気付かない内に
(…またか…!)
なんて機械だ、とシロエは心で舌打ちをした。
講義があるから出て来たけれども、今日は出なくていいだろう。
こんな気分で出席するより、部屋で勉強した方がいい。
体調不良や、マザー・イライザのコールなどなど、出席出来ない生徒も少なくはない。
そういう場合は届けを出したら、後で講義が配信される。
部屋で受講し、指示された課題を提出したなら、出席したのと同じになる。
(そっちで充分、間に合うってね)
質問するほどの講義じゃないし、と教室の方に背を向け、部屋に戻った。
通路を急ぎ足で歩いて、誰の顔も一つも見ないで済むよう、自分の足だけを見るようにして。
そうして戻った自分の部屋には、自分の他には誰も居はしない。
Eー1077での暮らしは、完全に独立している個室と、共同の区画に分かれている。
(でも、此処だって…)
今、この瞬間さえも、機械が眺めていることだろう。
あの忌々しいマザー・イライザ、猫なで声で母親面をしている巨大コンピューターが。
(そうやって、いつも覗いているから、ああいうことを簡単に…)
やらかせるんだ、と、さっきの出来事を思い返して顔を顰める。
講義に出る気が失せてしまったのは、同級生たちを目にしたからだった。
元々、馬が合わないけれども、そのせいではない。
彼らの上に起きた出来事、それがシロエを苛立たせた。
もっとも、同級生たちの方では、何がシロエの気に障ったかも知らないだろう。
知らない上に、気付きもしないし、説明したって通じはしない。
彼らは「忘れている」のだから。
昨日、訓練中の態度を巡って、訓練の後で喧嘩があった。
最初に争い始めた者は、二人か三人だったと思う。
「いつものことか」と、さほど関心を持たなかったし、人数までは覚えていない。
それがどういう切っ掛けでなのか、周囲を巻き込む騒ぎになった。
(取っ組み合いの喧嘩になって、止めに入った奴も巻き添えで…)
蹴られたらしくて、もう収集がつかない始末で、最後は教授が止めに入った。
たまたま通りかかった教授で、訓練を担当していた者ではなかったけれど。
(あれだけ派手に喧嘩をしていたくせに、今日はすっかり…)
普段の笑顔で、彼らは和やかに談笑していた。
講義が始まる前の時間に、通路で集まり、講義の後に食堂に行く相談中。
「今日のメニューは、コレらしいぞ」と一人が言ったら、「美味しそうだ」と楽しそうに。
(殴り合いの喧嘩をしていた相手と、食堂だって?)
冗談じゃない、と反吐が出そうだけれども、此処では「当たり前」だった。
よくあることで、周りの者も、誰も不思議に思いはしない。
何故なら、喧嘩は「無かった」から。
あったとしたって、せいぜい、ただの言い争いで、とうの昔に解決済みで、仲直り。
(エリート候補生たるもの、感情を乱して争うようでは…)
話にならない、と教授たちが事あるごとに口にするほどで、鉄則ではある。
とはいえ、まだまだ候補生の身で、メンバーズ・エリートに選出されたわけではない。
そうそう上手く、感情のコントロールなど、彼らに出来よう筈がなかった。
(このぼくでさえも、持て余すのに…)
あんな奴らに出来るものか、と分かっているから、恐ろしくなる。
彼らは「仲直りした」のではなくて、「喧嘩なんかは、しなかった」。
殴り合いをした張本人も、止めに入って巻き添えの者も、見ていた者も「何も知らない」。
喧嘩が起きた原因からして、誰も覚えていないだろう。
昨日の訓練は平穏無事に終わって、態度が悪い者も一人も居はしなかった。
終わった後には、担当教授が解散を告げて、各自、思い思いに散って行っただけ。
食堂へ出掛けて行った者やら、個室に戻って休憩などで。
つまり、彼らは「忘れてしまった」。
正確に言えば「忘れさせられて」、もう何一つ覚えていないし、喧嘩は「無かった」。
だから通路で談笑が出来て、講義の後には食事に行こう、という話になる。
未来のエリートを目指す者には、他の者との和が欠かせない。
人の心を掴むためには、喧嘩するより、友情を深める方が遥かに有意義だから。
(だからと言って、記憶を処理してしまうだなんて…)
もっと違う方に導けないのか、と怒りが沸々と湧いて来るけれど、消すのが一番早いのだろう。
全部の生徒をフォローしていたら、如何に巨大なコンピューターでも、手を取られる。
