(……理想の子……)
今度こそは、とマザー・イライザが続ける思考。
E-1077のシークレット・ゾーン、フロア001での「実験」。
三十億もの塩基対を合成し、それを繋いでDNAという名の鎖を紡ぐ。全くの無から生命を生み出すために、何度となく実験を続けて来た。
その「基礎」は既に出来上がっている。強化ガラスの水槽の中に並んだ「サンプル」たち。
彼らと同じにDNAを紡いでゆけば、「外見」だけは立派に完成するのだけれど…。
(…足りないのは、押し…)
今のままでは、どう作っても「ただのヒト」しか出来ない。とても優秀な「人類」が一人、出来上がるというだけのこと。そう、「人類」。
(いずれは、時代遅れになる筈の種族で…)
より「優れた者」を作り出すなら、人類ではなくて「ミュウ」でなければならない。SD体制の異分子とされる、「M」と呼ばれる生き物たち。
彼らは排除するべき存在だけれど、進化の必然でもあった。宇宙を統べるグランド・マザーが、ひた隠しにしている「ミュウの真実」。
もちろんマザー・イライザにも「内緒」で、知られたとは気付いていないだろう。こんな末端の「たかが教育ステーション」のコンピューター風情が、最高機密を「掴んだ」とは。
ところがどっこい、それが「現実」。
このプロジェクトを任された時から、マザー・イライザは常に「上」を目指して来た。要求された内容以上の成果を上げてゆかなければ、と。
そうするためなら、手段を選びはしない。グランド・マザーの意向を知ろうと、ハッキングさえもやらかす勢い。「従っている」ふりをしたなら、容易に侵入可能なだけに。
(…どう考えても、ミュウ因子を加えた方がお得で…)
優秀な人材が「生まれる」だろうに、それは御法度。
なんとも惜しい限りの話で、どうにかして「そこ」をクリアしたいもの。「理想の子」を見事に作り上げるなら、欠かせないブツがミュウ因子。
何か方法はないものだろうか、とマザー・イライザは思考し続ける。
「人類」であるべき「理想の指導者」、それと「ミュウ因子」とは並び立たないのか、あるいは抜け道があるものなのか。
(…普段は人類、場合によってはミュウというのは…)
どうだろうか、と考えたものの、その切り替えが難しい。何かのはずみにスイッチオンで、人類からミュウにパッと変身するなら、ともかく。
(…変身……?)
これは使えるかもしれない、とメモリーバンクを探ってゆく。遥か昔から、人間たちは「それ」を夢見て来た。変身して戦うヒーローやヒロイン、そういったモノを。
(……データは、山ほど……)
ならば私の「好み」で決めて…、とマザー・イライザは「観始めた」。SD体制が始まるよりも遠い昔に、人間が「作った」変身モノの様々な映像などを。
(…美少女戦士セーラームーン…)
少女の話は必要ない、と思ったものの、参考のために観てもいいだろう、と全話を確認した後、マザー・イライザは「コレだ!」と考えた。
人類の聖地、母なる地球。ソル太陽系の第三惑星、そこが肝心。
戦う美少女セーラームーンは、地球にある「月」の名前を持っていて…。
(セーラー・マーキュリー、セーラー・マーズ…)
他の美少女戦士たちには、ソル太陽系の惑星の名がついていた。後の時代に「準惑星」へと転落していった冥王星までが、バッチリ入って、セーラー・プルート。
(…これだけ揃っても、無いのが地球…)
地球の名を持つ「美少女戦士」は、いなかった。
だったら、名前だけを拝借、セーラー・アースか、セーラー・ガイアとでも。
(据わりがいいのは、セーラー・ガイア…)
それにしよう、とマザー・イライザが決めた「理想の子」にして、「理想の戦士」。この際、美少女の件はサラッと無視して、「要は、セーラー戦士でいい!」と。
もうちょっとばかり思考していたら、「タキシード仮面」が「地球担当」だと気付いただろうに、どこか抜けていたマザー・イライザ。
勝手に決めたのが「セーラー・ガイア」で、ミュウ因子が発動した時は「ソレ」。
(…変身して、華麗に戦うのなら…)
人類以上の能力があってもオールオッケー、きっと問題ナッシング。
これで「理想の子」を作れる、とマザー・イライザは頑張った。「理想の子」が変身を遂げた時には、服までが変わるようにして。
(本当に変えられるわけがないから…)
其処の所は、ミュウの得意技でいいだろう。サイオニック・ドリームで「服」を作れば。
美少女戦士たちのパクリで、セーラーカラーにミニスカートの「戦士」でかまわない。なんと言っても「セーラー・ガイア」を名乗るからには、あくまで「本家」に忠実に。
(ガイア・ミラクルパワー…)
メイクアップ! という「掛け声」も組み込むことにした。
かてて加えて、忘れちゃいけない決め台詞。「地球に代わって、おしおきだ!」と。
「理想の子」は男性なのだからして、「おしおきよ!」では、流石にアウトっぽいから。
(…同じミュウなら…)
最強のタイプ・ブルーと洒落込みたいけれど、如何せん、データが足りなさすぎた。最初に発見された一人を除いて、タイプ・ブルーのミュウなどは「いない」。
仕方ないから、攻撃力だけはタイプ・ブルーに匹敵すると噂の、タイプ・イエロー。それで代用しておこう、とマザー・イライザが固めた方針。
(強ければ、それでいいのだし…)
無い物ねだりをしているよりは、現実的な選択をすべき。
人類の指導者となるべき「理想の子」。その正体は、タイプ・イエローのミュウでもあって、それゆえに「人類以上の能力」を持つ。
もっとも、「彼」が変身する機会があるかどうかは、別の話で。
こうして無から作り出された、「セーラー・ガイア」。
人類としての名前は「キース・アニアン」、彼はフロア001で成人検査の年まで育った。養父母や教師に情緒を曲げられることなく、強化ガラスの水槽の中で、無垢な者として。
E-1077の候補生となった後には、「機械の申し子」の異名を取るほど、優れたエリート。人類以上の能力は「頭脳にも」影響を与えてゆくだけに。
(ようやく、生まれた…)
理想の子が、とマザー・イライザは御満悦。
E-1077では、さしたる事件も無かったお蔭で、「セーラー・ガイア」の出番は無かった。やがてメンバーズに抜擢された「キース」は、自分の「真の能力」を知らないままで卒業してゆき、「冷徹無比な破壊兵器」とも呼ばれ続けて…。
「…ジルベスターへ飛んでくれるかね?」
上官からの、そういう命令。
ジルベスター星域での事故調査と言いつつ、ミュウの拠点を見付けるのが任務。キースは早速にジルベスターへ飛び、其処の第七惑星で…。
「メンバーズ・エリート…。グランド・マザーの犬というわけか」
そう言い放った、キースの船を落とした青年。ミュウの長、ジョミー・マーキス・シン。それは恐ろしいオーラを背負った「彼」の登場で、キースは危機を悟ったわけで…。
(…こいつを相手に、ナイフ一本で勝つことが出来るのか…!?)
