幕を下ろす者
(…恐らく私が、最初で最後なのだろうな…)
人類の理想の統治者というのは、とキースは深い溜息を零した。
宇宙空間に夜は無くても、地球標準時で言えば夜更けで、旗艦ゼウスも夜間照明。
国家主席の地位に就いたけれども、「後を継ぐ者」に心当たりが無い。
人類とミュウの戦いは最終局面、人類側の敗色が濃かった。
負けた場合は、国家主席も退任するしかないだろう。
統治するのがミュウになったら、国家主席などは要らない。
そうなった時に、誰が人類を導いてゆくのか。
「キース」が「ただの国家主席」だったら、退任した後でも、道は作れる。
最高統治者がミュウに移るだけで、政権もミュウが取っていようが、やりようはある。
(人類だけの世界しか認められない者には、自治区域でも設けてやれば…)
ミュウを受け入れられない者だけの「国家もどき」で、それなりに生きてゆけるだろう。
もっとも、SD体制は破壊されるだろうから、人口は必然的に先細りになる。
人口出産を続けるとしても、ミュウは「人類だけ」を区別はしない。
(ミュウと共存出来るように育てて、自然に融和するのだろうし…)
どうしようもない、と思考はマイナスにしか向かってゆかない。
ミュウは「進化の必然」だったことを知った。
そのせいで、SD体制を治める機械も「ミュウの因子」を排除出来ない。
SD体制が崩壊した後となったら、ミュウを異分子と決め付けることは不可能だった。
(最初の間は、ごく僅かしかミュウが生まれないとしても…)
自然に数は増えるのだろうし、何より人類の子供は「ミュウを嫌わない」ように育ってゆく。
「人類だけで作った、国家もどき」の自治区域に、移住する者は誰もいないだろう。
(…頭の固い、古い人類どもが、どんな暮らしをしているのかを、若い人類が…)
聞き取り調査などをするためだけに、訪れる程度の「滅びゆく世界」。
けれども、そういった場所を「作り上げられる」者が、「いそうにない」。
(…機械はキースを作って、国家主席にまで仕立て上げたが…)
後継者を育てようとはしていないようで、頭角を現す「若手」も見当たらなかった。
つまり「キース」が「理想の統治者」、機械は「キースの後継者」を考慮してはいない。
(私が最後だとすれば、人類は…)
ミュウに敗北すると同時に、導く者さえも失う、とキースは頭を抱えたくなる。
「キース」は、「ただの国家主席」と認識されてはいないだろう。
ミュウにしてみれば「ナスカ」、即ち「ジルベスター・セブン」の惨劇を引き起こした者。
「ナスカ崩壊」から後の長い戦いにしても、最高指揮官は「キース」でしかない。
ミュウが統治者になった暁には、「戦犯」という扱いになる。
どれほどミュウが寛大であっても、「戦犯」に「人類の指導者」は任せられない。
(…ミュウの間でも、揉めるだろうし、人類の側にしてみても…)
「戦犯」の烙印を押された「指導者」を立てておくのは、不安だろう。
何か起きた時に、ミュウの側と上手く交渉出来るのか。
「かつての、わだかまり」のせいで、渋られる面が出ては来ないか。
(…何のしがらみも持たない、新しく出て来た者がトップだったら…)
ミュウの側でも、便宜を図ってくれそうではある。
指導経験さえも浅いわけだし、「人類だけの、国家もどき」でも、気に掛けるだろう。
天災に見舞われたりした折には、要請せずとも、察知して救助の船がやって来る。
食料不足などがあったら、不足している品は何なのか、問い合わせが来て、救援物資も。
(そういったことが期待出来ないのが、私が指導者だった場合で…)
救援要請を無視されるとか、取り次ぐ者が「止めてしまって」上に届かない事態とか。
個人的に「恨みを抱いている者」が、「多そう」なのが「キース・アニアン」。
人類が「次の指導者」を持っているなら、そちらが継いでゆけばいい。
