(…マザー牧場の羊たち…)
順調に育っているようで何より、とシロエが浮かべた嘲りの笑み。
Eー1044の夜の個室で、昼間の光景を思い返すと、他の言葉は出て来ない。
(到着してから、まだ一週間ほどなのに…)
すっかり、マザー・イライザの虜だよね、と可笑しくなる。
先日、着いたばかりの、エリート候補生の卵たちの群れ。
成人検査を終えた直後で、おどおどしていた。
それが今では、どうだろう。
彼らの話の中身と言ったら、マザー・イライザへの全面的な信頼に溢れている。
(…あんなに良く出来た母親は、いないって?)
此処に着いた時には、故郷の母の話が多かったのに、と呆れ果ててしまう。
引き離されて来た、故郷を思って、涙を零した者さえ見掛けた。
ところが、今の彼らの「母」というのは、マザー・イライザに他ならない。
(一体、どの辺りから入れ替わったんだろう。お見事としか…)
何という手際のいい機械なのだろう、と「傍観者」の立場だからこそ見えて来る。
故郷の母より、マザー・イライザを慕い始めている、当人に自覚は無さそうだった。
鮮やかなまでに「人の心」を操る機械。
本来、機械は、人間の暮らしを便利にしてゆくために、作り出されていた存在。
(…機械弄りが趣味だった上に、エネルゲイアの出身だから…)
そういった機械の歴史については、一般人よりも遥かに詳しい。
機械が「人間を超えてゆく」ことが危惧されていた時代も、黎明期にはあったと聞いている。
あらゆるデータを拾い集めた「賢い機械」が、人間を超えた力を持つことが恐れられた。
(…そんな時代に、きちんと線引きしてくれていたなら…)
マザー・イライザも、地球にいるというグランド・マザーも、いなかったろう。
SD体制を敷くにしたって、機械に与えられた領域は、あくまで「人間の監視」のみ。
規則を破って、地球への降下を試みそうな者を、探し出しては、チェックするとか。
(…人間だけの力じゃ、監視するにも、限界があるしね…)
機械がするのは、「この人間の行動に注意するべき」と、関係機関に知らせることだけ。
後の始末は、「人間」がつける。
厄介事を引き起こす前に、捕えに出掛けて、厳重に注意してから、家に戻すなど。
家に戻した後の監視は、再び機械任せにしておけばいい。
そんな機械を作っておいたら、勝手に記憶を操作したりする「化け物」は生まれて来なかった。
今の時代は、明らかに「機械が主役」になっている世界。
機械が囁き掛ける言葉や、導いてゆこうとする方向に、「人間」は、黙って従ってゆく。
「逆らう」ことなど、考えもしないで、「マザー牧場の羊」に育ってゆくばかり。
(…なんて時代だろう…)
どの辺で道を誤ったんだろう、と疑問だけれども、その件についての説などは無い。
きっと「機械に都合のいいよう」、関連付けられた論文などは、抹消されているのだろう。
酷い時代だと思うけれども、考えようによっては、「いい」のかもしれない。
(…機械の言葉に従ってさえいれば、苦労することなんか何も無くって…)
思い通りにいかない「何か」があるなら、地球くらいかな、と分かってはいる。
一度は滅びた「地球」という星は、人類の聖地と呼ばれていた。
ごく少数の「選ばれた人間」以外に、本物の「地球」へ降下することは許されていない。
一生、地球に焦がれ続けて、地球を一目も見られないまま、命を終える者が殆ど。
(…地球があるらしい、ソル太陽系にさえも、近付けなくて…)
太陽さえも見られないのが普通なんだ、と考えてみると、機械に従って生きても損は無さそう。
殆どの者が「見られない」なら、さほど羨ましいとも思わないだろう。
そう考えてみると、「機械に逆らって、生きてゆく」より、従った方が、楽な人生。
逆らって生きてゆく道に、メリットは、あまりありそうにない。
(…ぼくは、せっせと逆らい続けて、パパとママの記憶も、消され続けて…)
コールされる度に、故郷の記憶が薄れるけれども、コールされない者たちは違う。
機械に「都合のいい」人材なのだし、危険な要素を取り除かなくても、そのままでいい。
(たまに、食堂とかで、故郷の話に花を咲かせているグループとかが…)
あったりするから、彼らの中の「故郷の記憶」は、おぼろげとはいえ、残っているのだろう。
どんな景色の場所で育っていたのか、養父母たちとの暮らしは、どうだったのかも。
(…ぼくだって、マザー・イライザに逆らうことなんか、思い付きもしないで…)
言われる通りに生きていたなら、楽に暮らしていただろう。
此処に来る時、ピーターパンの本を失っていれば、そうなった気がする。
(…成人検査に、荷物を持って行くのは、禁止なんだし…)
規則通りに没収された、とガッカリした後には、切り替えるしかない。
マザー・イライザの指示に従い、メンバーズ・エリートに選ばれるように努力するだけ。
(…どういった風に生きて行ったら、確実に選んで貰えるんだろう、って…)
尋ねる相手は、マザー・イライザ。
頼りになるのも、マザー・イライザ。
そうやって「マザー・イライザ」に依存して、メンバーズ・エリートに選ばれた後には…。
(…グランド・マザーが、どうすればいいのか、導いてくれるし…)
何も間違えはしないで、順風満帆、と思うけれども、どちらの生き方が正しいのだろう。
信じるものは「機械」か、「自分自身の心」にすべきか、悩ましい時代。
「自分自身を信じるシロエ」が正しかったかどうかは、後の時代まで分からない。
(…正しかったの、ぼくの方だと評価されたら…)
本望だけど、と今のシロエは祈るしかない。
後の時代を生きる人間たちの評価が、「セキ・レイ・シロエ」を支持してくれることを…。
信じるもの・了
※自分の信念を信じて生きるか、機械の言いなりになって生きるか。
シロエは前者を選びましたけど、ピーターパンの本を失っていたら、違ったのかも…。
順調に育っているようで何より、とシロエが浮かべた嘲りの笑み。
Eー1044の夜の個室で、昼間の光景を思い返すと、他の言葉は出て来ない。
(到着してから、まだ一週間ほどなのに…)
すっかり、マザー・イライザの虜だよね、と可笑しくなる。
先日、着いたばかりの、エリート候補生の卵たちの群れ。
成人検査を終えた直後で、おどおどしていた。
それが今では、どうだろう。
彼らの話の中身と言ったら、マザー・イライザへの全面的な信頼に溢れている。
(…あんなに良く出来た母親は、いないって?)