無理なのでは、と思った瞬間、口をついた叫び。まるで意識はしなかったのに。
「ガイア・ミラクルパワー…。メイクアーップ!!」
それが引き金、キースは華麗に「変身」を遂げた。地球の名を持つ「セーラー・ガイア」に。
サイオニック・ドリームとはいえ、凄いミニスカのセーラー戦士。
ジョミーは「え!?」とビビりまくりで、キースはビシィ! とポーズを決めた。
「貴様、ミュウの長か…! 地球に代わって、おしおきだ!」
「ちょ、ちょっと…! 君はミュウだ!」
もう絶対にミュウなんだけど、とジョミーはオタオタ、キースもハッと我に返った。さっきから自分が何を叫んだか、自分の「見た目」はどうなのか、などと。
「…わ、私は…? な、なんだ、これは…!?」
「いや、だから…。君はミュウだと思うわけでさ…」
セーラー・ガイアが君の正体だろう、と突っ込んだジョミー。「人類」としての名前は何であっても、ミュウとしての名前は「セーラー・ガイア」だ、と。
「……セーラー・ガイア……」
私がか…、とキースも「目が点」だったのだけれど、実際、やってしまった変身。それに決め台詞やら決めポーズまでがセットものだし、そういうことなら…。
(……実は私は、キース・アニアンではなくて……)
セーラー・ガイアだったのか、とキースも認めざるを得ない現実。「そうだったのか」と。
かくして、キースは「事故調査」から戻りはしなかった。
マザー・イライザが作った「理想の子」キース、それは優れた頭脳を活かして、ミュウの側につくことになる。
何と言っても「セーラー・ガイア」で、変身したなら戦士なのだし…。
「ソルジャー・シン。…アルテメシアは陥落させたが…」
いよいよ地球を目指すのか、とキースはサックリ「ミュウの世界」に馴染んで、メギドは出番も無いままだった。
ソルジャー・ブルーは今も存命、青の間で昏々と眠り続けている。
ナスカの子たちも急成長を遂げないままで、シャングリラは地球へと進んでゆく。地球の名を持つセーラー戦士、「セーラー・ガイア」と共に戦いながら。
「彼」を作ったマザー・イライザが、グランド・マザーに「消された」ことさえ知らないで。
そのラスボスのグランド・マザーですら、呆気なく倒されてしまったという。
「地球に代わって、おしおきだ!」と叫ぶ「セーラー・ガイア」と、ソルジャー・シンに。
無から作った「優れた人材」、その正体が実は「ミュウだった」せいで…。
地球の戦士・了
※「誰か変身しないモンかねえ?」と、ふと思ったのがネタ元ですけど…。セーラー戦士…。
いや、「ガイア、いないな…」なんて気付いちゃったら、やるっきゃない…ような…?
(…なんと傲慢な生命だろうな…)
この私は…、とキースが心で零す溜息。
それほどの価値があるのだろうか、と夜が更けた部屋で、ただ一人きりで。
「キース・アニアン」という存在。
国家騎士団上級大佐、叩き上げのメンバーズ・エリートでもある。
冷徹無比な破壊兵器と呼ばれようとも、「それが私だ」と歯牙にもかけはしなかった。
むしろ誇りを持ってさえいた。
グランド・マザーが直々に指名するほど、優れたエリート。優れた軍人。
「私は選ばれた存在なのだ」と自信に溢れて、疑いさえもしなかった。
どんな任務を任されようとも、そうして受けた任務の結果がどうなろうとも。
反乱軍を一人残らず地獄へ送ってしまおうと。
SD体制から生まれる異分子、ミュウを星ごとメギドで殲滅しようとも。
(…軍人ならば、それが当然だろうと…)
思ってもいたし、確固たる信念でもあった。
SD体制に異を唱える者、逆らう者は全て滅ぼすべきだと。
その考えが少し揺らいだのが、伝説のタイプ・ブルー・オリジンとの出会い。
長でありながら、命まで捨てて同胞のためにメギドを沈めた男。
(あいつのように、躊躇いもせずに…)
命さえも捨ててしまえる生き方、それを羨ましいと思った。
自分が置かれた地位も立場も、何もかもを顧みることさえもせずに死んでゆけたら、と。
けれど、その時は「そう思った」だけ。
直ぐに「馬鹿な」と冷静になって、「あいつはミュウだ」と、異分子なのだと切り捨てた。
SD体制の枠の中から弾き出された異分子がミュウ。
ならば、そのようにも生きるだろう。
秩序を重んじる「人類」とは違う種族なのだし、組織などには縛られないで。
「長」を失った者たちの混乱、其処まで考えたりはしないで。
そうして思った、「私は違う」という自覚。
ソルジャー・ブルーがどうであろうが、自分は自分。
異分子などには惑わされずに、真っ直ぐに前を見るべきだろう、と。
ジルベスター・セブンで上げた功績、それに相応しく二階級特進したのだから。
(…しかし、私は……)
異分子でさえもなかったのだ、と握り締める拳。
今、握り締めた拳さえもが、「人間」のそれとは違ったもの。
そう、文字通りに「違っていた」。
「キース・アニアン」という存在は。
遠い昔に「機械の申し子」と異名を取った、「グランド・マザーのお気に入り」は。
(まさか、ああして作られたなど…)
誰が思うものか、と腹立たしいだけ。
かつてシロエが「お人形さんだ」と言ったけれども、ただの比喩だと思っていた。
シロエが見て来たE-1077のフロア001、其処が「どういう場所」であろうと。
機械が並んだ改造室でも、「キース」の「元」はあると思った。
何らかの方法で「キースを改造していた」にせよ。
脳に直接、大量の情報を送り込んだりして、「優れた人材」を作っていても。
あるいは体術に秀でるようにと、肉体に手を加えていても。
その程度だろう、と高をくくっていた。
廃校になったE-1077、それの「処分」を命じられるまでは。
フロア001を「見て来る」ように、グランド・マザーに言われるまでは。
(…プロジェクト自体が極秘なだけに…)
大勢の部下を連れては行けない。
マツカだけを伴い、E-1077に近付き、其処から先は単独だった。
人工重力さえも失っていたステーション。
それを蘇らせ、一人きりで目指したフロア001という場所。
其処に並んだ幾つもの水槽、強化ガラスの中に浮かんでいた「サンプル」たち。
何人もの「キース・アニアン」がいた。
胎児から、「今のキース」と「さほど変わらない」キースまでが。
マザー・イライザが無から作った生命体。
三十億もの塩基対を合成した上、それを繋いでDNAという鎖を紡いで。
「キース」は「無から作られた」もの。
ミュウでさえも「無からは」生まれて来なくて、人工子宮で育ってゆくのに。
彼らの「元になった」モノなら、ちゃんと存在するというのに。
けれど、「そうではなかった」キース。
シロエが言った通りに「人形」。
人形だったら、それらしくしていれば良かったものを…。
(…水槽から出されて、育て上げられて…)
いつの間にやら上級大佐で、この先も昇進してゆくのだろう。
グランド・マザーの導きのままに、彼らの「人形」に相応しい道を歩み続けて。
そのこと自体は、どうでもいい。
「そうするために」作られたのなら、「そのようにしか」生きられない。
ただ、問題は「キース」そのもの。
今の「キース」を作り上げるために、マザー・イライザが用いた手段。
(……サムと知り合うように、仕向けていって……)
スウェナの場合は、知り合うどころか、その命さえも弄ばれた。
E-1077までスウェナを乗せて来た船、それを見舞った衝突事故。
それも「仕組まれたもの」だったから。
