(…命の恩人…?)
サムが、とシロエは、瞳を大きく見開いた。
Eー1077の夜の個室で、キースのデータを調べていたら、出て来た記録。
…新入生を乗せた宇宙船の、衝突事故で…)
被害の拡大を防ぐ目的で、ステーションの一部が切り離されたらしい。
キースとサムは、二人きりで其処に居合わせた。
(新入生の船の人たちを助けに、キースとサムだけが出動して…)
無事に全員を救い出した直後に、事故を起こした区画が分離されて、爆破処分された。
サムは一足先に逃げていたけれど、キースは出遅れ、宇宙空間に飛ばされたという。
(そのままだったら、キースの命は…)
無かったかもしれない。
自力でステーションまで戻る手段を、キースは持っていなかった。
(下手に行ったら、サムも巻き添えになっていたのに…)
サムは迷わず、キースを救いに飛び出して行った。
首尾よく助けて戻ったらしいけれども、そんな記録は「見たことが無い」。
第一、宇宙船が事故に遭った事実も、シロエは今日まで知らなかった。
何度もデータを読み直す間に、事故の相手が「悪かった」ことに気付いた。
宇宙海軍の船で、民間船よりも上位に立っている船。
(…何故、宇宙海軍の船が、ステーションなんかに…?)
来るような用事は何も無い筈、と思えて来るから、事故の発端自体が「怪しい」。
(…事故を起こして、キースの手腕を確かめたとか…?)
マザー・イライザだったら、やりかねない。
キースが「失敗していた」場合は、新入生たちの命が奪われるけれど、問題ではない。
たかが「新入生」の「候補生」くらい、代わりは幾らでも送られて来る。
(…キースは上手く対処したけど、その後が…)
少しばかり読みが外れて、宇宙の藻屑と消える所を、サムが救ったということだろう。
ところが「サム」は、将来有望な人材ではない。
マザー・イライザも期待してはいなくて、キースの「おまけ」で「友人」に過ぎない。
だから評価をされることなく、宇宙船の事故ごと「忘れ去られた」英雄。
(…サムは覚えているだろうけど、他の生徒は…)
何も知らずに過ごしている上、宇宙船の事故も公の記録に残ってはいない。
ステーションの一部を分離したほど、重大な事故を「表向きでは、知る者がいない」。
(宇宙船に乗った新入生の中には、スウェナも入っているんだけど…)
彼女も、事故をどれほど覚えているのか。
「キースの友人」に含まれる以上、忘れ果ててはいないにしても、曖昧かもしれない。
(…命の恩人だと思っていたなら、もっと態度が違ったような…)
ステーションを出たのは、キースに失恋したせいにしてもね、とシロエは顎に手を当てた。
「命の恩人」に惚れ込んだけれど、袖にされたなら、出て行くことも確かに有り得る。
とはいえ、普段のスウェナの「キース」に対する姿勢は、どうだったか。
(…惚れていたせいで、ああだったのか、記憶が曖昧だったせいか…)
分からないよね、と思うくらいに、「宇宙船の事故」は「伏せられている」。
サムが「キースの命の恩人」なことも、少なくとも生徒は、誰一人として「知らない」。
なんてことだろう、とシロエは「事故の記録」を呆然と眺める。
これほどの事故を伏せるためには、マザー・イライザの「力」だけでは足りない。
(宇宙海軍の方にも、マザー・イライザのような機械がいるにしたって…)
Eー1077で暮らしていた者の記憶を、どう処理するか。
片っ端からコールしたって、上手くいかないことだろう。
一人を呼び出して処理する間に、他の者たちの間に広がり、「記憶」の楔が打ち込まれる。
(コールされて忘れ去った筈の生徒が、また耳にして…)
イタチごっこのような具合に、いつまで経っても「忘れ去られない」ことになりそう。
(生徒の他にも、大勢の人が暮らしているんだし…)
一斉に記憶を操作しないと、綺麗サッパリ「記録ごと消す」ことは出来そうにない。
(…そういう係が、いない限りは…)
事故の記録は消せやしない、と気付いたシロエの背筋が冷えて行く。
(…サムとキースと、スウェナ以外は…)
何も覚えていない状態だったら、事故の記録は消せるけれども、そう出来るのなら…。
(…ぼくが此処に来た後にも、そんな類の何かが起こっていたのに…)
覚えていないこともあるよね、とシロエは恐ろしくなった。
機械を欺き、出し抜いたつもりになっていたって、マザー・イライザの手のひらの上。
夜にベッドで眠る間に、「記憶操作を担う係」が、候補生やら職員やらの記憶を…。
(全部書き換えてしまっていたなら、ぼくは絶対、気が付かないし…)
騙されたままになってしまうよ、と怖くなるから、今夜は「覚え書き」用のノートは…。
(…読み返したりしたら、眠れなくなって…)
ついでに「消された記憶」を見つけ出すかも、と思うものだから、読まないでおこう。
もっと冷静に振り返れる日に、改めて、一番古いノートから…。
(ぼくの知らない「何かの出来事」が書かれていないか、確かめなくちゃ…)
怖いけれどね、と決意したけれども、どうだろう。
そう「決心した」ことが「機械にバレていた」なら、きっと明日には…。
(覚えていなくて、今の考えを書き留めようとしていたら…)
急に眠くなってしまって、出来ないのかも、と恐ろしくなって、「試す」のをやめる。
機械に負けたことになっても、其処の所は「かまわない」。
「今、この瞬間に、ぼくは機械に負けたんだ」と、自覚しながら眠り込むより、撤退を選ぶ。
それは「自分の意志」で選んだ道になるから、勇気ある撤退なだけで、敗北ではない。
(…負けるよりかは…)
撤退するさ、とシロエはベッドに入った。
明日になったら「忘れていたって」、負け戦よりはマシに違いないから…。
勇気ある撤退・了
※サムがキースを救った事故の記録は、本当に伏せられていそう。忘れ去られた真実。
記憶を操作している場面は、別の所であったんですよね。其処から思い付いたお話です。
サムが、とシロエは、瞳を大きく見開いた。
Eー1077の夜の個室で、キースのデータを調べていたら、出て来た記録。
…新入生を乗せた宇宙船の、衝突事故で…)
被害の拡大を防ぐ目的で、ステーションの一部が切り離されたらしい。
キースとサムは、二人きりで其処に居合わせた。
(新入生の船の人たちを助けに、キースとサムだけが出動して…)
無事に全員を救い出した直後に、事故を起こした区画が分離されて、爆破処分された。
サムは一足先に逃げていたけれど、キースは出遅れ、宇宙空間に飛ばされたという。
(そのままだったら、キースの命は…)
無かったかもしれない。
自力でステーションまで戻る手段を、キースは持っていなかった。
(下手に行ったら、サムも巻き添えになっていたのに…)
サムは迷わず、キースを救いに飛び出して行った。
首尾よく助けて戻ったらしいけれども、そんな記録は「見たことが無い」。
第一、宇宙船が事故に遭った事実も、シロエは今日まで知らなかった。
何度もデータを読み直す間に、事故の相手が「悪かった」ことに気付いた。
宇宙海軍の船で、民間船よりも上位に立っている船。
(…何故、宇宙海軍の船が、ステーションなんかに…?)
来るような用事は何も無い筈、と思えて来るから、事故の発端自体が「怪しい」。
(…事故を起こして、キースの手腕を確かめたとか…?)