此処に着いた時には、故郷の母の話が多かったのに、と呆れ果ててしまう。
引き離されて来た、故郷を思って、涙を零した者さえ見掛けた。
ところが、今の彼らの「母」というのは、マザー・イライザに他ならない。
(一体、どの辺りから入れ替わったんだろう。お見事としか…)
何という手際のいい機械なのだろう、と「傍観者」の立場だからこそ見えて来る。
故郷の母より、マザー・イライザを慕い始めている、当人に自覚は無さそうだった。
鮮やかなまでに「人の心」を操る機械。
本来、機械は、人間の暮らしを便利にしてゆくために、作り出されていた存在。
(…機械弄りが趣味だった上に、エネルゲイアの出身だから…)
そういった機械の歴史については、一般人よりも遥かに詳しい。
機械が「人間を超えてゆく」ことが危惧されていた時代も、黎明期にはあったと聞いている。
あらゆるデータを拾い集めた「賢い機械」が、人間を超えた力を持つことが恐れられた。
(…そんな時代に、きちんと線引きしてくれていたなら…)
マザー・イライザも、地球にいるというグランド・マザーも、いなかったろう。
SD体制を敷くにしたって、機械に与えられた領域は、あくまで「人間の監視」のみ。
規則を破って、地球への降下を試みそうな者を、探し出しては、チェックするとか。
(…人間だけの力じゃ、監視するにも、限界があるしね…)
機械がするのは、「この人間の行動に注意するべき」と、関係機関に知らせることだけ。
後の始末は、「人間」がつける。
厄介事を引き起こす前に、捕えに出掛けて、厳重に注意してから、家に戻すなど。
家に戻した後の監視は、再び機械任せにしておけばいい。
そんな機械を作っておいたら、勝手に記憶を操作したりする「化け物」は生まれて来なかった。
今の時代は、明らかに「機械が主役」になっている世界。
機械が囁き掛ける言葉や、導いてゆこうとする方向に、「人間」は、黙って従ってゆく。
「逆らう」ことなど、考えもしないで、「マザー牧場の羊」に育ってゆくばかり。
(…なんて時代だろう…)
どの辺で道を誤ったんだろう、と疑問だけれども、その件についての説などは無い。
きっと「機械に都合のいいよう」、関連付けられた論文などは、抹消されているのだろう。
酷い時代だと思うけれども、考えようによっては、「いい」のかもしれない。
(…機械の言葉に従ってさえいれば、苦労することなんか何も無くって…)
思い通りにいかない「何か」があるなら、地球くらいかな、と分かってはいる。
一度は滅びた「地球」という星は、人類の聖地と呼ばれていた。
ごく少数の「選ばれた人間」以外に、本物の「地球」へ降下することは許されていない。
一生、地球に焦がれ続けて、地球を一目も見られないまま、命を終える者が殆ど。
(…地球があるらしい、ソル太陽系にさえも、近付けなくて…)
太陽さえも見られないのが普通なんだ、と考えてみると、機械に従って生きても損は無さそう。
殆どの者が「見られない」なら、さほど羨ましいとも思わないだろう。
そう考えてみると、「機械に逆らって、生きてゆく」より、従った方が、楽な人生。
逆らって生きてゆく道に、メリットは、あまりありそうにない。
(…ぼくは、せっせと逆らい続けて、パパとママの記憶も、消され続けて…)
コールされる度に、故郷の記憶が薄れるけれども、コールされない者たちは違う。
機械に「都合のいい」人材なのだし、危険な要素を取り除かなくても、そのままでいい。
(たまに、食堂とかで、故郷の話に花を咲かせているグループとかが…)
あったりするから、彼らの中の「故郷の記憶」は、おぼろげとはいえ、残っているのだろう。
どんな景色の場所で育っていたのか、養父母たちとの暮らしは、どうだったのかも。
(…ぼくだって、マザー・イライザに逆らうことなんか、思い付きもしないで…)
言われる通りに生きていたなら、楽に暮らしていただろう。
此処に来る時、ピーターパンの本を失っていれば、そうなった気がする。
(…成人検査に、荷物を持って行くのは、禁止なんだし…)
規則通りに没収された、とガッカリした後には、切り替えるしかない。
マザー・イライザの指示に従い、メンバーズ・エリートに選ばれるように努力するだけ。
(…どういった風に生きて行ったら、確実に選んで貰えるんだろう、って…)
尋ねる相手は、マザー・イライザ。
頼りになるのも、マザー・イライザ。
そうやって「マザー・イライザ」に依存して、メンバーズ・エリートに選ばれた後には…。
(…グランド・マザーが、どうすればいいのか、導いてくれるし…)
何も間違えはしないで、順風満帆、と思うけれども、どちらの生き方が正しいのだろう。
信じるものは「機械」か、「自分自身の心」にすべきか、悩ましい時代。
「自分自身を信じるシロエ」が正しかったかどうかは、後の時代まで分からない。
(…正しかったの、ぼくの方だと評価されたら…)
本望だけど、と今のシロエは祈るしかない。
後の時代を生きる人間たちの評価が、「セキ・レイ・シロエ」を支持してくれることを…。
信じるもの・了
※自分の信念を信じて生きるか、機械の言いなりになって生きるか。
シロエは前者を選びましたけど、ピーターパンの本を失っていたら、違ったのかも…。
PR
(…恐らく私が、最初で最後なのだろうな…)
人類の理想の統治者というのは、とキースは深い溜息を零した。
宇宙空間に夜は無くても、地球標準時で言えば夜更けで、旗艦ゼウスも夜間照明。
国家主席の地位に就いたけれども、「後を継ぐ者」に心当たりが無い。
人類とミュウの戦いは最終局面、人類側の敗色が濃かった。
負けた場合は、国家主席も退任するしかないだろう。
統治するのがミュウになったら、国家主席などは要らない。
そうなった時に、誰が人類を導いてゆくのか。
「キース」が「ただの国家主席」だったら、退任した後でも、道は作れる。
最高統治者がミュウに移るだけで、政権もミュウが取っていようが、やりようはある。
(人類だけの世界しか認められない者には、自治区域でも設けてやれば…)
ミュウを受け入れられない者だけの「国家もどき」で、それなりに生きてゆけるだろう。
もっとも、SD体制は破壊されるだろうから、人口は必然的に先細りになる。
人口出産を続けるとしても、ミュウは「人類だけ」を区別はしない。
(ミュウと共存出来るように育てて、自然に融和するのだろうし…)
どうしようもない、と思考はマイナスにしか向かってゆかない。
ミュウは「進化の必然」だったことを知った。
そのせいで、SD体制を治める機械も「ミュウの因子」を排除出来ない。
SD体制が崩壊した後となったら、ミュウを異分子と決め付けることは不可能だった。
(最初の間は、ごく僅かしかミュウが生まれないとしても…)
自然に数は増えるのだろうし、何より人類の子供は「ミュウを嫌わない」ように育ってゆく。
「人類だけで作った、国家もどき」の自治区域に、移住する者は誰もいないだろう。
(…頭の固い、古い人類どもが、どんな暮らしをしているのかを、若い人類が…)
聞き取り調査などをするためだけに、訪れる程度の「滅びゆく世界」。
けれども、そういった場所を「作り上げられる」者が、「いそうにない」。
