルー。
 ジョミーたちと同じに、『地球へ…』の本をキッチリ手にして、「その節はどうも」と。
「もう読んだんなら、分かってくれたと思うんだけどね? ぼくは本当なら…」
 間違っても君と出会う筈はなくて、狩りの獲物になるわけもなくて…、とソルジャー・ブルーが浮かべているのが、怖すぎる笑み。愛想が良すぎて、こみ上げる恐怖。
 そんな心を知ってか知らずか、伝説のミュウは極上の笑顔で続けてくれた。
 「君の人生に花を添えるためにだけ、ぼくは生かされていたようだけどね?」と。
 「お蔭で散々酷い目に遭って、ガラスの柩を貰うどころか、葬式も無しの人生だった」と。
 脇役だから仕方ないけれど、と言いつつ、実は据わっているのが彼の赤い瞳。そしてやっぱり、シロエの自慢の例の台詞をパクッてくれた。「君は幸福なキースだよ」と。
 「ぼくの人生を踏み台にして、華麗にステップアップだからね」と、「二階級特進で上級大佐になった気分は、さぞかし素敵だっただろう」とも。
「そ、そう言われても…。私に、そういう自覚は全く…!」
 無かったんだが、と言い終えない内に、ジョミーに、シロエに取り囲まれた。両脇から。
「往生際の悪い奴だな、君という奴は。要は、君が生きて来た人生は…」
 君にとってはハッピーなヤツで、最後もハッピーエンドなわけで、とジョミーが迫れば、横からズズイと出て来たシロエ。思いっ切りの訳知り顔で。
「その通りですよ。オリジナルの方なら、ぼくが死んでも意味はあったんですけどね…」
 こっちのコースだと無駄死にですよ、とキッツイ一言。実際そうだし、ヤバすぎる立場。自分の生まれを全く知らずに何年生きたか、お気楽すぎる時代が何年あったのか。
「…で、では、私が生きたあの人生は…」
「君がハッピーエンドを迎えるために、他のみんなが踊らされていたようだけれどね?」
 ぼくも含めて…、とソルジャー・ブルーは笑顔だけれども、生憎、その目がマジだった。囲みにかかったジョミーもシロエも、ジト目で見ている「幸福なキース」。
 ちょっと幸福すぎやしないかと、「その幸福は、皆にお裾分けするべきだ」と。


「畜生、どうしてこうなるんだ!?」
 死んだ後まで、何故こうなる、と悲鳴を上げても、後が無かった「幸福なキース」。
 「言いがかりだ」と必死に言い返そうにも、「オリジナルはこうだ」と、皆が掲げる錦の御旗。
 誰もが手にする『地球へ…』のコミック、この天国では聖書よろしくデフォ装備。
 それを読んだら、ナチュラルに理解できること。キースが生きた人生と世界、それらは残らず、全部キースのハッピーエンドのために書かれた物語。
 もう思いっ切りハッピーに生きて、やりたい放題、し放題。グランド・マザーに逆らう時さえ、貫いたのが自分流。挙句の果てにジョミーに丸投げ、気分は悲劇のヒロインな最期。
 そうとしか読めない恐怖のテキスト、皆が知っているオリジナル。『地球へ…』のコミック。
(うわー…)
 アレのせいで皆にたかられるんだ、と泣きそうなキモチの「幸福なキース」。
 何かと言ったら「今日はキースのおごりだから」と、ジョミーが、シロエが毟ってゆく。天国の酒場やレストランやら、そういった所で遊ぼうと。今日は居酒屋『緑の丘』を貸し切りだ、と。
 もちろんソルジャー・ブルーも毟るし、毟らないのはマツカくらいかと思ったら…。
(…いつの間にやら、ミュウの連中とマブダチになって…)
 楽しく飲み食いしていやがった、と「幸福なキース」の苦悩は尽きない。
 オリジナルと違って、「リアル人生」で全く苦労をしなかった分だけ、天国で苦悩。
 今日も今日とて、「キース!」とジョミーが駆けて来る。『緑の丘』で飲んで騒ごうと。
 その後ろにはソルジャー・ブルーの姿も見えるし、シロエやサムも。それにマツカも、グレイブまで混じっているものだから…。
(今度こそ破産しそうなんだが…!)
 もういい加減、後が無いんだ、と既にリーチなキースの財布。
 来る日も来る日も毟られまくって、神様に何度も頼みまくっている前借り。そろそろ「断る」と言われそうだし、そしたら破産するしかない。この天国では稼ぐ道など無いのだから。
 それでも彼らは逃がしてくれずに、遠慮なく飲み食いするのだろう。
 「お金が無いなら、お皿を洗えばいいじゃない」と、ジョミーあたりが厨房の奥に蹴り込んで。
 「ぼくたちは勝手に飲み食いするから、君は代金を身体で払ってくれたまえ」と、恐ろしすぎる伝説のタイプ・ブルーが、逃げ道を塞いでくれたりして。


