脱落したなら
(……成人検査ね……)
優秀な成績で通過したから、どうだって言うのさ、とシロエは心の中で吐き捨てる。
Eー1077で与えられた個室で、ベッドの上で膝を抱えて。
とうに夜は更け、「優秀な」同期生たちは、ぐっすり眠っていることだろう。
明日の講義と訓練に備えて、マザー・イライザや教授の指示通りに。
(…エリート候補生は、規則正しい生活をして…)
心も身体も健康に保って、日々の講義に、訓練についてゆかなくてはならない。
精神状態が不安定だと、宇宙に出ての訓練などは許可が下りない。
ほんの僅かな心の乱れが、取り返しのつかないミスを招いて、命を奪いかねないから。
身体にしても、講義の内容をきちんと覚えて、自分のものにしてゆくためには…。
(体調不良で熱があったり、眩暈がしたりしていたら…)
教授の言葉が頭に入らず、取り残されてしまうことになる。
それでは話にならないのだから、教授たちも、マザー・イライザも…。
(夜はしっかり休んで、頭も身体も疲れを癒して…)
翌日に備えておくように、と口を酸っぱくして説教をする。
「エリートたるもの、そうでなければ」と、将来に向けての心構えを説いて。
(……でも、ぼくは……)
その意味では、とうに落ちこぼれだよ、と唇に浮かべた自嘲の笑み。
今日もこうして夜が更けるまで、ベッドの上に座ったまま。
その上、心で繰り返す呪詛。
「成人検査なんて」と、「エリート候補生なんて」と。
今の自分が、どれほど恵まれた立場にいるのか、それは充分、承知している。
ステーション・Eー1077と言えば、エリートを育てる最高学府。
行きたいと願う者は多くて、かつては自分も、その一人だった。
「エリートになって、地球へ行くんだ」と。
そうして夢見て、努力を重ねて、優秀な子供になろうとした。
その夢はこうして叶ったけれども、あまりにも大きすぎた代償。
Eー1077に来られた代わりに、故郷を、過去の記憶を失くした。
あの忌々しい成人検査で、憎い機械に奪い去られて。
残されたものは、たった一冊、ピーターパンの本だけになって。
どうして自分は、こういうことになったのか。
Eー1077などに連れて来られて、引き換えに過去を失ったのか。
(…何もかも全部、成人検査のせいなんだ…)
あれが悪い、と呪詛の言葉を繰り返す。
「成人検査なんか無ければ」と、「エリート候補生なんて」と。
いくらエリート候補生になれても、両親の許へは帰れない。
故郷からも遠く引き離されて、どんどん薄れてゆく記憶。
マザー・イライザにコールされる度、欠け落ちて、何処かへ行ってしまって。
この呪わしい日々へ、牢獄へと、送り込んだのが成人検査。
(…成人検査を受ける前には、未来は、うんと輝いていて…)
無限の可能性があった筈だったのに、それもすっかり色褪せた今。
地球へ行く夢は変わらなくても、その意味は変わり果ててしまった。
「ネバーランドよりも素敵な場所」から、「グランド・マザーのいる場所」になって。
いつの日かトップの座に昇り詰めて、グランド・マザーを停止させるために、地球に行く。
「奪った、ぼくの記憶を返せ」と、機械に命令するために。
過去の記憶を取り戻したなら、「止まれ」と機械に命じて止める。
機械が人間を支配する世界、歪んだ世界を終わらせるために。
成人検査などは無い世界を作って、「子供が子供でいられる世界」を取り戻さねば。
(…そのために、地球へ行かなくちゃ…)
それに、トップにならなくっちゃ、と思いはしても、逆らうことしか思い付かない。
「夜はしっかり眠るように」と言われていたって、夜更かしをして。
機械へ、成人検査への呪詛を、毎夜のように繰り返して。
(……成人検査さえ、無かったら……)
こんなことにはなっていないし、今も幸せだっただろう。
両親の許を離れていたって、それは単なる、次へのステップ。
エリート候補生に選ばれ、地球に行くための教育を受けて成長する。
そのためだったら、同じように故郷を離れていても…。
(エリートになったら、パパとママに…)
成長した自分を見せに帰れるから、とても励みになったろう。
四年間、家に帰れなくても、両親と連絡を取る事さえも出来なくても。
けれど、そうではなかった現実。
成人検査は過去を奪って、戻る事さえも許しはしない。
両親の家が何処にあったか、それも今では覚えていなくて、両親の顔も…。
(…まるで焼け焦げた写真みたいに…)