(…機械はキースを作って、国家主席にまで仕立て上げたが…)
後継者を育てようとはしていないようで、頭角を現す「若手」も見当たらなかった。
つまり「キース」が「理想の統治者」、機械は「キースの後継者」を考慮してはいない。
(私が最後だとすれば、人類は…)
ミュウに敗北すると同時に、導く者さえも失う、とキースは頭を抱えたくなる。
「キース」は、「ただの国家主席」と認識されてはいないだろう。
ミュウにしてみれば「ナスカ」、即ち「ジルベスター・セブン」の惨劇を引き起こした者。
「ナスカ崩壊」から後の長い戦いにしても、最高指揮官は「キース」でしかない。
ミュウが統治者になった暁には、「戦犯」という扱いになる。
どれほどミュウが寛大であっても、「戦犯」に「人類の指導者」は任せられない。
(…ミュウの間でも、揉めるだろうし、人類の側にしてみても…)
「戦犯」の烙印を押された「指導者」を立てておくのは、不安だろう。
何か起きた時に、ミュウの側と上手く交渉出来るのか。
「かつての、わだかまり」のせいで、渋られる面が出ては来ないか。
(…何のしがらみも持たない、新しく出て来た者がトップだったら…)
ミュウの側でも、便宜を図ってくれそうではある。
指導経験さえも浅いわけだし、「人類だけの、国家もどき」でも、気に掛けるだろう。
天災に見舞われたりした折には、要請せずとも、察知して救助の船がやって来る。
食料不足などがあったら、不足している品は何なのか、問い合わせが来て、救援物資も。
(そういったことが期待出来ないのが、私が指導者だった場合で…)
救援要請を無視されるとか、取り次ぐ者が「止めてしまって」上に届かない事態とか。
個人的に「恨みを抱いている者」が、「多そう」なのが「キース・アニアン」。
人類が「次の指導者」を持っているなら、そちらが継いでゆけばいい。
「キース」が戦犯になって裁かれていようが、次の指導者は無関係だし、自由に動ける。
移住を希望する者を纏めて、新天地を見付けて「人類だけの、国家もどき」を作れるだろう。
(…しかし、機械は、どう考えてみても…)
次の指導者を考慮していないし、作られている気配さえ無い。
「キースが与かり知らない所」で、密かに作っているとも考えにくい。
(…機械は、ミュウを滅ぼすためだけに、私を作り上げて…)
そのシナリオでしか、道筋を描いていないのだろう。
SD体制が始まった時点のままで「思考停止」で、柔軟に思考することが出来ない。
(…負け戦になるのは見えているから、私がいなくなった時には…)
人類は「指導する者」を失い、ミュウの世界に「飲まれてゆく」より他に無かった。
「人類だけの、国家もどき」は生まれないまま、否応なしに「ミュウと暮らす」道だけ。
(…私が死のうが、生きたままで指導者の地位を失おうが…)
人類だけの世界は「其処で終わりだ」と、奈落の底を覗き込んだような気分に陥る。
長く続いた「人類の歴史」に、「キース」が幕を下ろすことになる。
「キース」が国家主席を退いた後には、人類の世界は、もう「残せない」。
(……私が、幕を下ろす者か……)
よりにもよって、機械に無から作られた生命体が、と嘆きたくても、どうしようもない。
自分の生まれは変えられないし、次の指導者もいない以上は、そうなるのだろう。
せめて誰かに引き継げたなら、と思うけれども、気付くのが少し遅すぎたらしい。
今から探している暇などは無いし、「キース」は幕を下ろすしかない。
SD体制の遥か前から、長く栄え続けた、「人類」という種族が生きた舞台に…。
幕を下ろす者・了
※キースの後継者を、機械は作っていない気しかしません。原作は、まさにソレ。
グランド・マザーが「全権をあなたに」と言ってましたけど、先を考えていないとしか…。
人類の理想の統治者というのは、とキースは深い溜息を零した。
宇宙空間に夜は無くても、地球標準時で言えば夜更けで、旗艦ゼウスも夜間照明。
国家主席の地位に就いたけれども、「後を継ぐ者」に心当たりが無い。
人類とミュウの戦いは最終局面、人類側の敗色が濃かった。
負けた場合は、国家主席も退任するしかないだろう。
統治するのがミュウになったら、国家主席などは要らない。
そうなった時に、誰が人類を導いてゆくのか。
「キース」が「ただの国家主席」だったら、退任した後でも、道は作れる。
最高統治者がミュウに移るだけで、政権もミュウが取っていようが、やりようはある。
(人類だけの世界しか認められない者には、自治区域でも設けてやれば…)
ミュウを受け入れられない者だけの「国家もどき」で、それなりに生きてゆけるだろう。
もっとも、SD体制は破壊されるだろうから、人口は必然的に先細りになる。
人口出産を続けるとしても、ミュウは「人類だけ」を区別はしない。
(ミュウと共存出来るように育てて、自然に融和するのだろうし…)
どうしようもない、と思考はマイナスにしか向かってゆかない。
ミュウは「進化の必然」だったことを知った。
そのせいで、SD体制を治める機械も「ミュウの因子」を排除出来ない。
SD体制が崩壊した後となったら、ミュウを異分子と決め付けることは不可能だった。
(最初の間は、ごく僅かしかミュウが生まれないとしても…)
自然に数は増えるのだろうし、何より人類の子供は「ミュウを嫌わない」ように育ってゆく。
「人類だけで作った、国家もどき」の自治区域に、移住する者は誰もいないだろう。
(…頭の固い、古い人類どもが、どんな暮らしをしているのかを、若い人類が…)
聞き取り調査などをするためだけに、訪れる程度の「滅びゆく世界」。
けれども、そういった場所を「作り上げられる」者が、「いそうにない」。
(…機械はキースを作って、国家主席にまで仕立て上げたが…)
後継者を育てようとはしていないようで、頭角を現す「若手」も見当たらなかった。
つまり「キース」が「理想の統治者」、機械は「キースの後継者」を考慮してはいない。
(私が最後だとすれば、人類は…)
ミュウに敗北すると同時に、導く者さえも失う、とキースは頭を抱えたくなる。
「キース」は、「ただの国家主席」と認識されてはいないだろう。
ミュウにしてみれば「ナスカ」、即ち「ジルベスター・セブン」の惨劇を引き起こした者。
「ナスカ崩壊」から後の長い戦いにしても、最高指揮官は「キース」でしかない。
ミュウが統治者になった暁には、「戦犯」という扱いになる。
どれほどミュウが寛大であっても、「戦犯」に「人類の指導者」は任せられない。
(…ミュウの間でも、揉めるだろうし、人類の側にしてみても…)
「戦犯」の烙印を押された「指導者」を立てておくのは、不安だろう。
何か起きた時に、ミュウの側と上手く交渉出来るのか。
「かつての、わだかまり」のせいで、渋られる面が出ては来ないか。
(…何のしがらみも持たない、新しく出て来た者がトップだったら…)
ミュウの側でも、便宜を図ってくれそうではある。
指導経験さえも浅いわけだし、「人類だけの、国家もどき」でも、気に掛けるだろう。
天災に見舞われたりした折には、要請せずとも、察知して救助の船がやって来る。
食料不足などがあったら、不足している品は何なのか、問い合わせが来て、救援物資も。