(…きっと本当に、そういうコースだ…)
 もう泣きたい、と呻くしかない「幸福なキース」。いっそこの名を、商標登録しようかと。
 誰かがそれを口にする度、小金が入って来るようになれば、今よりはマシな暮らしが…、と。
 ウッカリ幸福に生きたばかりに、この始末。今日もたかられる、天国の居酒屋『緑の丘』。
 自分的には、悲劇のヒロインな最期だったのに。
 「最後まで……私は一人か」と呟いて死んだ時には、きっとキマッていた筈なのに。
 人生、本当に分からないから恐ろしい。
 あれでも究極のハッピーエンドで、それまでの人生もハッピー満載。
 周りの全てを巻き込みながらの「幸福なキース」、そう生きたのが自分らしいから。
 どんなに「違う」と叫んでみたって、誰もが『地球へ…』のコミックをドンと突き付けるから。
 今日も賑わう天国の居酒屋、その名も『地球の緑の丘』。
 もう最高のネーミングセンス、ワイワイと皆が入り浸る店。「いつかは本物に行こう」と。
 せっかくだから夢は大きく、天国よいトコ、青い地球だっていい所。
 いつか「幸福なキース」よりもずっと素敵なハッピーエンドを、本物の地球の緑の丘で、と…。

 

          天国の緑の丘・了

※アニテラ放映終了から9周年の記念に何か、と思ったのは確かですけれど…。
 気付けば気の毒すぎたのがキース、でも、そう読める原作の怖さ。誤解と曲解てんこ盛りで。
 すまない、キース、記念作品のネタに君を選んで。心からすまなく思って…い…る…?






拍手[1回]

「ぼくは自由だ。自由なんだ…!」
 いつまでも、何処までも、この空を自由に飛び続けるんだ…!
 それがシロエの最期の言葉。
 彼を乗せていた練習艇は、キースに撃ち落とされたから。
 木っ端微塵に砕け散った船、広がっていった衝撃波。それに爆発に伴う光も。

「…なんだ、今のは?」
 爆発したぞ、と広がる光を遠くで目撃した者が一人。…いや、もっと。
「何なんでしょうね、この宙域だと…」
 E-1077が近いんじゃあ、と答えた男。他にも数人、頷いている男たち。
「へえ…。エリート様の育成場所かよ、そりゃ面白い」
 何かあったに違いねえや、と男は「行け」と顎をしゃくった。さっきの光が見えた方へと。
「お、お頭…?」
「いいから行けと言っているんだ、船長の俺に逆らったら…」
 海賊の掟は分かってるよなあ、と凄む男は海賊だった。SD体制の社会からはみ出した男。他の者たちもそれは同じで、船の名前はジョリー・ロジャー。言葉通りに「海賊旗」。
「わ、分かりました…!」
 慌てて航路設定する者、データの収集を始める者。
 彼らを尻目に、「行け」と命じた船長は不敵に笑っていた。「いい日だよなあ?」と。
「さっきは宇宙鯨も見たしよ、今日はいい日になりそうだ」
 今の光も俺にはプンプン匂うんだよ、と肝が据わった船長だったのだけれど…。


 目指した宙域、其処に散らばっていた船の残骸。
 撃ち落とした方はとうに去って行ったのを確認したから、海賊船が来たとはバレない。
「気を付けて探せよ、絶対に何かありそうだからな」
 俺たちの役に立ちそうなモノが、というのが船長の勘。滅多に外れはしないものだから、自信に溢れてやって来た。いったい何が見付かるだろう、と。
 けれど…。
「お頭、あそこに…!」
 何か光が見えますぜ、と報告した部下の声は、直ぐに震え始めた。「ひ、人だ…!」と、まるで恐ろしいものでも見たかのように。
 それはそうだろう、光が見えるのは真空の宇宙。人がいる筈がないのだから。
「落ち着け、馬鹿。…ふうむ、人だな」
 だったらアレがお宝だろう、と船長の肝は据わりすぎていた。
 漆黒の宇宙に散らばる残骸、その中でぼんやり黄色く発光しているモノ。多分、少年。
 「回収しろ」と命令された部下たちは震え上がったけれども、逆らったら自分が放り出される。船から宇宙空間へと。宇宙服など着せては貰えず、身体一つで。
 そうなれば死ぬしかないのだから、と部下たちは淡い光を纏った少年を宇宙から拾って来た。
 「拾いました」と青ざめた顔で、「どうやら生きているようです」と。


