後悔の果てに
(後悔、か……)
キースの頭に、ふと浮かんで来た、その言葉。
さっきマツカが置いて行ったコーヒー、それを一口飲んだ所で。
何処からか、不意に涌いた言葉は、あまりにも「キース」に似合ってはいない。
(私は、後悔などはしないと…)
誰もが思っているだろうな、とコーヒーを喉へ落とし込む。
つい数日前、初の軍人出身の元老として、パルテノン入りというのを果たした。
国家主席が不在の今は、元老たちが実質上のトップとなる。
年功序列の不文律めいたものはあっても、「キース」は恐らく、それを超えるだろう。
(なんと言っても、グランド・マザーが目を掛けていて…)
パルテノン入りの件についても、異論を挟ませはしなかった。
そのため、不満を抱いた者も多くて、暗殺計画が何度も立案されては、実行された。
しかし「キース」は殺されはせずに、とうとう此処まで昇り詰めて来た。
この先は、もう暗殺を企てる者も無くなるだろう。
国家騎士団元帥までなら、ドサクサ紛れに殺せはしても、元老となればそうはゆかない。
警護の者も増やされるのだし、簡単に「消す」ことは出来ない。
(…そして私は、これから先も…)
順調に足場を固めて行って、国家主席になるのだろう。
これまでの例とは比較にならない、破格の若さで抜擢されて。
(…誰から見ても、後悔などとは、まるで無縁で…)
順風満帆の人生だけども、「そうではない」ことは、キースが誰よりも承知している。
普段は「忘れる」ように心掛けていて、そのための訓練も受けているから、後悔はしない。
任務の最中に迂闊に後悔しようものなら、失敗に終わるのは目に見えている。
(メンバーズならば、誰もが同じで…)
まして「機械の申し子」となれば、それ以上だと思われていることだろう。
訓練以前に、後悔自体が「全く存在しない」生き方と思考。
全ては冷徹な計算された行動ばかりで、想定外のことが起きても、直ちに計算をやり直す。
行動自体を組み替えたならば、自ずと過程も結果も変わる。
始める前なら「作戦失敗」と見做していた筈の事態だろうと、成功に変えて作戦は終わる。
(まさに、そうやって生きては来たが…)
それと後悔とは別物なのだ、と改めて思う。
マツカが淹れて去ったコーヒー、まだ熱いそれを傾けながら。
もう夜更けだから、マツカは来ない。
「今日は、もういい」と下がらせておいた。
他の部下たちも来はしないから、自分一人の思考の淵に沈んでいようと、問題は無い。
「キース」が何を考えようが、似つかわしくない「後悔」の数を振り返っては溜息だろうが。
(…実際、後悔ばかりなのだ、と…)
言って言えないこともないな、と深い溜息が零れてしまう。
そもそも人生の「最初」からして、そうだった。
もっとも「キース」に責任は無くて、責任が誰かにあるとしたなら、機械なのだけれど。
(どうして私を作ったのだ…)
マザー・イライザ、とEー1077を統治していた、コンピューターを思い浮かべる。
あのステーションも、マザー・イライザも、キース自身が破壊したけれど、過去は消えない。
見た目の上では消えていたって、「キース」自身が忘れはしない。
「あのような」生まれだったことなど、忘れられよう筈も無かった。
どんなに「キース」が忘れたくても、この記憶は「消されない」だろう。
SD体制を統べる巨大コンピューター、グランド・マザーが、そう仕向けるに違いない。
「キース」が「無から作られた」ことは、機械にとっては最高の成果なのだから。
(私を作って、人類を導く存在として…)
人間の世界に送り込むのが、グランド・マザーの目的だった。
「優秀な者が出て来ないから」などと言ってはいても、本当かどうか分かりはしない。
機械の意を酌み、命令せずとも自主的に動く、「理想の人間」を作ろうとしたかもしれない。
養父母の代わりに機械が育てて、人間らしさを排除してゆけば、可能ではある。
実際、「キース」は、そう「作られた」。
思考する時、過去の経験に影響されずに、動くことが出来る「人間」として。
