失ったもの
(…何故、マツカが…)
マツカが何故、とキースの思考は、普段の冷静さを欠いていた。
さっき目にした、国家騎士団の制服よりも鮮やかだった赤。
マツカの身体から、いや、「左半分しか無い」マツカから溢れて、流れ出ていた血液。
そう、「血」と呼ぶには、あまりにも生々しく、「血液」という言葉が相応しい。
マツカが失くした右半身に入っていた血が、そのまま床に広がったよう。
袋に入った輸血用の血液、それを叩き付けて破ったかのように、あったのは赤い液体だけ。
其処にあった筈のマツカの「右半身」は、何処にも影も形も無かった。
木端微塵に砕け散ったか、あるいは蒸発してしまったのか。
(…マツカ、どうして…)
何故、こうなってしまったのだ、と頭の中が一向に纏まって来ない。
マツカの「死体」を目にした直後は、まだ幾らかは「キースらしさ」があったのに。
感情など無い機械の申し子、冷徹無比な破壊兵器の異名通りに振舞えたのに。
(……後始末を、と……)
言い捨てて「あの部屋」を後にするまでは、いつもの「キース」だったと思う。
「アニアン閣下なら、こうするだろう」と、誰もが考えている通りの「キース」。
なのに、この様はどうだろう。
マツカが流した赤い液体、彼の「命」を構成していた「赤」が未だに渦巻いている。
頭に、心に、それに目の前に、あの赤い色が焼き付いたまま。
(…私らしくもない…)
本当に、自分らしくもない、と叱咤してみても、禍々しい赤は消えてくれない。
マツカの身体という器を失い、行き場を失くして流れ出た血が。
もう血管の中を巡っていなくて、ただの「血液」と化していた「もの」が。
(…あの死に様のせいなのか…?)
それとも「マツカ」が「キース」よりも先に、「逝ってしまった」ことが衝撃だったか。
どちらなのか、それさえも判断出来ない。
見えるのは、赤い色だけで。
その「赤」を流した「マツカ」の骸が、赤を引き立てているだけで。
Eー1077に在った「水槽」、其処を出てから、今日までの長い歳月。
幾多の戦場を経験して来て、修羅場を何度もくぐり抜けて来た。
「マツカ」との間にも、色々とあった。
(…しかし、今日までの人生で…)
此処まで冷静さを失ったことは、ただの一度も無かった気がする。
「シロエ」をこの手で葬った時には、涙が止まらなかったけれども…。
(…だが、これほどには…)
混乱してはいなかった、と自分でも不思議で堪らない。
自分が「年を取った」せいなのか、「マツカ」の存在が「大き過ぎた」か。
(多分、マツカと…)
共に過ごした年月が長過ぎたせいだろうな、と纏まらない頭で結論を出す。
「きっと、そうだ」と、「ただ、それだけのことなのだ」と。
(しっかりしろ、キース…)
呆然としている暇などは無い、と自分自身を叱り付ける。
「マツカが死んでしまった」原因、それは「暗殺者が潜り込んで来た」こと。
オレンジ色の髪と瞳の青年、あのミュウが「キース」の暗殺を企てなかったら…。
(私が命を落としかけることも、マツカが命を失うことも…)
無かったのだし、部下に命じて、警備体制を見直すべきだろう。
今のキースは「国家主席」で、代わりになれる人材は無い。
もしも「キース」が死んでしまえば、人類も地球も、指導者を失うことになる。
そんなことなど「あってはならない」。
けして「起きてはならない」事態なのだし、繰り返さぬよう、対処しなければ。
(それを命じて、皆を指揮して…)
ミュウの艦隊と対峙してゆくためにも、「冷静さ」を取り戻さなければならない。
いつまでも「赤」だけを見てはいないで。
マツカが流した赤い血の色も、半身だけになってしまった骸も、頭から放り出して。
(……そうだな……)