喧嘩したのが、将来有望な生徒だったら、コールや部屋でのカウンセリングで…。
(そうじゃないなら、消しておしまい…)
多分、そういう所だよね、と見当はとうについている。
何度も喧嘩を目にしているから、その辺りの加減は分かって来た。
喧嘩をした中に「キース」がいたなら、事情は違っていただろう。
たとえ「キース」は見ていただけで、直接、喧嘩を止めることはしていなくても。
いつも通りのクールな表情、アイスブルーの瞳で冷たく眺めて、何一つしていないとしても。
(…キースが喧嘩を見ていたのなら…)
彼なりに、思う所もあっただろうし、口に出さずとも、考えることは多いと思う。
「ぼくが教授なら、こういう時にはどうするべきか」と、頭の中で検討もする。
キースにとっては「思考を深める」好機で、役に立つのに違いない。
だから機械は「喧嘩が起こった」事実を消しはしなくて、残しておく。
当事者だった者に対しては、多少の処理を施すとしても。
Eー1077に来て、それに気付いた時には「怖かった」。
成人検査で記憶を消されただけでも、恐ろしくて悲しかったというのに、此処でも消される。
しかも自分でも気付かない内に、見聞きした筈のことを「忘れさせられる」。
子供時代の記憶だったら、もうこれ以上は消されまいとして、抵抗だってするけれど…。
(ステーションの中で、目にしたというだけのことだから…)
余程、印象に残っていない限りは、消されても「気付かない」だろう。
さっき出会った同級生たちが、まるで全く気付きもしないで、談笑していたのと全く同じで。
(あの喧嘩だって、ぼくは最初は、関心が無くて…)
そちらを気にしていなかったせいで、喧嘩を始めた者の人数を覚えていない。
二人だったか、三人だったか、「覚えてないや」と思うけれども、それも怪しいかもしれない。
実はシロエは「最初から見ていて」、二人だったか、三人だったか、知っていて…。
(なのに機械に忘れさせられて、覚えていないつもりだとか…?)
その可能性だって有り得るんだ、と考えるだけで背筋がゾクリと冷える。
自分としては「キースと肩を並べるくらい」のつもりでいても、機械の方は分からない。
マザー・イライザが見ている「シロエ」が、「キース」ほど重要視されているとは限らない。
そうだとしたなら、記憶に関する処理のレベルも、自ずと変わる。
昨日の喧嘩を目撃したのが、「シロエ」ではなくて、「キース」だったなら…。
(喧嘩を始めたのは何人だったか、どんな具合に始まったのかも覚えてて…)
シロエと同じに舌打ちはしても、講義をサボって帰りはしなくて、出たのだろうか。
「全て覚えている」キースにとっては、喧嘩を始めた者が「忘れている」のも、自明の理で。
「またか」と呆れて舌打ちするだけ、舌打ちの相手は機械ではなくて、同級生の方。
(…喧嘩する方が悪いんだ、と呆れながらも割り切って…)
自分のすべき役目を果たしに、真面目に講義に出席する。
質問したいことが無くても、その場にいたなら、他に学びがあるかもしれない。
教授の話に出て来た「何か」が、講義とはまるで関係無くても、他の何かに結び付くとか。
(そういう話を、配信された講義で聞いたって…)
教授は其処には「いない」のだから、その場で質問などは出来ない。
次に教授に出会う時まで保留になるか、あるいは問い合わせる以外に無い。
どちらにしたって、答えを得るのは遅くなるから、学びも遅れることになる。
講義に出ていて聞いていたなら、直ぐに尋ねて、二歩も三歩も、先へ進めていたのだろうに。
(…まさかね…)
ぼくの記憶まで処理されたとか、と疑ってみても、答えは出ない。
喧嘩したのは二人だったか、三人だったか、それもどうにも「思い出せない」。
これが機械が仕向けたことだったならば、「シロエ」は、さほど「重要ではない」。
機械の申し子、「キース」だったら忘れないことを、「シロエ」は覚えていないのだから。
(…いったい、どっちか、どうやったなら…)
分かるんだろう、と思いはしても、分かるのは「そういう係がいるらしい」という所まで。
Eー1077の仕組みを調べる間に、偶然、知った。
マザー・イライザの指示で動く「記憶処理の専門機関」が、ステーションの中に存在する。
候補生たちが眠っている間に、記憶を処理して、喧嘩さえをも無かったことにしてしまう。
(それをやってる係は、怖くはならないのかな?)
