逆らい続けたら
(また、何か…)
大切なものを失くしたんだ、とシロエは一人、唇を噛んだ。
Eー1077は既に夜更けで、候補生たちは皆、自分の個室に戻っている。
シロエもその中に含まれるけれど、こんな時間に起きている者は少ないだろう。
宇宙ステーションとはいえ、昼間と夜の区別はある。
夜は居住区の照明も暗くなる上、食堂なども閉まってしまう。
活動には不向きな環境だけに、大抵の者は眠りに就いて、明日に向けての備えをする。
講義もあれば、宇宙空間での実習がある者もいるから。
(…ぼくも、しっかり眠らないと…)
明日の授業に響きそうだ、と分かってはいても、とても眠れる気がしない。
その結果として成績が落ちれば、またしても…。
(今日と同じで、マザー・イライザにコールされて…)
忌まわしい部屋で深く眠らされ、心を探られ、「不要な因子」を抹消される。
目が覚めた時は、心がスッキリしているけれども、それは「何か」を失ったから。
イライザが「不要」と判断したモノ、それは本当は「大切な」もの。
(マザー・イライザと、この世界には要らないモノでも…)
ぼくにとっては大事な宝物なんだ、と知っているだけに、コールは避けたい。
コールされる度、少しずつ「失くしてゆく」宝物は、どれも幼い頃の記憶で、もう戻らない。
どんなに努力を重ねてみても、二度と思い出すことは出来ない。
懐かしい母の姿だったら、マザー・イライザが「真似ている」のに。
恐らく声まで同じだろうに、確証が持てなくなってしまった。
初めてコールを受けた時には、「ママなの?」と驚き、感動さえも覚えたのに。
「この部屋に来たら、ママに似た人に会えるんだ」と騙され、手懐けられそうになった。
もっとも、じきに、そのからくりに気付かされたから、懐きはしないで…。
(イライザに逆らう道を選んで、今も走っているけれど…)
果たして「それ」が正しいかどうか、疑問に思わないでもない。
マザー・イライザの意向に背けば、コールされ、「何か」を消されて失う。
失った記憶は戻ることなく、シロエの中から欠け落ちてゆく。
(…このまま、どんどんコールされ続けて暮らしていたら…)
いずれは何も無くなるのでは、と不意に不安がこみ上げて来る。
「逆らい続けるシロエ」を意のままにするべく、マザー・イライザが本気を出したなら…。
(ぼくの記憶をすっかり消して、偽の記憶と入れ替えて…)
「従順なシロエ」を作り出すことが、もしかしたら出来るかもしれない。
なんと言っても、マザー・イライザは「、教育ステーション」を支配する機械なのだから。
シロエが育った育英都市には、テラズ・ナンバー3がいた。
成人検査を担当していて、大人の社会に旅立つ子供の記憶を消すのが仕事だけれど…。
(所詮は、末端のコンピューターで…)
教育ステーションにいるコンピューターより、その地位は低い。
それでも「あれだけの」力があって、子供の記憶を「塗り替えてしまう」。
このステーションに集められている候補生たち、彼らの中の一人も疑問を持ってはいない。
成人検査の前と後とで、「自分の記憶が異なる」ことに気付きもしないと言えるだろう。
(気が付いたのは、ぼくくらいで…)
つまりは社会の仕組みを見抜いて、「システムを疑い、憎み始める」者だっていない。
だから「シロエ」はターゲットにされ、頻繁にコールを受けることになる。
「不要な因子」を探し出しては、消し去り、疑問を抱かないようにしてゆくために。
(…テラズ・ナンバー3でさえも、あんな力があるんだから…)
それよりも上位の「マザー・イライザ」には、どれほどの力があるものなのか。
考えたことも無かったけれども、「シロエの記憶を、すっかり丸ごと」入れ替えるのも…。
(マザー・イライザには、うんと簡単なことなのかも…?)