 海賊船が回収したのは、もちろんシロエ。
 船が撃墜された瞬間、無意識に張っていたシールド。命よりも大切に思っていた本は、シールドごと他所に飛ばされた。爆発の時の衝撃で。
 シロエ自身も、意識して張ったシールドではなかったものだから…。
 爆発の後をキースが確認しに来た時には、微弱だった光。キースは気付かずに行ってしまって、それから強くなった発光現象。「此処にいる」と仲間に知らせるかのように。
 何故なら、仲間が来ていたから。…ミュウの母船が近付いてくれば、サイオンは共鳴し始める。
 それで強くなったサイオンの光、いわばSOSなのだけれど。
 残念なことに、シャングリラはまだ遠かった。先に来たのが海賊船。
 よってシロエは拾われてしまい、ジョリー・ロジャー号の獲物というわけで…。


 肝がやたらと据わった船長、彼はシロエの手当てが済んだら自分の部屋へ運ばせた。
 気絶しているだけらしい少年。衰弱が酷いようだけれども、じきに回復するだろう。少年だけに数日もすれば…、とベッドの上の獲物を眺める内に…。
「…此処は?」
 何処、と少年の瞼が開いた。光はとうに消えているから、ただの子供にしか見えない。瞳の色は菫色。夢見るようにぼやけた焦点。
「さてなあ? その前に答えて貰おうか。…坊主、名前は?」
「え…?」
 途端に冴えたシロエの意識。ダテにエリート候補生ではなかったから。
 正気が戻れば、自分が置かれた状況も分かる。E-1077ではないらしいことも、そういえば追われていたらしいことも。
(…キースの船が…)
 ぼくが乗った船を撃ち落とした、と気付いたら後は身構えるだけ。「新手なのか!?」と。
 どういうわけだか助かったものの、今度は別の所に収監されたのか、と。
「落ち着けよ、おい。…俺はお前の敵じゃねえ」
 お仲間といった所だろうさ、と笑った船長。「俺たちは、はみ出し者だからなあ」と。
 マザー・システムなんぞは糞くらえだと、メンバーズどもも御免蒙るね、と。


 そんなわけだから、シロエも直ぐに理解した。「本当に敵じゃないんだ」と。
 海賊船でも、自分を助けてくれたのだったら、文句を言えるわけがない。大切なピーターパンの本は失くしたけれども、命は拾ったのだから。
 その上、撃墜された時の衝撃、それで戻って来た記憶。子供時代をどう過ごしたか。
(…パパ、ママ…)
 ぼくは海賊になったみたい、と夜な夜な部屋で苦笑する。「お前は此処だ」と貰った部屋。
 昼の間は海賊見習い、エネルゲイアとE-1077で教わった技術はついて来たから…。
「シロエ、こいつはどうなっている?」
 他の奴らじゃ手に負えねえ、と船長に名指しで頼まれる仕事。ハッキングなどといった作業。
「はいっ!」
 直ぐにやります、と交代したら、それは素晴らしいスピードだけに…。
「見ろよ、お宝だっただろう? 俺の勘には間違いねえんだ」
「で、でも…。あいつ、光ってたんですよ?」
 それに宇宙で生きてました、と腰が引けていた部下たちだって、時間が経てば慣れてくる。妙な出会いをしたというだけ、シロエは全く無害なのだし、強いて言うなら…。
「いい加減に覚えて下さいってば! この手のシステムというヤツはですね…!」
 こうやって、こう、と海賊相手にも怒鳴り散らすという気の強さ。
 ついでに喧嘩も負けていないし、小さいくせに腕が立つ。元がエリート候補生だから。
 そうとなったら、海賊たちにも可愛がられる。マスコットよろしく、「シロエ、シロエ」と。


 海賊船に乗ってしまったセキ・レイ・シロエ。
 なまじミュウだから、拾われた時から全く成長しないまま。他の仲間が年を重ねてもチビ。
「お前、どうやらアレだよなあ…。やっぱ、ミュウだな」
 仲間の所に帰るんだったら送ってやるが、と船長は言ってくれたのだけれど。
 「もう充分に役に立ってくれたし、ミュウどもの勢力も広がったからな」と下船の許可も貰ったけれども、一宿一飯どころではない恩の数々。
(それに、ミュウって言葉も知らなかったくせに…)
 助けてくれたのが船長。あの頃は「M」と口にしていた。「お前の正体、Mじゃないか?」と。
 お尋ね者では済まないのがM、人類からすれば端から抹殺すべきもの。
 それでも船長は「お宝だから」と自分を拾って、立派な海賊に育ててくれて…。
(…まだまだ恩は返せてないよね?)
 もっと頑張って恩返しを、とシロエが励んだ海賊稼業。
 あちこちの星がミュウの手に落ちても、首都惑星ノアが陥落しても。
(キース先輩…)
 いつかゆっくり、あなたと話したいんですけれど、と思い出すのは国家主席になった人。
 彼の正体を知ったお蔭で、狂いまくりになった人生。
 けれども自分は死んでいないし、両親や故郷の記憶も戻って、海賊船を降りた時には…。
(パパとママに会いに行くんだから…)
 あの懐かしいエネルゲイアへ、子供時代を過ごした家へ。
 「ネバーランドに行って来たよ」と、珍しいお土産を山のように持って。