「キース」が上手く処理するかどうか、その能力を試すためだけに。
(…私が失敗していたら…)
あの船はE-1077の区画ごとパージされていた。
反物質が漏れ出すことで発生する、対消滅からE-1077を守り抜くために。
そうはならずに済んだけれども、スウェナや、あの船に乗っていた者の命。
それを「握っていた」のが「キース」で、失敗したなら、彼らは「死んだ」。
「キース・アニアン」とは、「そういう生命」。
マザー・イライザの「理想の子」とやらを育てるために、人の命さえ弄んだ末に出来たモノ。
スウェナもそうなら、「シロエ」も同じ。
シロエの場合は、人類ではなくてミュウだったけれど。
(…そのシロエもだ…)
もしも「キース」と出会わなかったら、「マツカ」のように生き延びたろう。
少し毛色の変わったエリート、そのように生きたに違いない。
マザー・イライザに選び出されて、「キースに殺されなかったら」。
「キース」を育てる「糧」として贄にされなかったら。
(…反乱軍の奴らを殲滅しようが…)
ジルベスター・セブンを焼き滅ぼそうが、それは「任務」の一環ではある。
「キース・アニアン」が「そうしなくても」、他の誰かが「やるだろう」こと。
成功するか、失敗するかは、また別のことで。
だから、そういう「命」を幾つ踏みにじろうとも、「軍人として」罪の意識は無い。
そんなものなど感じていたなら、とても軍人にはなれない。
けれど、「軍人になる」よりも前。
E-1077を卒業してから、メンバーズ・エリートになるよりも前。
その頃から「キース」は「人の命」を弄んでいた。
「無から生まれた生命体」であって、「人間でさえもない」というのに。
ミュウにさえも及ばない生命のくせに、預けられた「スウェナの船の乗員」の命。
まだ水槽から出されて間もない、候補生としては「ヒヨコ」の頃に。
そう、グレイブもそう言った。
あの日、救助に向かおうとしたら、「ヒヨコは鶏についてくるものだ」と。
ただの「ヒヨコ」であったというのに、幾つの命を預かったのか。
救助に失敗していたならば、何人の命が失われたのか。
(…そうなっていたら、何十人か、あるいは百人ほどもいたのか…)
それが「キース」を育てるための生贄になっていただろう。
マザー・イライザは「懲りることなく」、次の事故を起こしたに違いない。
その時点での「キース」に相応しい事故を、「上手く処理して」戻るようにと。
全ての仕上げに、「シロエ」の船を撃墜させた時と同じに。
「撃ちなさい」と冷たい声で命じて、シロエが乗った練習艇を落とさせたように。
つまり、「キース」は「そういう生命」。
任務とはまるで無関係な場所で、人の命を弄びながら「育った」者。
シロエの命も「キース」が奪った。
キースと出会っていなかったならば、シロエは「死ななかった」のだから。
(…何処の世界に、こんな人間がいるというのだ…)
育つためには「人の命」を欲するような…、と心で零して、漏らした失笑。
「私は、人ではなかったのだな」と。
人間の姿と変わらなくても、「作られた者」が「キース・アニアン」。
ならば、「人」ではないのだろう。
「人の命」を弄びながら、踏みにじりながら「育った」化け物。
化け物ではないと言うのだったら、傲慢なだけ。
自分以外の者の命を糧にして「出来上がった」のならば。
スウェナを乗せていた船の者や、シロエの命。
そういった「全て」を「糧にして育って」、今の「キース」がいるのなら。
(……遠い昔は、そういった者も……)
まるでいなかったわけではない。
王と呼ばれた者の中には、人を虫けらのように扱い、栄華を誇った者たちもいる。
彼らが犯した罪に比べれば、「キースの罪」は遥かに軽そうなのだけれども…。
(…人間でさえもないのが、私だ……)
人の物差しでは測れまいな、と分かっているから、自分自身が呪わしい。
「なんと傲慢な生命なのか」と、「人でもないのに、人の命を糧にしたか」と。
この世に神がいるというなら、神の目にはどう映るのだろう。
それとも「映りもしない」のだろうか、「人間ではない」生命などは。
いくら傲慢に育てられようとも、「神が作っていない」のならば。
(…どちらでもいいことなのだがな…)
今更どうにもなりはしない、と拳を握り締めるだけ。
行き着く所まで行かない限りは、きっと「終わり」の日さえも来ない。
そういう風に「作られた」者は、「そのようにしか」生きてゆけないから…。
傲慢な生命・了
※キースを育てるための計画、アニテラだと半端ないんですよね…。原作以上に。
だったら「自分の正体」に気付いたキースが、こう思うこともあるだろうか、というお話。
(……うーん……)
こういった生き物もいるのだった、とソルジャー・ブルーが零した溜息。
青の間のベッドで観ていた映像、アルテメシアで人類が放映している番組の一つ。ミュウの船は娯楽が少ないからして、こんな具合に傍受して流すニュースやドラマ。
ソルジャー・ブルーが眺めていたのは、愛らしい動物たちの紹介番組。心癒されるからと、よく観るもの。今日の主役は鴨なのだけれど…。
(…刷り込みというのを忘れていたな…)
仕方ないが、と見詰める画面は、飼育係の後ろをチョコチョコ歩く雛たち。
鴨だけに限らないのだけれども、「刷り込み」と呼ばれる現象がある。卵から孵化して、最初に目にした「モノ」が「親だ」と思い込むこと。
飼育係の人間だろうが、たまたま居合わせた犬であろうが、それが「親」。まるっと親だと思う雛たち、「本物の親」には見向きもしない。「初めて出会った」モノを親だと信じたままで。
(……ぼくとしたことが……)
三百年以上も生きたくせに、とブルーは悔やんでも悔やみ切れない。
人類の放送を傍受し続け、何度この手の映像を鑑賞して来たことか。刷り込みで「親だ」と思い込む雛も、「思い込まれて」雛の世話をする犬や猫なども。
本当だったら、ヨチヨチ歩きの雛鳥なんかは、犬や猫から見たなら「餌」。
けれども、「親だ」と思われた場合、「育て始める」こともある。毛繕いならぬ、羽繕いまでも舌でしてやって、自分の毛皮を寝床代わりに使わせもして。
(…鴨の雛でも、こうなんだから…)
ぼくも頑張れば良かったんだ、とブルーは後悔しきり。
何故かと言うに、只今、船で何かと話題のソルジャー候補。ジョミー・マーキス・シンが問題。
彼は「ブルーの後継者」なのに、大変な暴れ馬だった。船から逃げて行ったくらいに。
今でこそ観念したようだけれど、そうなるまでが長かった上に…。
(…ジョミーを追い掛けて、成層圏まで飛んで行ったから…)
ブルーも半殺しの目に遭ったわけで、未だ本調子ではない身体。寿命のことは抜きにしたって。
もしもジョミーが「鴨の雛」よろしく、ブルーに懐いていたならば…。
(同じように船に連れて来たって…)
流れは全く違った筈だ、とヒシヒシと思う。
成人検査を妨害した時点で、既に違っていただろう出会い。刷り込みが起こっていたならば。
失敗だった、とブルーが悔やむ「刷り込み」のこと。
ジョミーのことなら、生まれた時から「ずっと」見て来た。
正確に言うなら、人工子宮から外に出されて、養父母たちの家に来た時。アタラクシアで感じた「強い思念」に引かれて「見付けた」赤ん坊。
(あの時から、何度も思念体になって…)
ジョミーを眺めに行ったわけだし、もっと捻っておけば良かった。