私はそうすべきなのだ、と「先刻までとは違った自室」に、部下の一人を呼び付けた。
直属の者は「マツカ」の始末に忙しいから、「誰でもいい」と。
呼ばれて現れた下級士官に、「コーヒーを」と命令する。
淹れて「この部屋」に持って来るよう、如何にも「キースらしい」口調で。
下級士官の顔を見たからか、「いつものキース」を演じたからか。
少し「冷静さ」が戻った気がして、息を大きく一つ吐き出す。
「コーヒーを飲めば、落ち着くだろう」と。
さっきの部下が持って来たなら、その一杯をゆっくりと飲んで、持ち場に戻る。
何食わぬ顔で、「国家主席」として。
もう「後始末」が済んでいるようなら、直属の部下を全て揃えて…。
(警備体制の見直しと、今回の失態を招いた原因の究明と…)
他にもさせるべきことがある筈だ、と指で机をトントンと叩く。
今は、まだ「赤」が渦巻いているから、「それが消えたら考えよう」と。
熱いコーヒーを口にしたなら、きっと思考も纏まってくれる。
(私は、いつもコーヒーだしな)
ずっと昔からそうだった、と候補生時代にまで遡っていたら、下級士官がやって来た。
「閣下、コーヒーをお持ちしました」
緊張している彼に向かって「ああ、其処に置け」と告げ、「下がっていい」と下がらせる。
彼が扉の向こうに消えてから、コーヒーのカップを手に取った。
いつも、そうしているように。
何も考えたりはしないで、自然に、流れるような動きで。
(…ああ…)
ホッとするな、とコーヒーの香りを楽しみ、カップに口をつけたけれども…。
(……この味は……)
違う、と舌が、心が叫んだ。
「欲しかったのは、これではない」と。
確かに「コーヒー」なのだけれども、明らかに違う。
カップの中身は「ただのコーヒー」、何度も、あちこちで「飲んで来た」もの。
会議の席やら、出張先やら、他の者たちと同席している時に。
(…そうした時には…)
コーヒーを淹れて持って来るのは、其処で働いている者たち。
さっきの下級士官と同じで、「コーヒーを淹れるように」と命じられただけ。
彼ら、彼女らの役目の一つには違いなくても、それだけのこと。
ただ「コーヒーを淹れる」というだけ、それ以上の意味を持ってはいない。
要は淹れればいいだけのことで、「コーヒー」が出来れば、運んで、終わり。
(…私が飲んで来たコーヒーには…)
そうか、二種類あったのだな、と今更のように気付かされた。
「様々な所で出て来る」ものと、「マツカが淹れて、持って来る」もの。
前者は、まさに「今、此処にある」味のコーヒー。
取り立てて「こう」という特徴も無くて、特に「美味しい」とも思わない。
けれど、マツカが淹れて来るものは違った。
絶妙なタイミングで差し出されるからか、コーヒーを淹れるのが上手かったのか。
(…コーヒーを淹れることしか出来ない、能無し野郎、と…)
直属の部下たちが「マツカ」を揶揄して詰っていたから、いい腕を持っていたのだろうか。
「後始末を」と命じられた彼らも、マツカが淹れたコーヒーの味を知っているだろう。
同じ部下同士で、しかも「マツカ」は彼らよりも格が下になる。
マツカを見下していた連中なのだし、休憩時間に「淹れて来い」と何度も言ったろう。
「お前は、それしか出来ないからな」と、「早くしろよ」と。
(…そうした挙句に、マツカのコーヒーは美味い、と知って…)
やっかみや妬みも混じった渾名を、「マツカ」に付けたに違いない。
「コーヒーを淹れることしか出来ない、能無し野郎」と。
コーヒーを淹れる腕がいいというだけで、側近に取り立てられているなんて、と。
(…そういうわけではなかったのだが…)
だが、本当に美味かったんだ、とカップの中身をじっと見詰める。
「この味ではない」と、「これでは癒されない」と。