(本当にネバーランドに来ちゃった…)
 自分は今も子供のままだし、乗っているのは海賊船。
 船長の名前はごくごく普通で、「フック船長」ではないけれど…。
(パパとママには、ネバーランドで通じるよね?)
 ぼくのことは覚えている筈だから、と楽しみな、いつか故郷へ帰る日。
 そうする前には、国家主席になったキースに会いに行こうか、さっき演説を聞いたから。
 たまたま仲間が点けたモニター、其処で流れていたものだから。
(ミュウが進化の必然ね…)
 それも是非とも先輩と話したいですね、と思ったシロエの夢は叶わなかった。
 キースは地球で死んでしまって、それきりになってしまったから。
 ついでにミュウの長のソルジャー、そちらも地球で斃れてしまって代替わりで…。
(…今更、ミュウの船に行っても…)
 なんだか色々と遅すぎる気が、としか思えないから、まだ暫くは海賊船の乗組員でいい。
 船長は「海賊も、もう時代遅れになっちまったな」と言っているから、じきに引退するだろう。船の仲間も引退だろうし、その時は…。
(ぼくも引退して、家に帰って…)
 パパやママと一緒に暮らすんだ、とワクワクするのが土産物リスト。
 両親の好物を色々揃えて、養育している女の子には何を持ってゆこうか?
 「初めまして」と「君のお兄ちゃんだよ」と、差し出すリボンがかかった箱。
 ぬいぐるみがいいか、人形だろうか、それとも美味しいお菓子だろうか。
 女の子の好みは分からないや、と今日も頭を悩ませる。
 もうじき会えるだろう妹、その子に何をあげようかと。海賊だったことは内緒か、土産話に披露してみるか。「海賊船に乗っていたんだよ」と。全く年を取らないままで。
 それもいいよねと、「ネバーランドに行って来たんだから、話せば喜ばれるかもね」と…。

 

         拾われた少年・了

※正統派(?)シロエ生存ED。多分、一番無理がないのが、こういうルート。
 ピーターパンの本が爆発の中でも残るんだったら、シロエ本人も生存可能な筈なのよ、と。






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(またまた勝手に決めちゃって…)
 酷いよね、とジョミーは地味に怒っていた。
 ミュウの船へと連れて来られて、なるしかなかったソルジャー候補。
 なにしろ、自分が悪いのだから仕方ない。
 ミュウたちを導く立場のソルジャー、それを半殺しの目に遭わせたから。…自分のせいで。
 家に帰ろうと船から飛び出し、好き勝手にした結果がソレ。
(…だから、仕方がないんだけれど…)
 今も臥せっているソルジャー・ブルー。
 最強のサイオンを誇るという彼、彼と自分の二人だけしかいないらしいのがタイプ・ブルー。
 他のミュウだと戦えないから、ソルジャー・ブルーの強烈な推しでソルジャー候補なのだけど。
 そういう立場になったのだけれど、如何せん、「候補」。
(…他に候補はいないくせにさ…)
 候補だから、と仕切りまくるのが長老たち。
 今日も今日とて、「おはようございます」と現れたリオ。
 親切な兄貴分だけれども、彼も長老には絶対服従。毎朝、部屋に届けに来るのが…。
(……スケジュール表……)
 今日はこうか、と溜息しか出ない。
 サイオン訓練の時間が山ほど、他の時間もミュウの歴史に帝王学にと、てんこ盛り。
 身体は一つだけしかないのに、ギュウギュウ詰めのスケジュール。
(それに、こっちの都合なんかは…)
 まるで聞いてもくれないんだから、と不満たらたら、怒りMAX。
 ほんの少しだけ、自分の意見を聞いてくれたら…。
(ちょっとくらいは…)
 ぼくだって前向きな気持ち、と思ったりもする。
 「休憩時間は此処で欲しい」とか、「ここの予定を入れ替えたい」とか。


 たった一言、「これでいいか」と確かめて欲しい自分の意見。
 一方的に決めて来ないで、柔軟に。
(疲れて動きたくない日だってあるから…)
 そういう時には訓練は無しで、ひたすら座学にしてくれたならば嬉しい気分。
 疲れた身体で下手に頑張るより、効率だって良さそうな感じ。
(だけど、意見は…)
 ただの一度も聞いてくれずに、リオがスケジュール表を持って来るだけ。
 来る日も来る日も、「おはようございます」と爽やかに。
 「よく眠れましたか?」と、「今日のスケジュールはこれになります」と。
 なんとも辛くて、自由が無いのがソルジャー候補。
 部屋に帰ればオフだけれども、そのオフでさえも自分の意見は通らない。
 「今日は早めに上がりたいのに」と思っていたって、スケジュール表が先に立つから。
 この時間まで、と決められた時間、それが来ないと部屋には帰れないから。
(…これって、真面目に辛いんだけど…!)
 たまにはぼくの意見も聞いてよ、とフツフツと腹が立ってくる。
 長老たちが何処でスケジュールを決めているかは、まるで知らないのだけれど…。
(直訴したなら…)
 いけるかもね、と思わないでもないスケジュール。
 多分、自分がオフの間に集まって決めているだろうから、乗り込んで。
 「ぼくの意見は、こうなんだけど!」と主張して。