(そういったことが期待出来ないのが、私が指導者だった場合で…)
救援要請を無視されるとか、取り次ぐ者が「止めてしまって」上に届かない事態とか。
個人的に「恨みを抱いている者」が、「多そう」なのが「キース・アニアン」。
人類が「次の指導者」を持っているなら、そちらが継いでゆけばいい。
「キース」が戦犯になって裁かれていようが、次の指導者は無関係だし、自由に動ける。
移住を希望する者を纏めて、新天地を見付けて「人類だけの、国家もどき」を作れるだろう。
(…しかし、機械は、どう考えてみても…)
次の指導者を考慮していないし、作られている気配さえ無い。
「キースが与かり知らない所」で、密かに作っているとも考えにくい。
(…機械は、ミュウを滅ぼすためだけに、私を作り上げて…)
そのシナリオでしか、道筋を描いていないのだろう。
SD体制が始まった時点のままで「思考停止」で、柔軟に思考することが出来ない。
(…負け戦になるのは見えているから、私がいなくなった時には…)
人類は「指導する者」を失い、ミュウの世界に「飲まれてゆく」より他に無かった。
「人類だけの、国家もどき」は生まれないまま、否応なしに「ミュウと暮らす」道だけ。
(…私が死のうが、生きたままで指導者の地位を失おうが…)
人類だけの世界は「其処で終わりだ」と、奈落の底を覗き込んだような気分に陥る。
長く続いた「人類の歴史」に、「キース」が幕を下ろすことになる。
「キース」が国家主席を退いた後には、人類の世界は、もう「残せない」。
(……私が、幕を下ろす者か……)
よりにもよって、機械に無から作られた生命体が、と嘆きたくても、どうしようもない。
自分の生まれは変えられないし、次の指導者もいない以上は、そうなるのだろう。
せめて誰かに引き継げたなら、と思うけれども、気付くのが少し遅すぎたらしい。
今から探している暇などは無いし、「キース」は幕を下ろすしかない。
SD体制の遥か前から、長く栄え続けた、「人類」という種族が生きた舞台に…。
幕を下ろす者・了
※キースの後継者を、機械は作っていない気しかしません。原作は、まさにソレ。
グランド・マザーが「全権をあなたに」と言ってましたけど、先を考えていないとしか…。
(…ぼくのパパとママ…)
機械が選び出したんだよね、とシロエは、両親を思い浮かべようと試みる。
Eー1077の個室は、夜が更けてゆく時間。
マザー・イライザが現れないよう、ベッドの端に腰を下ろして、懐かしい面影を追う。
(……駄目だ……)
やっぱり顔がぼやけてしまう、と悔しくなって拳をベッドに叩き付けた。
コールされる度に、両親の顔立ちを忘れてゆくのは分かっている。
(呼ばれないよう、気を付けていれば…)
忘れ去るのは防げそうでも、憎い機械に逆らわずにはいられない。
とはいえ、シロエのために両親を与えたのも、機械だった。
『マザー・イライザ』ではなかっただけで、何処に置かれているのだろうか。
(…地球にいるという、グランド・マザーは、養父母選びにまでは…)
多分、関わってはいないと思う。
成人検査を行うユニバーサル・コントロールか、その上に位置する機械辺りか。
養父母を選ぶのが先か、子供を選び出すのが先になるのか、それもシロエは知らない。
SD体制の時代は、人の進路は区分けされていて、他のコースの詳細は掴みにくい。
(一般人コースに進んだ人が、ステーションを出る時に合わせて…)
赤ん坊を選んで与えているのか、一定期間を経過してから与えるのか。
(…分からないよね…)
一般人向けのステーションだったら、常識だろうけど、とシロエは深い溜息を零す。
両親を慕い続ける割には、シロエは余りにも「家族」というものが分かってはいない。
(ぼくのパパとママ、ああいう人たちだったけけど…)
機械の采配が何処まで作用するのか、それさえも謎に包まれている。
エネルゲイアで過ごした子供時代の記憶は、おぼろげだけに、友人の両親も不明瞭だった。
そんな中でも「覚えている」ことが、一つだけある。
(どの子も、育ての親に似ていて、違和感が無かったんだ…)
今の時代には有り得ない話だけども、「実子なんです」と言われても、信じられたろう。
シロエの両親の場合も、シロエに「何処か似ている」顔立ちだったと記憶している。
機械が「養父母」を選ぶ基準の一つは、そういったことに違いない。
実子でも通りそうな「親」が選ばれるのなら、他の要素は何なのだろう。
(赤ん坊の性格は、決まってはいなくて、育つ過程で決まるんだから…)
相性で決めはしないだろうし、と考えた所で、思考が別の方向を向いた。
「シロエ」の性格を「作り上げた」のが、両親だったら、違っていたなら、どうだったか。
『ピーターパン』の本を与える代わりに、現実に根差した本を渡すような親とか。
(…ぼくのパパとママは、本が好きだったから…)
色々と与えてくれたけれども、違うタイプの親だって存在している。
休日になったら、子供をスポーツなどに連れ出すタイプは多かったと思う。
サッカーの観戦だとか、公園に出掛けてジョギングだとか。
(…ぼくは、どっちも未経験かも…)
成人検査で忘れ去っていなければね、と自信は無くても、その手の親ではなかった。
研究者の父と、お菓子作りが得意だった母は、揃って、スポーツ好きだとは言えない。
(…性格を作り出すのが、養父母だったら…)
ぼくのパパとママが、違う人だった場合は、ぼくも別人だったわけだ、と恐ろしい。
今頃は機械の言いなりになって、「マザー牧場の羊」そのものの「シロエ」だろうか。
機械に逆らって生きることなど「考えもしない」、模範生かもしれない。
(…頭脳の出来は、育ちとは違うから…)
此処にいる「シロエ」が、そうなったように、Eー1077に来ている優秀な生徒。
憎い「キース」とも、上手くやってゆける。
いずれ何処かで「メンバーズ」同士、再会出来る時が来たなら、似合いのエリート。
(…そんな人生、ぼくは御免で…)
進みたくないよ、と嘆かなくても、実際、その道を歩んではいない。
けれど万一、機械が「選び出した両親」が、別の二人で、シロエを育て上げた時は…。
(…そっちの道を真っ直ぐ進んで、振り返ったりもせずに…)
歩いて行く結果になっていたんだ、と背筋が冷たく凍えてしまいそう。
今、此処に「シロエ」が生きているのは、あくまで「偶然」。
機械が選び出した「両親」と、「シロエ」という子供が結び付いた時だけの「奇跡」。
なんてことだ、と情けないけれど、「シロエ」は機械に「作り出された」。
故郷にいる「両親」を与えられたからこそ、「シロエ」という人格が生まれ出てきた。
(…それって、酷いよ…)
憎い機械に選び出された「出会い」の結果が「自分」だなんて、悲しくて虚しい。
自分の意志で生きていたって、その「意志」は、誰が育ててくれたお蔭で生まれたのか。
(…あんまり過ぎるし、考え過ぎだと思いたいけれど…)
真実は多分、そうなんだよね、とシロエの頬を涙が伝い落ちてゆく。
「機械」抜きでは、「シロエ」は「生まれない」から。
懐かしい両親を選んで「与えれてくれた」モノも機械で、全ては機械の手のひらの上。
何処まで逃げて、無事に逃げおおせたつもりだろうが、「シロエ」は機械が作った。