マツカが淹れてくれたものとは、まるで違った味わいの「それ」。
コーヒーには違いないのだけれども、飲みたかったコーヒーは「これ」とは違う。
こんな時こそ、飲みたいのに。
波立ち、渦巻き続ける感情、欠いてしまった「冷静さ」。
千々に乱れてしまったままの心を落ち着け、いつもの「キース」に戻るためには…。
(…あの味でないと、駄目なのだがな…)
そう思っても、もう、あの味は「味わえない」。
淹れてくれる「マツカ」は、もはや何処にもいないから。
「コーヒーを」と頼みたくても、死んでしまった「マツカ」に頼むことは出来ない。
どれほど「あの味」を求めようとも、「あのコーヒー」は二度と戻って来ない。
(…マツカを失くして、あの赤が頭から消えなくて…)
それを消し去り、早く癒されるための手段も、どうやら「キース」は失くしたらしい。
ジルベスター・セブン以来の側近だった「マツカ」と一緒に、失くしてしまった。
失くしたばかりか、これから先は…。
(コーヒーを口にする度に…)
違和感を覚え、マツカの面影が胸を過るのだろうか。
「二度と飲むことは出来ない」コーヒー、幻となってしまった味が懐かしくて。
あれこそが「本物のコーヒーだった」と、「まるで違う味」のコーヒーに顔を顰めながら。
(私の人生の残りというのが、どれだけあるかは分からないが…)
不味いコーヒーを飲まされ続けて、この生涯を終えるのか、と溜息が零れ落ちてゆく。
これから先は、もう「コーヒー」では、心が癒えはしないから。
激務に疲れ果てた時でも、「寛ぎの一杯」は出て来ないから。
「マツカ」と一緒に失ったものは、「安らぎ」というものだったろう。
こうなってしまって初めて気付いて、喪失感に苛まれる。
「何故、早く気付かなかったのか」と。
キースの「人生」の中で「マツカ」が占める部分は、なんと大きいものだったか、と…。
失ったもの・了
※「マツカが淹れるコーヒーは美味しい」というのが、アニテラの設定ですけれど。
だったら、マツカがいなくなった後のキースは、美味しいコーヒーは無しかも、というお話。
マツカが何故、とキースの思考は、普段の冷静さを欠いていた。
さっき目にした、国家騎士団の制服よりも鮮やかだった赤。
マツカの身体から、いや、「左半分しか無い」マツカから溢れて、流れ出ていた血液。
そう、「血」と呼ぶには、あまりにも生々しく、「血液」という言葉が相応しい。
マツカが失くした右半身に入っていた血が、そのまま床に広がったよう。
袋に入った輸血用の血液、それを叩き付けて破ったかのように、あったのは赤い液体だけ。
其処にあった筈のマツカの「右半身」は、何処にも影も形も無かった。
木端微塵に砕け散ったか、あるいは蒸発してしまったのか。
(…マツカ、どうして…)
何故、こうなってしまったのだ、と頭の中が一向に纏まって来ない。
マツカの「死体」を目にした直後は、まだ幾らかは「キースらしさ」があったのに。
感情など無い機械の申し子、冷徹無比な破壊兵器の異名通りに振舞えたのに。
(……後始末を、と……)
言い捨てて「あの部屋」を後にするまでは、いつもの「キース」だったと思う。
「アニアン閣下なら、こうするだろう」と、誰もが考えている通りの「キース」。
なのに、この様はどうだろう。
マツカが流した赤い液体、彼の「命」を構成していた「赤」が未だに渦巻いている。
頭に、心に、それに目の前に、あの赤い色が焼き付いたまま。
(…私らしくもない…)
本当に、自分らしくもない、と叱咤してみても、禍々しい赤は消えてくれない。
マツカの身体という器を失い、行き場を失くして流れ出た血が。
もう血管の中を巡っていなくて、ただの「血液」と化していた「もの」が。
(…あの死に様のせいなのか…?)