 それもいいかも、と考えた直訴。
 思い立ったが吉日と言うし、もう早速に怒鳴り込みたい気分。
(…今日のスケジュールをこなしたら…)
 直訴しよう、と決意を固めた。
 とはいえ、長老たちは何処に集まっているのだろう…?
(会議室かな…?)
 そういう部屋もあったよね、と知っているから、その日のオフを迎えた後。
 「ここまでにしよう」とヒルマンが講義を終えて、立ち去ってから…。
(…確か、こっちで…)
 頃合いや良し、とノックしてみた会議室の扉。
 けれどもシンと音もしないし、人の気配さえ無さそうな感じ。
(ぼくが来たから、黙ったとか…?)
 だったら勝手に入らせて貰う、と勢いよく開け放ってみた扉。
 ところが其処には誰もいなくて、灯りも点いていなかった。薄暗い部屋があるばかり。
(…此処じゃなかったわけ?)
 それなら長老たちの部屋か、と端から突撃していった。
 まずはキャプテンの部屋から始めて、ゼル機関長で、ブラウ航海長。お次がヒルマン、それでも誰もいないからして、エラの部屋まで行ったのに…。
(…何処にもいない…?)
 謎だ、と傾げてしまった首。
 途中でブリッジも覗いたけれども、長老たちはいなかったから。…キャプテンだって。


 いったい何処に、と心当たりを探しまくっても、長老たちは見付からない。
 もう闇雲に駆け回る内に、バッタリとリオに出くわした。
『どうしました、ジョミー?』
 リオの思念はとても優しくて、その瞬間に閃いたこと。
 いつもスケジュール表を届けに来るのはリオだし、もしかしたら、と。
「あのさ、リオ…。長老たちって、何処にいるわけ?」
 ぼくのスケジュールを何処かで決めてる筈なんだけど、と尋ねたら「ええ」と頷いたリオ。
『この時間なら、そうですね。…いつもの所においでですよ』
「それって何処!?」
『M3号ですが…』
「ありがとう、リオ! それって、何処から行けるのかな?」
 M3号という部屋に覚えが無いから、訊いてみた。リオは答えてくれたけれども…。
『ジョミー、何をしに行くんです? あの部屋は…』
「どうせ立ち入り禁止区域とか言うんだろう? ソルジャー候補は!」
 だけど行くんだ、と駆け出した。
 「待って下さい!」と止めるリオの思念を振り切って。
 もうキッパリと無視して走って、広いシャングリラの中を走り続けて…。
(……M3号……)
 此処か、と眺めた普通の扉。「なんだ、居住区と変わらないじゃん」と。


 ソルジャー候補は入れないらしい、M3号という長老たちが集う部屋。
 けれど扉はごくごく普通で、どちらかと言えば…。
(凄く親しみやすい感じで…)
 憩いの空間でもある居住区に激似、恐るるに足らずといった雰囲気。
 きっと長老たちだけが使う、プライベートな部屋なのだろう。休憩室とか、そんな具合に。
(此処でお茶とか飲みながら…)
 ぼくのスケジュールを決めているんだ、と思ったら何だかムカついてくる。こちらは毎日、そのスケジュールに追われまくって、意見も聞いては貰えないのに。
(だけど、此処まで来たんだしね?)
 直訴あるのみ、とノックもしないでバアン! と扉を開け放ったら…。
「なんじゃ、いきなり」
 無礼なヤツじゃな、と振り返ったゼル。…思った通りに飲み物を手にしているけれど…。
(…どうなってるわけ!?)
 此処って、バスルームだったわけ、と丸くなった目。
 何故ならゼルは、長老の衣装を纏う代わりにバスローブ一丁だったから。
「えーっと…」
 失礼しました、と慌てて返した踵。リオが止めたのも、バスルームならば無理はない。お風呂でスケジュールを決められるのは空しいけれども…。
(ズカズカ入っていい場所じゃないし…)
 直訴どころじゃないよね、きっと、と部屋から出ようとした瞬間に…。
「ちょいとお待ちよ、何の用だい?」
 話くらいは聞こうじゃないか、とブラウ機関長が現れた。これまたバスローブ一丁で。
 「せっかく来たなら、アンタも楽しんで行くといいよ」と。