養父母たちの隙を狙って、「幼いジョミー」に接触しては、「悪い人じゃない」と覚えて貰う。夢の世界に入り込んで行って、「一緒に遊ぶ」という手もあった。
(そうしておいたら、ジョミーは、ぼくにすっかり懐いて…)
「夢の中でしか会えない人だ」と思っていたって、きっと嫌いはしなかったろう。鴨の雛たちの刷り込みよろしく、「この人も親だ」といった具合で。
ジョミーが「親だ」と思い込んでいたら、成人検査を妨害した時も、嫌われる代わりに、助けに来たと分かって貰えた。「あの人だよ!」と、顔を輝かせたりもしてくれて。
そうやってジョミーを救っていたなら、「家に帰せ」とも言われてはいない。
(…ぼくがジョミーの「新しい親」で…)
次期ソルジャーに指名したって、文句の一つも無かっただろう。
ジョミーは進んで訓練を受けて、「次期ソルジャー」を目指した筈。シャングリラで出会った、「新しい親」が「そう言う」のなら。
(……思い付きさえしなかったなんて……)
つくづく馬鹿だ、とブルーの嘆きは尽きない。
「刷り込み」という言葉も、それが起こった結果の方も、映像などでお馴染みだったのに。
おまけに、ブルーは「ソルジャー・ブルー」。
ミュウたちの長で、ただ一人きりの、タイプ・ブルーというヤツでもあった。
ジョミーが船にやって来るまでは、もう本当に唯一無二。それだけにサイオンの方も最強、刷り込みをやってみたいのだったら、いくらでも出来た。
思念体での接触も、夢で出会うという方法も、意識の下に刷り込むことも。
いつかジョミーと生身で会ったら、「親だ」と思って貰えるように。
ジョミーを育てた養父母の代わりに、「今日からは、この人を頼ればいいんだ」と、心の底から信じて貰えて、すっかり懐いてくれるようにと。
一生の不覚、とブルーが悔やんだ、「ジョミーに刷り込み損ねた」失敗。
それでも「ジョミーが可愛い」わけだし、とても大切なソルジャー候補で、後継者。
だからブルーは、その夜、早速、ジョミーを呼んだ。「話があるから」と、青の間へ。
「…何の用です?」
訓練で疲れているんですけど、と仏頂面で現れたジョミー。愛想も何もまるで無かった。
この辺からして、激しく悔やまれる「ジョミーに刷り込まなかった」こと。
きちんと「刷り込んで」おきさえしたなら、ジョミーは「青の間に呼ばれた」だけでも、最高に御機嫌だったろうから。「ブルーに会える」と、犬なら尻尾を振らんばかりに。
(……ジョミーには、ぼくの轍を踏んで欲しくない……)
いつの日か、次のソルジャーを指名するのだったら、ジョミーは「その子」に好かれて欲しい。それがブルーの切なる願いで、ジョミーのためにもなるだろう話。
ゆえに、重々しく切り出した。
「…ジョミー。ぼくの遺言だと思って聞いておきたまえ」
「遺言ですって?」
聞き飽きました、とジョミーは素っ気なかった。取り付く島もない状態。
なにしろ「死ぬ死ぬ詐欺」というのが、ジョミーの「ブルーに対する」評価。養父母の家にいた頃に見せた夢でも、アルテメシアの遥か上空でも、「残り少ない」と告げていたブルーの寿命。
けれど、一向、死にはしなくて、今も現役で「ソルジャー」な人。
それで「遺言」などと言っても、ジョミーの耳には白々しいだけ。「また言い出した」といった感じで、右から左へスルーされても「文句は言えない」のだけれど…。
「いいから、聞いておくんだ、ジョミー。…ぼくのようなことに、なりたくなければ」
「…どういう意味です?」
「今の君だよ。ぼくを嫌っているのは分かるし、それも仕方がないとは思うが…」
負のスパイラルを背負って欲しくはない、とブルーは説いた。
自分の件なら、もう諦めているのだけれども、ジョミーは「同じ道を行くな」と。
次のソルジャーを選ぶ時には、「刷り込み」をやっておくように、と。
「刷り込みって…?」
訝しむジョミーに、ブルーは鴨の雛たちの話を聞かせた。
卵から孵って最初に出会えば、天敵だろうと「親なのだ」と思い込む、鴨の雛たち。ヨチヨチと後ろをついて歩いて、本物の親よりも「好きになる」ほど。
ブルーも「ジョミーに」それをしておくべきだった、と本当に後悔していることを。
ジョミーが「次のソルジャー」を見付けた時には、そうならないよう「刷り込むべきだ」と。
そうは言われても、まだ若いのがジョミー。全くピンと来はしない。
(…なに言ってんだろ…?)
死ぬ死ぬ詐欺の次はコレか、と思った程度で、お義理で「はい」と頷いただけ。少しも真面目に考えはせずに、「遥か未来のことなんか」とサラリ流して。
(ぼくが後継者を探す日なんて、三世紀以上も先のことだよ)
三百年も覚えていられるもんか、というのがジョミーの感想で本音。ブルーの気持ちは、まるで伝わりはしなかった。「ぼくの轍を踏んでくれるな」という「親心」も。
お蔭でジョミーはスッパリ忘れて、やがてシャングリラは宇宙へ出た。長く潜んだ雲海を離れ、アルテメシアを後にして。
それから間もなく、昏睡状態に陥ったブルー。
必然的にジョミーが「ソルジャー」になって、シャングリラは宇宙を彷徨う日々。地球の座標は未だ分からず、人類軍の船に追われて、思考機雷の群れに突っ込んだりもして。
希望も見えない船の中では、人の心も疲弊してゆく。
新しいミュウの子供も来ないし、諦めムードが漂うばかり。
けれど、見付けた赤い星。ジルベスター星系の第七惑星、ジルベスター・セブン。
「赤い星」、そして「輝く二つの太陽」。
フィシスが占った希望と未来に、まさにピタリと当て嵌まる星。
遠い昔に破棄された植民惑星なのだし、人類も来ないことだろう。ジョミーは其処に降りようと決めて、反対意見も、さほど無かった。ゼルがブツブツ言った程度で。
ジルベスター・セブンは、フィシスに「ナスカ」と名付けられた。ミュウの星として。
其処に入植するにあたって、もう一つあった大きな目的。
「ミュウの未来を築いてゆくこと」、すなわち、SD体制の時代には無い「自然出産」で子供を産み育てること。
たとえ倫理に反していようが、非効率的な手段だろうが。
そして最初の「命」を宿したのがカリナ。何ヶ月か経てば「子供」が生まれる。
(……男の子なんだ……)
元気な子供が生まれるといいな、とジョミーは思った。
ミュウは何かと虚弱な種族で、「何処かが欠けている」のが普通。ジョミーは例外中の例外。
そんな種族では「未来が無い」から、生まれてくる子は「健康で強い子供」がいい。ジョミーは心からそれを望んで、「そうなるといい」と願い続けて、ある日、気付いた。
ずっと昔に、ソルジャー・ブルーが「遺言だ」と告げた、鴨の子の話。確か、刷り込み。
(…卵から孵って、最初に見たものを親だと思って…)
人間だろうが、犬猫だろうが、懐きまくるのが鴨の雛たち。後ろをヨチヨチついて歩いて。
ブルーも「それをするべきだった」と、あの日、滾々と聞かされた。
いずれジョミーを「船に迎える」なら、幼い頃から「刷り込んでおいて」、懐くようにと。
(…カリナが生む子が、強い子だったら…)
ソルジャー候補は、まるで必要ないのだけれども、いつか役立つ日が来るかもしれない。人類と戦う時が来たなら、戦力として。
(そうなってくると、ブルーが言っていたように…)
刷り込んでおくのがいいのだろう。
生まれてくる子の本当の親は、カリナとユウイ。SD体制始まって以来の、本物の「親」。
彼らが子供の「親」になるなら、刷り込むには「親」になるよりも…。
(…親よりも上の立場の方が、もう絶対に有利だよね?)