その人生が終わる瞬間、頭をよぎる「想い」も、その発端は「機械」。
機械が選んだ「両親」が育てて、「シロエ」という「人格」を作り上げたのだから…。
始まりは機械・了
※シロエを育てた養父母が、別の人だったら、と考えた所から生まれたお話です。
原作にはなかった「ピーターパンの本」の影響、大きそうだと思うの、作者だけかも。
機械が選び出したんだよね、とシロエは、両親を思い浮かべようと試みる。
Eー1077の個室は、夜が更けてゆく時間。
マザー・イライザが現れないよう、ベッドの端に腰を下ろして、懐かしい面影を追う。
(……駄目だ……)
やっぱり顔がぼやけてしまう、と悔しくなって拳をベッドに叩き付けた。
コールされる度に、両親の顔立ちを忘れてゆくのは分かっている。
(呼ばれないよう、気を付けていれば…)
忘れ去るのは防げそうでも、憎い機械に逆らわずにはいられない。
とはいえ、シロエのために両親を与えたのも、機械だった。
『マザー・イライザ』ではなかっただけで、何処に置かれているのだろうか。
(…地球にいるという、グランド・マザーは、養父母選びにまでは…)
多分、関わってはいないと思う。
成人検査を行うユニバーサル・コントロールか、その上に位置する機械辺りか。
養父母を選ぶのが先か、子供を選び出すのが先になるのか、それもシロエは知らない。
SD体制の時代は、人の進路は区分けされていて、他のコースの詳細は掴みにくい。
(一般人コースに進んだ人が、ステーションを出る時に合わせて…)
赤ん坊を選んで与えているのか、一定期間を経過してから与えるのか。
(…分からないよね…)
一般人向けのステーションだったら、常識だろうけど、とシロエは深い溜息を零す。
両親を慕い続ける割には、シロエは余りにも「家族」というものが分かってはいない。
(ぼくのパパとママ、ああいう人たちだったけけど…)
機械の采配が何処まで作用するのか、それさえも謎に包まれている。
エネルゲイアで過ごした子供時代の記憶は、おぼろげだけに、友人の両親も不明瞭だった。
そんな中でも「覚えている」ことが、一つだけある。
(どの子も、育ての親に似ていて、違和感が無かったんだ…)
今の時代には有り得ない話だけども、「実子なんです」と言われても、信じられたろう。
シロエの両親の場合も、シロエに「何処か似ている」顔立ちだったと記憶している。
機械が「養父母」を選ぶ基準の一つは、そういったことに違いない。
実子でも通りそうな「親」が選ばれるのなら、他の要素は何なのだろう。
(赤ん坊の性格は、決まってはいなくて、育つ過程で決まるんだから…)
相性で決めはしないだろうし、と考えた所で、思考が別の方向を向いた。
「シロエ」の性格を「作り上げた」のが、両親だったら、違っていたなら、どうだったか。
『ピーターパン』の本を与える代わりに、現実に根差した本を渡すような親とか。
(…ぼくのパパとママは、本が好きだったから…)
色々と与えてくれたけれども、違うタイプの親だって存在している。
休日になったら、子供をスポーツなどに連れ出すタイプは多かったと思う。
サッカーの観戦だとか、公園に出掛けてジョギングだとか。
(…ぼくは、どっちも未経験かも…)
成人検査で忘れ去っていなければね、と自信は無くても、その手の親ではなかった。
研究者の父と、お菓子作りが得意だった母は、揃って、スポーツ好きだとは言えない。
(…性格を作り出すのが、養父母だったら…)
ぼくのパパとママが、違う人だった場合は、ぼくも別人だったわけだ、と恐ろしい。
今頃は機械の言いなりになって、「マザー牧場の羊」そのものの「シロエ」だろうか。
機械に逆らって生きることなど「考えもしない」、模範生かもしれない。
(…頭脳の出来は、育ちとは違うから…)
此処にいる「シロエ」が、そうなったように、Eー1077に来ている優秀な生徒。
憎い「キース」とも、上手くやってゆける。
いずれ何処かで「メンバーズ」同士、再会出来る時が来たなら、似合いのエリート。
(…そんな人生、ぼくは御免で…)
進みたくないよ、と嘆かなくても、実際、その道を歩んではいない。
けれど万一、機械が「選び出した両親」が、別の二人で、シロエを育て上げた時は…。
(…そっちの道を真っ直ぐ進んで、振り返ったりもせずに…)
歩いて行く結果になっていたんだ、と背筋が冷たく凍えてしまいそう。
今、此処に「シロエ」が生きているのは、あくまで「偶然」。
機械が選び出した「両親」と、「シロエ」という子供が結び付いた時だけの「奇跡」。
なんてことだ、と情けないけれど、「シロエ」は機械に「作り出された」。
故郷にいる「両親」を与えられたからこそ、「シロエ」という人格が生まれ出てきた。
(…それって、酷いよ…)
憎い機械に選び出された「出会い」の結果が「自分」だなんて、悲しくて虚しい。
自分の意志で生きていたって、その「意志」は、誰が育ててくれたお蔭で生まれたのか。
(…あんまり過ぎるし、考え過ぎだと思いたいけれど…)
真実は多分、そうなんだよね、とシロエの頬を涙が伝い落ちてゆく。
「機械」抜きでは、「シロエ」は「生まれない」から。
懐かしい両親を選んで「与えれてくれた」モノも機械で、全ては機械の手のひらの上。
何処まで逃げて、無事に逃げおおせたつもりだろうが、「シロエ」は機械が作った。
その人生が終わる瞬間、頭をよぎる「想い」も、その発端は「機械」。
機械が選んだ「両親」が育てて、「シロエ」という「人格」を作り上げたのだから…。
始まりは機械・了
※シロエを育てた養父母が、別の人だったら、と考えた所から生まれたお話です。
原作にはなかった「ピーターパンの本」の影響、大きそうだと思うの、作者だけかも。
(もしも、私がいなかったなら…)
サムは幸せだっただろうか、とキースは夜更けに、ふと考えた。
昼間にサムの見舞いに行ったけれども、サムは普段の通りだった。
キースに「赤のおじちゃん!」と呼び掛け、両親の話をしてくれた。
子供時代にサムを育てた養父母は、今もサムと一緒にいるらしい。
(…サムは、私と出会ったばかりに…)
人生どころか、心まで狂う羽目に陥り、治る見込みは全く無い。
「キース」に会わずに生きていたなら、今頃はどうしていただろう。
(そもそも、ジョミー・マーキス・シンが元凶なのだが…)
あいつの友人だったせいで、と思いはしても、大元は「キース」自身だと言える。
マザー・イライザが「キース」を作らなかったら、サムは「選ばれていない」。
(…私を育てるための人材などは、必要無いのだし…)
ジョミー・マーキス・シンが存在しようが、サムの人生に影響は出ない。
(Eー1077にも、来ていたかどうか…)
来ないかもな、とキースは深い溜息を零す。
サムがエリート候補生に向いていたとは思えない。
(宇宙船の事故が起こった時に、私を助けてくれたことは事実でも…)
他の面では劣等生で、卒業後の進路も一般人と変わりはしなかった。
Eー1077の卒業生なら、同じパイロットにしても、違う航路に配属されていたろう。
エリートならではの腕を買われて、磁気嵐が酷いなどの難所が多い所へ。
(…しかし…)
サムは普通の航路に行かされたんだ、とキースにも分かる。