 こうして招き入れられた部屋。長老たちが集うM3号。
「パンツはワシのを貸してやるでな。…ちとキツイかもしれんがのう」
 男性用の更衣室はあっちじゃ、とゼルに渡された水泳パンツ。…そう、どう見ても水着。
「これって…?」
 どうして水泳パンツなんですか、と質問したら、「サウナだからじゃ!」と返したゼル。
「此処はそういう部屋なんじゃ。M3号と言ったら、サウナパーティーじゃ!」
「……サウナパーティー?」
 何ですか、それ、と見開いた瞳。
 サウナだったら知っているけれど、サウナパーティーとは何だろう?
「知らないのかね? 元々は地球の北欧にあった習慣なのだよ」
 ヒルマンが解説してくれた。
 仲良くなるならサウナが一番、いわゆる裸の付き合いなるもの。
 サウナの中でじっくりゆっくり、温まりつつ楽しく歓談。合間に外で軽い食事や飲み物なども。
「…此処って、そういう部屋なんですか?」
「うむ。アルタミラからの生き残り組の憩いの場だな」
 ソルジャー・ブルーもお好きなのだ、とキャプテン・ハーレイが浮かべた笑み。
 「今は臥せっておられるから無理だが、お元気な時には此処がお気に入りだ」と。
「…ふうん…?」
 あんな超絶美形でもサウナに入るのか、と驚いたジョミー。
 偉そうなソルジャーの制服を脱いで、水泳パンツで寛ぐサウナ。外へ出たってバスローブ一丁、その格好で食事に飲み物なのか、と。


 ミュウの長なソルジャー・ブルーはもとより、キャプテンや長老といった面々。
 他のミュウとは違うんです、と一目で分かる偉い連中、彼らが催すサウナパーティー。
(…凄く意外だけど…)
 思ったよりも話の分かる人たちかも、と弾んだ心。
 会議室に集まるわけではなくて、サウナだから。裸の付き合いでのんびり歓談、スケジュールも其処で決めるのだから。
(これなら、ぼくの意見も聞いて貰えそう…)
 きっと話せば分かってくれる、とウキウキ着替えた水泳パンツ。長老たちはサウナの中に戻って行ったし、いざ自分も、と足を踏み入れた途端…。
(…え?)
 何これ、と疑ったサウナの暑さ。有り得ないほどに暑かったから。
「ようこそ、ジョミー・マーキス・シン」
 此処へどうぞ、とエラが案内してくれた席に座ったけれども、噴き出す汗。サウナは、こんなに暑かったろうか…?
(クラクラする…)
 っていうか死にそう、と思った所へ聞こえた声。
「流石はソルジャー候補じゃのう…。M3号の伝統も引き継げそうじゃ」
「そうだな、我々くらいしか楽しめないのがM3号だし…」
 アルタミラで実験動物をやっていた間に鍛えられすぎて、と交わされている恐ろしい会話。
 曰く、サウナは200℃が基本。
 中でも「通」のソルジャー・ブルーが入った時には…。


(…石ストーブに水をぶっかけて、蒸気…)
 それでもうもうと上がるのが湯気、暑さ倍増。
 ソルジャー・ブルーはそれが好みで、付き合える面子はキャプテンと長老の四人だけ。
(有り得ないから…!)
 あの人、何処が弱かったわけ、という心の声を最後に暗転した視界。
 次に目覚めたら部屋のベッドで、リオが看病してくれていて…。
『ですから、お止めしたんです。…M3号はとても無理です、と』
「…それ、早く言って…」
 まだ身体中が煮えてるみたい、と息も絶え絶えに訴えたら。
『…手遅れです、ジョミー。…長老たちは期待しておられますから』
 これからは毎日、サウナパーティーで裸の付き合いだと仰っておられました、という話。
 おまけにソルジャー・ブルーも乗り気で、回復したら入りに来るそうだから…。
(…サウナパーティーの通で、石ストーブに水…)
 そんな人に付き合わされたら死ねる、と思ったけれども、既に手遅れ。
 M3号に入ってしまった後だし、サウナパーティーも知ってしまったから…。
(……ぼくの人生……)
 明日からサウナでアルタミラ体験、とガクガクブルブル、憩いの空間、M3号。
 実験動物だった時代に無駄に鍛えられた、長老たちやらソルジャー・ブルー。
 その連中と一緒にサウナで、気分は実験動物だから。
 歴史で習っただけの世界を、明日からサウナでガンガン体験させられるから…。

 

         憩いのサウナ・了

※地味に原作から引っ張ったらしい、「M3号」と「200℃」だというサウナの温度。
 いや、アルタミラの生き残り組ってタフそうだから…。こんな世界もアリなのかも、と!