自分たちが記憶を処理するみたいに、自分の記憶も処理する係がいるのでは、という具合に。
それとも、そうして怖くなる前に、その記憶を消されてしまうのだろうか。
喧嘩を忘れてしまうのと同じに、「怖い思いなどしてはいない」と記憶を書き換えられて。
(…そういう係と知り合いになれば、ぼくの記憶がどうなってるかも…)
分かるだろうし、消された部分を取り戻すことも出来そうではある。
けれど、その日は「来ない」のだろう。
彼らと知り合い、調べて欲しいと頼み込む前に、この思いは、きっと消されてしまう。
「シロエ」が機密に近付かないよう、機械は何処かで監視している。
もしも「シロエ」が「キース」に劣らず優秀だったら、消されないかもしれないけれど。
いつか係と知り合えたならば、「ぼくは、どうかな?」と訊けそうだけれど…。
気付かない内に・了
※アニテラに出て来た、Eー1077で生徒の記憶を夜の間に消していた係。
「自分たちも、こんな風に消されているかも」と話していたのを、シロエで書いたお話。
なんて機械だ、とシロエは心で舌打ちをした。
講義があるから出て来たけれども、今日は出なくていいだろう。
こんな気分で出席するより、部屋で勉強した方がいい。
体調不良や、マザー・イライザのコールなどなど、出席出来ない生徒も少なくはない。
そういう場合は届けを出したら、後で講義が配信される。
部屋で受講し、指示された課題を提出したなら、出席したのと同じになる。
(そっちで充分、間に合うってね)
質問するほどの講義じゃないし、と教室の方に背を向け、部屋に戻った。
通路を急ぎ足で歩いて、誰の顔も一つも見ないで済むよう、自分の足だけを見るようにして。
そうして戻った自分の部屋には、自分の他には誰も居はしない。
Eー1077での暮らしは、完全に独立している個室と、共同の区画に分かれている。
(でも、此処だって…)
今、この瞬間さえも、機械が眺めていることだろう。
あの忌々しいマザー・イライザ、猫なで声で母親面をしている巨大コンピューターが。
(そうやって、いつも覗いているから、ああいうことを簡単に…)
やらかせるんだ、と、さっきの出来事を思い返して顔を顰める。
講義に出る気が失せてしまったのは、同級生たちを目にしたからだった。
元々、馬が合わないけれども、そのせいではない。
彼らの上に起きた出来事、それがシロエを苛立たせた。
もっとも、同級生たちの方では、何がシロエの気に障ったかも知らないだろう。
知らない上に、気付きもしないし、説明したって通じはしない。
彼らは「忘れている」のだから。
昨日、訓練中の態度を巡って、訓練の後で喧嘩があった。
最初に争い始めた者は、二人か三人だったと思う。
「いつものことか」と、さほど関心を持たなかったし、人数までは覚えていない。
それがどういう切っ掛けでなのか、周囲を巻き込む騒ぎになった。
(取っ組み合いの喧嘩になって、止めに入った奴も巻き添えで…)
蹴られたらしくて、もう収集がつかない始末で、最後は教授が止めに入った。
たまたま通りかかった教授で、訓練を担当していた者ではなかったけれど。
(あれだけ派手に喧嘩をしていたくせに、今日はすっかり…)
普段の笑顔で、彼らは和やかに談笑していた。
講義が始まる前の時間に、通路で集まり、講義の後に食堂に行く相談中。
「今日のメニューは、コレらしいぞ」と一人が言ったら、「美味しそうだ」と楽しそうに。
(殴り合いの喧嘩をしていた相手と、食堂だって?)
