心の守り人
青の間へようこそ。
落ち着くまで、此処にいてくれていい。
ぼくで良ければ、ただ、側にいよう。
君の心が求めるのならば、聞き役にも、話し相手にもなろう。
けれども、君が話したいのが、ぼくでなければ、ほら、あそこにはジョミーがいる。
そう、そこの灯りの向こう側だよ。
ジョミーに青の間は似合わない、と不思議に思っているのかい?
ならば、あそこへ行ってみたまえ。
すぐそこのように見えているけれど、あそこは「ジョミーの場所」なんだよ。
君が思う「ジョミー」が、あそこに居場所を持っているから、そこを訪ねてゆくといい。
もしかすると、アタラクシアにあったジョミーの部屋かもしれないね。
シャングリラにあった部屋かもしれない。
それとも、ナスカの頃のものかな?
行ってみれば分かるよ、君が一番会いたい「ジョミー」が、君が来るのを待っているから。
おや、君が会いたいのは、ぼくでも、ジョミーでもないと?
なるほと、ミュウの誰かではなくて、キースに会いたかったのか…。
かまわないとも、そこの灯りの向こうに扉が見えるだろう?
扉の向こうに、きっとキースがいる筈だから、好きに通ってゆけばいい。
君が会いたいキースに会えるよ、ステーション時代のキースでも、国家主席でも。
キースに会ったら、よろしく伝えてくれたまえ。
彼の方でも知っているしね、此処から「キースの所に繋がる」扉があることを。
そして、君は、と…。
ああ、マツカなら、そこの扉だね。
キースの所と同じ扉からも行けるのだけれど、キース抜きなら、そっちの扉を勧めるよ。
ほら、君だって知っているだろう?
キースに「マツカ、お前にお客人だ」などと言われたら最後、マツカは上手く話せなくなる。
だからキースに気付かれないよう、会いに行くのが一番だしね。
大丈夫、ぼくは誰にも話しはしないから。
君が「そちらの扉」を通って、マツカに会いに出掛けたなんて。
ああ、君はシロエに会いに来たのか。
だったら、そっちの扉を通って、あとは朝までずっと真っ直ぐ…。
これはね、シロエが言っていたんだ。
「ぼくに会いたい人が来たなら、そう案内して貰えませんか」と楽しそうにね。
ネバーランドに行く道を真似てあるんだそうだ。
「本当は、二つ目の角を右に曲がるのも、やりたかったんですけどね」とも言っていたっけ。
機械弄りが趣味だからかな、そんなに通路を複雑にしたら、お客さんが困ってしまうのに。
それから君は、と…。
トォニィに会いにゆくなら、その向こう側の灯りだね。
もちろんフィシスにだって会えるよ、グレイブに会える扉もある。
サムも、スウェナも、アルテラだって、誰にだって会いに行けるんだ。
何故、青の間から、何処へでも道が繋がるのか、って?
此処が一番、分かりやすくて、誰でも辿り着けるからだよ。
考えてみたまえ、シャングリラを知らない人は一人もいないだろう?
青の間だって、みんな知っている。
けれど、ジョミーがアタラクシアで住んでいた家を、一瞬で思い出せるかい?
キースの執務室でも同じで、シロエがステーションでいた部屋も同じだ。
「ああ、あそこ!」と、パッと頭に浮かぶ場所なら、この青の間が手っ取り早い。
そういうわけで、ぼくが案内人を兼ねているという所かな。
さあ、好きな灯りを、扉を選んで、会いたい人に会いにゆくといい。
会えたら、君が満足するまで、ゆっくり過ごして、また、何度でも会いに来ればいい。
ぼくはいつでも、案内人を務めてあげるし、ぼくで良ければ話も聞こう。
そのために此処で待っているのが、ぼくの役目というものだから。
ぼくはもう、ソルジャーじゃなくて、ただのブルーで、君の行先を示すだけだよ。
どの灯りでも、どの扉でも、本当に「選ぶ」のは、君だ。
誰に会って何を話したいのか、どういう風に過ごしたいのか、決めるのもね。
会いたい人に会って、君の心が落ち着くのならば、それでいい。
君が会いたい人が誰でも、話したいことが何であっても、全ては君の心次第だ。
どんな時でも、どんな場所でも、此処への扉は開いているから、青の間へ来てくれたまえ。
そこから先へは、君が自由に進むといい。
君が会いたい人に会えたら、きっと間違いなく、心がほどけてゆくだろう。
悩みにしても、悲しみにしても、一人で抱え込んでいるより、誰かに話してみるのがいい。
「聞くだけだぞ」と言い放ちそうなキースにしたって、会えれば君も満足だろう?
一方的に話すだけでも、心は軽くなるものなのだし、好きに話して帰ればいい。
どの扉からでも、どの灯りからでも、君が会いたい人の所へ、真っ直ぐ出掛けて行って…。
心の守り人・了
※羽田で日航機が炎上した後、地震の被害も拡大してゆく1月2日という悪夢のような日。
日付が変わって1月3日になってしまった後、祈るような気持ちで書きました。
書き上げて最終チェックを終えたら、午前2時39分。
夜中にpixiv に投下した後、慌てて寝たからでしょうか、幸か不幸か、初夢は無し。
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