「親の親」だと「おじいちゃん」か、とジョミーは大きく頷いた。「それでいこう」と。
ただ、「おじいちゃん」という言葉は「嬉しくない」。
今も昏睡状態の「ジジイ」、ブルーでさえも「おじいちゃん」と呼ばれはしない。
(…おじいちゃん、って意味の言葉で、もっと響きがマシなのは…)
無いだろうか、とジョミーは懸命に調べまくって、「グランパ」という言葉を見付けた。意味は「おじいちゃん」そのものだけれど、これならダメージ低めではある。
カリナが生む子に、「グランパ!」と呼び掛けられたって。
「おじいちゃん!」と懐かれるよりは、断然、そっちの方がいい。「グランパ!」の方が。
(……よーし……)
頑張るぞ、とジョミーが固めた決意。「刷り込まなくちゃ」と。
ジョミーはせっせとカリナを見舞って、名前も無い胎児に思念を送った。「グランパだよ」と、「生まれて来たら、ぼくと一緒に遊ぼう」などと。
その子が無事に生まれた後には、「トォニィ」と呼び掛け、抱っこもして。
ジョミーの努力は立派に実って、喋れるようになったトォニィは…。
「グランパ!」
大好き、と見事に「懐いた」わけで、鴨の雛のように「ジョミーに夢中」。
実の両親が側にいたって、ジョミーの方にトコトコ歩いて来て。「グランパ!」と呼んで。
こうしてジョミーは、トォニィの「グランパ」になった。
遠い昔にブルーから聞いた、「刷り込み」を、きちんと実行して。
タイプ・ブルーの強い子供を、すっかりと「ジョミーに」懐かせて。
これのお蔭で、後に人類は、ミュウに敗れることになる。
トォニィが率いるナスカの子たちは、半端ない戦力だったから。揃いも揃って最強の子で。
しかもトォニィの「グランパ」はジョミー、どんな命令でもトォニィは「聞く」。
鴨の雛と同じで、実の親よりジョミーが「大好き」なのだから。
ジョミーが一言「やれ」と言ったら、降伏して来た人類軍の船も、平然と爆破するのだから…。
最初が肝心・了
※アニテラでは、全く語られなかった「グランパ」の由来。トォニィがジョミー好きな理由も。
だったら「仕掛け人」はジョミーでもいいじゃない、というお話。刷り込み、最強。
(…何故なんだろう?)
どうして、あの人になるんだろうか、とシロエの頭から消えない疑問。
講義を終えて、夕食を食べて個室に帰って、夜になっても。
今日の昼間に目にした光景、それが鮮やかに焼き付いたままで。
(……いつも一緒にいるような……)
今日と同じで、と昼食の時に「見掛けた」二人を思い浮かべる。
少し離れたテーブルだったし、あちらは気付いていないだろうか。
「セキ・レイ・シロエ」が「来ていた」ことも、「自分たちの方を見ていた」ことも。
(…キース・アニアン……)
E-1077始まって以来の秀才、マザー・イライザの申し子とまで呼ばれるキース。
「機械の申し子」という名前もあるほど。
いずれキースは、メンバーズ・エリートになるのだろう。
同期のメンバーズたちの中でも、トップの成績を誇る「エリート中のエリート」として。
(あいつの成績を、全部塗り替えない内は…)
地球のトップになれやしない、と自分でも充分、分かっている。
いつか自分が「頂点に立って」社会を変えてゆこうと言うなら、キースが最大の敵なことも。
必ず勝たねばならないライバル。
蹴落とさなければならない「キース」。
そのライバルが、先にカフェテリアにいた。…「何か食べなきゃ」と入ったら。
キースが「其処にいた」ことはいい。
「先にいた」ことだって、かまいはしない。
E-1077に、候補生のために設けられた「食事が出来る場所」は一ヶ所だけ。
あのカフェテリアで「食べない」のならば、個室で食べることになるから。
もちろんキースも食事のためにと、カフェテリアに来る日は珍しくない。
「そのこと」自体は普通のことだし、「気に入りの席」をキースに盗られたわけでもない。
けれども、気付いてしまったこと。
「キースと一緒に」食べているのは、誰なのかと。
考えてみれば、今日までに何度も目にした「それ」。
カフェテリアでキースが食事中なら、一人きりで来ていない限りは…。
(……サム・ヒューストン……)
彼の姿が、必ずキースの側にあるもの。
向かいに座って食事していたり、「お前の分な!」とでも言うかのように…。
(…キースの分のトレイを持ってて、テーブルに置いて…)
それから椅子を引いたりもする。
キースと「一緒に」食事するために。
食事でなくても、コーヒーを二人で飲んでいるとか。
とうに食事は済んだ後なのか、「水だけが」置かれたテーブルに二人でいるだとか。
(…いつもキースと一緒なわけで…)
カフェテリア以外の場所で出会っても、キースの側には「彼」がいるもの。
初めてキースに「出くわした」時も、サム・ヒューストンの姿があった。
そちらの方には用が無いから、「無視して」終わりだったけど。
ただキースだけを瞳に映して、皮肉な言葉も吐いたのだけど。
(…あれが最初で、あれからも、ずっと…)
キースの側に「誰か」いるなら、サム・ヒューストンでしか有り得ない。
サムと同郷で幼馴染の、スウェナ・ダールトンの姿も見掛けることはあるけれど…。
(あっちは、明らかにオマケだよね?)