冗談じゃない、と反吐が出そうだけれども、此処では「当たり前」だった。
よくあることで、周りの者も、誰も不思議に思いはしない。
何故なら、喧嘩は「無かった」から。
あったとしたって、せいぜい、ただの言い争いで、とうの昔に解決済みで、仲直り。
(エリート候補生たるもの、感情を乱して争うようでは…)
話にならない、と教授たちが事あるごとに口にするほどで、鉄則ではある。
とはいえ、まだまだ候補生の身で、メンバーズ・エリートに選出されたわけではない。
そうそう上手く、感情のコントロールなど、彼らに出来よう筈がなかった。
(このぼくでさえも、持て余すのに…)
あんな奴らに出来るものか、と分かっているから、恐ろしくなる。
彼らは「仲直りした」のではなくて、「喧嘩なんかは、しなかった」。
殴り合いをした張本人も、止めに入って巻き添えの者も、見ていた者も「何も知らない」。
喧嘩が起きた原因からして、誰も覚えていないだろう。
昨日の訓練は平穏無事に終わって、態度が悪い者も一人も居はしなかった。
終わった後には、担当教授が解散を告げて、各自、思い思いに散って行っただけ。
食堂へ出掛けて行った者やら、個室に戻って休憩などで。
つまり、彼らは「忘れてしまった」。
正確に言えば「忘れさせられて」、もう何一つ覚えていないし、喧嘩は「無かった」。
だから通路で談笑が出来て、講義の後には食事に行こう、という話になる。
未来のエリートを目指す者には、他の者との和が欠かせない。
人の心を掴むためには、喧嘩するより、友情を深める方が遥かに有意義だから。
(だからと言って、記憶を処理してしまうだなんて…)
もっと違う方に導けないのか、と怒りが沸々と湧いて来るけれど、消すのが一番早いのだろう。
全部の生徒をフォローしていたら、如何に巨大なコンピューターでも、手を取られる。
喧嘩したのが、将来有望な生徒だったら、コールや部屋でのカウンセリングで…。
(そうじゃないなら、消しておしまい…)
多分、そういう所だよね、と見当はとうについている。
何度も喧嘩を目にしているから、その辺りの加減は分かって来た。
喧嘩をした中に「キース」がいたなら、事情は違っていただろう。
たとえ「キース」は見ていただけで、直接、喧嘩を止めることはしていなくても。
いつも通りのクールな表情、アイスブルーの瞳で冷たく眺めて、何一つしていないとしても。
(…キースが喧嘩を見ていたのなら…)
彼なりに、思う所もあっただろうし、口に出さずとも、考えることは多いと思う。
「ぼくが教授なら、こういう時にはどうするべきか」と、頭の中で検討もする。
キースにとっては「思考を深める」好機で、役に立つのに違いない。
だから機械は「喧嘩が起こった」事実を消しはしなくて、残しておく。
当事者だった者に対しては、多少の処理を施すとしても。
Eー1077に来て、それに気付いた時には「怖かった」。
成人検査で記憶を消されただけでも、恐ろしくて悲しかったというのに、此処でも消される。
しかも自分でも気付かない内に、見聞きした筈のことを「忘れさせられる」。
子供時代の記憶だったら、もうこれ以上は消されまいとして、抵抗だってするけれど…。
(ステーションの中で、目にしたというだけのことだから…)
余程、印象に残っていない限りは、消されても「気付かない」だろう。
さっき出会った同級生たちが、まるで全く気付きもしないで、談笑していたのと全く同じで。
(あの喧嘩だって、ぼくは最初は、関心が無くて…)
そちらを気にしていなかったせいで、喧嘩を始めた者の人数を覚えていない。
二人だったか、三人だったか、「覚えてないや」と思うけれども、それも怪しいかもしれない。
実はシロエは「最初から見ていて」、二人だったか、三人だったか、知っていて…。
(なのに機械に忘れさせられて、覚えていないつもりだとか…?)