マザー・イライザだったら、やりかねない。
キースが「失敗していた」場合は、新入生たちの命が奪われるけれど、問題ではない。
たかが「新入生」の「候補生」くらい、代わりは幾らでも送られて来る。
(…キースは上手く対処したけど、その後が…)
少しばかり読みが外れて、宇宙の藻屑と消える所を、サムが救ったということだろう。
ところが「サム」は、将来有望な人材ではない。
マザー・イライザも期待してはいなくて、キースの「おまけ」で「友人」に過ぎない。
だから評価をされることなく、宇宙船の事故ごと「忘れ去られた」英雄。
(…サムは覚えているだろうけど、他の生徒は…)
何も知らずに過ごしている上、宇宙船の事故も公の記録に残ってはいない。
ステーションの一部を分離したほど、重大な事故を「表向きでは、知る者がいない」。
(宇宙船に乗った新入生の中には、スウェナも入っているんだけど…)
彼女も、事故をどれほど覚えているのか。
「キースの友人」に含まれる以上、忘れ果ててはいないにしても、曖昧かもしれない。
(…命の恩人だと思っていたなら、もっと態度が違ったような…)
ステーションを出たのは、キースに失恋したせいにしてもね、とシロエは顎に手を当てた。
「命の恩人」に惚れ込んだけれど、袖にされたなら、出て行くことも確かに有り得る。
とはいえ、普段のスウェナの「キース」に対する姿勢は、どうだったか。
(…惚れていたせいで、ああだったのか、記憶が曖昧だったせいか…)
分からないよね、と思うくらいに、「宇宙船の事故」は「伏せられている」。
サムが「キースの命の恩人」なことも、少なくとも生徒は、誰一人として「知らない」。
なんてことだろう、とシロエは「事故の記録」を呆然と眺める。
これほどの事故を伏せるためには、マザー・イライザの「力」だけでは足りない。
(宇宙海軍の方にも、マザー・イライザのような機械がいるにしたって…)
Eー1077で暮らしていた者の記憶を、どう処理するか。
片っ端からコールしたって、上手くいかないことだろう。
一人を呼び出して処理する間に、他の者たちの間に広がり、「記憶」の楔が打ち込まれる。
(コールされて忘れ去った筈の生徒が、また耳にして…)
イタチごっこのような具合に、いつまで経っても「忘れ去られない」ことになりそう。
(生徒の他にも、大勢の人が暮らしているんだし…)
一斉に記憶を操作しないと、綺麗サッパリ「記録ごと消す」ことは出来そうにない。
(…そういう係が、いない限りは…)
事故の記録は消せやしない、と気付いたシロエの背筋が冷えて行く。
(…サムとキースと、スウェナ以外は…)
何も覚えていない状態だったら、事故の記録は消せるけれども、そう出来るのなら…。
(…ぼくが此処に来た後にも、そんな類の何かが起こっていたのに…)
覚えていないこともあるよね、とシロエは恐ろしくなった。
機械を欺き、出し抜いたつもりになっていたって、マザー・イライザの手のひらの上。
夜にベッドで眠る間に、「記憶操作を担う係」が、候補生やら職員やらの記憶を…。
(全部書き換えてしまっていたなら、ぼくは絶対、気が付かないし…)
騙されたままになってしまうよ、と怖くなるから、今夜は「覚え書き」用のノートは…。
(…読み返したりしたら、眠れなくなって…)
ついでに「消された記憶」を見つけ出すかも、と思うものだから、読まないでおこう。
もっと冷静に振り返れる日に、改めて、一番古いノートから…。
(ぼくの知らない「何かの出来事」が書かれていないか、確かめなくちゃ…)
怖いけれどね、と決意したけれども、どうだろう。
そう「決心した」ことが「機械にバレていた」なら、きっと明日には…。
(覚えていなくて、今の考えを書き留めようとしていたら…)
急に眠くなってしまって、出来ないのかも、と恐ろしくなって、「試す」のをやめる。
機械に負けたことになっても、其処の所は「かまわない」。
「今、この瞬間に、ぼくは機械に負けたんだ」と、自覚しながら眠り込むより、撤退を選ぶ。
それは「自分の意志」で選んだ道になるから、勇気ある撤退なだけで、敗北ではない。
(…負けるよりかは…)
撤退するさ、とシロエはベッドに入った。
明日になったら「忘れていたって」、負け戦よりはマシに違いないから…。
勇気ある撤退・了
※サムがキースを救った事故の記録は、本当に伏せられていそう。忘れ去られた真実。
記憶を操作している場面は、別の所であったんですよね。其処から思い付いたお話です。
PR
「お前、週末、新入りに混じって、射撃訓練してたんだってな?」
せっかくの休みに、何をやってるんだよ、とキースの耳に、聞こえて来た声。
国家騎士団の者たちの会話で、食堂の中で話していた。
(…あいつか…)
よく見る顔だ、とキースは「射撃訓練をしていた」らしい者を眺める。
今のキースは上級大佐で、昇進する日も近いけれども、たまに食堂に入りもする。
コーヒーを一杯、飲む間だけ、「観察」するのが目的だった。
階級が上になって来るほど、下の者たちの様子が分かりにくくなるからだ。
(週末返上で射撃訓練とは、将来、有望だな)
覚えておこう、と心のメモに書き留めた所で、当の本人が、こう答えた。
「そりゃまあ、キッチリ訓練していりゃ、上の覚えもめでたいし…」
腕も上がって一石二鳥だ、と「将来有望な人材」は、親指を立てた。
「休みを潰してやる甲斐はあると思わないか?」
「うーん…。俺は、それほど出世したいわけじゃないしなあ…」
休みを楽しむ方が合ってる、と言った者の方は、週末はドライブしていたようだ。
勝手気ままにハンドルを切って、首都惑星ノアの景色を満喫して来た、と得意げに話す。
「車の少ないトコに行ったら、飛ばし放題、気持ちいいぜ!」
「国家騎士団で鍛えた腕を、無駄に活かしているんじゃあ…?」
「生き甲斐っていうのは、人それぞれだろ?」
あいつなんかは、食いまくって過ごしているみたいだし、と別の誰かの名前が挙がった。
「どうせ訓練で痩せちまうからな」を口癖にしていて、休みの度に食べ歩くらしい。
彼が自分の足と舌で集めた「グルメ情報」は、他の者の役に立っている様子だ。
(…確かに生き甲斐は、それぞれらしい…)
たった三人の分を聞いただけでも、三通りか、とキースは苦笑し、席を立った。
今日の「観察」も、来た甲斐があった、と「いずれ引き抜くかもしれない者」を見ながら。
自分専用の部屋に戻ると、キースは早速、側近のマツカに指示を下した。
「週末も射撃訓練をしていた者」に関して、出来る限りの情報を集めて来るように、と。
「分かりました。セルジュたちにも伝えますか?」
「そうだな。彼らも何処かで目にする機会がありそうだ」
見掛けた時は注視するよう伝えておけ、とキースは「マツカ」の働きぶりに満足する。
マツカの場合は、「キースの側近として働く」ことが、生き甲斐だろう。
(やっていて楽しい役目なのかは、分からんがな…)
私の機嫌を取ったところで、出世が出来るわけでもないし、と思いはしても、良い点はある。
マツカの正体は「ミュウ」なのだから、キースの側近でなければ、殺されてしまうだけ。
(生きていてこそ、生き甲斐もあるというものだ…)
生き抜くことが、生き甲斐な者が「マツカ」かもしれない。
プラスして「キースの役に立つこと」で、だから懸命に仕え続ける。
(なかなかに面白い生き甲斐だな…)
出世欲だの、食欲だのとは違うようだ、と興味深く思う間に、ハタと気付いた。
「キース」が「生き甲斐」としているものは、一体、何なのか。
(……私の生き甲斐……?)
何かあったか、と振り返ってみて、背筋が冷たくなってゆく。
「これだ」と即答出来る答えが、「キース」の中には無いらしい。
(…順調に昇進を遂げて来ているが、さっき食堂で見た者のように…)
上官の覚えがめでたくなるよう、行動していた記憶など無い。
第一、思い付きさえしなくて、ただ、黙々と努力を重ねて、今があるだけ。
(…そういえば…)
Eー1077を卒業した時には、同期の仲間が何人かいた。
研修期間が過ぎると、別の所へ散っていったけれど、そうなる前は一緒だった。
射撃訓練にしても、練習艇の操縦にしても、教官や上官に指導を受ける時は、彼らがいた。
(誰もが、高く評価して貰うために…)
競い合った中で、「キース」は、彼らを全く意識しないで、自分の考えで動き続けた。
「競い合う」のは成績だけで、他の所で競い合おうとしたことは一度も無い。
けれど、同期の者は違って、教官や上官に「取り入るチャンス」を狙っていた。
(…資料を集める必要があれば、名乗り出てみたり…)
練習艇の整備係を申し出たりして、「点数稼ぎ」を繰り返す日々。
(下らないことを、と切り捨てていたが…)
彼らは「将来の出世」のために、道筋をつけていたのだろう。
少しでも有利な配属先へ赴けるよう、せっせと「自分」を売り込んで。
(あれも一種の生き甲斐なわけで、野心があるからやっていたことで…)
結果を出せたかどうかはともかく、彼らは「生き甲斐」を持っていた。
「キース」が淡々と生きる間も、明確な目標を目の前に据えて。
どうやら「キース」にとっての出世や昇進は、「生き甲斐」とは無縁で、結果しかない。
これから昇進し続けてみても、「私は、この地位に就きたかった」と考えはしないことだろう。
国家騎士団総司令だろうが、空席のままの国家主席に選ばれようが、「どうでもいい」。
(…その地位に就くのが目標ではあっても、私自身が「なりたい」気持ちは…)
何処にあるのだ、と自分の中を何度探っても、何も見付かりはしなかった。
今日までの人生の「目標」は全て、「マザー・イライザ」や「グランド・マザー」が…。
(…そうするように示唆して来るのを、こなし続けて来ただけで…)
私の意志は含まれていない、とキースは、ゾクリとする。
(…ミュウのマツカを、側近に据えているように…)
マザー・システムの意向に反することなら「している」とはいえ、「生き甲斐」とまでは…。
(言えはしないな…)
生き甲斐ならば、もっとミュウに肩入れするさ、と思うからこそ、恐ろしい。