それとも「マツカ」が「キース」よりも先に、「逝ってしまった」ことが衝撃だったか。
どちらなのか、それさえも判断出来ない。
見えるのは、赤い色だけで。
その「赤」を流した「マツカ」の骸が、赤を引き立てているだけで。
Eー1077に在った「水槽」、其処を出てから、今日までの長い歳月。
幾多の戦場を経験して来て、修羅場を何度もくぐり抜けて来た。
「マツカ」との間にも、色々とあった。
(…しかし、今日までの人生で…)
此処まで冷静さを失ったことは、ただの一度も無かった気がする。
「シロエ」をこの手で葬った時には、涙が止まらなかったけれども…。
(…だが、これほどには…)
混乱してはいなかった、と自分でも不思議で堪らない。
自分が「年を取った」せいなのか、「マツカ」の存在が「大き過ぎた」か。
(多分、マツカと…)
共に過ごした年月が長過ぎたせいだろうな、と纏まらない頭で結論を出す。
「きっと、そうだ」と、「ただ、それだけのことなのだ」と。
(しっかりしろ、キース…)
呆然としている暇などは無い、と自分自身を叱り付ける。
「マツカが死んでしまった」原因、それは「暗殺者が潜り込んで来た」こと。
オレンジ色の髪と瞳の青年、あのミュウが「キース」の暗殺を企てなかったら…。
(私が命を落としかけることも、マツカが命を失うことも…)
無かったのだし、部下に命じて、警備体制を見直すべきだろう。
今のキースは「国家主席」で、代わりになれる人材は無い。
もしも「キース」が死んでしまえば、人類も地球も、指導者を失うことになる。
そんなことなど「あってはならない」。
けして「起きてはならない」事態なのだし、繰り返さぬよう、対処しなければ。
(それを命じて、皆を指揮して…)
ミュウの艦隊と対峙してゆくためにも、「冷静さ」を取り戻さなければならない。
いつまでも「赤」だけを見てはいないで。
マツカが流した赤い血の色も、半身だけになってしまった骸も、頭から放り出して。
(……そうだな……)
私はそうすべきなのだ、と「先刻までとは違った自室」に、部下の一人を呼び付けた。
直属の者は「マツカ」の始末に忙しいから、「誰でもいい」と。
呼ばれて現れた下級士官に、「コーヒーを」と命令する。
淹れて「この部屋」に持って来るよう、如何にも「キースらしい」口調で。
下級士官の顔を見たからか、「いつものキース」を演じたからか。
少し「冷静さ」が戻った気がして、息を大きく一つ吐き出す。
「コーヒーを飲めば、落ち着くだろう」と。
さっきの部下が持って来たなら、その一杯をゆっくりと飲んで、持ち場に戻る。
何食わぬ顔で、「国家主席」として。
もう「後始末」が済んでいるようなら、直属の部下を全て揃えて…。
(警備体制の見直しと、今回の失態を招いた原因の究明と…)
他にもさせるべきことがある筈だ、と指で机をトントンと叩く。
今は、まだ「赤」が渦巻いているから、「それが消えたら考えよう」と。
熱いコーヒーを口にしたなら、きっと思考も纏まってくれる。
(私は、いつもコーヒーだしな)
ずっと昔からそうだった、と候補生時代にまで遡っていたら、下級士官がやって来た。
「閣下、コーヒーをお持ちしました」
緊張している彼に向かって「ああ、其処に置け」と告げ、「下がっていい」と下がらせる。
彼が扉の向こうに消えてから、コーヒーのカップを手に取った。
いつも、そうしているように。
何も考えたりはしないで、自然に、流れるような動きで。
(…ああ…)
ホッとするな、とコーヒーの香りを楽しみ、カップに口をつけたけれども…。
(……この味は……)
違う、と舌が、心が叫んだ。
「欲しかったのは、これではない」と。
確かに「コーヒー」なのだけれども、明らかに違う。
カップの中身は「ただのコーヒー」、何度も、あちこちで「飲んで来た」もの。
会議の席やら、出張先やら、他の者たちと同席している時に。
(…そうした時には…)
コーヒーを淹れて持って来るのは、其処で働いている者たち。