ほんの一瞬、それだけあれば充分な時間かもしれない。
「シロエ」をコールし、深く眠らせ、記憶を消すための出力を少し上げたなら…。
(ぼくの中から、何もかもが消えて…)
あの憎らしい「キース」さながら、故郷も養父母の記憶も失くした「シロエ」が出来る。
何一つ覚えていることは無くて、社会で役立つ知識だけを持った「優秀な」者が。
(でも、それだけでは不自然だから…)
シロエを知っている周りの者が変だと思わないよう、偽の記憶を植えるのだろう。
「マザー・イライザにとっては」都合が良くて、この社会にも馴染める「偽りの過去」を。
故郷の記憶も、両親のことも、何もかもを全て「上書き」して。
(…ぼくが持って来た、ピーターパンの本だって…)
どういう具合にされてしまうか、まるで見当もつかないけれども、恐ろしい。
「偶然、紛れ込んでしまった荷物」と認識するのか、あるいは記憶の処理と同時に…。
(誰かを寄越して、ぼくの部屋から持ち出させて…)
そんな本など「何処にも無かった」事実が作られ、偽の記憶を持った自分も気にしない。
部屋から本が消えたことなど、記憶を書き換えられたシロエは「知らない」から。
ピーターパンの本を「持って来た」のを忘れてしまって、最初から「持っていない」から。
(…マザー・イライザが本気になったら、そのくらいは…)
本当に「簡単」かもしれない。
今は「本気になっていない」だけで、いつか、本気を出して来たなら。
(…そんなことって…)
あるんだろうか、と思うけれども、けして無いとは言い切れない。
ついでに言うなら、「シロエ」が優秀であればあるほど、可能性が上がりそうではある。
秀でた人材を持つのだったら、システムに反抗的な者より、従順な者がいいに決まっている。
機械はそれを好みそうだし、そうすることが可能だとしたら、やりかねない。
あるいは、マザー・イライザが「それ」を思い付きはしなくても…。
(…メンバーズ・エリートを選び出すのは、マザー・イライザかもしれないけれど…)
Eー1077を卒業した後、そのメンバーズを使役する者は「他にいる」。
地球に在ると聞く巨大コンピューター、グランド・マザーがシステムの要で、主でもある。
「メンバーズを使う」立場だったら、将来的に選ばれそうな者にも興味を持っているだろう。
彼ら、彼女らを「どういう具合に」教育すべきか、具体的に指示をするかもしれない。
「もっと、こういう教育を」だとか、「この人間には、この分野の講義を多くしろ」とか。
(…ぼくのデータも、グランド・マザーが見ているとしたら…)
このシステムに「反抗的である」欠点について、どういった風に捉えているか。
それも個性の内だと見るか、矯正すべき欠陥と見なしているか。
(…卒業までには、この欠陥をきちんと処理しておけ、とグランド・マザーが…)
マザー・イライザに言って来たなら、文字通りに「終わり」かもしれない。
いつものようにコールを受けて、あの忌々しい部屋に入った「シロエ」が出て来た時には…。
(まるで全く違う中身で、システムに従順になっていて…)
ピーターパンの本のことも忘れて、ネバーランドに焦がれたことさえ「覚えてはいない」。
記憶を書き換えられた「シロエ」は、「ピーターパンの本」を、こう思うだろう。
「子供の頃に、確かパパに貰って、持っていたよね」と。
「うんと大事にしていた本で、何度も何度も読んでいたっけ」と懐かしく思い出しもして。
「あの本に出てたネバーランドに、行こうと思って頑張ったんだよ」と笑んだりもする。
「子供らしい夢っていうヤツだよね」と、「空を飛べると思い込んでさ」と可笑しそうに。
(…そう、本当なら、今頃のぼくは…)
そうなっている筈だったんだ、と背筋がゾクリと冷たくなった。
テラズ・ナンバー3が記憶を処理した時には、「そうしたつもり」だったろう。
ところが「シロエ」は、そうはならずに、ピーターパンの本を後生大事に抱え込んだまま…。
(ステーションまで来てしまっていて、今もシステムに反抗的で…)