「生き甲斐」を持たずに生きて来たなら、かつてシロエが言った通りに…。
(…お人形さんだ…)
マザー・イライザと、グランド・マザーの「人形」でしかない、と目の前が暗くなるよう。
そうなるように「作られた」からか、それとも、気付かない内に「そうなっていた」か。
(…私にも、私の考えがあって…)
現に「マツカ」を生かしているから、「自分の意思が無い」わけではない。
「生き甲斐」と呼べる「何か」を持っていないだけで、これから先に、出来るかもしれない。
(……そうなってくれれば良いのだが……)
駄目だった時は「お人形さん」で終わるらしい、とキースは奈落の底に落ちてゆきそう。
(…もしも、サムが壊れてしまうことなく、無事でいたなら…)
生き甲斐の一つもあっただろうか、と考えてしまう。
多忙な日々の合間を見付けて、「ただのパイロット」になっているサムに会いに行くとか。
(…そうだったとしたら、それは立派な生き甲斐で…)
どんなに忙しい任務だろうが、「サムに会う日」を目標に据えて張り切ったろう。
「これが終われば、休暇なんだ」と、「サムに連絡を取って、会いに行けるぞ」と。
(…一般人のサムには言えない、機密事項を抱えていようが、黙っていれば済むことで…)
サムに会ったら、任務で知ったことは話さず、思い出話に花を咲かせればいい。
互いの近況なども話して、「またな」と別れて、「次の機会」を楽しみに生きる。
(……そうだな、サムさえ無事でいてくれたなら……)
きっと「キース」にも「生き甲斐」があった、と思うけれども、サムは壊れてしまった後。
人生が終わってしまわない内に、「生き甲斐」を見付けられなかったなら…。
(…お人形さんのままで、「キース」は消えてゆくのか…)
あまりにも惨い、と辛くなるから、見付かって欲しい。
立派な「生き甲斐」でなくていいから、「これだ」と思えるものを見付けて、追い続ける。
「キース」の人生が終わる時まで、懸命に追って、生き続けて…。
生きてゆく形・了
※キースは「何がしたくて生きている」のかな、と思った所から出来たお話。
ステーション時代から、システムに懐疑的でも、それを形にはしなかったよね、と…。
せっかくの休みに、何をやってるんだよ、とキースの耳に、聞こえて来た声。
国家騎士団の者たちの会話で、食堂の中で話していた。
(…あいつか…)
よく見る顔だ、とキースは「射撃訓練をしていた」らしい者を眺める。
今のキースは上級大佐で、昇進する日も近いけれども、たまに食堂に入りもする。
コーヒーを一杯、飲む間だけ、「観察」するのが目的だった。
階級が上になって来るほど、下の者たちの様子が分かりにくくなるからだ。
(週末返上で射撃訓練とは、将来、有望だな)
覚えておこう、と心のメモに書き留めた所で、当の本人が、こう答えた。
「そりゃまあ、キッチリ訓練していりゃ、上の覚えもめでたいし…」
腕も上がって一石二鳥だ、と「将来有望な人材」は、親指を立てた。
「休みを潰してやる甲斐はあると思わないか?」
「うーん…。俺は、それほど出世したいわけじゃないしなあ…」
休みを楽しむ方が合ってる、と言った者の方は、週末はドライブしていたようだ。
勝手気ままにハンドルを切って、首都惑星ノアの景色を満喫して来た、と得意げに話す。
「車の少ないトコに行ったら、飛ばし放題、気持ちいいぜ!」
「国家騎士団で鍛えた腕を、無駄に活かしているんじゃあ…?」
「生き甲斐っていうのは、人それぞれだろ?」
あいつなんかは、食いまくって過ごしているみたいだし、と別の誰かの名前が挙がった。
「どうせ訓練で痩せちまうからな」を口癖にしていて、休みの度に食べ歩くらしい。
彼が自分の足と舌で集めた「グルメ情報」は、他の者の役に立っている様子だ。
(…確かに生き甲斐は、それぞれらしい…)
たった三人の分を聞いただけでも、三通りか、とキースは苦笑し、席を立った。
今日の「観察」も、来た甲斐があった、と「いずれ引き抜くかもしれない者」を見ながら。
自分専用の部屋に戻ると、キースは早速、側近のマツカに指示を下した。
「週末も射撃訓練をしていた者」に関して、出来る限りの情報を集めて来るように、と。
「分かりました。セルジュたちにも伝えますか?」
「そうだな。彼らも何処かで目にする機会がありそうだ」
見掛けた時は注視するよう伝えておけ、とキースは「マツカ」の働きぶりに満足する。
マツカの場合は、「キースの側近として働く」ことが、生き甲斐だろう。
(やっていて楽しい役目なのかは、分からんがな…)
私の機嫌を取ったところで、出世が出来るわけでもないし、と思いはしても、良い点はある。
マツカの正体は「ミュウ」なのだから、キースの側近でなければ、殺されてしまうだけ。
(生きていてこそ、生き甲斐もあるというものだ…)
生き抜くことが、生き甲斐な者が「マツカ」かもしれない。
プラスして「キースの役に立つこと」で、だから懸命に仕え続ける。
(なかなかに面白い生き甲斐だな…)
出世欲だの、食欲だのとは違うようだ、と興味深く思う間に、ハタと気付いた。
「キース」が「生き甲斐」としているものは、一体、何なのか。
(……私の生き甲斐……?)
何かあったか、と振り返ってみて、背筋が冷たくなってゆく。
「これだ」と即答出来る答えが、「キース」の中には無いらしい。
(…順調に昇進を遂げて来ているが、さっき食堂で見た者のように…)
上官の覚えがめでたくなるよう、行動していた記憶など無い。
第一、思い付きさえしなくて、ただ、黙々と努力を重ねて、今があるだけ。
(…そういえば…)
Eー1077を卒業した時には、同期の仲間が何人かいた。
研修期間が過ぎると、別の所へ散っていったけれど、そうなる前は一緒だった。
射撃訓練にしても、練習艇の操縦にしても、教官や上官に指導を受ける時は、彼らがいた。
(誰もが、高く評価して貰うために…)
競い合った中で、「キース」は、彼らを全く意識しないで、自分の考えで動き続けた。
「競い合う」のは成績だけで、他の所で競い合おうとしたことは一度も無い。
けれど、同期の者は違って、教官や上官に「取り入るチャンス」を狙っていた。
(…資料を集める必要があれば、名乗り出てみたり…)
練習艇の整備係を申し出たりして、「点数稼ぎ」を繰り返す日々。
(下らないことを、と切り捨てていたが…)
彼らは「将来の出世」のために、道筋をつけていたのだろう。
少しでも有利な配属先へ赴けるよう、せっせと「自分」を売り込んで。
(あれも一種の生き甲斐なわけで、野心があるからやっていたことで…)
結果を出せたかどうかはともかく、彼らは「生き甲斐」を持っていた。
「キース」が淡々と生きる間も、明確な目標を目の前に据えて。
どうやら「キース」にとっての出世や昇進は、「生き甲斐」とは無縁で、結果しかない。
これから昇進し続けてみても、「私は、この地位に就きたかった」と考えはしないことだろう。
国家騎士団総司令だろうが、空席のままの国家主席に選ばれようが、「どうでもいい」。
(…その地位に就くのが目標ではあっても、私自身が「なりたい」気持ちは…)
何処にあるのだ、と自分の中を何度探っても、何も見付かりはしなかった。
今日までの人生の「目標」は全て、「マザー・イライザ」や「グランド・マザー」が…。
(…そうするように示唆して来るのを、こなし続けて来ただけで…)
私の意志は含まれていない、とキースは、ゾクリとする。
(…ミュウのマツカを、側近に据えているように…)
マザー・システムの意向に反することなら「している」とはいえ、「生き甲斐」とまでは…。
(言えはしないな…)
生き甲斐ならば、もっとミュウに肩入れするさ、と思うからこそ、恐ろしい。
「生き甲斐」を持たずに生きて来たなら、かつてシロエが言った通りに…。
(…お人形さんだ…)
マザー・イライザと、グランド・マザーの「人形」でしかない、と目の前が暗くなるよう。
そうなるように「作られた」からか、それとも、気付かない内に「そうなっていた」か。
(…私にも、私の考えがあって…)
現に「マツカ」を生かしているから、「自分の意思が無い」わけではない。
「生き甲斐」と呼べる「何か」を持っていないだけで、これから先に、出来るかもしれない。
(……そうなってくれれば良いのだが……)
駄目だった時は「お人形さん」で終わるらしい、とキースは奈落の底に落ちてゆきそう。
(…もしも、サムが壊れてしまうことなく、無事でいたなら…)
生き甲斐の一つもあっただろうか、と考えてしまう。
多忙な日々の合間を見付けて、「ただのパイロット」になっているサムに会いに行くとか。
(…そうだったとしたら、それは立派な生き甲斐で…)
どんなに忙しい任務だろうが、「サムに会う日」を目標に据えて張り切ったろう。
「これが終われば、休暇なんだ」と、「サムに連絡を取って、会いに行けるぞ」と。
(…一般人のサムには言えない、機密事項を抱えていようが、黙っていれば済むことで…)
サムに会ったら、任務で知ったことは話さず、思い出話に花を咲かせればいい。
互いの近況なども話して、「またな」と別れて、「次の機会」を楽しみに生きる。
(……そうだな、サムさえ無事でいてくれたなら……)
きっと「キース」にも「生き甲斐」があった、と思うけれども、サムは壊れてしまった後。
人生が終わってしまわない内に、「生き甲斐」を見付けられなかったなら…。
(…お人形さんのままで、「キース」は消えてゆくのか…)
あまりにも惨い、と辛くなるから、見付かって欲しい。
立派な「生き甲斐」でなくていいから、「これだ」と思えるものを見付けて、追い続ける。
「キース」の人生が終わる時まで、懸命に追って、生き続けて…。
生きてゆく形・了
※キースは「何がしたくて生きている」のかな、と思った所から出来たお話。
ステーション時代から、システムに懐疑的でも、それを形にはしなかったよね、と…。
(…ピーターパンの本…)
ぼくの大切な宝物、とシロエは両親に貰った本の表紙を撫でる。
Eー1077の夜の個室で、そっとページをめくる間に、頭の中をよぎったもの。
(…どうして、この本だったんだろう?)
