計算の外で
(計算通りだとは思えんのだが…?)
どう贔屓目に見積もってもな、とキースは、部下が先刻、消えた方へと目を遣った。
国家騎士団総司令の個室に出入り自由な、ジルベスター・セブン以来の側近。
さっきコーヒーを運んで来たのだけれども、今夜はもう彼の仕事は無い。
だから「下がって休め」と簡潔に告げて、忠実な側近に休息を取らせることにした。
誰も気付いていないけれども、側近の「マツカ」の正体はミュウ。
彼にしか出来ない役目は多くて、実際、とても役に立つ。
暗殺者が撃って来た弾を防いだり、爆発物が仕掛けられた場所を見破ったり、といった具合に。
(マザー・イライザは、私を作って…)
理想的に生育するよう、全てを計算して与えたと言った。
Eー1077で出来た友人のサムも、サムの幼馴染だったスウェナも、計算された人材。
トップ争いを繰り広げていた、「実はミュウだった」シロエもそうだ、と。
(あの頃の私は、自分の生まれを何も知らずに…)
計算された道を走り続けていたのだという。
スウェナを乗せた宇宙船の事故さえ、「キース」の資質を開花させるために仕組まれていた。
そんなこととは全く知らずに、懸命に考え、対処したのに。
シロエがミュウの因子に目覚めて逃げた時にも、心が引き裂かれるような気持ちで…。
(追い掛けて撃墜したというのに、それもイライザの計算で…)
その後、Eー1077は廃校になって、長く宇宙に放置されていた。
「それ」の処分をグランド・マザーに任され、初めて知った「自分の生まれ」。
マザー・イライザが全くの無から作り上げた生命、「キース・アニアン」。
(…何もかもが計算通りだったと…)
ようやく生まれた理想の子だ、とマザー・イライザは喜んでいた。
その「子」が自分を処分しに来たとは、多分、思いもしなかったろう。
だから歓喜し、嬉しそうに全てを明らかにした。
フロア001に纏わる真実、遠い昔にシロエがその目で確かめたことを。
「キース」は無から作られたことを、それにシロエも知りようがなかったシナリオを。
サムやスウェナという友人を与え、ミュウ因子を持った「シロエ」を配する。
全ては整えられた環境、計算された様々な出来事。
それらを糧に「キース」は育って、いずれ理想の指導者となる。
SD体制を、地球を導く、唯一無二の存在として。
何もかもが「計算されていた」、キースの人生。
知っていたなら、途中で絶望していたろうか。
何をしようが、何をどのように考えようが、全て機械の計算なのだ、と嫌になって。
生きてゆくのも、思考することも、放棄してしまいたくなって。
(…だから、真実を明かすまでの間に…)
長い時間を置いたのだろうか、という気もする。
シロエが命懸けで暴いた「フロア001」の秘密は、ずっと後まで伝わらなかった。
Eー1077でシロエから直に、その存在を聞かされたのに。
「フロア001に行け」とシロエは告げて、それから間も無く宇宙に散った。
マザー・イライザの計算通りに、キースの船に撃墜されて。
キースの心に棘を残して、飛び去って行ったミュウだったシロエ。
(…本当に、あれも計算だったとしたら…)
なんとも空しい人生だけれど、幸い、気付きはしなかった。
フロア001には行けずに、そのまま卒業してEー1077を去ったから。
たまに思い出すことはあっても、訪れる機会は無かったから。
(そして私は何も知らずに、機械が敷いたレールの上を…)
走り続けて来た筈だけども、そうは思えない部分がある。
机の上で湯気を立てるコーヒー、それを淹れて去った側近、「マツカ」。
彼と出会って「拾った」時には、キースの階級は、まだ少佐だった。
側近くらいは選べるけれども、大きなことは、そうそう出来ない。
なのに、システムに「逆らった」。
SD体制が異分子と断じる「ミュウ」を拾って、側近に据えた。
ミュウの「マツカ」を助命するだけでも、充分に反逆罪なのに。
まして「キース」を殺そうと試みた危険なミュウなど、生かしておいてはならないのに。
(その場で射殺し、報告するのが軍人としての義務なのだがな?)