サムのオマケだ、と考えなくても分かること。
「スウェナ・ダールトンだけが」キースの「側にいる」のは、一度も見てはいないから。
スウェナがいるなら、サムも必ず「其処にいる」もの。
キースがいる場所が何処であろうと、誰かが側にいるとなったら、それはサムだけ。
「オマケ」のスウェナは、きっと「どうでもいい」のだろう。
サムと一緒に食事をしたり、通路を歩いたりするキースにとっては。
早い話が、サムは「キースの友達」。
あの「キース」などに「友達」だなんて、あまりにも「らしくない」けれど。
友の一人もいさえしないのが、似合いのように思うのだけれど。
(そっちの方が、よっぽど似合いで…)
キースらしいよ、と考えるほどに、引っ掛かってくる「サム」のこと。
彼の噂は「知らない」と言ってもいいくらい。
いつもキースの側にいるから、「また、あいつなんだ」と思っていた程度。
サムの成績が優秀だったら、そんなことにはならないだろう。
キースとしのぎを削るくらいに、優れたエリート候補生なら噂にもなる。
けれど聞かない、サムの「評判」。
優秀だとも、何かの科目でキースと並ぶ成績だとも。
(……サム・ヒューストン……)
キースの側に「いつもいる」なら、彼はどういう人物なのか。
「マザー・イライザの申し子」で「機械の申し子」のキースが、友だと認めている人物。
(…何かあるのに違いないってね…)
迂闊だった、と舌打ちをする。
初めてキースに「出会った」時に「サムもいた」せいで、勘が鈍っていたろうか。
「サムはキースとセットなんだ」とでも、ごくごく自然に思い込んで。
その手の「無自覚な錯覚」だったら、人間、誰しもありがちなこと。
目にした何かを「真実」のように、疑問も抱かず信じることも。
(…成人検査も、それの一種で…)
他の候補生たちは、何一つとして疑いもしない。
システムに疑問を持ちさえしない。
成人検査の「前」と「後」では、「自分の中身」が違うのに。
子供時代の記憶を奪われ、「地球のシステム」に都合よく「書き換えられている」のに。
それと同じで、「サムの存在」を、自分は錯覚したのだろう。
「こういうものだ」と、「キースと一緒にいるサム」を風景の一部のように。
キースがいるなら、その近くにはサムがいるのが普通なのだ、と。
…どう考えてみても、「そちらの方が」変なのに。
「キースなんかに」友達がいるということが。
誰もいないなら分かるけれども、「親友としか思えない」サムが「側にいる」のが。
今日まで気付きもしなかったけれど、サムは「特別」なのだろう。
キースが「友だ」と認めるからには、とびきり優れた「何か」を持っている人間。
(…まるで気付かなかっただなんて…)
ぼくとしたことが、と机の端末に向かい、データベースにアクセスしてゆく。
「サム・ヒューストンに関する情報を出せ」と、パーソナルデータも何もかも、全部。
プロテクトされてはいない情報。
何もブロックされはしないで、サムのデータは全て出揃ったのだけれども…。
(……何なんだ、あいつ……?)
どうしてキースの友達なんだ、と信じられない思いで見てゆく。
出身地だとか、両親だとかは、特に気にはならない。
そういったものは「誰にでもある」し、キースにだって「もちろん、ある」。
サムはキースと同郷ではなくて、アルテメシアの出身だけれど。
(…それは、どうでもいいんだけどね…)
ぼくと同じ星の出身だろうが…、と「アルテメシア」の名は頭から放り出す。
アルテメシアが故郷であっても、サムが育った育英都市はアタラクシア。
懐かしい故郷のエネルゲイアとは違う場所。
だから、そのことは「どうでもいい」。
今、気にすべきは「サムの成績」。
(……下から数えた方が早くて……)
どう転がっても、メンバーズには「なれるわけもない」成績を取っているのがサム。
それも、このステーションに「入って直ぐ」から。
何処かで「取り残された」わけではなくて、サムは最初から「成績が悪い」。
E-1077に入れたことさえ、「間違いなんじゃあ?」と思うくらいに。
同じ日に成人検査を受けた「誰か」と、ミスがあって「入れ替わってしまった」のかも、と。
同姓同名の誰かがいたとか、プログラムが少し狂っただとか。
誰も「ミスだ」と気付かないまま、「一般人向け」のコースと「此処」とを取り違えたとか。
(その方が、うんと自然なくらいに…)
酷すぎるだろう、と思うサムの成績。あの「キース」とは対照的に。
それでも、きっと「何かがある」と調べる間に、見付けた宇宙船の事故の情報。
スウェナ・ダールトンを乗せて来た船、それと軍艦との衝突事故。
(……通信回線が切断された状態で……)
E-1077からの救助部隊は出動しなかった。
代わりに「新入生」だったキースと、サムの二人が向かった救助。
(…このせいで、サムと知り合ったとか…?)
サムの成績を調べてみれば、船外活動は「得意だった」と分かる。
優秀とまでは言えないけれども、非常事態でも、「宇宙に出られる」レベルくらいには。
(二人だけで救助に向かったんなら…)
命を預けて、預けられもして、絆が生まれもするだろう。
いくらキースが「機械の申し子」と呼ばれるくらいに、感情などは「無さそう」でも。
友の一人も「いはしない」方が、似合いに思える人間でも。
(……この時以来の知り合いなわけで……)
それなら「親友」にもなるか、とデータを辿る間に、見付けたもの。
E-1077に入った直後の、新入生のためのガイダンス。
(…嘘だろう!?)
握手している「サム」と「キース」の画像。
ならば、二人は「最初からの」友。
どういうわけだか、どういう風の吹き回しなのか、二人は此処で出会った時から…。
(……友達だったと……?)
しかも、その後の「サム」は劣等生なのに。
キースなら、そんな者とは「付き合いそうにない」のに。
(…何故なんだろう…?)
どうして「友達」なんだろうか、と尽きない疑問。
キースには、「サム」は似合わないのに。
マザー・イライザも他の友を持つよう、キースに勧めそうなのに。
それともキースは、「サムを友達にしている」くらいに、人間味があると言うのだろうか?
そのようには、まるで見えなくても。
人情などとは縁さえもなくて、「機械の申し子」の名が相応しくても…。
友がいる理由・了
※キースと「友達になるように」マザー・イライザが用意したのが、アニテラでの「サム」。
そのサムの成績は「優秀ではない」だけに、シロエ視点だとどうなるだろう、と書いたお話。
(おや…?)
なんだ、とブルーが感じた気配。シャングリラの青の間のベッドの上で。
先日、ジョミーを衛星軌道上から連れ戻したばかり。ユニバーサルの保安部隊に捕まり、サイオンを大爆発させて逃げ出したのを。
お蔭でブルーも激しく消耗、ジョミーの指導どころではない。一日も早い回復を、とベッドの住人なのだけれども、其処は腐っても「ソルジャーと呼ばれた男」。
ただダラダラと寝ていたのでは意味がない、とサイオンでの監視は怠らない。ユニバーサルやら、アルテメシアの全域やらといった具合に。
今日のもソレの一環だけれど、妙にザワついているユニバーサル。
(………???)
サイオンの目と耳を澄ませてみたら、「テラズ・ナンバーが…!」と騒いでいる職員たち。成人検査の実施予定がどうのと、「それよりも、マザー・システムが…!」だのと。
(…テラズ・ナンバー…?)
ジョミーの成人検査の時にも、戦った相手がテラズ・ナンバー・ファイブ。
ミュウの宿敵とも言える機械で、憎んでも憎み切れないコンピューターだけれども…。
(何かあったのか?)