(マザー・イライザの、お人形さんだ、と…)
シロエが嘲り笑った言葉は、間違っていない。
「キース」は「そのように作られた」筈で、人間的な思考などは「一切しない」人形。
感情があるように見えてはいても、それは「学習した」結果に過ぎない。
サムやスウェナやシロエといった存在、それを配しておいたら、充分、「学べる」内容。
(…そうなる筈だったのだがな…)
上手くはゆかなかったようだ、と自分自身でも、少し可笑しい。
Eー1077を出るよりも前に、既に「キース」は後悔し始めていたのだから。
マザー・イライザが良かれと思って、「選んだ」シロエが失敗だったのかもしれない。
機械が想定した以上の「学び」を、「キース」は「シロエ」から得てしまった。
「システムに疑問を抱く」ことやら、機械が統治する世界が「歪んでいる」現実などを。
(シロエが現れなかったとしても…)
それらは「キース自身が気付いて」、自分で答えを出したとは思う。
事実、シロエに出会う前から、不審に思っていた部分なら多い。
けれど「シロエ」は、それらを全て「形にして見せて」、そうして散った。
「本当に疑問に思うのだったら、こうすべきだ」と、機械に逆らい、練習艇で逃亡して。
(…あれが鮮烈すぎたのだ…)
シロエの心が何処にあろうと、と今でも思う。
あの時、シロエが正気だったか、そうでないかは、もう分からない。
尋ねたくても、シロエは何処にも存在しない。
そうなったのは「キース」が「手を下した」からで、機械が命じた通りに「やった」。
マザー・イライザが「撃ちなさい」と告げた一言、それに従うよりは無かった。
シロエが乗った練習艇を追った時点で、そうなるだろうと覚悟していた。
(…しかし、あそこで命令通りに…)
撃墜したのは「キースの意志」で、指摘されたら否定出来ない。
マザー・イライザは自ら「宇宙に出ては来られない」のだし、道は二通り在ったと言える。
シロエの船を撃墜するか、撃墜するのに「失敗する」か。
(いくら「キース」が優秀とはいえ、どんな人間でも…)
機械が作った人間だろうと、その肉体は「人間」以外の何物でもない。
人間であれば、当然、ミスをすることもある。
どれほど周到に準備し、訓練を積んでいようとも、不測の事態は何処にでもある。
(正確に狙って撃ったつもりが、微妙に狂っていたならば…)
シロエの船は微塵に砕ける代わりに、弾き飛ばされたということも有り得る。
片翼を掠めていったレーザー、その衝撃で予定のコースを外れて、遥か彼方へと。
(そうなっていたら、もう追えなくて…)
見失うしかないだろう。
下手に追い掛け、深追いしたら「キース」の機体の燃料が切れる。
シロエの船を見失った上に、自分も帰還出来ないなどは言語道断、取るべき道は一つしか無い。
「失敗しました」と連絡を入れて、Eー1077に帰還する。
シロエの船は、損傷を負っているわけなのだし、いずれ酸素も切れるだろう、と判断して。
そうする道を「選ばなかった」のは、「キース」自身のせいでしかない。
もしも「シロエ」を逃がしていたなら、この後悔は無かっただろう。
シロエの「その後」は分からなくても、「自分が殺した」わけではない。
見逃した後に死ぬか生きるか、それは「シロエ」の運で責任、シロエ自身が自分で決める。
(…運が良ければ、モビー・ディックに拾われていて…)
今頃はミュウの陣営にいて、好敵手になっていただろう。
ジルベスター・セブンの件にしたって、「シロエ」がミュウの陣営にいれば、全て変わった。
彼は「キース」が何者なのかを知っている上、キースと肩を並べたほどの者でもある。
(私を殺して、メギドを持ち出せないようにしていたか、あるいは私の中の後悔を…)
引き摺り出して、上手くつついて、ミュウの側へと引き入れたろうか。
ミュウの肩を持つスパイに仕立てて、人類の世界に戻しておいたら、どうなったろう。
あの時点での「キース」は、自分の「生まれ」を知らないのだから、「シロエ」に分がある。