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(…最後まで、私は一人か…)
 其処で途絶えたキースの意識。崩れゆく地球の地の底深くで。
 全ては終わって、最期を迎えた筈なのだけれど…。
(…何処だ?)
 ノアか、と目覚めた青空の下。
 地球に青空などある筈がないし、いつの間にノアに来たのだろう、と。
 ついでに…。
(ずいぶん呑気に寝ていやがるな…)
 生きてやがるし、と眺めた自分の隣。どう見ても生きて寝ているジョミーが転がっていた。
 燦々と照り付ける太陽と青空、それにジリジリ焼ける砂浜。
 どう考えてもノアだけれども、誰が此処まで運んだのか。それに運んだなら、砂浜なんぞに放置しなくても良さそうなのに。
(私もジョミーも、致命傷だったぞ?)
 治療したなら、最後まで責任を持って欲しい、と頭の中で文句を垂れる間に、目の前をカサカサ通ってゆくカニ。なんとも和やか、小さなカニがハサミを振り振り…。
(ちょっと待て!)
 カニ、とガバッと起き上がったキース。そのカニはノアにいない品種で、いる筈もなくて…。
 何処なんだ、と見回してみたら、浜辺に干されている漁網。それに粗末な掘っ立て小屋と、木で出来た舟が幾つかあるから驚いた。浜に引き上げてある舟はどう見ても…。
(時代劇か!?)
 此処でロケ中なのか、と思った舟のスタイル。それは和船で、SD体制よりも遥か昔の、日本と呼ばれた国に限定の小型船で…。
「おい、ジョミー!」
 起きろ、と乱暴に相棒を叩き起こす間に、ガヤガヤと寄って来た野次馬。これまた立派に日本な衣装とヘアスタイルの団体だったから…。


 てっきりロケだと考えたのに、あまりにも妙な野次馬の台詞。
 「お奉行様を呼ばないと」だとか、「切支丹バテレン」がどうのとか。
(…お奉行様にキリシタンだと…?)
 江戸時代だぞ、と速攻でキースが弾き出した答え。ダテにコンピューターの申し子ではないし、知識の量は半端ない。…本人が使っていなかっただけで。
「ヤバイぞ、ジョミー。…此処は天国ではないようだ」
「なんだって!?」
 そういえば痛いか、とジョミーが抓った自分の頬。それから、まじっとこちらを眺めて…。
「でも、天国だろう? 君が若返っているんだから」
 ナスカに来た頃がそんな感じ、と指摘されて顔を触ってみたら、違っているのが肌のハリ。
(…若返ったなら、天国はこういう仕様なのか…?)
 死んだことが無いから知らなかった、とポカンと眺めた江戸時代な世界。確かチョンマゲ、そう呼ばれていたヘアスタイルがデフォらしいけれど…。
(私もジョミーも…)
 チョンマゲになっていないんだが、と解せない間に、来てしまったのが岡っ引。
 「貴様ら、切支丹バテレンだろう!」とお縄になって、しょっ引かれる羽目になったけれども。


「あっさりと無罪放免だったな?」
 拷問は覚悟していたんだが、とジョミーに言ったら、「それはまあ…」と返ったウインク。
「これでも一応、ミュウの長だし…。その辺の所はプロってことで」
 ひとつ、とニンマリ。
(…心理操作か…)
 でなければ何か書き換えたんだな、と理解した。敵意丸出しだった奉行所の連中、その辺の心象などをまるっと。
「なるほどな…。そこまではいいが、これから、どうする?」
 天国どころか江戸時代だぞ、とジョミーに解説してやった。しかも江戸の町にいるようだ、と。
 E-1077で、マザー・イライザに一方的に流し込まれた知識。
 それを総動員して分析の結果、自分とジョミーは「花のお江戸」に飛ばされたらしい。
「江戸って…。死んだと思ったら、次は江戸時代になると言うのか?」
「そのようだ。おまけに普通に…」
 腹も減るらしいな、と情けない気分。
 この世界では浮きまくりの衣装とヘアスタイルの方はともかく、食べて行こうにも無いのが金。
(…あそこで団子を売ってるんだが…)
 団子の値段はいくらだったか、と思っても金は持っていないし、ジョミーのサイオンに期待するしかないのだろうか、と溜息だけれど。
「ちょいと、アンタら、異人さんかね?」
 団子屋の女将に声を掛けられた。「異人さんなら、薬を持っていないかねえ?」と。


 それが切っ掛け、馴染んでしまった江戸の町。粋に着物も着こなして。
「キース、風邪薬が切れそうだから…」
 風邪薬の材料はどれだったっけ、とガサゴソとやっているジョミー。二人暮らしの長屋の中で。
「いい加減に覚えてくれ。風邪薬がそっちで、腹痛がだな…」
 それと材料の調達の方も忘れるなよ、と返すキースは町医者。ジョミーは助手という立場。
 なにしろマザー・イライザ仕込みの知識があるから、務まった医者。
(団子屋の女将に頼まれた時に…)
 薬も金も持っていないが、と乗ってやった相談。女将が自分で手に入れられる材料、それを元に薬を作ってやった。ジョミーのサイオンも借りたりして。
(サイオンを使えば、成分の抽出が可能だからな…)
 出来てしまった抗生物質、劇的に治った団子屋の女将の幼い息子。
 お蔭で、女将が今の長屋を世話してくれた。「腕のいい医者だ」と評判も立って、気付けば今や江戸の住人。
(その辺の医者に負けはしないぞ)
 華岡青洲がなんぼのもんだ、と全身麻酔もドンと来い。
 相棒はミュウの長だからして、薬が無くても全身麻酔をかけられる。サイオンだけで。
 もう評判は江戸中に広がり、上様からお呼びがかかる日だって近そうだけれど…。