相応しい腕を持っていないなら、一般人のコースに放り込まれて終わる。
キースが知る限り、Eー1077の卒業生で「一般人」になった者は二人だけ。
その二人とはサムとスウェナで、どちらも「キース」の友人だった。
(…マザー・イライザが選び出したか、指示を出したか…)
どちらなのかは謎だけれども、「キース」のために選び出された。
(ミュウの長になった者と、幼馴染だったというだけで…)
二人とも「選ばれる」ことになったとはいえ、それは「キース」が存在していたせい。
(…私が最初から作られていないとか、未完成だったとか…)
そういった時は、サムもスウェナも「本来、行くべきだったコース」に行ったのだろう。
(恐らく、Eー1077ではなくて…)
サムなら、普通のパイロットなどを育てるステーションだったかもしれない。
(パイロットよりも、もっと平凡な…)
職種のステーションに送られ、卒業した後は「養父」だったろうか。
(あいつなら、向いていただろうな…)
昼の間は仕事に出掛けて、それ以外の時間は「子供との暮らし」に充てる生活。
サムが病院で語ってくれる世界を、サムが「自分の子供」と築いてゆく。
成人検査で別れる日までを、慈しんで育てて。
(スウェナも、Eー1077に来ないのならば…)
一般人向けのステーションで教育を受けて、似合いの「誰か」と出会っただろう。
離婚したと聞く男にしたって、一般コースで出会っていたなら、今も一緒に暮らしていそう。
(…離婚した後、子供は他所にやったらしいが…)
その子を手放して養母を辞めるなど、考え付きもしないに違いない。
(サムもスウェナも、私のせいで…)
人生を台無しにされてしまったわけだ、とキースは唇をギュっと噛みそうになる。
シロエも「キースのために選ばれた」ばかりに、宇宙に散った。
「キース」が存在していなかったなら、彼も普通に生きられたと思う。
(ミュウの因子を持っていようが、マツカのように…)
機械の監視を潜り抜けた例があるわけなのだし、「シロエ」ならば可能だったろう。
(頭がいい分、自分は普通ではないらしい、と気付くだろうし…)
マツカ以上に上手くやれそう。
優秀だから、と選び出されて、Eー1077に来ていたとしても、その後が変わる。
(他人とは違う部分を隠して、爪も牙も見事に隠し通して…)
表面上は「大人しい候補生」として、保身に努める。
「キース」を刺激するための素材でないなら、挑戦的に生きる必要は無い。
(こだわっていた、子供時代の記憶にしても…)
機械がシロエに要求していた「消去」のレベルは、低かった可能性が高い。
本当に「忘れてしまった」ような者では、後々、人生に支障が出て来るだろうから。
サムとスウェナと、それからシロエ。
この三人を考えるほどに、「キース・アニアン」の罪は大きい。
(私さえ、存在していなければ…)
彼らは普通に生きられたのだ、と思えて来るから、自分自身を呪いたくなる。
他の誰かを犠牲にしてまで育った命に、どれほどの価値があると言うのか。
しかも「機械が無から作った生命体」など、果たして「命」と呼んでいいのか、それも怪しい。
(…機械が神の領域を侵して、私を作り出したのだしな…)
無価値な上に、罪深い存在が「私」なのか、と悔しくなっても、どうすることも出来ない。
いつか、罪を償える日が来るとしたなら、その時は多分…。
(…世界はミュウのものになっているのだろうな…)
今は危険な異分子なのだが、と夜の窓の外を見るキースは、まだ本当のことを知らない。
ミュウが「進化の必然」であるという事実も、システムが「ミュウを排除出来ない」ことも。
だからこそ「罪」を噛み締めるけれど、キースの考えは間違っていない。
機械が作った生命体でも、キースには心が宿っている。
「自らの罪」を意識して生きていける以上は、罪は機械が背負うべきもの。
真実が明らかになった時には、キースが背負わされた「重すぎる罪」は、消え去るだろう。
今はまだ、その日は見えもしないけれども、人類とミュウの先の未来で…。
罪深い命・了
※キースのせいで人生が狂った人間、アニテラだと三人もいるんですよね。
原作の場合、スウェナはキースと直接の関わりはありません。犠牲者が一名プラス。
サムは幸せだっただろうか、とキースは夜更けに、ふと考えた。
昼間にサムの見舞いに行ったけれども、サムは普段の通りだった。
キースに「赤のおじちゃん!」と呼び掛け、両親の話をしてくれた。
子供時代にサムを育てた養父母は、今もサムと一緒にいるらしい。
(…サムは、私と出会ったばかりに…)
人生どころか、心まで狂う羽目に陥り、治る見込みは全く無い。
「キース」に会わずに生きていたなら、今頃はどうしていただろう。
(そもそも、ジョミー・マーキス・シンが元凶なのだが…)
あいつの友人だったせいで、と思いはしても、大元は「キース」自身だと言える。
マザー・イライザが「キース」を作らなかったら、サムは「選ばれていない」。
(…私を育てるための人材などは、必要無いのだし…)
ジョミー・マーキス・シンが存在しようが、サムの人生に影響は出ない。
(Eー1077にも、来ていたかどうか…)
来ないかもな、とキースは深い溜息を零す。
サムがエリート候補生に向いていたとは思えない。
(宇宙船の事故が起こった時に、私を助けてくれたことは事実でも…)
他の面では劣等生で、卒業後の進路も一般人と変わりはしなかった。
Eー1077の卒業生なら、同じパイロットにしても、違う航路に配属されていたろう。
エリートならではの腕を買われて、磁気嵐が酷いなどの難所が多い所へ。
(…しかし…)
サムは普通の航路に行かされたんだ、とキースにも分かる。
相応しい腕を持っていないなら、一般人のコースに放り込まれて終わる。
キースが知る限り、Eー1077の卒業生で「一般人」になった者は二人だけ。
その二人とはサムとスウェナで、どちらも「キース」の友人だった。
(…マザー・イライザが選び出したか、指示を出したか…)
どちらなのかは謎だけれども、「キース」のために選び出された。
(ミュウの長になった者と、幼馴染だったというだけで…)
二人とも「選ばれる」ことになったとはいえ、それは「キース」が存在していたせい。
(…私が最初から作られていないとか、未完成だったとか…)
そういった時は、サムもスウェナも「本来、行くべきだったコース」に行ったのだろう。
(恐らく、Eー1077ではなくて…)
サムなら、普通のパイロットなどを育てるステーションだったかもしれない。
(パイロットよりも、もっと平凡な…)
職種のステーションに送られ、卒業した後は「養父」だったろうか。
(あいつなら、向いていただろうな…)
昼の間は仕事に出掛けて、それ以外の時間は「子供との暮らし」に充てる生活。
サムが病院で語ってくれる世界を、サムが「自分の子供」と築いてゆく。
成人検査で別れる日までを、慈しんで育てて。
(スウェナも、Eー1077に来ないのならば…)
一般人向けのステーションで教育を受けて、似合いの「誰か」と出会っただろう。
離婚したと聞く男にしたって、一般コースで出会っていたなら、今も一緒に暮らしていそう。
(…離婚した後、子供は他所にやったらしいが…)