「キース」に真実を突き付けたならば、後悔は一気に膨れ上がって、疑問も深まることだろう。
機械が何を目論んでいるか、それをシロエに「教えられる」ことになるのだから。
(私は機械に無から作られて、機械に忠実に動くようにと計算されて…)
この世に送り出されたという事実を知ったら、受ける衝撃は計り知れない。
事実、シロエが遺した映像を目にしないままで、Eー1077の処分に出掛けていたならば…。
(マザー・イライザが何をやったか、予備知識無しで知ることになって…)
流石の「キース」も、その場で床に崩れ落ちていたかもしれない。
ほんの一瞬のことであっても、真実を受け止めきれなくて。
(直ぐに立ち上がって、ステーションごと処分したとしても…)
見て来た「現実」は心から消えず、どれほど苦しむことになったか、容易に分かる。
「私は何をやって来たのだ」と、「本物のヒトでもなかったくせに」と、後悔ばかりで。
(…一事が万事で、この先も、ずっと…)
後悔の数は増えて、増え続けて、減る日など、きっと訪れはしない。
ミュウとの戦いの行く末にしても、あるのは不安だけでしかない。
「私は、本当に正しいのか」と自問してみては、ミュウに分がある実情を恐れ続けている。
歴史がミュウに味方するなら、「キース」は破滅することだろう。
「人類のために」機械が作った生命、そのような「モノ」に未来など無い。
(…私は後悔し続けた末に、この息が絶える瞬間までも…)
後悔ばかりになるのだろうな、と虚しい気持ちしかしないけれども、仕方ない。
きっと「キース」は、最期の瞬間、自分の人生に「後悔は無い」とは言えないだろう。
心の底から満足し切って死ねるようには、生きられる筈も無さそうだから…。
後悔の果てに・了
※アニテラの最終話で「全力で生きた者にも、後悔は無い」と言ったキースですけど。
最初から全力で生きていたかな、と考えている内に出来たお話。後悔だらけの人生では…?
キースの頭に、ふと浮かんで来た、その言葉。
さっきマツカが置いて行ったコーヒー、それを一口飲んだ所で。
何処からか、不意に涌いた言葉は、あまりにも「キース」に似合ってはいない。
(私は、後悔などはしないと…)
誰もが思っているだろうな、とコーヒーを喉へ落とし込む。
つい数日前、初の軍人出身の元老として、パルテノン入りというのを果たした。
国家主席が不在の今は、元老たちが実質上のトップとなる。
年功序列の不文律めいたものはあっても、「キース」は恐らく、それを超えるだろう。
(なんと言っても、グランド・マザーが目を掛けていて…)
パルテノン入りの件についても、異論を挟ませはしなかった。
そのため、不満を抱いた者も多くて、暗殺計画が何度も立案されては、実行された。
しかし「キース」は殺されはせずに、とうとう此処まで昇り詰めて来た。
この先は、もう暗殺を企てる者も無くなるだろう。
国家騎士団元帥までなら、ドサクサ紛れに殺せはしても、元老となればそうはゆかない。
警護の者も増やされるのだし、簡単に「消す」ことは出来ない。
(…そして私は、これから先も…)
順調に足場を固めて行って、国家主席になるのだろう。
これまでの例とは比較にならない、破格の若さで抜擢されて。
(…誰から見ても、後悔などとは、まるで無縁で…)
順風満帆の人生だけども、「そうではない」ことは、キースが誰よりも承知している。
普段は「忘れる」ように心掛けていて、そのための訓練も受けているから、後悔はしない。
任務の最中に迂闊に後悔しようものなら、失敗に終わるのは目に見えている。
(メンバーズならば、誰もが同じで…)
まして「機械の申し子」となれば、それ以上だと思われていることだろう。
訓練以前に、後悔自体が「全く存在しない」生き方と思考。
全ては冷徹な計算された行動ばかりで、想定外のことが起きても、直ちに計算をやり直す。
行動自体を組み替えたならば、自ずと過程も結果も変わる。
始める前なら「作戦失敗」と見做していた筈の事態だろうと、成功に変えて作戦は終わる。