ぼくを虜にした一冊は、と遠い記憶を振り返ってみる。
ステーションまで持って来たほど、とても大事な本だけれども、何故、この本なのか。
(ぼくが一番、惹かれたからで…)
両親が選んで与えてくれた本たちの中で、『ピーターパン』は抜きん出ていた。
貰って一気に読み終えた後も、本の世界に夢中になった。
繰り返し読んで、筋をすっかり覚えてしまっても、飽きることなど一度も無かった。
(最初に憧れたのは、ネバーランドよりも…)
ピーターパンと一緒に飛んでゆく旅で、単純に「夜空を飛んでみたかった」。
空を飛ぶのは、幼い子供が抱く夢の一つで、シロエも同じに憧れただけ。
(それに夜空を飛ぶというのが…)
楽しそうだ、と心が躍ったことを覚えている。
育英都市で育つ子供は、養父母が「きちんと」育てていたから、夜更かしはしない。
年齢に合わせて「床に就く」時間が定められていた。
(もちろん、家の事情とかもあるから…)
規則通りとゆきはしないし、多少の幅はあったけれども、深夜まで起きていてはいけない。
(ピーターパンが飛んで来るような時間は、とうにベッドで…)
寝ているだけに、幼いシロエは「夜空」を飽きずに眺めてはいない。
(あの星を、もっと見ていたいから、ってパパに言っても…)
返った答えは「寝る時間だよ」で、父にベッドへ連れて行かれた。
夜空に輝く星の一つを、眠くなるまで仰いでいることは許されなかった。
(…夜の空を見ながら、飛んで行けたら…)
素敵だろうな、と幼かったシロエは夢を描いた。
「ピーターパンが来てくれたなら、ぼくも行けるよ」と、夜空の旅に出掛けたくなる。
その日が来たら、きっと行こう、と考えたことが、始まりの一歩。
『ピーターパン』の本との出会いは、そういったもので、恐らく、ありがちな憧れだろう。
空を飛ぶことが出来ない「人間」だけに、子供でなくとも、惹き付けられそう。
(…うん、其処までは、みんな同じで…)
少し育ったら、ネバーランドでの冒険などに胸を躍らせ、自分も入ってゆきたくなる。
ピーターパンと一緒に走り回って、海賊退治をしたりするのが楽しそうだ、と。
(ぼくもそうだし、ピーターパンと活躍したくて…)
ネバーランドへの夢を膨らませていった。
「いつか行くんだ」と、迎えが来たなら、直ぐに旅立てるように心構えもした。
(…小さい間は、それで良かったんだけれどね…)
何処も間違ってはいない思考で、「冒険したい」のは健全に育っている証拠でもある。
将来に向けた夢が冒険で、「冒険」の中身が、成長につれて置き換わってゆく。
(ネバーランドに行きたいな、というのが、地球に変わって…)
どうすれば「憧れの地球」に行けるか、考えながら「自分の進路」を思い描いて歩み始める。
(…行きたい道へは、学校の成績と、成人検査の結果次第で…)
行けるか否かが決まるわけだし、誰しも努力を惜しみはしない。
本当に「夢」を持っているなら、叶えられるように勉強をしたり、身体を鍛えたりもする。
(ぼくだって、そうで…)
父から聞いた「ネバーランドよりも、素敵な地球」を目指した。
きっと其処には楽園があって、素晴らしいのに違いない、と疑いさえもしなかった。
(…でも、本当は…)
違うみたいだ、と今のシロエは気付いている。
憧れていた「ネバーランド」も、今の世界では「悪い世界」になるのだろう。
(…大人社会に入ってゆくには、子供のままの心では駄目で…)
そうならないよう、成人検査を受けさせ、子供時代を「捨てさせる」。
養父母たちと暮らした記憶を、今の社会に都合がいいよう、機械が強引に書き換えて。
ステーションにいる「候補生たち」は、皆、機械の理想の「大人」の候補。
幼かった頃の記憶にしがみついたり、薄れる記憶を繋ぎ止めようと足掻いたりはしない。
(…此処でなくても、何処のステーションでも…)
似たようなものなんだろう、と分かるからこそ、シロエは「どうして?」と疑問に思う。
『ピーターパン』の本に捕まらなければ、シロエも「流れ」に乗ってゆけたろう。
(行きたい場所が、ネバーランドから地球に変わっていったら…)
現実的な世界に惹かれ始めて、夜空を駆ける夢にしたって、変わってゆきそう。
「ピーターパンの迎えを待つ」のではなくて、「宇宙船などを操って飛び立つ」方へと。
(冒険の旅も、海賊退治をするのなら…)
宇宙海軍に入隊したなら、「本物の海賊退治」に出掛けてゆける。
今の時代の「海賊」は「宇宙海賊」だから、宇宙海軍が常に警備に回っているらしい。
(…その程度の知識は、育英都市でも…)
その気になったら「分かった」ことだし、普通の子供は、「そう」だったろう。
(大きくなったら、パイロットになろうとか、宇宙海軍に入りたいとか…)
将来の「目標」が出来るけれども、シロエの場合は「違っていた」。
目標だったのは「地球」で、其処へ着いたら「これをしたい」という夢は無かった。
ただ、がむしゃらに努力しただけで、「地球」しか見えていなかった。
(…ぼくが大人になった姿なんか…)
明確な像を結んでいなくて、漠然とした「夢」があっただけ。
「大人になったら、地球へ行くんだ」と、「どういう大人」なのかも考えないで。
(…そうなっちゃったの、この本に惹かれ過ぎちゃったせいで…)
ネバーランドに焦がれ続けて、その先に「地球」があったからだ、と自覚なら「ある」。
惹かれた本が『ピーターパン』とは違う本なら、今の「シロエ」は出来上がっていない。
(…他の本には、まるで興味が無かったから…)
一読したら「それでおしまい」、繰り返し読んでいた本は『ピーターパン』だけ。
けれども、記憶に残る本の中には、冒険の旅も幾つもあった。
(小さな子供が旅を始めて、いろんな危機を乗り越えて行って…)
立派な騎士になる物語もあれば、王様にまでなった話もあったと覚えてはいる。
そうした本に惹かれていたなら、今の「シロエ」は、立派な「エリート候補生」だろう。
(メンバーズになれば、今の時代の「騎士様」」で…)
国家騎士団という組織もあるから、名実ともに「騎士」になれるし、順風満帆。
子供時代の記憶に縛られはしないで、真っ直ぐに前を見詰めて歩む人生。
(…もしかして、この本が、悪かったのかな…?)
ぼくの大切な宝物だけれと、と『ピーターパン』の本を眺める。
どう考えてみても「シロエの人生」を狂わせたものは、この本と言える。
(……今の時代に、そぐわないよ……)
永遠の子供のピーターパンを描いた本は、と溜息が零れ落ちそう。
「子供のままではいられない」のが今の社会で、機械は「子供の心を持った大人」を否定する。
それなのに、何故、この本が今も残り続けて、シロエの許まで辿り着いたのか。
(…禁書にしたって、いいと思うのに…)
むしろ、その方が相応しい、と思うけれども、本は残って、シロエは「出会った」。
(……運命なのかな……)
ピーターパンの本が似合う世界を、取り戻すために、ぼくは生まれたのかな、という気がする。
ならば、努力を続けるしかない。
昔のように「子供が子供でいられる世界」を、もう一度、作り出すために。
長い旅路になるだろうけれど、「運命の出会い」だったというなら、頑張ってゆこう。
(…ピーターパン…)
やり遂げた時には、迎えに来てね、とシロエは「ネバーランド」を夢見て微笑む。
其処は「地球よりも、素晴らしい」から。
機械の支配に屈しないまま、今も何処かに「ある筈」だから…。
違う本なら・了
※シロエが持っていた『ピーターパン』ですけど、SD体制の時代には不似合いな本。
禁書になっていなかったのが今も不思議で、其処から生まれたお話です。
ぼくの大切な宝物、とシロエは両親に貰った本の表紙を撫でる。
Eー1077の夜の個室で、そっとページをめくる間に、頭の中をよぎったもの。
(…どうして、この本だったんだろう?)