その可能性だって有り得るんだ、と考えるだけで背筋がゾクリと冷える。
自分としては「キースと肩を並べるくらい」のつもりでいても、機械の方は分からない。
マザー・イライザが見ている「シロエ」が、「キース」ほど重要視されているとは限らない。
そうだとしたなら、記憶に関する処理のレベルも、自ずと変わる。
昨日の喧嘩を目撃したのが、「シロエ」ではなくて、「キース」だったなら…。
(喧嘩を始めたのは何人だったか、どんな具合に始まったのかも覚えてて…)
シロエと同じに舌打ちはしても、講義をサボって帰りはしなくて、出たのだろうか。
「全て覚えている」キースにとっては、喧嘩を始めた者が「忘れている」のも、自明の理で。
「またか」と呆れて舌打ちするだけ、舌打ちの相手は機械ではなくて、同級生の方。
(…喧嘩する方が悪いんだ、と呆れながらも割り切って…)
自分のすべき役目を果たしに、真面目に講義に出席する。
質問したいことが無くても、その場にいたなら、他に学びがあるかもしれない。
教授の話に出て来た「何か」が、講義とはまるで関係無くても、他の何かに結び付くとか。
(そういう話を、配信された講義で聞いたって…)
教授は其処には「いない」のだから、その場で質問などは出来ない。
次に教授に出会う時まで保留になるか、あるいは問い合わせる以外に無い。
どちらにしたって、答えを得るのは遅くなるから、学びも遅れることになる。
講義に出ていて聞いていたなら、直ぐに尋ねて、二歩も三歩も、先へ進めていたのだろうに。
(…まさかね…)
ぼくの記憶まで処理されたとか、と疑ってみても、答えは出ない。
喧嘩したのは二人だったか、三人だったか、それもどうにも「思い出せない」。
これが機械が仕向けたことだったならば、「シロエ」は、さほど「重要ではない」。
機械の申し子、「キース」だったら忘れないことを、「シロエ」は覚えていないのだから。
(…いったい、どっちか、どうやったなら…)
分かるんだろう、と思いはしても、分かるのは「そういう係がいるらしい」という所まで。
Eー1077の仕組みを調べる間に、偶然、知った。
マザー・イライザの指示で動く「記憶処理の専門機関」が、ステーションの中に存在する。
候補生たちが眠っている間に、記憶を処理して、喧嘩さえをも無かったことにしてしまう。
(それをやってる係は、怖くはならないのかな?)
自分たちが記憶を処理するみたいに、自分の記憶も処理する係がいるのでは、という具合に。
それとも、そうして怖くなる前に、その記憶を消されてしまうのだろうか。
喧嘩を忘れてしまうのと同じに、「怖い思いなどしてはいない」と記憶を書き換えられて。
(…そういう係と知り合いになれば、ぼくの記憶がどうなってるかも…)
分かるだろうし、消された部分を取り戻すことも出来そうではある。
けれど、その日は「来ない」のだろう。
彼らと知り合い、調べて欲しいと頼み込む前に、この思いは、きっと消されてしまう。
「シロエ」が機密に近付かないよう、機械は何処かで監視している。
もしも「シロエ」が「キース」に劣らず優秀だったら、消されないかもしれないけれど。
いつか係と知り合えたならば、「ぼくは、どうかな?」と訊けそうだけれど…。
気付かない内に・了
※アニテラに出て来た、Eー1077で生徒の記憶を夜の間に消していた係。
「自分たちも、こんな風に消されているかも」と話していたのを、シロエで書いたお話。
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