「キース」が戦犯になって裁かれていようが、次の指導者は無関係だし、自由に動ける。
移住を希望する者を纏めて、新天地を見付けて「人類だけの、国家もどき」を作れるだろう。
(…しかし、機械は、どう考えてみても…)
次の指導者を考慮していないし、作られている気配さえ無い。
「キースが与かり知らない所」で、密かに作っているとも考えにくい。
(…機械は、ミュウを滅ぼすためだけに、私を作り上げて…)
そのシナリオでしか、道筋を描いていないのだろう。
SD体制が始まった時点のままで「思考停止」で、柔軟に思考することが出来ない。
(…負け戦になるのは見えているから、私がいなくなった時には…)
人類は「指導する者」を失い、ミュウの世界に「飲まれてゆく」より他に無かった。
「人類だけの、国家もどき」は生まれないまま、否応なしに「ミュウと暮らす」道だけ。
(…私が死のうが、生きたままで指導者の地位を失おうが…)
人類だけの世界は「其処で終わりだ」と、奈落の底を覗き込んだような気分に陥る。
長く続いた「人類の歴史」に、「キース」が幕を下ろすことになる。
「キース」が国家主席を退いた後には、人類の世界は、もう「残せない」。
(……私が、幕を下ろす者か……)
よりにもよって、機械に無から作られた生命体が、と嘆きたくても、どうしようもない。
自分の生まれは変えられないし、次の指導者もいない以上は、そうなるのだろう。
せめて誰かに引き継げたなら、と思うけれども、気付くのが少し遅すぎたらしい。
今から探している暇などは無いし、「キース」は幕を下ろすしかない。
SD体制の遥か前から、長く栄え続けた、「人類」という種族が生きた舞台に…。
幕を下ろす者・了
※キースの後継者を、機械は作っていない気しかしません。原作は、まさにソレ。
グランド・マザーが「全権をあなたに」と言ってましたけど、先を考えていないとしか…。
人類の理想の統治者というのは、とキースは深い溜息を零した。
宇宙空間に夜は無くても、地球標準時で言えば夜更けで、旗艦ゼウスも夜間照明。
国家主席の地位に就いたけれども、「後を継ぐ者」に心当たりが無い。
人類とミュウの戦いは最終局面、人類側の敗色が濃かった。
負けた場合は、国家主席も退任するしかないだろう。
統治するのがミュウになったら、国家主席などは要らない。
そうなった時に、誰が人類を導いてゆくのか。
「キース」が「ただの国家主席」だったら、退任した後でも、道は作れる。
最高統治者がミュウに移るだけで、政権もミュウが取っていようが、やりようはある。
(人類だけの世界しか認められない者には、自治区域でも設けてやれば…)
ミュウを受け入れられない者だけの「国家もどき」で、それなりに生きてゆけるだろう。
もっとも、SD体制は破壊されるだろうから、人口は必然的に先細りになる。
人口出産を続けるとしても、ミュウは「人類だけ」を区別はしない。
(ミュウと共存出来るように育てて、自然に融和するのだろうし…)
どうしようもない、と思考はマイナスにしか向かってゆかない。
ミュウは「進化の必然」だったことを知った。
そのせいで、SD体制を治める機械も「ミュウの因子」を排除出来ない。
SD体制が崩壊した後となったら、ミュウを異分子と決め付けることは不可能だった。
(最初の間は、ごく僅かしかミュウが生まれないとしても…)
自然に数は増えるのだろうし、何より人類の子供は「ミュウを嫌わない」ように育ってゆく。
「人類だけで作った、国家もどき」の自治区域に、移住する者は誰もいないだろう。
(…頭の固い、古い人類どもが、どんな暮らしをしているのかを、若い人類が…)
聞き取り調査などをするためだけに、訪れる程度の「滅びゆく世界」。
けれども、そういった場所を「作り上げられる」者が、「いそうにない」。