ぼくを虜にした一冊は、と遠い記憶を振り返ってみる。
ステーションまで持って来たほど、とても大事な本だけれども、何故、この本なのか。
(ぼくが一番、惹かれたからで…)
両親が選んで与えてくれた本たちの中で、『ピーターパン』は抜きん出ていた。
貰って一気に読み終えた後も、本の世界に夢中になった。
繰り返し読んで、筋をすっかり覚えてしまっても、飽きることなど一度も無かった。
(最初に憧れたのは、ネバーランドよりも…)
ピーターパンと一緒に飛んでゆく旅で、単純に「夜空を飛んでみたかった」。
空を飛ぶのは、幼い子供が抱く夢の一つで、シロエも同じに憧れただけ。
(それに夜空を飛ぶというのが…)
楽しそうだ、と心が躍ったことを覚えている。
育英都市で育つ子供は、養父母が「きちんと」育てていたから、夜更かしはしない。
年齢に合わせて「床に就く」時間が定められていた。
(もちろん、家の事情とかもあるから…)
規則通りとゆきはしないし、多少の幅はあったけれども、深夜まで起きていてはいけない。
(ピーターパンが飛んで来るような時間は、とうにベッドで…)
寝ているだけに、幼いシロエは「夜空」を飽きずに眺めてはいない。
(あの星を、もっと見ていたいから、ってパパに言っても…)
返った答えは「寝る時間だよ」で、父にベッドへ連れて行かれた。
夜空に輝く星の一つを、眠くなるまで仰いでいることは許されなかった。
(…夜の空を見ながら、飛んで行けたら…)
素敵だろうな、と幼かったシロエは夢を描いた。
「ピーターパンが来てくれたなら、ぼくも行けるよ」と、夜空の旅に出掛けたくなる。
その日が来たら、きっと行こう、と考えたことが、始まりの一歩。
『ピーターパン』の本との出会いは、そういったもので、恐らく、ありがちな憧れだろう。
空を飛ぶことが出来ない「人間」だけに、子供でなくとも、惹き付けられそう。
(…うん、其処までは、みんな同じで…)
少し育ったら、ネバーランドでの冒険などに胸を躍らせ、自分も入ってゆきたくなる。
ピーターパンと一緒に走り回って、海賊退治をしたりするのが楽しそうだ、と。
(ぼくもそうだし、ピーターパンと活躍したくて…)
ネバーランドへの夢を膨らませていった。
「いつか行くんだ」と、迎えが来たなら、直ぐに旅立てるように心構えもした。
(…小さい間は、それで良かったんだけれどね…)
何処も間違ってはいない思考で、「冒険したい」のは健全に育っている証拠でもある。
将来に向けた夢が冒険で、「冒険」の中身が、成長につれて置き換わってゆく。
(ネバーランドに行きたいな、というのが、地球に変わって…)
どうすれば「憧れの地球」に行けるか、考えながら「自分の進路」を思い描いて歩み始める。
(…行きたい道へは、学校の成績と、成人検査の結果次第で…)
行けるか否かが決まるわけだし、誰しも努力を惜しみはしない。
本当に「夢」を持っているなら、叶えられるように勉強をしたり、身体を鍛えたりもする。
(ぼくだって、そうで…)
父から聞いた「ネバーランドよりも、素敵な地球」を目指した。
きっと其処には楽園があって、素晴らしいのに違いない、と疑いさえもしなかった。
(…でも、本当は…)
違うみたいだ、と今のシロエは気付いている。
憧れていた「ネバーランド」も、今の世界では「悪い世界」になるのだろう。
(…大人社会に入ってゆくには、子供のままの心では駄目で…)
そうならないよう、成人検査を受けさせ、子供時代を「捨てさせる」。
養父母たちと暮らした記憶を、今の社会に都合がいいよう、機械が強引に書き換えて。
ステーションにいる「候補生たち」は、皆、機械の理想の「大人」の候補。
幼かった頃の記憶にしがみついたり、薄れる記憶を繋ぎ止めようと足掻いたりはしない。
(…此処でなくても、何処のステーションでも…)
似たようなものなんだろう、と分かるからこそ、シロエは「どうして?」と疑問に思う。
『ピーターパン』の本に捕まらなければ、シロエも「流れ」に乗ってゆけたろう。
(行きたい場所が、ネバーランドから地球に変わっていったら…)
現実的な世界に惹かれ始めて、夜空を駆ける夢にしたって、変わってゆきそう。
「ピーターパンの迎えを待つ」のではなくて、「宇宙船などを操って飛び立つ」方へと。
(冒険の旅も、海賊退治をするのなら…)
宇宙海軍に入隊したなら、「本物の海賊退治」に出掛けてゆける。
今の時代の「海賊」は「宇宙海賊」だから、宇宙海軍が常に警備に回っているらしい。
(…その程度の知識は、育英都市でも…)
その気になったら「分かった」ことだし、普通の子供は、「そう」だったろう。
(大きくなったら、パイロットになろうとか、宇宙海軍に入りたいとか…)
将来の「目標」が出来るけれども、シロエの場合は「違っていた」。
目標だったのは「地球」で、其処へ着いたら「これをしたい」という夢は無かった。
ただ、がむしゃらに努力しただけで、「地球」しか見えていなかった。
(…ぼくが大人になった姿なんか…)
明確な像を結んでいなくて、漠然とした「夢」があっただけ。
「大人になったら、地球へ行くんだ」と、「どういう大人」なのかも考えないで。
(…そうなっちゃったの、この本に惹かれ過ぎちゃったせいで…)
ネバーランドに焦がれ続けて、その先に「地球」があったからだ、と自覚なら「ある」。
惹かれた本が『ピーターパン』とは違う本なら、今の「シロエ」は出来上がっていない。
(…他の本には、まるで興味が無かったから…)
一読したら「それでおしまい」、繰り返し読んでいた本は『ピーターパン』だけ。
けれども、記憶に残る本の中には、冒険の旅も幾つもあった。
(小さな子供が旅を始めて、いろんな危機を乗り越えて行って…)
立派な騎士になる物語もあれば、王様にまでなった話もあったと覚えてはいる。
そうした本に惹かれていたなら、今の「シロエ」は、立派な「エリート候補生」だろう。
(メンバーズになれば、今の時代の「騎士様」」で…)
国家騎士団という組織もあるから、名実ともに「騎士」になれるし、順風満帆。
子供時代の記憶に縛られはしないで、真っ直ぐに前を見詰めて歩む人生。
(…もしかして、この本が、悪かったのかな…?)
ぼくの大切な宝物だけれと、と『ピーターパン』の本を眺める。
どう考えてみても「シロエの人生」を狂わせたものは、この本と言える。
(……今の時代に、そぐわないよ……)
永遠の子供のピーターパンを描いた本は、と溜息が零れ落ちそう。
「子供のままではいられない」のが今の社会で、機械は「子供の心を持った大人」を否定する。
それなのに、何故、この本が今も残り続けて、シロエの許まで辿り着いたのか。
(…禁書にしたって、いいと思うのに…)
むしろ、その方が相応しい、と思うけれども、本は残って、シロエは「出会った」。
(……運命なのかな……)
ピーターパンの本が似合う世界を、取り戻すために、ぼくは生まれたのかな、という気がする。
ならば、努力を続けるしかない。
昔のように「子供が子供でいられる世界」を、もう一度、作り出すために。
長い旅路になるだろうけれど、「運命の出会い」だったというなら、頑張ってゆこう。
(…ピーターパン…)
やり遂げた時には、迎えに来てね、とシロエは「ネバーランド」を夢見て微笑む。
其処は「地球よりも、素晴らしい」から。
機械の支配に屈しないまま、今も何処かに「ある筈」だから…。
違う本なら・了
※シロエが持っていた『ピーターパン』ですけど、SD体制の時代には不似合いな本。
禁書になっていなかったのが今も不思議で、其処から生まれたお話です。
(ソルジャー・ブルー…)
今の状況を作り出したのは、奴だな、とキースは心の中で、一人、呟く。
首都惑星ノアの自室で、とうに夜更けになっていた。
(…私の居場所も、あいつのせいで…)
こんな所になっているんだ、とキースが見回す部屋は、軍人向けの場所ではない。
最高機関「パルテノン」に属する「元老」だけが与えられる、特別な空間。
(これでも、簡素なものを、と頼んだ結果で…)
そうでなければ「豪邸」に住む羽目になっているぞ、と嘆きたくなる。
元老の地位は必要だけれど、余計な「家」など望んではいない。
(…思っていたより、かなり早くにパルテノン入りだが…)
なんとも水の合わない場所だ、と思わざるを得ない。
「初の軍人出身の元老」と騒がれるだけあって、軍人の世界とは大きく異なる。
(…いずれいつかは、来る筈の場所で…)
グランド・マザーも「そのつもり」で、「キース・アニアン」を無から作り出した。
SD体制を正しく導いてゆけるよう、マザー・イライザとの共同作業。
(…そして私は、計画通りに此処へ来たとはいえ…)
計算違いはあったろうな、とキースは、コーヒーのカップを指で弾いた。
このコーヒーを淹れた「マツカ」は、人類ではない。
キースの側近として知られる彼は、ジルベスター・セブン以来の部下だけれども…。
(正体は、ミュウで…)
もしも「マツカ」がいなかったなら、「キース」は生きて此処にはいない。
ソルジャー・ブルーがメギドを破壊した時、道連れにされて死んでしまって全ておしまい。
(…そうならなかったのは、人類にとっては幸運だろうが…)
あの「メギド」から、全て変わった、と今日までの道を振り返ってみる。
メギドが正常に作動していれば、キースは、未だに「軍人」だろう。
ミュウ殲滅の褒美で、何階級か特進を遂げて、最高位の国家騎士団総司令かもしれない。
しかし、現実は違った。
キースは「国家騎士団総司令」の任を務める途中で、パルテノン入りをしている。
恐らく、これも「計算違い」の一つだろう。
ジルベスター・セブンが崩壊した後、ミュウは急速に戦力を増した。
アルテメシア陥落を手始めに、あちこちの星でマザー・システムを滅ぼしつつある。