私はそうはしなかったのだ、とマツカとの出会いを思い出す。
もしも「キース」が軍人としては平凡だったら、即座にマツカを射殺したろう。
自分の命が危ういわけだし、考えている余裕などは無いから。
しかし、メンバーズなら、そんな風には行動しない。
まずは捕らえて、色々と尋問せねばならない。
射殺するのは「その後」のことで、それまでは生かしておかなければ。
実際、「キース」は、そのようにした。
マツカの攻撃を退けた後に、襲撃の背景を探り出そうと考えたのに…。
(…マツカはミュウのスパイどころか、自分の能力さえも知らないミュウで…)
弱々しくて、ただ怯えていた。
その姿に「シロエ」の姿が重なり、もう「殺せなくなってしまった」。
シロエを二度も殺すことなど、出来はしないし、したくもない。
なら、どうすればいいのだろうか。
マツカを「見逃してやった」だけでは、再び、同じことが起きるかもしれない。
命の危険を感じたマツカが、他の軍人を攻撃するという事態。
そうなればマツカは、殺されてしまうことだろう。
たとえメンバーズが相手であっても、そのメンバーズはマツカを「見逃しはしない」。
必要な情報を聞き出した後は、問答無用で射殺して終わり。
そういう悲劇を防ぎたかったら、「マツカ」を連れてゆくしかない。
「キース・アニアン」の側近に据えて、身の回りの世話でもさせておいたら安全だろう。
無能な部下になったとしても、眼鏡違いだったと笑われるだけ。
(気まぐれで選び出すからだ、と…)
「キース」が陰口を叩かれはしても、「マツカ」の身に危難が及びはしない。
そう考えて、後に実行した。
マツカの能力はこの目で見たから、もはや迷いはしなかった。
「マツカ」の見た目がどうであろうが、「役に立つ」のは本当だから。
思いがけない優秀な部下を、手にすることが出来そうだから。
(…どう考えても、あの時の私の感情は…)
マザー・イライザが計算していたものとは違う、と思えてならない。
計算された感情だったら、「マツカ」を救うことなど出来ない。
機械は「理想の子」になるようにと、キースを育てたのだから。
システムに逆らうことなど考えもしない、SD体制を守るための指導者として。
(だからこそ、私はシロエが乗った練習艇を…)
マザー・イライザが命じるままに、撃墜するしか道が無かった。
シロエをそのまま行かせることなど、あの時の「キース」には不可能だった。
今から思えば、逃がす方法が無かったわけではなかったのに。
「取り逃がしました」と嘘の報告をしても、叱られて終わっていただろう。
本当の所は見逃していても、「力が及びませんでした」と悔し気に詫びていたならば。
(…今の私は、そういう風に考えることが出来る上に…)
マツカという側近も持っているから、マザー・イライザの計算通りとは思えない。
何処かで計算が狂い始めて、今に至るのではないのだろうか。
なにしろ、あの水槽から出した時点で、もはや「キース」は無垢ではない。
機械が教えることが全てであった時代は終わって、環境に左右され始める。
友人、知人や教師といった、「キース」を取り巻く周りの者に。
(それを見越して、サムやスウェナやシロエを揃えて…)
イライザは環境を整えたけれど、「キース」の世界は、もっと複雑なものだった。
機械が作った人間とはいえ、生きてゆく上で関わる人間たちは、たった三人では済まない。
他の人間も目にするわけだし、声だって耳に入って来る。
教室で講義を受ける他にも、様々なことを見聞きしながら「キース」は育つことになる。
いくら環境を整えようとも、それらを遮断することは出来ず、少しずつ世界を歪めてゆく。
マザー・イライザもそれと気付かない内に、ゆっくりと。
整えられた世界は歪んで、軋んで、ずれ始める。
機械が意図して作ったものとは、まるで違った方向へ。
「キース」という人間に「個性」が生まれて、「独自の感情」が芽生える方へ。
(…そう考えた方が、何かと合点がゆくのだがな?)