事あるごとにコールされては、少しずつ記憶を「消されている」。
システムに逆らう理由の因子を、マザー・イライザに取り除かれて。
「これは不要だ」と機械が過去の記憶を選り分け、「シロエ」の中から抹消して。
そう、「今はまだ」、度々、コールされるだけ。
反抗的な行動をすれば、あの部屋に呼ばれて「眠らされて」、何か「消される」だけ。
自分でも直ぐには思い出せない、とても小さな子供時代の記憶を、巧みに抜き取られて。
いったいどれを消去したのか、シロエ自身にも「気付かせない」ような形で。
(何日も経ってから、「消された記憶は、コレだったんだ」って…)
気付いて悔しく思う程度で、今はまだ済んでいるのだけれども、これから先は分からない。
このまま逆らい続けていたなら、ある日突然、地獄の底へ落ちるのだろうか。
マザー・イライザからのコールを受けて、「またか」と出掛けて、それでおしまい。
(いつもの部屋から出て来た時には、今、此処にいる「ぼく」はいなくて…)
システムに何の疑問も抱かず、従順に生きる「シロエ」が代わりに、この人生を歩んでゆく。
大切に持って来たピーターパンの本が、「思い出の一つ」に過ぎない「シロエ」になって。
反抗的だったことなど忘れて、故郷のことも、両親のことも、思い出になって。
(……もしかしたら、いつか、そうなるのかも……)
まさか、と身体が震え出すけれど、その日が「来ない」とは言えない。
逆らい続けて生きていたなら、「違うシロエ」に作り替えられてしまう日が訪れて。
(…でも、従順になったふりをしたって…)
機械は全てお見通しだから、きっと無駄だ、という気がする。
ならば「このまま」生きてやろうか、そうやって生きて、行きつく先は地獄でも。
自分でも「全く気付かないまま」、違う自分にされてしまう日が来るのだとしても…。
逆らい続けたら・了
※シロエの記憶を「すっかり書き換えてしまう」ことは、機械には可能なことなのかも。
アニテラのSD体制は緩めですけど、もしも機械が本気を出したら、有り得る恐ろしい未来。
大切なものを失くしたんだ、とシロエは一人、唇を噛んだ。
Eー1077は既に夜更けで、候補生たちは皆、自分の個室に戻っている。
シロエもその中に含まれるけれど、こんな時間に起きている者は少ないだろう。
宇宙ステーションとはいえ、昼間と夜の区別はある。
夜は居住区の照明も暗くなる上、食堂なども閉まってしまう。
活動には不向きな環境だけに、大抵の者は眠りに就いて、明日に向けての備えをする。
講義もあれば、宇宙空間での実習がある者もいるから。
(…ぼくも、しっかり眠らないと…)
明日の授業に響きそうだ、と分かってはいても、とても眠れる気がしない。
その結果として成績が落ちれば、またしても…。
(今日と同じで、マザー・イライザにコールされて…)
忌まわしい部屋で深く眠らされ、心を探られ、「不要な因子」を抹消される。
目が覚めた時は、心がスッキリしているけれども、それは「何か」を失ったから。
イライザが「不要」と判断したモノ、それは本当は「大切な」もの。
(マザー・イライザと、この世界には要らないモノでも…)
ぼくにとっては大事な宝物なんだ、と知っているだけに、コールは避けたい。
コールされる度、少しずつ「失くしてゆく」宝物は、どれも幼い頃の記憶で、もう戻らない。
どんなに努力を重ねてみても、二度と思い出すことは出来ない。
懐かしい母の姿だったら、マザー・イライザが「真似ている」のに。
恐らく声まで同じだろうに、確証が持てなくなってしまった。
初めてコールを受けた時には、「ママなの?」と驚き、感動さえも覚えたのに。
「この部屋に来たら、ママに似た人に会えるんだ」と騙され、手懐けられそうになった。
もっとも、じきに、そのからくりに気付かされたから、懐きはしないで…。
(イライザに逆らう道を選んで、今も走っているけれど…)
果たして「それ」が正しいかどうか、疑問に思わないでもない。