(まさに、そうやって生きては来たが…)
それと後悔とは別物なのだ、と改めて思う。
マツカが淹れて去ったコーヒー、まだ熱いそれを傾けながら。
もう夜更けだから、マツカは来ない。
「今日は、もういい」と下がらせておいた。
他の部下たちも来はしないから、自分一人の思考の淵に沈んでいようと、問題は無い。
「キース」が何を考えようが、似つかわしくない「後悔」の数を振り返っては溜息だろうが。
(…実際、後悔ばかりなのだ、と…)
言って言えないこともないな、と深い溜息が零れてしまう。
そもそも人生の「最初」からして、そうだった。
もっとも「キース」に責任は無くて、責任が誰かにあるとしたなら、機械なのだけれど。
(どうして私を作ったのだ…)
マザー・イライザ、とEー1077を統治していた、コンピューターを思い浮かべる。
あのステーションも、マザー・イライザも、キース自身が破壊したけれど、過去は消えない。
見た目の上では消えていたって、「キース」自身が忘れはしない。
「あのような」生まれだったことなど、忘れられよう筈も無かった。
どんなに「キース」が忘れたくても、この記憶は「消されない」だろう。
SD体制を統べる巨大コンピューター、グランド・マザーが、そう仕向けるに違いない。
「キース」が「無から作られた」ことは、機械にとっては最高の成果なのだから。
(私を作って、人類を導く存在として…)
人間の世界に送り込むのが、グランド・マザーの目的だった。
「優秀な者が出て来ないから」などと言ってはいても、本当かどうか分かりはしない。
機械の意を酌み、命令せずとも自主的に動く、「理想の人間」を作ろうとしたかもしれない。
養父母の代わりに機械が育てて、人間らしさを排除してゆけば、可能ではある。
実際、「キース」は、そう「作られた」。
思考する時、過去の経験に影響されずに、動くことが出来る「人間」として。
(マザー・イライザの、お人形さんだ、と…)
シロエが嘲り笑った言葉は、間違っていない。
「キース」は「そのように作られた」筈で、人間的な思考などは「一切しない」人形。
感情があるように見えてはいても、それは「学習した」結果に過ぎない。
サムやスウェナやシロエといった存在、それを配しておいたら、充分、「学べる」内容。
(…そうなる筈だったのだがな…)
上手くはゆかなかったようだ、と自分自身でも、少し可笑しい。
Eー1077を出るよりも前に、既に「キース」は後悔し始めていたのだから。
マザー・イライザが良かれと思って、「選んだ」シロエが失敗だったのかもしれない。
機械が想定した以上の「学び」を、「キース」は「シロエ」から得てしまった。
「システムに疑問を抱く」ことやら、機械が統治する世界が「歪んでいる」現実などを。
(シロエが現れなかったとしても…)
それらは「キース自身が気付いて」、自分で答えを出したとは思う。
事実、シロエに出会う前から、不審に思っていた部分なら多い。
けれど「シロエ」は、それらを全て「形にして見せて」、そうして散った。
「本当に疑問に思うのだったら、こうすべきだ」と、機械に逆らい、練習艇で逃亡して。
(…あれが鮮烈すぎたのだ…)
シロエの心が何処にあろうと、と今でも思う。
あの時、シロエが正気だったか、そうでないかは、もう分からない。
尋ねたくても、シロエは何処にも存在しない。
そうなったのは「キース」が「手を下した」からで、機械が命じた通りに「やった」。
マザー・イライザが「撃ちなさい」と告げた一言、それに従うよりは無かった。
シロエが乗った練習艇を追った時点で、そうなるだろうと覚悟していた。
(…しかし、あそこで命令通りに…)
撃墜したのは「キースの意志」で、指摘されたら否定出来ない。
マザー・イライザは自ら「宇宙に出ては来られない」のだし、道は二通り在ったと言える。
シロエの船を撃墜するか、撃墜するのに「失敗する」か。
(いくら「キース」が優秀とはいえ、どんな人間でも…)