計算通りに今も育っているよりは…、とキースはコーヒーのカップを傾ける。
「何処かで計算が狂ったのだ」と、「今の私は計算の外で生きているのに違いない」と。
恐らくマツカを拾った時には、もう計算は狂い始めていたのだろう。
けれど機械はそうと気付かず、軌道修正をしなかった。
それとも機械が作ったものでも、一度、感情が目覚めたならば…。
(もはや修正は不可能なのか…?)
そうなのかもな、という気もする。
ならば、計算の外で生きることを始めた「キース」が、もしも…。
(…ミュウどもの船で、もっと紳士的な扱いを受けて…)
世話係でもついていたなら、恋をすることもあっただろうか。
毎日、食事を運んでくれて、世話をしてくれるミュウの女性に。
あるいはシロエに面差しの似た、同い年くらいのミュウの友達が出来るとか。
(…シロエに似ている、というだけで…)
その可能性は充分あるな、と思うものだから、苦笑が浮かんで来る。
「あの連中は、私の扱いを間違えたな」と。
捕らえて尋問するにしたって、違う方法があっただろうに、と。
(……ジョミー・マーキス・シン……)
お前は道を間違えたぞ、とミュウの長に心で呼び掛けたくなる。
「私を紳士的に扱っていたら、メギドは持ち出さなかったかもな」と。
機械の計算が既に狂い始めていたのだったら、その可能性は大いにある。
ミュウの女性に恋をしたとか、シロエに似たミュウと友達になったキースだったら…。
(…ミュウどもの船を宇宙に逃がして、それから戻って…)
グランド・マザーに、「しくじりました」と言い訳を並べて、失態を詫びることだろう。
自分のミスで「モビー・ディックを取り逃がした」と、心の中では舌を出しながら。
その後も何かと計算の外で、色々なことをしそうな「キース」。
理想の指導者にはなれそうもない、様々な失敗の数々を。
機械の計算が狂った世界で、ミュウたちに有利になりそうなことを…。
計算の外で・了
※マザー・イライザが「理想の子」が出来た、と喜んでいた「キース」ですけれど…。
あの時点で既に、マツカを側近に据えていたわけで、計算違いだったのでは、というお話。
どう贔屓目に見積もってもな、とキースは、部下が先刻、消えた方へと目を遣った。
国家騎士団総司令の個室に出入り自由な、ジルベスター・セブン以来の側近。
さっきコーヒーを運んで来たのだけれども、今夜はもう彼の仕事は無い。
だから「下がって休め」と簡潔に告げて、忠実な側近に休息を取らせることにした。
誰も気付いていないけれども、側近の「マツカ」の正体はミュウ。
彼にしか出来ない役目は多くて、実際、とても役に立つ。
暗殺者が撃って来た弾を防いだり、爆発物が仕掛けられた場所を見破ったり、といった具合に。
(マザー・イライザは、私を作って…)
理想的に生育するよう、全てを計算して与えたと言った。
Eー1077で出来た友人のサムも、サムの幼馴染だったスウェナも、計算された人材。
トップ争いを繰り広げていた、「実はミュウだった」シロエもそうだ、と。
(あの頃の私は、自分の生まれを何も知らずに…)
計算された道を走り続けていたのだという。
スウェナを乗せた宇宙船の事故さえ、「キース」の資質を開花させるために仕組まれていた。
そんなこととは全く知らずに、懸命に考え、対処したのに。
シロエがミュウの因子に目覚めて逃げた時にも、心が引き裂かれるような気持ちで…。
(追い掛けて撃墜したというのに、それもイライザの計算で…)
その後、Eー1077は廃校になって、長く宇宙に放置されていた。
「それ」の処分をグランド・マザーに任され、初めて知った「自分の生まれ」。
マザー・イライザが全くの無から作り上げた生命、「キース・アニアン」。
(…何もかもが計算通りだったと…)
ようやく生まれた理想の子だ、とマザー・イライザは喜んでいた。
その「子」が自分を処分しに来たとは、多分、思いもしなかったろう。
だから歓喜し、嬉しそうに全てを明らかにした。
フロア001に纏わる真実、遠い昔にシロエがその目で確かめたことを。
「キース」は無から作られたことを、それにシロエも知りようがなかったシナリオを。