ぼやけて滲んで、どんな顔だか、どう頑張っても思い出せない。
これでは、此処を脱走したって…。
(……どうやったら、家に帰れるのかさえ、分からないよ……)
宇宙船を奪って逃げても、アルテメシアまで飛んでゆくのが精一杯。
エネルゲイアの宙港に着陸したって、其処から先が分からない。
どちらへ進めば、両親の家が在るのかが。
たとえ追手が来なかったとしても、「シロエ」は家に帰れはしない。
(…成人検査が悪いんだ…)
あれが何もかも奪ったんだ、と悔しくて憎くて、繰り返す呪詛。
「成人検査なんて」と、心の中で。
時には激しい怒りをぶつけて、声にして、何処かを殴り付けて。
(…こんな結末になるのなら…)
あんなの、通過しなくても良かったんだ、と心で吐き捨て、ハタと気付いた。
「通過しなければ、どうなったろう?」と。
エリートコースにも、他のコースにも行かなかったら、どうなるのだろう、と。
(…誰でも、十四歳になったら…)
誕生日が来たら、「目覚めの日」。
其処で成人検査を受けて、将来の道を機械が決める。
優秀な子供は、エリート候補生が集うEー1077へと送り出す。
そうでない子は、機械が適性を見定めて…。
(一般市民になるコースだとか、技師だとか…)
様々な進路が用意されていて、其処へ行くのだと聞かされた。
エネルゲイアの学校に通っていた頃、教師から何度も説明された。
「ですから、皆さんは、よく勉強しないといけませんよ」と、しつこいくらいに。
輝かしい未来を手に入れたければ、優秀な子にならないと、と。
機械に選んで貰えるように。
優秀な成績で成人検査を通過し、エリートコースに入れるように。
(…そうやって、振り分けられるけど…)
通過出来ない子もいる筈なんだ、と今の自分は知っている。
Eー1077で学ぶ過程で、その断片を聞かされた。
「成人検査に脱落する者がいる」ということ。
とはいえ、分かっているのは其処まで。
脱落した場合、再検査があり、それが何度か繰り返される。
それでも通過出来ない者たちがいると、その割合は僅かだけども、と教わっただけ。
(脱落した子が、どうなるのかは…)
まだ学ぶべき時ではないから、教えられないままで終わった。
「いずれ、エリートとして学ぶ時が来る」と、将来に期待を抱かせた教授。
「頑張って、其処まで到達しなさい」と、発破をかけて。
「もしも学べずに終わったならば、エリートにはなれないのだから」と。
(…エリートの条件の方はともかく…)
脱落した子はどうなるのだろう、と湧き上がる疑問。
機械が用意していたコースに進むことなく、脱落していった子供たち。
(……脱落するなら、成人検査を通過しないんだから……)
彼らの記憶は「そのまま」だろうか、消えずに残っているのだろうか。
(…再検査が何度かあるってことは…)
その間は、養父母の許にいるわけなのだし、記憶が消えていたなら困る。
記憶が無ければ、自分の家にも帰れなければ、両親も分からないのだから。
(…つまりは、通過しなければ…)
記憶は消えずに残ったままで、落ちこぼれる可能性がある。
彼らの記憶を消したところで、進むべき道など無いのだから。
そんな子供に、余計な手間はかけないだろう。
過去の記憶を消してしまうのは、従順な人間を作り上げるため。
素直に機械に従う人間、システムに都合のいい人間を作り出すのに必要な作業。
それなら、社会に出ては行けない「脱落者」には…。
(記憶を処理する必要なんかは…)
無いってことになるんだろうか、と「その可能性」に思い至った。
成人検査に脱落したなら、記憶は消えないかもしれない。
過去の記憶を失わないまま、「彼ら」は脱落してゆくのかも、と。
(…もしも、そうなら…)
いっそ、それでも良かったかも、という気がする。
「本当の自分」を、失わないでいられるのなら。
生まれ故郷も両親のことも、覚えたままでいられるのなら。
(……だけど、脱落した子供たちが、どうなるか……)
まだ「学ぶべき時ではない」なら、恐らく、それは国家機密に近いものなのだろう。
単に「脱落した」だけではなく、その先に「何か」待っている。
収容所へと送られるだとか、あるいは強制労働だとか。
(…普通の人間には、とても危険で任せられないような作業を…)
彼らが請け負い、劣悪な条件の辺境星区で働くというのは、如何にもありそう。
エリート以外の誰にも知られず、事故死したって、気に留められもしない人生。
「代わり」は直ぐにやって来るから、「脱落者」は次々、補充されるから。