機械が作った人間だろうと、その肉体は「人間」以外の何物でもない。
人間であれば、当然、ミスをすることもある。
どれほど周到に準備し、訓練を積んでいようとも、不測の事態は何処にでもある。
(正確に狙って撃ったつもりが、微妙に狂っていたならば…)
シロエの船は微塵に砕ける代わりに、弾き飛ばされたということも有り得る。
片翼を掠めていったレーザー、その衝撃で予定のコースを外れて、遥か彼方へと。
(そうなっていたら、もう追えなくて…)
見失うしかないだろう。
下手に追い掛け、深追いしたら「キース」の機体の燃料が切れる。
シロエの船を見失った上に、自分も帰還出来ないなどは言語道断、取るべき道は一つしか無い。
「失敗しました」と連絡を入れて、Eー1077に帰還する。
シロエの船は、損傷を負っているわけなのだし、いずれ酸素も切れるだろう、と判断して。
そうする道を「選ばなかった」のは、「キース」自身のせいでしかない。
もしも「シロエ」を逃がしていたなら、この後悔は無かっただろう。
シロエの「その後」は分からなくても、「自分が殺した」わけではない。
見逃した後に死ぬか生きるか、それは「シロエ」の運で責任、シロエ自身が自分で決める。
(…運が良ければ、モビー・ディックに拾われていて…)
今頃はミュウの陣営にいて、好敵手になっていただろう。
ジルベスター・セブンの件にしたって、「シロエ」がミュウの陣営にいれば、全て変わった。
彼は「キース」が何者なのかを知っている上、キースと肩を並べたほどの者でもある。
(私を殺して、メギドを持ち出せないようにしていたか、あるいは私の中の後悔を…)
引き摺り出して、上手くつついて、ミュウの側へと引き入れたろうか。
ミュウの肩を持つスパイに仕立てて、人類の世界に戻しておいたら、どうなったろう。
あの時点での「キース」は、自分の「生まれ」を知らないのだから、「シロエ」に分がある。
「キース」に真実を突き付けたならば、後悔は一気に膨れ上がって、疑問も深まることだろう。
機械が何を目論んでいるか、それをシロエに「教えられる」ことになるのだから。
(私は機械に無から作られて、機械に忠実に動くようにと計算されて…)
この世に送り出されたという事実を知ったら、受ける衝撃は計り知れない。
事実、シロエが遺した映像を目にしないままで、Eー1077の処分に出掛けていたならば…。
(マザー・イライザが何をやったか、予備知識無しで知ることになって…)
流石の「キース」も、その場で床に崩れ落ちていたかもしれない。
ほんの一瞬のことであっても、真実を受け止めきれなくて。
(直ぐに立ち上がって、ステーションごと処分したとしても…)
見て来た「現実」は心から消えず、どれほど苦しむことになったか、容易に分かる。
「私は何をやって来たのだ」と、「本物のヒトでもなかったくせに」と、後悔ばかりで。
(…一事が万事で、この先も、ずっと…)
後悔の数は増えて、増え続けて、減る日など、きっと訪れはしない。
ミュウとの戦いの行く末にしても、あるのは不安だけでしかない。
「私は、本当に正しいのか」と自問してみては、ミュウに分がある実情を恐れ続けている。
歴史がミュウに味方するなら、「キース」は破滅することだろう。
「人類のために」機械が作った生命、そのような「モノ」に未来など無い。
(…私は後悔し続けた末に、この息が絶える瞬間までも…)
後悔ばかりになるのだろうな、と虚しい気持ちしかしないけれども、仕方ない。
きっと「キース」は、最期の瞬間、自分の人生に「後悔は無い」とは言えないだろう。
心の底から満足し切って死ねるようには、生きられる筈も無さそうだから…。
後悔の果てに・了
※アニテラの最終話で「全力で生きた者にも、後悔は無い」と言ったキースですけど。
最初から全力で生きていたかな、と考えている内に出来たお話。後悔だらけの人生では…?
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