サムやスウェナという友人を与え、ミュウ因子を持った「シロエ」を配する。
全ては整えられた環境、計算された様々な出来事。
それらを糧に「キース」は育って、いずれ理想の指導者となる。
SD体制を、地球を導く、唯一無二の存在として。
何もかもが「計算されていた」、キースの人生。
知っていたなら、途中で絶望していたろうか。
何をしようが、何をどのように考えようが、全て機械の計算なのだ、と嫌になって。
生きてゆくのも、思考することも、放棄してしまいたくなって。
(…だから、真実を明かすまでの間に…)
長い時間を置いたのだろうか、という気もする。
シロエが命懸けで暴いた「フロア001」の秘密は、ずっと後まで伝わらなかった。
Eー1077でシロエから直に、その存在を聞かされたのに。
「フロア001に行け」とシロエは告げて、それから間も無く宇宙に散った。
マザー・イライザの計算通りに、キースの船に撃墜されて。
キースの心に棘を残して、飛び去って行ったミュウだったシロエ。
(…本当に、あれも計算だったとしたら…)
なんとも空しい人生だけれど、幸い、気付きはしなかった。
フロア001には行けずに、そのまま卒業してEー1077を去ったから。
たまに思い出すことはあっても、訪れる機会は無かったから。
(そして私は何も知らずに、機械が敷いたレールの上を…)
走り続けて来た筈だけども、そうは思えない部分がある。
机の上で湯気を立てるコーヒー、それを淹れて去った側近、「マツカ」。
彼と出会って「拾った」時には、キースの階級は、まだ少佐だった。
側近くらいは選べるけれども、大きなことは、そうそう出来ない。
なのに、システムに「逆らった」。
SD体制が異分子と断じる「ミュウ」を拾って、側近に据えた。
ミュウの「マツカ」を助命するだけでも、充分に反逆罪なのに。
まして「キース」を殺そうと試みた危険なミュウなど、生かしておいてはならないのに。
(その場で射殺し、報告するのが軍人としての義務なのだがな?)
私はそうはしなかったのだ、とマツカとの出会いを思い出す。
もしも「キース」が軍人としては平凡だったら、即座にマツカを射殺したろう。
自分の命が危ういわけだし、考えている余裕などは無いから。
しかし、メンバーズなら、そんな風には行動しない。
まずは捕らえて、色々と尋問せねばならない。
射殺するのは「その後」のことで、それまでは生かしておかなければ。
実際、「キース」は、そのようにした。
マツカの攻撃を退けた後に、襲撃の背景を探り出そうと考えたのに…。
(…マツカはミュウのスパイどころか、自分の能力さえも知らないミュウで…)
弱々しくて、ただ怯えていた。
その姿に「シロエ」の姿が重なり、もう「殺せなくなってしまった」。
シロエを二度も殺すことなど、出来はしないし、したくもない。
なら、どうすればいいのだろうか。
マツカを「見逃してやった」だけでは、再び、同じことが起きるかもしれない。
命の危険を感じたマツカが、他の軍人を攻撃するという事態。
そうなればマツカは、殺されてしまうことだろう。
たとえメンバーズが相手であっても、そのメンバーズはマツカを「見逃しはしない」。
必要な情報を聞き出した後は、問答無用で射殺して終わり。
そういう悲劇を防ぎたかったら、「マツカ」を連れてゆくしかない。
「キース・アニアン」の側近に据えて、身の回りの世話でもさせておいたら安全だろう。
無能な部下になったとしても、眼鏡違いだったと笑われるだけ。
(気まぐれで選び出すからだ、と…)
「キース」が陰口を叩かれはしても、「マツカ」の身に危難が及びはしない。
そう考えて、後に実行した。
マツカの能力はこの目で見たから、もはや迷いはしなかった。
「マツカ」の見た目がどうであろうが、「役に立つ」のは本当だから。
思いがけない優秀な部下を、手にすることが出来そうだから。
(…どう考えても、あの時の私の感情は…)
マザー・イライザが計算していたものとは違う、と思えてならない。
計算された感情だったら、「マツカ」を救うことなど出来ない。
機械は「理想の子」になるようにと、キースを育てたのだから。