(…機械はキースを作って、国家主席にまで仕立て上げたが…)
後継者を育てようとはしていないようで、頭角を現す「若手」も見当たらなかった。
つまり「キース」が「理想の統治者」、機械は「キースの後継者」を考慮してはいない。
(私が最後だとすれば、人類は…)
ミュウに敗北すると同時に、導く者さえも失う、とキースは頭を抱えたくなる。
「キース」は、「ただの国家主席」と認識されてはいないだろう。
ミュウにしてみれば「ナスカ」、即ち「ジルベスター・セブン」の惨劇を引き起こした者。
「ナスカ崩壊」から後の長い戦いにしても、最高指揮官は「キース」でしかない。
ミュウが統治者になった暁には、「戦犯」という扱いになる。
どれほどミュウが寛大であっても、「戦犯」に「人類の指導者」は任せられない。
(…ミュウの間でも、揉めるだろうし、人類の側にしてみても…)
「戦犯」の烙印を押された「指導者」を立てておくのは、不安だろう。
何か起きた時に、ミュウの側と上手く交渉出来るのか。
「かつての、わだかまり」のせいで、渋られる面が出ては来ないか。
(…何のしがらみも持たない、新しく出て来た者がトップだったら…)
ミュウの側でも、便宜を図ってくれそうではある。
指導経験さえも浅いわけだし、「人類だけの、国家もどき」でも、気に掛けるだろう。
天災に見舞われたりした折には、要請せずとも、察知して救助の船がやって来る。
食料不足などがあったら、不足している品は何なのか、問い合わせが来て、救援物資も。
(そういったことが期待出来ないのが、私が指導者だった場合で…)
救援要請を無視されるとか、取り次ぐ者が「止めてしまって」上に届かない事態とか。
個人的に「恨みを抱いている者」が、「多そう」なのが「キース・アニアン」。
人類が「次の指導者」を持っているなら、そちらが継いでゆけばいい。
「キース」が戦犯になって裁かれていようが、次の指導者は無関係だし、自由に動ける。
移住を希望する者を纏めて、新天地を見付けて「人類だけの、国家もどき」を作れるだろう。
(…しかし、機械は、どう考えてみても…)
次の指導者を考慮していないし、作られている気配さえ無い。
「キースが与かり知らない所」で、密かに作っているとも考えにくい。
(…機械は、ミュウを滅ぼすためだけに、私を作り上げて…)
そのシナリオでしか、道筋を描いていないのだろう。
SD体制が始まった時点のままで「思考停止」で、柔軟に思考することが出来ない。
(…負け戦になるのは見えているから、私がいなくなった時には…)
人類は「指導する者」を失い、ミュウの世界に「飲まれてゆく」より他に無かった。
「人類だけの、国家もどき」は生まれないまま、否応なしに「ミュウと暮らす」道だけ。
(…私が死のうが、生きたままで指導者の地位を失おうが…)
人類だけの世界は「其処で終わりだ」と、奈落の底を覗き込んだような気分に陥る。
長く続いた「人類の歴史」に、「キース」が幕を下ろすことになる。
「キース」が国家主席を退いた後には、人類の世界は、もう「残せない」。
(……私が、幕を下ろす者か……)
よりにもよって、機械に無から作られた生命体が、と嘆きたくても、どうしようもない。
自分の生まれは変えられないし、次の指導者もいない以上は、そうなるのだろう。
せめて誰かに引き継げたなら、と思うけれども、気付くのが少し遅すぎたらしい。
今から探している暇などは無いし、「キース」は幕を下ろすしかない。
SD体制の遥か前から、長く栄え続けた、「人類」という種族が生きた舞台に…。
幕を下ろす者・了
※キースの後継者を、機械は作っていない気しかしません。原作は、まさにソレ。
グランド・マザーが「全権をあなたに」と言ってましたけど、先を考えていないとしか…。
PR
COMMENT