マザー・イライザの意向に背けば、コールされ、「何か」を消されて失う。
失った記憶は戻ることなく、シロエの中から欠け落ちてゆく。
(…このまま、どんどんコールされ続けて暮らしていたら…)
いずれは何も無くなるのでは、と不意に不安がこみ上げて来る。
「逆らい続けるシロエ」を意のままにするべく、マザー・イライザが本気を出したなら…。
(ぼくの記憶をすっかり消して、偽の記憶と入れ替えて…)
「従順なシロエ」を作り出すことが、もしかしたら出来るかもしれない。
なんと言っても、マザー・イライザは「、教育ステーション」を支配する機械なのだから。
シロエが育った育英都市には、テラズ・ナンバー3がいた。
成人検査を担当していて、大人の社会に旅立つ子供の記憶を消すのが仕事だけれど…。
(所詮は、末端のコンピューターで…)
教育ステーションにいるコンピューターより、その地位は低い。
それでも「あれだけの」力があって、子供の記憶を「塗り替えてしまう」。
このステーションに集められている候補生たち、彼らの中の一人も疑問を持ってはいない。
成人検査の前と後とで、「自分の記憶が異なる」ことに気付きもしないと言えるだろう。
(気が付いたのは、ぼくくらいで…)
つまりは社会の仕組みを見抜いて、「システムを疑い、憎み始める」者だっていない。
だから「シロエ」はターゲットにされ、頻繁にコールを受けることになる。
「不要な因子」を探し出しては、消し去り、疑問を抱かないようにしてゆくために。
(…テラズ・ナンバー3でさえも、あんな力があるんだから…)
それよりも上位の「マザー・イライザ」には、どれほどの力があるものなのか。
考えたことも無かったけれども、「シロエの記憶を、すっかり丸ごと」入れ替えるのも…。
(マザー・イライザには、うんと簡単なことなのかも…?)
ほんの一瞬、それだけあれば充分な時間かもしれない。
「シロエ」をコールし、深く眠らせ、記憶を消すための出力を少し上げたなら…。
(ぼくの中から、何もかもが消えて…)
あの憎らしい「キース」さながら、故郷も養父母の記憶も失くした「シロエ」が出来る。
何一つ覚えていることは無くて、社会で役立つ知識だけを持った「優秀な」者が。
(でも、それだけでは不自然だから…)
シロエを知っている周りの者が変だと思わないよう、偽の記憶を植えるのだろう。
「マザー・イライザにとっては」都合が良くて、この社会にも馴染める「偽りの過去」を。
故郷の記憶も、両親のことも、何もかもを全て「上書き」して。
(…ぼくが持って来た、ピーターパンの本だって…)
どういう具合にされてしまうか、まるで見当もつかないけれども、恐ろしい。
「偶然、紛れ込んでしまった荷物」と認識するのか、あるいは記憶の処理と同時に…。
(誰かを寄越して、ぼくの部屋から持ち出させて…)
そんな本など「何処にも無かった」事実が作られ、偽の記憶を持った自分も気にしない。
部屋から本が消えたことなど、記憶を書き換えられたシロエは「知らない」から。
ピーターパンの本を「持って来た」のを忘れてしまって、最初から「持っていない」から。
(…マザー・イライザが本気になったら、そのくらいは…)
本当に「簡単」かもしれない。
今は「本気になっていない」だけで、いつか、本気を出して来たなら。
(…そんなことって…)
あるんだろうか、と思うけれども、けして無いとは言い切れない。
ついでに言うなら、「シロエ」が優秀であればあるほど、可能性が上がりそうではある。
秀でた人材を持つのだったら、システムに反抗的な者より、従順な者がいいに決まっている。
機械はそれを好みそうだし、そうすることが可能だとしたら、やりかねない。
あるいは、マザー・イライザが「それ」を思い付きはしなくても…。
(…メンバーズ・エリートを選び出すのは、マザー・イライザかもしれないけれど…)
Eー1077を卒業した後、そのメンバーズを使役する者は「他にいる」。
地球に在ると聞く巨大コンピューター、グランド・マザーがシステムの要で、主でもある。