システムに逆らうことなど考えもしない、SD体制を守るための指導者として。
(だからこそ、私はシロエが乗った練習艇を…)
マザー・イライザが命じるままに、撃墜するしか道が無かった。
シロエをそのまま行かせることなど、あの時の「キース」には不可能だった。
今から思えば、逃がす方法が無かったわけではなかったのに。
「取り逃がしました」と嘘の報告をしても、叱られて終わっていただろう。
本当の所は見逃していても、「力が及びませんでした」と悔し気に詫びていたならば。
(…今の私は、そういう風に考えることが出来る上に…)
マツカという側近も持っているから、マザー・イライザの計算通りとは思えない。
何処かで計算が狂い始めて、今に至るのではないのだろうか。
なにしろ、あの水槽から出した時点で、もはや「キース」は無垢ではない。
機械が教えることが全てであった時代は終わって、環境に左右され始める。
友人、知人や教師といった、「キース」を取り巻く周りの者に。
(それを見越して、サムやスウェナやシロエを揃えて…)
イライザは環境を整えたけれど、「キース」の世界は、もっと複雑なものだった。
機械が作った人間とはいえ、生きてゆく上で関わる人間たちは、たった三人では済まない。
他の人間も目にするわけだし、声だって耳に入って来る。
教室で講義を受ける他にも、様々なことを見聞きしながら「キース」は育つことになる。
いくら環境を整えようとも、それらを遮断することは出来ず、少しずつ世界を歪めてゆく。
マザー・イライザもそれと気付かない内に、ゆっくりと。
整えられた世界は歪んで、軋んで、ずれ始める。
機械が意図して作ったものとは、まるで違った方向へ。
「キース」という人間に「個性」が生まれて、「独自の感情」が芽生える方へ。
(…そう考えた方が、何かと合点がゆくのだがな?)
計算通りに今も育っているよりは…、とキースはコーヒーのカップを傾ける。
「何処かで計算が狂ったのだ」と、「今の私は計算の外で生きているのに違いない」と。
恐らくマツカを拾った時には、もう計算は狂い始めていたのだろう。
けれど機械はそうと気付かず、軌道修正をしなかった。
それとも機械が作ったものでも、一度、感情が目覚めたならば…。
(もはや修正は不可能なのか…?)
そうなのかもな、という気もする。
ならば、計算の外で生きることを始めた「キース」が、もしも…。
(…ミュウどもの船で、もっと紳士的な扱いを受けて…)
世話係でもついていたなら、恋をすることもあっただろうか。
毎日、食事を運んでくれて、世話をしてくれるミュウの女性に。
あるいはシロエに面差しの似た、同い年くらいのミュウの友達が出来るとか。
(…シロエに似ている、というだけで…)
その可能性は充分あるな、と思うものだから、苦笑が浮かんで来る。
「あの連中は、私の扱いを間違えたな」と。
捕らえて尋問するにしたって、違う方法があっただろうに、と。
(……ジョミー・マーキス・シン……)
お前は道を間違えたぞ、とミュウの長に心で呼び掛けたくなる。
「私を紳士的に扱っていたら、メギドは持ち出さなかったかもな」と。
機械の計算が既に狂い始めていたのだったら、その可能性は大いにある。
ミュウの女性に恋をしたとか、シロエに似たミュウと友達になったキースだったら…。
(…ミュウどもの船を宇宙に逃がして、それから戻って…)
グランド・マザーに、「しくじりました」と言い訳を並べて、失態を詫びることだろう。
自分のミスで「モビー・ディックを取り逃がした」と、心の中では舌を出しながら。
その後も何かと計算の外で、色々なことをしそうな「キース」。
理想の指導者にはなれそうもない、様々な失敗の数々を。
機械の計算が狂った世界で、ミュウたちに有利になりそうなことを…。
計算の外で・了
※マザー・イライザが「理想の子」が出来た、と喜んでいた「キース」ですけれど…。
あの時点で既に、マツカを側近に据えていたわけで、計算違いだったのでは、というお話。
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