さっきの下級士官と同じで、「コーヒーを淹れるように」と命じられただけ。
彼ら、彼女らの役目の一つには違いなくても、それだけのこと。
ただ「コーヒーを淹れる」というだけ、それ以上の意味を持ってはいない。
要は淹れればいいだけのことで、「コーヒー」が出来れば、運んで、終わり。
(…私が飲んで来たコーヒーには…)
そうか、二種類あったのだな、と今更のように気付かされた。
「様々な所で出て来る」ものと、「マツカが淹れて、持って来る」もの。
前者は、まさに「今、此処にある」味のコーヒー。
取り立てて「こう」という特徴も無くて、特に「美味しい」とも思わない。
けれど、マツカが淹れて来るものは違った。
絶妙なタイミングで差し出されるからか、コーヒーを淹れるのが上手かったのか。
(…コーヒーを淹れることしか出来ない、能無し野郎、と…)
直属の部下たちが「マツカ」を揶揄して詰っていたから、いい腕を持っていたのだろうか。
「後始末を」と命じられた彼らも、マツカが淹れたコーヒーの味を知っているだろう。
同じ部下同士で、しかも「マツカ」は彼らよりも格が下になる。
マツカを見下していた連中なのだし、休憩時間に「淹れて来い」と何度も言ったろう。
「お前は、それしか出来ないからな」と、「早くしろよ」と。
(…そうした挙句に、マツカのコーヒーは美味い、と知って…)
やっかみや妬みも混じった渾名を、「マツカ」に付けたに違いない。
「コーヒーを淹れることしか出来ない、能無し野郎」と。
コーヒーを淹れる腕がいいというだけで、側近に取り立てられているなんて、と。
(…そういうわけではなかったのだが…)
だが、本当に美味かったんだ、とカップの中身をじっと見詰める。
「この味ではない」と、「これでは癒されない」と。
マツカが淹れてくれたものとは、まるで違った味わいの「それ」。
コーヒーには違いないのだけれども、飲みたかったコーヒーは「これ」とは違う。
こんな時こそ、飲みたいのに。
波立ち、渦巻き続ける感情、欠いてしまった「冷静さ」。
千々に乱れてしまったままの心を落ち着け、いつもの「キース」に戻るためには…。
(…あの味でないと、駄目なのだがな…)
そう思っても、もう、あの味は「味わえない」。
淹れてくれる「マツカ」は、もはや何処にもいないから。
「コーヒーを」と頼みたくても、死んでしまった「マツカ」に頼むことは出来ない。
どれほど「あの味」を求めようとも、「あのコーヒー」は二度と戻って来ない。
(…マツカを失くして、あの赤が頭から消えなくて…)
それを消し去り、早く癒されるための手段も、どうやら「キース」は失くしたらしい。
ジルベスター・セブン以来の側近だった「マツカ」と一緒に、失くしてしまった。
失くしたばかりか、これから先は…。
(コーヒーを口にする度に…)
違和感を覚え、マツカの面影が胸を過るのだろうか。
「二度と飲むことは出来ない」コーヒー、幻となってしまった味が懐かしくて。
あれこそが「本物のコーヒーだった」と、「まるで違う味」のコーヒーに顔を顰めながら。
(私の人生の残りというのが、どれだけあるかは分からないが…)
不味いコーヒーを飲まされ続けて、この生涯を終えるのか、と溜息が零れ落ちてゆく。
これから先は、もう「コーヒー」では、心が癒えはしないから。
激務に疲れ果てた時でも、「寛ぎの一杯」は出て来ないから。
「マツカ」と一緒に失ったものは、「安らぎ」というものだったろう。
こうなってしまって初めて気付いて、喪失感に苛まれる。
「何故、早く気付かなかったのか」と。
キースの「人生」の中で「マツカ」が占める部分は、なんと大きいものだったか、と…。
失ったもの・了
※「マツカが淹れるコーヒーは美味しい」というのが、アニテラの設定ですけれど。
だったら、マツカがいなくなった後のキースは、美味しいコーヒーは無しかも、というお話。
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