その子を手放して養母を辞めるなど、考え付きもしないに違いない。
(サムもスウェナも、私のせいで…)
人生を台無しにされてしまったわけだ、とキースは唇をギュっと噛みそうになる。
シロエも「キースのために選ばれた」ばかりに、宇宙に散った。
「キース」が存在していなかったなら、彼も普通に生きられたと思う。
(ミュウの因子を持っていようが、マツカのように…)
機械の監視を潜り抜けた例があるわけなのだし、「シロエ」ならば可能だったろう。
(頭がいい分、自分は普通ではないらしい、と気付くだろうし…)
マツカ以上に上手くやれそう。
優秀だから、と選び出されて、Eー1077に来ていたとしても、その後が変わる。
(他人とは違う部分を隠して、爪も牙も見事に隠し通して…)
表面上は「大人しい候補生」として、保身に努める。
「キース」を刺激するための素材でないなら、挑戦的に生きる必要は無い。
(こだわっていた、子供時代の記憶にしても…)
機械がシロエに要求していた「消去」のレベルは、低かった可能性が高い。
本当に「忘れてしまった」ような者では、後々、人生に支障が出て来るだろうから。
サムとスウェナと、それからシロエ。
この三人を考えるほどに、「キース・アニアン」の罪は大きい。
(私さえ、存在していなければ…)
彼らは普通に生きられたのだ、と思えて来るから、自分自身を呪いたくなる。
他の誰かを犠牲にしてまで育った命に、どれほどの価値があると言うのか。
しかも「機械が無から作った生命体」など、果たして「命」と呼んでいいのか、それも怪しい。
(…機械が神の領域を侵して、私を作り出したのだしな…)
無価値な上に、罪深い存在が「私」なのか、と悔しくなっても、どうすることも出来ない。
いつか、罪を償える日が来るとしたなら、その時は多分…。
(…世界はミュウのものになっているのだろうな…)
今は危険な異分子なのだが、と夜の窓の外を見るキースは、まだ本当のことを知らない。
ミュウが「進化の必然」であるという事実も、システムが「ミュウを排除出来ない」ことも。
だからこそ「罪」を噛み締めるけれど、キースの考えは間違っていない。
機械が作った生命体でも、キースには心が宿っている。
「自らの罪」を意識して生きていける以上は、罪は機械が背負うべきもの。
真実が明らかになった時には、キースが背負わされた「重すぎる罪」は、消え去るだろう。
今はまだ、その日は見えもしないけれども、人類とミュウの先の未来で…。
罪深い命・了
※キースのせいで人生が狂った人間、アニテラだと三人もいるんですよね。
原作の場合、スウェナはキースと直接の関わりはありません。犠牲者が一名プラス。
(…命の恩人…?)
サムが、とシロエは、瞳を大きく見開いた。
Eー1077の夜の個室で、キースのデータを調べていたら、出て来た記録。
…新入生を乗せた宇宙船の、衝突事故で…)
被害の拡大を防ぐ目的で、ステーションの一部が切り離されたらしい。
キースとサムは、二人きりで其処に居合わせた。
(新入生の船の人たちを助けに、キースとサムだけが出動して…)
無事に全員を救い出した直後に、事故を起こした区画が分離されて、爆破処分された。
サムは一足先に逃げていたけれど、キースは出遅れ、宇宙空間に飛ばされたという。
(そのままだったら、キースの命は…)
無かったかもしれない。
自力でステーションまで戻る手段を、キースは持っていなかった。
(下手に行ったら、サムも巻き添えになっていたのに…)
サムは迷わず、キースを救いに飛び出して行った。
首尾よく助けて戻ったらしいけれども、そんな記録は「見たことが無い」。
第一、宇宙船が事故に遭った事実も、シロエは今日まで知らなかった。
何度もデータを読み直す間に、事故の相手が「悪かった」ことに気付いた。
宇宙海軍の船で、民間船よりも上位に立っている船。
(…何故、宇宙海軍の船が、ステーションなんかに…?)
来るような用事は何も無い筈、と思えて来るから、事故の発端自体が「怪しい」。
(…事故を起こして、キースの手腕を確かめたとか…?)
マザー・イライザだったら、やりかねない。
キースが「失敗していた」場合は、新入生たちの命が奪われるけれど、問題ではない。
たかが「新入生」の「候補生」くらい、代わりは幾らでも送られて来る。
(…キースは上手く対処したけど、その後が…)
少しばかり読みが外れて、宇宙の藻屑と消える所を、サムが救ったということだろう。
ところが「サム」は、将来有望な人材ではない。
マザー・イライザも期待してはいなくて、キースの「おまけ」で「友人」に過ぎない。
だから評価をされることなく、宇宙船の事故ごと「忘れ去られた」英雄。
(…サムは覚えているだろうけど、他の生徒は…)
何も知らずに過ごしている上、宇宙船の事故も公の記録に残ってはいない。
ステーションの一部を分離したほど、重大な事故を「表向きでは、知る者がいない」。
(宇宙船に乗った新入生の中には、スウェナも入っているんだけど…)
彼女も、事故をどれほど覚えているのか。
「キースの友人」に含まれる以上、忘れ果ててはいないにしても、曖昧かもしれない。
(…命の恩人だと思っていたなら、もっと態度が違ったような…)
ステーションを出たのは、キースに失恋したせいにしてもね、とシロエは顎に手を当てた。
「命の恩人」に惚れ込んだけれど、袖にされたなら、出て行くことも確かに有り得る。
とはいえ、普段のスウェナの「キース」に対する姿勢は、どうだったか。
(…惚れていたせいで、ああだったのか、記憶が曖昧だったせいか…)
分からないよね、と思うくらいに、「宇宙船の事故」は「伏せられている」。
サムが「キースの命の恩人」なことも、少なくとも生徒は、誰一人として「知らない」。
なんてことだろう、とシロエは「事故の記録」を呆然と眺める。
これほどの事故を伏せるためには、マザー・イライザの「力」だけでは足りない。
(宇宙海軍の方にも、マザー・イライザのような機械がいるにしたって…)
Eー1077で暮らしていた者の記憶を、どう処理するか。
片っ端からコールしたって、上手くいかないことだろう。
一人を呼び出して処理する間に、他の者たちの間に広がり、「記憶」の楔が打ち込まれる。
(コールされて忘れ去った筈の生徒が、また耳にして…)
イタチごっこのような具合に、いつまで経っても「忘れ去られない」ことになりそう。
(生徒の他にも、大勢の人が暮らしているんだし…)
一斉に記憶を操作しないと、綺麗サッパリ「記録ごと消す」ことは出来そうにない。
(…そういう係が、いない限りは…)
事故の記録は消せやしない、と気付いたシロエの背筋が冷えて行く。
(…サムとキースと、スウェナ以外は…)
何も覚えていない状態だったら、事故の記録は消せるけれども、そう出来るのなら…。
(…ぼくが此処に来た後にも、そんな類の何かが起こっていたのに…)
覚えていないこともあるよね、とシロエは恐ろしくなった。
機械を欺き、出し抜いたつもりになっていたって、マザー・イライザの手のひらの上。
夜にベッドで眠る間に、「記憶操作を担う係」が、候補生やら職員やらの記憶を…。
(全部書き換えてしまっていたなら、ぼくは絶対、気が付かないし…)