(…そうだとしても…)
過酷な人生が待っていたって、そちらの方が良かったろうか。
懐かしい故郷を、両親の顔を思い出しながら、耐える労働。
「二度と帰れない」のは今と同じでも、「忘れないままでいられる」ならば。
いつか命が尽きる時まで、懐かしむことが出来るのならば。
(…本当に、そうなる運命だったとしても…)
そんな人生でも良かったかもね、と膝を抱えて、ただ丸くなる。
大好きだった両親の顔を、故郷を覚えていられるのならば、それでいい、と。
記憶を奪われたエリートよりかは、「覚えたまま」生きる底辺で、と。
何故なら、今も「帰りたい」から。
機械が奪ってしまった過去へと、帰りたくてたまらないのだから…。
脱落したなら・了
※成人検査に脱落した子供は、処分されるという現実。けれど、一般市民は知らない模様。
だったらシロエも知らないかもね、と考えた所から出来たお話。脱落を希望しそうなシロエ。
優秀な成績で通過したから、どうだって言うのさ、とシロエは心の中で吐き捨てる。
Eー1077で与えられた個室で、ベッドの上で膝を抱えて。
とうに夜は更け、「優秀な」同期生たちは、ぐっすり眠っていることだろう。
明日の講義と訓練に備えて、マザー・イライザや教授の指示通りに。
(…エリート候補生は、規則正しい生活をして…)
心も身体も健康に保って、日々の講義に、訓練についてゆかなくてはならない。
精神状態が不安定だと、宇宙に出ての訓練などは許可が下りない。
ほんの僅かな心の乱れが、取り返しのつかないミスを招いて、命を奪いかねないから。
身体にしても、講義の内容をきちんと覚えて、自分のものにしてゆくためには…。
(体調不良で熱があったり、眩暈がしたりしていたら…)
教授の言葉が頭に入らず、取り残されてしまうことになる。
それでは話にならないのだから、教授たちも、マザー・イライザも…。
(夜はしっかり休んで、頭も身体も疲れを癒して…)
翌日に備えておくように、と口を酸っぱくして説教をする。
「エリートたるもの、そうでなければ」と、将来に向けての心構えを説いて。
(……でも、ぼくは……)
その意味では、とうに落ちこぼれだよ、と唇に浮かべた自嘲の笑み。
今日もこうして夜が更けるまで、ベッドの上に座ったまま。
その上、心で繰り返す呪詛。
「成人検査なんて」と、「エリート候補生なんて」と。
今の自分が、どれほど恵まれた立場にいるのか、それは充分、承知している。
ステーション・Eー1077と言えば、エリートを育てる最高学府。
行きたいと願う者は多くて、かつては自分も、その一人だった。
「エリートになって、地球へ行くんだ」と。
そうして夢見て、努力を重ねて、優秀な子供になろうとした。
その夢はこうして叶ったけれども、あまりにも大きすぎた代償。
Eー1077に来られた代わりに、故郷を、過去の記憶を失くした。
あの忌々しい成人検査で、憎い機械に奪い去られて。
残されたものは、たった一冊、ピーターパンの本だけになって。
どうして自分は、こういうことになったのか。
Eー1077などに連れて来られて、引き換えに過去を失ったのか。
(…何もかも全部、成人検査のせいなんだ…)
あれが悪い、と呪詛の言葉を繰り返す。
「成人検査なんか無ければ」と、「エリート候補生なんて」と。
いくらエリート候補生になれても、両親の許へは帰れない。
故郷からも遠く引き離されて、どんどん薄れてゆく記憶。
マザー・イライザにコールされる度、欠け落ちて、何処かへ行ってしまって。
この呪わしい日々へ、牢獄へと、送り込んだのが成人検査。
(…成人検査を受ける前には、未来は、うんと輝いていて…)
無限の可能性があった筈だったのに、それもすっかり色褪せた今。
地球へ行く夢は変わらなくても、その意味は変わり果ててしまった。
「ネバーランドよりも素敵な場所」から、「グランド・マザーのいる場所」になって。
いつの日かトップの座に昇り詰めて、グランド・マザーを停止させるために、地球に行く。
「奪った、ぼくの記憶を返せ」と、機械に命令するために。
過去の記憶を取り戻したなら、「止まれ」と機械に命じて止める。
機械が人間を支配する世界、歪んだ世界を終わらせるために。
成人検査などは無い世界を作って、「子供が子供でいられる世界」を取り戻さねば。
(…そのために、地球へ行かなくちゃ…)
それに、トップにならなくっちゃ、と思いはしても、逆らうことしか思い付かない。