(…あの時、ソルジャー・ブルーが、来ていなければ…)
ジルベスター・セブンは「メギドの第二波」で燃えて、ミュウの母船も消えていた。
(タイプ・ブルーが何人いようが、そうなった筈だ…)
第二波を防ぐ余力は無かっただろうな、と思う根拠は「タイプ・ブルー」たちにある。
「メギドを防いだ」と、人類軍を驚かせたタイプ・ブルーは、大部分が幼い子供だった。
幼児や乳児が急成長して、防いだと聞く。
(…元が幼い子供では…)
体力的な限外があるし、第一波を止めるのが精一杯だったろう。
第二波攻撃を加えられていれば、ミュウを殲滅出来ていたのに、そうはならなかった。
(…ソルジャー・ブルー…)
自らの命を犠牲にしてまで、今の状況を作り出した男、と憎いけれども、その逆でもある。
(……どうして、其処まで出来たのだ……)
死んでしまえば終わりではないか、と思う一方、羨ましいと思う自分が存在する。
(…セキ・レイ・シロエ…)
彼の最期も少し似ていた、と今だから感じる。
シロエも「命を懸けて守りたかった」ものがあったから、あの道を選んだ。
(ソルジャー・ブルーのように、誰かを守るものではなかったが…)
自分の信念を貫き通して、「心」を守った。
機械が支配している世界を嫌って、自らの願う場所を目指して飛び去って行った。
命と引き換えの旅立ちだったけれども、彼に後悔は無かっただろう。
(……ミュウというのは……)
そういう人種になるのだろうか、と考えてしまう。
側近に据えた「マツカ」も、何処か「彼ら」に似ている所があった。
人類のキースに仕えているのは、マツカにとっては「命懸け」でもある。
正体が知れれば、彼の命は「その場で」消されて、逃げる暇さえ与えられはしない。
なのに、マツカは逃げもしないで、側近の務めを続けている。
(…私が命の恩人だから、と…)
ミュウの側へは行かないままで、危うい場所で生きているのも、ミュウだからかもしれない。
多分、マツカが「命を懸けて守りたいもの」は、「キース」なのだろう。
だからキースに仕え続けて、ミュウならではの力で「キース」を守り続ける。
(…ミュウがそういう人種だとすれば、人類の方は…)
どうなのだろうか、と改めて考えてみるまでもない。
パルテノン入りを果たすより前、何度も足を引っ張られた。
「キース」が目障りな者たちに殺されかけたのは、数え切れないほどの回数。
(上層部が、その有様ではな…)
一般市民の世界も、容易に想像出来る。
「自らの命を犠牲にしてまで」、何かを守ろうとする者は、皆無なのに違いない。
(…情けない話だ…)
養父母でさえも、自分の子供を「殺させる」のだしな、と頭に浮かぶ「ミュウの処分」。
ミュウの兆候を見せた子供は、ユニバーサルに通報されて、殺されるのが常識。
殺されなくても、研究対象として「捕獲」されるだけ。
(…親が自分の保身のために、いち早く…)
赤ん坊でも届け出るのだ、と恐ろしくもある。
ミュウの兆しを見せる前の子は、「我が子」として愛おしまれていたのだろうに。
なんと違いが大きいのか、と考えてゆけばゆくほど、ミュウが羨ましくなって来る。
彼らの生き方は「理解出来ない」と思う自分と、「羨ましい」と感じる自分。
(…指導者が死んでしまえば、組織は終わってしまうのに…)
ソルジャー・ブルーは、その道を選んだ、と不思議ではあっても、今の状況が全て。
彼が命を捨てなかったら、今も人類の世界は安泰だったろう。
(…私のパルテノン入りにしても、もっと先の事で…)
ミュウは処分されるだけの異物だった、と痛切に思い知らされる。
「ソルジャー・ブルーが、命を犠牲に守ったもの」が、いったい何を生み出したのか。
彼が作り出した現状が指しているのは、間違いなく「ミュウの勝利に終わる」結末。
いずれ彼らがSD体制を倒し、ミュウの時代がやって来るのだろう。
(…ミュウの因子を、出生前に遡って、抹消しない限り…)
その日は来る、と分かっているから、「ソルジャー・ブルー」は「偉大だった」。
敵ながら天晴れ、と思わされるわけで、本当に、彼が羨ましい。
同じ指導者への道を歩んではいても、キースに「そういう未来」は、ありそうにない。
(私が命を懸けて守りたいほど、この世界には…)
素晴らしいものなど無いのだしな、と人類の世界が嘆かわしい。
出世のために他人を消したり、保身のために我が子を殺させたりしている者たちばかり。
(たまには、マシな者もいるようだが…)
そんな輩はミュウの味方だ、とスウェナ・ダールトンを頭に描く。
彼女は今や「ミュウの協力者」で、ジョミー・マーキス・シンとも接触しているくらい。
つまりは「ミュウか、ミュウと近しい者」だけが、ヒトらしく生きているのだろう。
(…私には、その生き方は無理で…)
許されてさえもいないのだが、と思いながらも、羨ましい。
「命を懸けて守りたい」ものなど、「キース」には無いし、見付かりそうにも思えない。
(…理想の人類として作られたのだしな…)
仕方ない、と溜息が零れるばかりなのだけれども、もしかしたなら、一つだけ…。
(……マツカ……)
いつかミュウたちが攻めて来たなら、マツカも戦闘に巻き込まれる。
指導者として立つ「キース」に対する、総攻撃が始まることだろう。
(…その時、マツカが側にいたなら…)
彼を庇って散るのもいい、と思わないでもない。
マツカの命が助かったならば、ミュウたちは「マツカから」、人類の話を聞くことが出来る。
(ろくな世界ではないのだが、それでもだ…)
キースの部下たちと暮らした日々を語ってくれれば、人類の評価が「少しだけ」でも…。
(…上がってくれると嬉しいのだが…)
私が「人類」にしてやれる、最後のことだ、と叶いそうにない「未来」を思う。
その日が来た時、そう出来れば、と…。
叶わない未来・了
※キースには「命を懸けて守りたいもの」があるのか、考えていたら生まれたお話。
SD体制の世界を守るしかないのですけど、命懸けで守るには情けない世界ですしね…。
今の状況を作り出したのは、奴だな、とキースは心の中で、一人、呟く。
首都惑星ノアの自室で、とうに夜更けになっていた。
(…私の居場所も、あいつのせいで…)
こんな所になっているんだ、とキースが見回す部屋は、軍人向けの場所ではない。
最高機関「パルテノン」に属する「元老」だけが与えられる、特別な空間。
(これでも、簡素なものを、と頼んだ結果で…)
そうでなければ「豪邸」に住む羽目になっているぞ、と嘆きたくなる。
元老の地位は必要だけれど、余計な「家」など望んではいない。
(…思っていたより、かなり早くにパルテノン入りだが…)
なんとも水の合わない場所だ、と思わざるを得ない。
「初の軍人出身の元老」と騒がれるだけあって、軍人の世界とは大きく異なる。
(…いずれいつかは、来る筈の場所で…)
グランド・マザーも「そのつもり」で、「キース・アニアン」を無から作り出した。
SD体制を正しく導いてゆけるよう、マザー・イライザとの共同作業。
(…そして私は、計画通りに此処へ来たとはいえ…)
計算違いはあったろうな、とキースは、コーヒーのカップを指で弾いた。
このコーヒーを淹れた「マツカ」は、人類ではない。
キースの側近として知られる彼は、ジルベスター・セブン以来の部下だけれども…。
(正体は、ミュウで…)
もしも「マツカ」がいなかったなら、「キース」は生きて此処にはいない。
ソルジャー・ブルーがメギドを破壊した時、道連れにされて死んでしまって全ておしまい。
(…そうならなかったのは、人類にとっては幸運だろうが…)
あの「メギド」から、全て変わった、と今日までの道を振り返ってみる。
メギドが正常に作動していれば、キースは、未だに「軍人」だろう。
ミュウ殲滅の褒美で、何階級か特進を遂げて、最高位の国家騎士団総司令かもしれない。
しかし、現実は違った。
キースは「国家騎士団総司令」の任を務める途中で、パルテノン入りをしている。
恐らく、これも「計算違い」の一つだろう。
ジルベスター・セブンが崩壊した後、ミュウは急速に戦力を増した。
アルテメシア陥落を手始めに、あちこちの星でマザー・システムを滅ぼしつつある。
(…あの時、ソルジャー・ブルーが、来ていなければ…)
ジルベスター・セブンは「メギドの第二波」で燃えて、ミュウの母船も消えていた。
(タイプ・ブルーが何人いようが、そうなった筈だ…)
第二波を防ぐ余力は無かっただろうな、と思う根拠は「タイプ・ブルー」たちにある。
「メギドを防いだ」と、人類軍を驚かせたタイプ・ブルーは、大部分が幼い子供だった。
幼児や乳児が急成長して、防いだと聞く。
(…元が幼い子供では…)
体力的な限外があるし、第一波を止めるのが精一杯だったろう。
第二波攻撃を加えられていれば、ミュウを殲滅出来ていたのに、そうはならなかった。
(…ソルジャー・ブルー…)
自らの命を犠牲にしてまで、今の状況を作り出した男、と憎いけれども、その逆でもある。
(……どうして、其処まで出来たのだ……)
死んでしまえば終わりではないか、と思う一方、羨ましいと思う自分が存在する。
(…セキ・レイ・シロエ…)
彼の最期も少し似ていた、と今だから感じる。
シロエも「命を懸けて守りたかった」ものがあったから、あの道を選んだ。
(ソルジャー・ブルーのように、誰かを守るものではなかったが…)
自分の信念を貫き通して、「心」を守った。
機械が支配している世界を嫌って、自らの願う場所を目指して飛び去って行った。
命と引き換えの旅立ちだったけれども、彼に後悔は無かっただろう。
(……ミュウというのは……)
そういう人種になるのだろうか、と考えてしまう。
側近に据えた「マツカ」も、何処か「彼ら」に似ている所があった。