 ある夜、すっかり夜も更けた頃に、ドンドンと扉を叩く音がした。
 「先生、キース先生!」と。
「…なんだ?」
 ジョミーと二人で起きて行ったら、みすぼらしい身なりの男が一人。腕に抱えた大根一本、他に持ち物は見当たらなくて。
「すみません、こんな夜の夜中に…。それに金も無くて…」
 この大根がもう唯一の財産で、と男はガバッと頭を下げた。
 男が言うには、一人息子の具合が悪い。金も無いから寝かせておいたら、今や高熱で命の危機。けれど財産は大根一本、この大根が前払い金で…。
「後は死ぬまで働きますんで! 先生のトコで!」
 下働きでも何でもします、と泣き付かなくても、子供くらいは救ってやれる。
「いや、大根はどうでもいいから…。息子さんが治ったら煮てやるといい」
 行くぞ、とジョミーに持たせた薬箱。
 男に連れられて行った長屋では、幼い子供が苦しんでいた。どうやら肺炎、今なら間に合う。
 まずは薬で、熱が下がるまでジョミーと二人で世話してやって…。
「もう大丈夫だ。後はこっちの薬をだな…」
 一日に三回飲ませてやって…、と渡して「礼はいいから」と後にした家。「お大事に」と。
 さて…、と長屋の方へと歩き出したら…。


「…なんだ!?」
 いきなりストンと抜けた足元、気付けば雲の上にいた。…ジョミーとセットで。
 ついでにすっかり江戸に馴染んだ、着物スタイルも消滅で…。
「キース先輩!」
 お疲れ様でした、と向こうから駆けて来るシロエ。その向こうにはサムだって。
「おーい、キース! ジョミーも、久しぶりだよなー!」
 マジでお疲れ、とサムに肩を叩かれ、ジョミーの方にもミュウな連中。
 遥か昔にメギドでガチンコ勝負をしていた、ちょっと恐ろしいソルジャー・ブルーとか。
「…天国か?」
 此処は、と訊いたら、それで正解。だったら、どうして江戸時代などにいたのだろう…?
 天国に来るには、あそこを必ず通って来ないといけないだとか、と考えていたら。
「君が医者ねえ…。美味しい所を、地球の男に持って行かれるとは…」
 残念だよ、と嫌味ったらしいソルジャー・ブルー。「ぼくの後継者を差し置いて」と。
「…美味しい所だと? どういう意味だ?」
「君が助けた、あの子供だよ。…大根は要らない、とタダで治した、あの子供がね…」
 実は世界を変える子供だ、という説明。
 助けた子供は普通に生きて、後には江戸の町火消し。…けれども、彼の遥か後の子孫が…。


「ミュウ因子の根絶を防ぐだと!?」
 そういうオチか、と仰天した。
 グランド・マザーに与えられていた、絶対命令。それはミュウを殲滅することだけれど、もっと容易にミュウを滅ぼす方法はあった。ミュウ因子そのものを排除すること。
 それが出来ないよう、グランド・マザーに組み込まれなかったプログラム。
 最後まで揉めたミュウ因子の扱い、「それを残せ」と決めた人間が、あの子供の子孫。
「…じゃあ、あの子が…。ぼくたちミュウの大恩人の…」
 御先祖様か、とジョミーも丸くしている目。
 それを助けに、ぼくとキースが江戸時代まで行ったのか、と。
「…そのようだ。私は人生を懸けて、ミュウと戦い続けていたが…」
 その切っ掛けを自分が作ったのか、と泣き笑い。
 死んだ後まで江戸で町医者、ジョミーと二人で救った何人もの患者。何故、町医者かと、何度も不思議に思ったけれども、このためかと。
 評判と腕を上げに上げまくって、一人の子供とミュウの未来を救ったか、と。
(…人生、最後まで分からんものだな…)
 ミュウの連中も「お疲れ様」と大歓迎だし、これからパーティーらしいけれども、やっと天国。
 なんとも長い道のりだった、とフウと溜息。
 死んだ後まで長かったよなと、まさかジョミーと江戸の長屋で町医者なんて、と…。

 

          江戸の町医者・了

※キースとジョミーの珍道中。…花のお江戸で長屋の住人、町医者なキースなんですけど。
 それでもキッチリ、アニテラとリンク。これも一種のタイムスリップ…?






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