覗いてみるか、と探った気配。
ドリームワールドの地下深くにあるのは知っているから、サイオンの目で。
そうしたら…。
(システムダウン…?)
憎い機械は沈黙していた。大勢の技術者たちが復旧作業を急いでいる。
ということは、只今、ユニバーサルも、アルテメシア中の、ありとあらゆるシステムなども…。
(…ブロックされてはいないんだな!?)
チャンス到来、長い年月、待っていた「コレ」。
きっとジョミーの騒ぎのせいで、システムに異常が出たのだろう。今なら機密を覗き放題、青い地球だって「確認できる」。何処にあるのか、座標なども…、と早速に「覗く」ことにした。
「成人検査中のジョミー」を抱えてバトルをやったほどだからして、「入り込む」くらいは朝飯前だけに。
探しているのは「青い星」、地球。
(何処にあるんだ…?)
地球は、と深く「潜って行った」ブルーの瞳に映った星。それは美しく青く、まさに水の星といった趣。母なる地球。
(これか…!)
なんと美しい…、とフィシスが抱く地球の映像と重ねて、首を傾げた。「はて?」と。
青い星には「白い輪」があった。
ソル太陽系の土星の輪っかを思わせるヤツで、それよりは淡い感じの輪っか。星を斜めに取り巻く輪っかは、色からして「氷」かもしれないけれど…。
(……地球に、ああいう輪があるとは……)
まるで知らない、と青い星に見入る。「どう見ても、これは地球なんだが」と。
これだけ青くて海があるなら、地球の他には考えられない。白い輪っかは不思議だけれども、データが全てでもないだろう。
(フィシスの映像からは、省かれているだけで…)
本物の地球には、きっと「輪っか」がついているのに違いない。白い輪っかが斜めに、一重。
目指すは「此処だ」と、座標をゲット。
これでシャングリラは明日にでも「発てる」。地球の座標と、ジョミー・マーキス・シンの存在さえあれば…、とグッと拳を握った所で、別のデータが目に留まった。
(…最高機密?)
それにグランド・マザー絡みか…、と「覗いた」データに、ただ愕然とする。
(……これが地球だと……!?)
嘘だろう、とブルーが見詰める「赤い星」。
もう思いっ切り砂漠化していて、海らしき部分も濁り切った星が「見える」のだけれど、それが「人類の聖地」だというデータ。
今も再生していないままの「地球」で、グランド・マザーは、その地下に「いる」。
(…あの毒キノコみたいなのが…)
地球再生機構のユグドラシルか、と唖然呆然。
「何処も青くない」地球なんて。
青いどころか、汚染されたままで放り出されているような星が。
とんでもない、とブルーが「知ってしまった」真実。
三百年以上も焦がれ続けた青い水の星は、何処にも無かった。赤茶けた星があるだけで。
(…では、さっきのは…?)
白い輪っかがあった「地球」は…、と更に「潜って」行ったら分かった。それは「ノア」だと。
人類が最初に入植した星、今は首都惑星の名で呼ばれる「ノア」。
元老たちが集うパルテノンも「其処」にあるという。
(だったら、目指すべきなのは…)
ノアだろうか、とブルーは思った。
なんと言っても「青い水の星」で、座標もガッツリ手に入れた。
赤茶けた「本物の地球」の座標は「聖地」だけあって、ガードが固い。テラズ・ナンバーがダウン中でも、手に入れるのは「無理っぽい」。
(だが、ノアに行けば…)
もう間違いなく、地球の座標は手に入るだろう。首都惑星を「ミュウが」落としさえすれば。
ジョミーのパワーで「行け、行け、ゴーゴー」、ガンガンと攻めて行ったなら。
(…よし…!)
決めた、と頷いた「今後の方針」。
ジョミーの力が安定し次第、アルテメシアを離れて「ノア」へと向かう。
ミュウが本気を出して行ったら、人類だってビビる筈。
(人類軍の船には、シールドさえも無いからな…)
シャングリラで体当たりをかましてやったら、端から沈むことだろう。シャングリラには自慢のサイオン・シールドがある。
(バンカー爆弾には弱いと思っているんだろうが…)
それはシールドが無効化されていたからだ、とニンマリと笑う。
ジョミーを追ってゆく戦闘機から、注意をシャングリラに向けさせるための「作戦」がソレ。
サイオン・シールドがMAXだったら、たとえ機雷原に頭から突っ込もうとも…。
(せいぜい、船尾損傷くらいで…)
シャングリラが「沈む」ことなどは無い。
つまり「捨て身で」進んでゆくなら、向かう所に敵無しな船がシャングリラだった。
人類軍が誇る戦艦が幾つ来ようと、駆逐艦が群れを成していようと。
その手で行こう、とブルーは考えたわけで、テラズ・ナンバー・ファイブが再起動する前に、いそいそと逃げて消え去った。元々、「其処にはいなかった」けれど。
青の間のベッドで目をパチリと開け、直ちに招集した長老たち。それにキャプテン。
「…今、言った通りのことが現実だ。青い地球など、存在しない」
「なんですと!?」
わしらは何処へ向かえばいいんじゃ、とゼルが慌てふためくのに、「落ち着け」と赤い瞳をゆっくり瞬かせる。「青い星なら、他にもある」と。
「このイメージだ。首都惑星ノア、と言えば分かるか?」
「ほほう…。まるで地球のような星じゃないかね」
白い輪があるようだがね、とヒルマンもブルーと同じ感想。「地球よりも、ずっと地球らしい」などと、髭を引っ張りもして。
エラもブラウも、ハーレイも「これは…」と見惚れたイメージ。
赤茶けた「本物の地球」よりも、ずっと「地球らしい星」がノアだった。「イメージです!」とやっていいなら、ノアに軍配が上がることだろう。「母なる水の星」を謳うのならば。
「この星へ行こうって言うのかい?」
悪くないねえ、とブラウ航海長は察しが早かった。「あたしは大いに賛成だよ」と。
「ノアですか…。考えたことも無かったですが、現実的ではありますね…」
キャプテンのハーレイも肯定派。「まず、ノアへ、というのは正しいでしょう」と頷いて。
ハーレイ曰く、ノアを落とせば、もはや地球に王手をかけたも同然。「人類の聖地」の現実がアレなら、人類の最後の砦は「ノア」。
地球には「ラスボス」がいるだけのことで、ノアさえ落とせばグランド・マザーは裸同然。頼みの綱の守備隊などは、地球には「いない」だろうから。
「…ハーレイ、君もそう思うか…。守るべき人類が少ししか地球にいないなら…」
大した戦力も無いことだろう、とブルーは長老たちを見回し、クックッと可笑しそうに笑った。「地球よりも地球らしい、ノアを頂くことにしよう」と。
「ふむ…。それで、出発はいつにするんじゃ?」
ジョミーの騒ぎで大破したワープドライブは修理が済んでおるが、とゼルもやる気満々。ノアから攻めてゆくのだったら、長距離ワープでどのくらいか、と指を折ったりも。
「ジョミーの訓練が済み次第…ということでいいだろう」