人類のキースに仕えているのは、マツカにとっては「命懸け」でもある。
正体が知れれば、彼の命は「その場で」消されて、逃げる暇さえ与えられはしない。
なのに、マツカは逃げもしないで、側近の務めを続けている。
(…私が命の恩人だから、と…)
ミュウの側へは行かないままで、危うい場所で生きているのも、ミュウだからかもしれない。
多分、マツカが「命を懸けて守りたいもの」は、「キース」なのだろう。
だからキースに仕え続けて、ミュウならではの力で「キース」を守り続ける。
(…ミュウがそういう人種だとすれば、人類の方は…)
どうなのだろうか、と改めて考えてみるまでもない。
パルテノン入りを果たすより前、何度も足を引っ張られた。
「キース」が目障りな者たちに殺されかけたのは、数え切れないほどの回数。
(上層部が、その有様ではな…)
一般市民の世界も、容易に想像出来る。
「自らの命を犠牲にしてまで」、何かを守ろうとする者は、皆無なのに違いない。
(…情けない話だ…)
養父母でさえも、自分の子供を「殺させる」のだしな、と頭に浮かぶ「ミュウの処分」。
ミュウの兆候を見せた子供は、ユニバーサルに通報されて、殺されるのが常識。
殺されなくても、研究対象として「捕獲」されるだけ。
(…親が自分の保身のために、いち早く…)
赤ん坊でも届け出るのだ、と恐ろしくもある。
ミュウの兆しを見せる前の子は、「我が子」として愛おしまれていたのだろうに。
なんと違いが大きいのか、と考えてゆけばゆくほど、ミュウが羨ましくなって来る。
彼らの生き方は「理解出来ない」と思う自分と、「羨ましい」と感じる自分。
(…指導者が死んでしまえば、組織は終わってしまうのに…)
ソルジャー・ブルーは、その道を選んだ、と不思議ではあっても、今の状況が全て。
彼が命を捨てなかったら、今も人類の世界は安泰だったろう。
(…私のパルテノン入りにしても、もっと先の事で…)
ミュウは処分されるだけの異物だった、と痛切に思い知らされる。
「ソルジャー・ブルーが、命を犠牲に守ったもの」が、いったい何を生み出したのか。
彼が作り出した現状が指しているのは、間違いなく「ミュウの勝利に終わる」結末。
いずれ彼らがSD体制を倒し、ミュウの時代がやって来るのだろう。
(…ミュウの因子を、出生前に遡って、抹消しない限り…)
その日は来る、と分かっているから、「ソルジャー・ブルー」は「偉大だった」。
敵ながら天晴れ、と思わされるわけで、本当に、彼が羨ましい。
同じ指導者への道を歩んではいても、キースに「そういう未来」は、ありそうにない。
(私が命を懸けて守りたいほど、この世界には…)
素晴らしいものなど無いのだしな、と人類の世界が嘆かわしい。
出世のために他人を消したり、保身のために我が子を殺させたりしている者たちばかり。
(たまには、マシな者もいるようだが…)
そんな輩はミュウの味方だ、とスウェナ・ダールトンを頭に描く。
彼女は今や「ミュウの協力者」で、ジョミー・マーキス・シンとも接触しているくらい。
つまりは「ミュウか、ミュウと近しい者」だけが、ヒトらしく生きているのだろう。
(…私には、その生き方は無理で…)
許されてさえもいないのだが、と思いながらも、羨ましい。
「命を懸けて守りたい」ものなど、「キース」には無いし、見付かりそうにも思えない。
(…理想の人類として作られたのだしな…)
仕方ない、と溜息が零れるばかりなのだけれども、もしかしたなら、一つだけ…。
(……マツカ……)
いつかミュウたちが攻めて来たなら、マツカも戦闘に巻き込まれる。
指導者として立つ「キース」に対する、総攻撃が始まることだろう。
(…その時、マツカが側にいたなら…)
彼を庇って散るのもいい、と思わないでもない。
マツカの命が助かったならば、ミュウたちは「マツカから」、人類の話を聞くことが出来る。
(ろくな世界ではないのだが、それでもだ…)
キースの部下たちと暮らした日々を語ってくれれば、人類の評価が「少しだけ」でも…。
(…上がってくれると嬉しいのだが…)
私が「人類」にしてやれる、最後のことだ、と叶いそうにない「未来」を思う。
その日が来た時、そう出来れば、と…。
叶わない未来・了
※キースには「命を懸けて守りたいもの」があるのか、考えていたら生まれたお話。
SD体制の世界を守るしかないのですけど、命懸けで守るには情けない世界ですしね…。
(ネバーランドよりも、素敵な場所だと思ってたのに…)
いつから違っちゃったんだろう、とシロエがついた深い溜息。
Eー1077の夜の個室で、考えるものは「地球」のこと。
(初めて、地球を教えてくれたのは、パパで…)
ピーターパンの本を読んでいた時、とびきりの笑顔で話してくれた。
「ネバーランドよりも、素晴らしい場所が地球なんだぞ」と、初めて聞いた星の名を挙げて。
「シロエなら、行けるかもしれないな」と、父は夢を掻き立てる言葉を口にした。
(…地球に行けるのは、選ばれた優秀な人間だけで…)
それ以外の者は行けないという。
父は優れた研究者だけれど、地球に行ける資格は無いらしい。
(パパよりも、凄い研究者とかにならないと駄目で…)
行けるかどうかは、努力次第なら、頑張らないと、と子供心に決意したのを覚えている。
(…ネバーランドにだって、行きたかったけれど…)
ピーターパンの迎えを待つより他に、行き方が無いのが「ネバーランド」という場所だった。
道順は本に書いてあっても、その通りにするのは難しすぎる。
(…二つ目の角を右に曲がって、後は朝まで、ずっと真っ直ぐ…)
そうは言っても、二つ目の角は、何処を指すのだろう。
何度も試しに曲がってみては、「違うみたいだ」とガッカリした。
(右に曲がるのは、簡単なんだけどね…)
「後は朝まで、ずっと真っ直ぐ」が、幼い子供には難しすぎて、どうにも出来ない。
朝は東からやって来るけれど、朝が来るまで、東へ向かって、ずっと歩き続けられはしない。
(食べ物と飲み物を持って、出発したって…)
日が暮れて来たら、誰かに声を掛けられるか、警備員でもやって来るか。
育英都市で暮らす大人は、皆が「子供」に気を掛けている。
(小さな子供が、夜中に一人で歩いているなんて…)
誰が見たって、「両親は何をしているんだ」と思うに違いない。
(…パパとママが呼ばれるのが先か、ぼくが止められて保護されるか…)
どう考えてみても、どちらかしかない。
ネバーランドに行きたかったら、「ピーターパンの迎えを待つ」のが唯一の方法と言える。
自分の方から出掛けて行くことは、夢物語に等しい。
ずっと行きたかったネバーランドは、頑張っても手には入らない夢の国。
けれども、「地球」は、そうではないようだ。
(ぼくが頑張って、素晴らしい人になれたら…)
地球に行く資格を貰うことが出来る。
「誰かの迎えを待つ」としたなら、地球に行くための船のパイロットくらい。
(自分で操縦して行けるとは、限らないしね…)
ぼくのパパだって、宇宙船は無理、と父の車を思い浮かべた。
エネルゲイアで暮らす大人たちの殆どは、宇宙船など操れはしない。
(ぼくも、研究者になるんだったら、宇宙船の操縦なんかは…)
学校で教えて貰えそうにないし、地球に行くには、誰かに乗せて行って貰うことになる。
(…定期便があるとしたって、それが来ないと…)
地球には辿り着けないわけだから、「迎えを待つ」のは、そういったもの。
(…パイロットも船も、ぼくが頑張る必要は無くて…)
「まだ来ないかな?」と腕時計でも見ている間に、到着する。
迎えが着いたら、地球へ向かう船に乗り込むだけで、夢の国へと運んで貰える。
(…ネバーランドよりも、行く方法は簡単だよね…)
難しいのは、行くための資格を手に入れることだけ、と道が見えたら、目指したくなる。
(待ってるだけより、努力次第で行ける場所の方が…)
夢を抱くには、相応しい場所。
ついでに言うなら、ネバーランドの方にしたって…。
(地球に行くために頑張ってる間に、ピーターパンが来てくれたなら…)
夜空を飛んで出掛けてゆけるし、諦めてしまわなくてもいい。
ネバーランドと、「ネバーランドよりも素晴らしい地球」と、両方を待っているのがいい。
運が良ければ、両方の夢が叶って、両方ともに行けるのだから。
(…それがいいよ、って思ったから…)
早速、地球を目指して、努力する日々が始まった。
勉強も、体育の授業なんかも、今まで以上に頑張って好成績を叩き出してゆく。
そうする間に、「メンバーズ・エリート」という言葉を教わった。
(うんと優秀な人間だけしか、メンバーズ・エリートにはなれなくって…)
もしもなれたら、地球への道も開けるらしい。
学校の先生たちは、そう言って皆を励ましていた。
(…頑張って、メンバーズになってくれたら、先生たちも嬉しいです、って…)
どの先生も口を揃えて言うものだから、メンバーズ・エリートを目標に据えることにした。
エネルゲイアは研究者を育てる育英都市なのだけれど、成績優秀だったら、コースは変わる。
(…エリートを育てる、教育ステーションに行って…)
其処で四年間、また勉強を続けて、大勢の中から、数人だけが選ばれるようだから…。
(うんと勉強、頑張らないと…)
なれないみたい、と分かったからには、努力を続けてゆくしかない。
まずは「エリートのための、教育ステーション」に行ける人間として、選び出されること。
めでたく「ステーション」まで行けたら、それまでよりも、もっと努力が必要だけれど…。
(頑張り続けて、トップの成績を叩き出せたら、間違いなく…)
メンバーズ・エリートになれるのだから、頑張る価値は充分にある。
「地球に行ける資格」を手に入れるための努力を、惜しむ気などは全く無い。
(寝てる時間も惜しいくらいに、頑張るってば!)