騙されたままになってしまうよ、と怖くなるから、今夜は「覚え書き」用のノートは…。
(…読み返したりしたら、眠れなくなって…)
ついでに「消された記憶」を見つけ出すかも、と思うものだから、読まないでおこう。
もっと冷静に振り返れる日に、改めて、一番古いノートから…。
(ぼくの知らない「何かの出来事」が書かれていないか、確かめなくちゃ…)
怖いけれどね、と決意したけれども、どうだろう。
そう「決心した」ことが「機械にバレていた」なら、きっと明日には…。
(覚えていなくて、今の考えを書き留めようとしていたら…)
急に眠くなってしまって、出来ないのかも、と恐ろしくなって、「試す」のをやめる。
機械に負けたことになっても、其処の所は「かまわない」。
「今、この瞬間に、ぼくは機械に負けたんだ」と、自覚しながら眠り込むより、撤退を選ぶ。
それは「自分の意志」で選んだ道になるから、勇気ある撤退なだけで、敗北ではない。
(…負けるよりかは…)
撤退するさ、とシロエはベッドに入った。
明日になったら「忘れていたって」、負け戦よりはマシに違いないから…。
勇気ある撤退・了
※サムがキースを救った事故の記録は、本当に伏せられていそう。忘れ去られた真実。
記憶を操作している場面は、別の所であったんですよね。其処から思い付いたお話です。
サムが、とシロエは、瞳を大きく見開いた。
Eー1077の夜の個室で、キースのデータを調べていたら、出て来た記録。
…新入生を乗せた宇宙船の、衝突事故で…)
被害の拡大を防ぐ目的で、ステーションの一部が切り離されたらしい。
キースとサムは、二人きりで其処に居合わせた。
(新入生の船の人たちを助けに、キースとサムだけが出動して…)
無事に全員を救い出した直後に、事故を起こした区画が分離されて、爆破処分された。
サムは一足先に逃げていたけれど、キースは出遅れ、宇宙空間に飛ばされたという。
(そのままだったら、キースの命は…)
無かったかもしれない。
自力でステーションまで戻る手段を、キースは持っていなかった。
(下手に行ったら、サムも巻き添えになっていたのに…)
サムは迷わず、キースを救いに飛び出して行った。
首尾よく助けて戻ったらしいけれども、そんな記録は「見たことが無い」。
第一、宇宙船が事故に遭った事実も、シロエは今日まで知らなかった。
何度もデータを読み直す間に、事故の相手が「悪かった」ことに気付いた。
宇宙海軍の船で、民間船よりも上位に立っている船。
(…何故、宇宙海軍の船が、ステーションなんかに…?)
来るような用事は何も無い筈、と思えて来るから、事故の発端自体が「怪しい」。
(…事故を起こして、キースの手腕を確かめたとか…?)
マザー・イライザだったら、やりかねない。
キースが「失敗していた」場合は、新入生たちの命が奪われるけれど、問題ではない。
たかが「新入生」の「候補生」くらい、代わりは幾らでも送られて来る。
(…キースは上手く対処したけど、その後が…)
少しばかり読みが外れて、宇宙の藻屑と消える所を、サムが救ったということだろう。
ところが「サム」は、将来有望な人材ではない。
マザー・イライザも期待してはいなくて、キースの「おまけ」で「友人」に過ぎない。
だから評価をされることなく、宇宙船の事故ごと「忘れ去られた」英雄。
(…サムは覚えているだろうけど、他の生徒は…)
何も知らずに過ごしている上、宇宙船の事故も公の記録に残ってはいない。
ステーションの一部を分離したほど、重大な事故を「表向きでは、知る者がいない」。
(宇宙船に乗った新入生の中には、スウェナも入っているんだけど…)
彼女も、事故をどれほど覚えているのか。
「キースの友人」に含まれる以上、忘れ果ててはいないにしても、曖昧かもしれない。
(…命の恩人だと思っていたなら、もっと態度が違ったような…)
ステーションを出たのは、キースに失恋したせいにしてもね、とシロエは顎に手を当てた。
「命の恩人」に惚れ込んだけれど、袖にされたなら、出て行くことも確かに有り得る。
とはいえ、普段のスウェナの「キース」に対する姿勢は、どうだったか。
(…惚れていたせいで、ああだったのか、記憶が曖昧だったせいか…)
分からないよね、と思うくらいに、「宇宙船の事故」は「伏せられている」。
サムが「キースの命の恩人」なことも、少なくとも生徒は、誰一人として「知らない」。
なんてことだろう、とシロエは「事故の記録」を呆然と眺める。
これほどの事故を伏せるためには、マザー・イライザの「力」だけでは足りない。
(宇宙海軍の方にも、マザー・イライザのような機械がいるにしたって…)
Eー1077で暮らしていた者の記憶を、どう処理するか。
片っ端からコールしたって、上手くいかないことだろう。
一人を呼び出して処理する間に、他の者たちの間に広がり、「記憶」の楔が打ち込まれる。
(コールされて忘れ去った筈の生徒が、また耳にして…)
イタチごっこのような具合に、いつまで経っても「忘れ去られない」ことになりそう。
(生徒の他にも、大勢の人が暮らしているんだし…)
一斉に記憶を操作しないと、綺麗サッパリ「記録ごと消す」ことは出来そうにない。
(…そういう係が、いない限りは…)
事故の記録は消せやしない、と気付いたシロエの背筋が冷えて行く。
(…サムとキースと、スウェナ以外は…)
何も覚えていない状態だったら、事故の記録は消せるけれども、そう出来るのなら…。
(…ぼくが此処に来た後にも、そんな類の何かが起こっていたのに…)
覚えていないこともあるよね、とシロエは恐ろしくなった。
機械を欺き、出し抜いたつもりになっていたって、マザー・イライザの手のひらの上。
夜にベッドで眠る間に、「記憶操作を担う係」が、候補生やら職員やらの記憶を…。
(全部書き換えてしまっていたなら、ぼくは絶対、気が付かないし…)
騙されたままになってしまうよ、と怖くなるから、今夜は「覚え書き」用のノートは…。
(…読み返したりしたら、眠れなくなって…)
ついでに「消された記憶」を見つけ出すかも、と思うものだから、読まないでおこう。
もっと冷静に振り返れる日に、改めて、一番古いノートから…。
(ぼくの知らない「何かの出来事」が書かれていないか、確かめなくちゃ…)
怖いけれどね、と決意したけれども、どうだろう。
そう「決心した」ことが「機械にバレていた」なら、きっと明日には…。
(覚えていなくて、今の考えを書き留めようとしていたら…)
急に眠くなってしまって、出来ないのかも、と恐ろしくなって、「試す」のをやめる。
機械に負けたことになっても、其処の所は「かまわない」。
「今、この瞬間に、ぼくは機械に負けたんだ」と、自覚しながら眠り込むより、撤退を選ぶ。
それは「自分の意志」で選んだ道になるから、勇気ある撤退なだけで、敗北ではない。
(…負けるよりかは…)
撤退するさ、とシロエはベッドに入った。
明日になったら「忘れていたって」、負け戦よりはマシに違いないから…。
勇気ある撤退・了
※サムがキースを救った事故の記録は、本当に伏せられていそう。忘れ去られた真実。
記憶を操作している場面は、別の所であったんですよね。其処から思い付いたお話です。