先を急ぐという旅でもない、とブルーも今や余裕だった。「もう見られない」と涙した地球、その地球は「何処にも無かった」のだし、「この際、ノアで充分だから」などと考えて。
旅立ちの日を待っている間に、やって来たのがサイオン・トレーサー。
雲の中にいるシャングリラの位置を掴んで、衛星兵器で攻撃をかまして来たのだけれど…。
「ジョミーは何処だ!?」
この非常時に、と焦るキャプテン、けれどブルーは冷静だった。
「落ち着きたまえ。…ミュウの子供の救出中だ。少し待ってやって、その後は…」
予定通りにノアへ向かう、とブルーがブチ上げ、シャングリラは大気圏外航行装備を整え、出発を待った。ワープドライブも既に起動済み。
「キャプテン! 遅くなってごめん!」
気絶しているシロエを抱えて、瞬間移動で飛んで来たジョミー。彼はまだ「ノア」も「地球の本当の姿」も知らないからして、「え? え、え?」とキョロキョロしている。
「何処か行くわけ?」と舵輪を握ったシドを眺めたり、いつもより暗いブリッジの明かりに戸惑ったり、といった感じで。
「本船はこれより、ノアに向かう!」
ハーレイの言葉に、ジョミーはポカンとするばかり。「ノア…?」と、話が見えていないだけに、困り顔をして、「それって、何処?」とシロエを抱えたままで。
「ぼくは、ノアって学校で少し習っただけで…。首都惑星…のノアじゃないよね?」
いくらなんでも…、とジョミーは目が丸いけれど、目指すは、その「ノア」。
「キャプテン。…ワープしよう」
もう、この星に用はない! とブルーの声が響いて、ハーレイがブリッジに飛ばした号令。
「シャングリラ、発進!!」
たちまちワープドライブが出力全開、シャングリラはアルテメシアから「消えた」。
重力圏からの亜空間ジャンプという荒業を繰り出し、星を覆う雲海に大穴を開けて。…何処へ向かってワープしたのか、トレースしようもない完璧さで。
「ちょ、ブルー…! ノアって、本気で、あのノアですか…!?」
首都惑星を落とそうだなんて、無茶っすから! とビビるジョミーに、ブルーは「君なら、出来ると思ったが…?」と赤い瞳を向けた。そう、青の間のベッドから。
「それに、パワー溢れるシロエもいる。…あの子は強い」
タイプ・イエローの攻撃力は、場合によってはタイプ・ブルーに匹敵する、との指摘は間違っていない。「過激なる爆撃手」とも言われるパワーの持ち主、それがタイプ・イエロー。
「じゃ、じゃあ…。ぼくとシロエでノアを落とすってことに…?」
「もちろん、ぼくも加勢する。それに、その前にシャングリラがある」
守備隊は体当たり攻撃で潰す! とブルーの瞳はマジだった。「地球の真実」を知った時から、そのつもりで練って来た作戦。
ノアまで一気に長距離ワープで急襲したなら、ノアの人類には、最終兵器、メギドを持ち出す暇などは無い。第一、ノアにメギドを向けられはしない。
「…そ、それじゃ一気に決戦ですか!?」
「文句があるなら、サイオン訓練でもして来たまえ。…シロエと二人で」
ワープアウトしたら、其処が決戦の場だ、とブルーが言葉にした通り。シャングリラは長距離ワープを繰り返しながら、ひたすらにノアを目指して飛んでいるだけに。
「……分かりました。シロエと、やれるトコまでやります」
頑張ります、と答えたジョミーに、ブルーが返した。
「やれる所までではいけない。…やり遂げて貰う」
でないと、ミュウに未来など無い、とソルジャー・ブルーは何処までも本気。
ついでに船を指揮するキャプテンや長老たちも本気モードで、緑色を帯びた亜空間を抜け、ワープアウトするなり、ハーレイはこう言い放った。
「サイオン・キャノン、斉射、三連! てーっ!!!」
もういきなりに、超航空からブチかましたソレ。
ノアに展開する国家騎士団が誇る軍事基地、其処で起こった大爆発と、次々に起きる誘爆と。
主力をアッと言う間に失い、それでも飛んで来た「人類軍の船」を待っていたのは、巨大な白い鯨だった。その図体にモノを言わせての、体当たりに次ぐ体当たり。
「サイオン・シールド、出力をキープ! そのまま突っ込めーっ!」
端から叩き潰してしまえ、とキャプテンが船を指揮している中、青い光が飛び出して行った。パルテノンなどを制圧するべく、シロエをしっかり抱えたジョミーが。
「人類に告ぐ! 降伏する者は、殺しはしない!」
だが、逆らったら容赦しない、とジョミーとシロエは暴れまくりで、それに乗じてブルーが思念波を飛ばして演説。「我々は、無駄に殺すつもりはない」と、カリスマオーラ全開で。
「…ミュウは人類の敵ではない。ただ、手を取り合おうと言っている」
共に戦うなら殺しはしない、とのミュウの長の約束。
敗色が濃い人類軍は、もうバタバタと降伏した。パルテノンに集う元老たちも同じで、制圧された首都惑星、ノア。
「地球よりも、ずっと地球らしい星」をゲットしたミュウは、地球に向かった。
後はラスボスのグランド・マザーを倒せばいいだけ、その方法はもう分かっている。
「ジョミー。…滅びの呪文は覚えているな?」
「はい、ブルー!」
遊び心が溢れてますよね…、とジョミーが手にする「飛行石」とかいう青い石。
そいつを二人が手を取り合って握り、「バルス!」と唱えればグランド・マザーは「滅びる」。
SD体制なんかは無かった昔に、地球で作られた『天空の城ラピュタ』というアニメ。
グランド・マザーを作った人類は、それに因んだ仕掛けを残してくれていた。進化の必然である筈のミュウが「ノアに、いきなり攻めて来たなら」渡すように、と遊び心溢れるアイテムを。
預かっていたのは、パルテノンの元老たちに仕える部下の一人で、六百年近くも「口伝で」一人だけに伝えられていた「滅びのアイテム」。
その飛行石を手にしたジョミーは、シロエをお供に地球の地の底へ降りてゆき…。
「いくぞ、シロエ!」
「はいっ!」
ジョミーとシロエは「飛行石」を二人で握って叫んだ。グランド・マザーの目の前で。
「「バルス!」」
飛行石を持って「現れたミュウ」には、何も出来ない仕組みだったか、グランド・マザーは呆気なく滅びた。マザー・ネットワークも、「滅びの呪文」で木っ端微塵に。
「やりましたよ、ブルー! ぼくたちの勝ちです!」
「ああ。…しかし、地球は当分、青くなってはくれそうもないし…」
いつかは青くなるんだろうが…、とブルーは頭を振り振り、「百八十度回頭!」と声にした。
グランド・マザー崩壊のあおりで燃え崩れる地球。「もう、出来ることは何も無い」と。
後は青いノアで楽隠居。「地球よりも、ずっと地球らしい星」で、イメージだけなら青い水の星そのものな、白い輪っかがくっついたノアで…。
青い星を目指せ・了
※アニテラ放映開始から10周年。そういえばノアも青かった、と気付いたトコから、この話に。
赤茶けた地球にこだわらなくても、「青い星」なノアでいいような…気が…。