そうすれば、きっと「地球」に行けるよ、と故郷の星で夢を大きく膨らませていた。
「いつか行くんだ」と、ネバーランドよりも素敵な場所を心に描き続けて。
あの頃、夢に見ていた「地球」という星は、まさに楽園そのものだった。
ネバーランドは「子供のための楽園」だけれど、地球は「大人のための楽園」。
(…ずっと昔に、人類が初めて生まれたのが、地球という星で…)
一度は滅びた星だったのを、SD体制を敷いて蘇らせて、今がある。
地球は「人類の聖地」と呼ばれて、選ばれた者だけにしか、其処への道は開かれない。
(…どんなに素敵な所なんだろう、って…)
あれこれ夢見て、頑張り続けて、ついに「此処まで」やって来た。
エリートのための最高学府の、Eー1077教育ステーション。
(…だけど、此処に来る前に…)
失ったものが大きすぎるから、本当に「地球」を目指して良かったのか。
ピーターパンだけを待っていたなら、他にも道があっただろうか。
(…今のぼくには、地球という星は…)
憎いコンピューターが支配している場所でしかない。
いつか行けても、「夢の場所だ」と思えはしないことだろう。
どんなに素晴らしい「大人のための楽園」でも。
青く輝く、人類が生まれた「母なる星」が待っていたって。
夢に見ていた「楽園」は幻のように消えてしまって、グランド・マザーの玉座に変わった。
(…いつから、こうなってしまったんだろう…)
夢の場所ではなくなるなんて、と悲しいけれども、それでも「地球」を目指すしかない。
努力して地球に着かない限りは、グランド、マザーを止められないから。
グランド・マザーが止まってくれない限りは、失った記憶も戻ってくれはしないし、努力する。
夢の国ではなくなってしまった、地球を目指して。
楽園に繋がっているわけではない道を歩いて、歩き続けてゆくだけの旅路。
いつの日か、「子供が子供でいられる世界」を、取り戻すために、今は、ひたすら。
幼かった日に夢に見ていた、「地球」という星へ…。
夢に見た楽園・了
※シロエが行きたがっていた地球。アニテラで宇宙に散る前にも、口にしていたくらい。
いつから地球に憧れ始めて、どんな風に捉えていたのか、考えてみたお話。
いつから違っちゃったんだろう、とシロエがついた深い溜息。
Eー1077の夜の個室で、考えるものは「地球」のこと。
(初めて、地球を教えてくれたのは、パパで…)
ピーターパンの本を読んでいた時、とびきりの笑顔で話してくれた。
「ネバーランドよりも、素晴らしい場所が地球なんだぞ」と、初めて聞いた星の名を挙げて。
「シロエなら、行けるかもしれないな」と、父は夢を掻き立てる言葉を口にした。
(…地球に行けるのは、選ばれた優秀な人間だけで…)
それ以外の者は行けないという。
父は優れた研究者だけれど、地球に行ける資格は無いらしい。
(パパよりも、凄い研究者とかにならないと駄目で…)
行けるかどうかは、努力次第なら、頑張らないと、と子供心に決意したのを覚えている。
(…ネバーランドにだって、行きたかったけれど…)
ピーターパンの迎えを待つより他に、行き方が無いのが「ネバーランド」という場所だった。
道順は本に書いてあっても、その通りにするのは難しすぎる。
(…二つ目の角を右に曲がって、後は朝まで、ずっと真っ直ぐ…)
そうは言っても、二つ目の角は、何処を指すのだろう。
何度も試しに曲がってみては、「違うみたいだ」とガッカリした。
(右に曲がるのは、簡単なんだけどね…)
「後は朝まで、ずっと真っ直ぐ」が、幼い子供には難しすぎて、どうにも出来ない。
朝は東からやって来るけれど、朝が来るまで、東へ向かって、ずっと歩き続けられはしない。
(食べ物と飲み物を持って、出発したって…)
日が暮れて来たら、誰かに声を掛けられるか、警備員でもやって来るか。
育英都市で暮らす大人は、皆が「子供」に気を掛けている。
(小さな子供が、夜中に一人で歩いているなんて…)
誰が見たって、「両親は何をしているんだ」と思うに違いない。
(…パパとママが呼ばれるのが先か、ぼくが止められて保護されるか…)
どう考えてみても、どちらかしかない。
ネバーランドに行きたかったら、「ピーターパンの迎えを待つ」のが唯一の方法と言える。
自分の方から出掛けて行くことは、夢物語に等しい。
ずっと行きたかったネバーランドは、頑張っても手には入らない夢の国。
けれども、「地球」は、そうではないようだ。
(ぼくが頑張って、素晴らしい人になれたら…)
地球に行く資格を貰うことが出来る。
「誰かの迎えを待つ」としたなら、地球に行くための船のパイロットくらい。
(自分で操縦して行けるとは、限らないしね…)
ぼくのパパだって、宇宙船は無理、と父の車を思い浮かべた。
エネルゲイアで暮らす大人たちの殆どは、宇宙船など操れはしない。
(ぼくも、研究者になるんだったら、宇宙船の操縦なんかは…)
学校で教えて貰えそうにないし、地球に行くには、誰かに乗せて行って貰うことになる。
(…定期便があるとしたって、それが来ないと…)
地球には辿り着けないわけだから、「迎えを待つ」のは、そういったもの。
(…パイロットも船も、ぼくが頑張る必要は無くて…)
「まだ来ないかな?」と腕時計でも見ている間に、到着する。
迎えが着いたら、地球へ向かう船に乗り込むだけで、夢の国へと運んで貰える。
(…ネバーランドよりも、行く方法は簡単だよね…)
難しいのは、行くための資格を手に入れることだけ、と道が見えたら、目指したくなる。
(待ってるだけより、努力次第で行ける場所の方が…)
夢を抱くには、相応しい場所。
ついでに言うなら、ネバーランドの方にしたって…。
(地球に行くために頑張ってる間に、ピーターパンが来てくれたなら…)
夜空を飛んで出掛けてゆけるし、諦めてしまわなくてもいい。
ネバーランドと、「ネバーランドよりも素晴らしい地球」と、両方を待っているのがいい。
運が良ければ、両方の夢が叶って、両方ともに行けるのだから。
(…それがいいよ、って思ったから…)
早速、地球を目指して、努力する日々が始まった。
勉強も、体育の授業なんかも、今まで以上に頑張って好成績を叩き出してゆく。
そうする間に、「メンバーズ・エリート」という言葉を教わった。
(うんと優秀な人間だけしか、メンバーズ・エリートにはなれなくって…)
もしもなれたら、地球への道も開けるらしい。
学校の先生たちは、そう言って皆を励ましていた。
(…頑張って、メンバーズになってくれたら、先生たちも嬉しいです、って…)
どの先生も口を揃えて言うものだから、メンバーズ・エリートを目標に据えることにした。
エネルゲイアは研究者を育てる育英都市なのだけれど、成績優秀だったら、コースは変わる。
(…エリートを育てる、教育ステーションに行って…)
其処で四年間、また勉強を続けて、大勢の中から、数人だけが選ばれるようだから…。
(うんと勉強、頑張らないと…)
なれないみたい、と分かったからには、努力を続けてゆくしかない。
まずは「エリートのための、教育ステーション」に行ける人間として、選び出されること。
めでたく「ステーション」まで行けたら、それまでよりも、もっと努力が必要だけれど…。
(頑張り続けて、トップの成績を叩き出せたら、間違いなく…)
メンバーズ・エリートになれるのだから、頑張る価値は充分にある。
「地球に行ける資格」を手に入れるための努力を、惜しむ気などは全く無い。
(寝てる時間も惜しいくらいに、頑張るってば!)
そうすれば、きっと「地球」に行けるよ、と故郷の星で夢を大きく膨らませていた。
「いつか行くんだ」と、ネバーランドよりも素敵な場所を心に描き続けて。
あの頃、夢に見ていた「地球」という星は、まさに楽園そのものだった。
ネバーランドは「子供のための楽園」だけれど、地球は「大人のための楽園」。
(…ずっと昔に、人類が初めて生まれたのが、地球という星で…)
一度は滅びた星だったのを、SD体制を敷いて蘇らせて、今がある。
地球は「人類の聖地」と呼ばれて、選ばれた者だけにしか、其処への道は開かれない。
(…どんなに素敵な所なんだろう、って…)
あれこれ夢見て、頑張り続けて、ついに「此処まで」やって来た。
エリートのための最高学府の、Eー1077教育ステーション。
(…だけど、此処に来る前に…)
失ったものが大きすぎるから、本当に「地球」を目指して良かったのか。
ピーターパンだけを待っていたなら、他にも道があっただろうか。
(…今のぼくには、地球という星は…)
憎いコンピューターが支配している場所でしかない。
いつか行けても、「夢の場所だ」と思えはしないことだろう。
どんなに素晴らしい「大人のための楽園」でも。
青く輝く、人類が生まれた「母なる星」が待っていたって。
夢に見ていた「楽園」は幻のように消えてしまって、グランド・マザーの玉座に変わった。
(…いつから、こうなってしまったんだろう…)
夢の場所ではなくなるなんて、と悲しいけれども、それでも「地球」を目指すしかない。
努力して地球に着かない限りは、グランド、マザーを止められないから。
グランド・マザーが止まってくれない限りは、失った記憶も戻ってくれはしないし、努力する。
夢の国ではなくなってしまった、地球を目指して。
楽園に繋がっているわけではない道を歩いて、歩き続けてゆくだけの旅路。
いつの日か、「子供が子供でいられる世界」を、取り戻すために、今は、ひたすら。
幼かった日に夢に見ていた、「地球」という星へ…。
夢に見た楽園・了
※シロエが行きたがっていた地球。アニテラで宇宙に散る前にも、口にしていたくらい。
いつから地球に憧れ始めて、どんな風に捉えていたのか、考えてみたお話。