「メンバーズを使う」立場だったら、将来的に選ばれそうな者にも興味を持っているだろう。
彼ら、彼女らを「どういう具合に」教育すべきか、具体的に指示をするかもしれない。
「もっと、こういう教育を」だとか、「この人間には、この分野の講義を多くしろ」とか。
(…ぼくのデータも、グランド・マザーが見ているとしたら…)
このシステムに「反抗的である」欠点について、どういった風に捉えているか。
それも個性の内だと見るか、矯正すべき欠陥と見なしているか。
(…卒業までには、この欠陥をきちんと処理しておけ、とグランド・マザーが…)
マザー・イライザに言って来たなら、文字通りに「終わり」かもしれない。
いつものようにコールを受けて、あの忌々しい部屋に入った「シロエ」が出て来た時には…。
(まるで全く違う中身で、システムに従順になっていて…)
ピーターパンの本のことも忘れて、ネバーランドに焦がれたことさえ「覚えてはいない」。
記憶を書き換えられた「シロエ」は、「ピーターパンの本」を、こう思うだろう。
「子供の頃に、確かパパに貰って、持っていたよね」と。
「うんと大事にしていた本で、何度も何度も読んでいたっけ」と懐かしく思い出しもして。
「あの本に出てたネバーランドに、行こうと思って頑張ったんだよ」と笑んだりもする。
「子供らしい夢っていうヤツだよね」と、「空を飛べると思い込んでさ」と可笑しそうに。
(…そう、本当なら、今頃のぼくは…)
そうなっている筈だったんだ、と背筋がゾクリと冷たくなった。
テラズ・ナンバー3が記憶を処理した時には、「そうしたつもり」だったろう。
ところが「シロエ」は、そうはならずに、ピーターパンの本を後生大事に抱え込んだまま…。
(ステーションまで来てしまっていて、今もシステムに反抗的で…)
事あるごとにコールされては、少しずつ記憶を「消されている」。
システムに逆らう理由の因子を、マザー・イライザに取り除かれて。
「これは不要だ」と機械が過去の記憶を選り分け、「シロエ」の中から抹消して。
そう、「今はまだ」、度々、コールされるだけ。
反抗的な行動をすれば、あの部屋に呼ばれて「眠らされて」、何か「消される」だけ。
自分でも直ぐには思い出せない、とても小さな子供時代の記憶を、巧みに抜き取られて。
いったいどれを消去したのか、シロエ自身にも「気付かせない」ような形で。
(何日も経ってから、「消された記憶は、コレだったんだ」って…)
気付いて悔しく思う程度で、今はまだ済んでいるのだけれども、これから先は分からない。
このまま逆らい続けていたなら、ある日突然、地獄の底へ落ちるのだろうか。
マザー・イライザからのコールを受けて、「またか」と出掛けて、それでおしまい。
(いつもの部屋から出て来た時には、今、此処にいる「ぼく」はいなくて…)
システムに何の疑問も抱かず、従順に生きる「シロエ」が代わりに、この人生を歩んでゆく。
大切に持って来たピーターパンの本が、「思い出の一つ」に過ぎない「シロエ」になって。
反抗的だったことなど忘れて、故郷のことも、両親のことも、思い出になって。
(……もしかしたら、いつか、そうなるのかも……)
まさか、と身体が震え出すけれど、その日が「来ない」とは言えない。
逆らい続けて生きていたなら、「違うシロエ」に作り替えられてしまう日が訪れて。
(…でも、従順になったふりをしたって…)
機械は全てお見通しだから、きっと無駄だ、という気がする。
ならば「このまま」生きてやろうか、そうやって生きて、行きつく先は地獄でも。
自分でも「全く気付かないまま」、違う自分にされてしまう日が来るのだとしても…。
逆らい続けたら・了
※シロエの記憶を「すっかり書き換えてしまう」ことは、機械には可能なことなのかも。
アニテラのSD体制は緩めですけど、もしも機械が本気を出したら、有り得る恐ろしい未来。
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