「夜はしっかり眠るように」と言われていたって、夜更かしをして。
機械へ、成人検査への呪詛を、毎夜のように繰り返して。
(……成人検査さえ、無かったら……)
こんなことにはなっていないし、今も幸せだっただろう。
両親の許を離れていたって、それは単なる、次へのステップ。
エリート候補生に選ばれ、地球に行くための教育を受けて成長する。
そのためだったら、同じように故郷を離れていても…。
(エリートになったら、パパとママに…)
成長した自分を見せに帰れるから、とても励みになったろう。
四年間、家に帰れなくても、両親と連絡を取る事さえも出来なくても。
けれど、そうではなかった現実。
成人検査は過去を奪って、戻る事さえも許しはしない。
両親の家が何処にあったか、それも今では覚えていなくて、両親の顔も…。
(…まるで焼け焦げた写真みたいに…)
ぼやけて滲んで、どんな顔だか、どう頑張っても思い出せない。
これでは、此処を脱走したって…。
(……どうやったら、家に帰れるのかさえ、分からないよ……)
宇宙船を奪って逃げても、アルテメシアまで飛んでゆくのが精一杯。
エネルゲイアの宙港に着陸したって、其処から先が分からない。
どちらへ進めば、両親の家が在るのかが。
たとえ追手が来なかったとしても、「シロエ」は家に帰れはしない。
(…成人検査が悪いんだ…)
あれが何もかも奪ったんだ、と悔しくて憎くて、繰り返す呪詛。
「成人検査なんて」と、心の中で。
時には激しい怒りをぶつけて、声にして、何処かを殴り付けて。
(…こんな結末になるのなら…)
あんなの、通過しなくても良かったんだ、と心で吐き捨て、ハタと気付いた。
「通過しなければ、どうなったろう?」と。
エリートコースにも、他のコースにも行かなかったら、どうなるのだろう、と。
(…誰でも、十四歳になったら…)
誕生日が来たら、「目覚めの日」。
其処で成人検査を受けて、将来の道を機械が決める。
優秀な子供は、エリート候補生が集うEー1077へと送り出す。
そうでない子は、機械が適性を見定めて…。
(一般市民になるコースだとか、技師だとか…)
様々な進路が用意されていて、其処へ行くのだと聞かされた。
エネルゲイアの学校に通っていた頃、教師から何度も説明された。
「ですから、皆さんは、よく勉強しないといけませんよ」と、しつこいくらいに。
輝かしい未来を手に入れたければ、優秀な子にならないと、と。
機械に選んで貰えるように。
優秀な成績で成人検査を通過し、エリートコースに入れるように。
(…そうやって、振り分けられるけど…)
通過出来ない子もいる筈なんだ、と今の自分は知っている。
Eー1077で学ぶ過程で、その断片を聞かされた。
「成人検査に脱落する者がいる」ということ。
とはいえ、分かっているのは其処まで。
脱落した場合、再検査があり、それが何度か繰り返される。
それでも通過出来ない者たちがいると、その割合は僅かだけども、と教わっただけ。
(脱落した子が、どうなるのかは…)
まだ学ぶべき時ではないから、教えられないままで終わった。
「いずれ、エリートとして学ぶ時が来る」と、将来に期待を抱かせた教授。
「頑張って、其処まで到達しなさい」と、発破をかけて。
「もしも学べずに終わったならば、エリートにはなれないのだから」と。
(…エリートの条件の方はともかく…)
脱落した子はどうなるのだろう、と湧き上がる疑問。
機械が用意していたコースに進むことなく、脱落していった子供たち。
(……脱落するなら、成人検査を通過しないんだから……)
彼らの記憶は「そのまま」だろうか、消えずに残っているのだろうか。
(…再検査が何度かあるってことは…)
その間は、養父母の許にいるわけなのだし、記憶が消えていたなら困る。
記憶が無ければ、自分の家にも帰れなければ、両親も分からないのだから。
(…つまりは、通過しなければ…)
記憶は消えずに残ったままで、落ちこぼれる可能性がある。
彼らの記憶を消したところで、進むべき道など無いのだから。
そんな子供に、余計な手間はかけないだろう。
過去の記憶を消してしまうのは、従順な人間を作り上げるため。
素直に機械に従う人間、システムに都合のいい人間を作り出すのに必要な作業。
それなら、社会に出ては行けない「脱落者」には…。
(記憶を処理する必要なんかは…)
無いってことになるんだろうか、と「その可能性」に思い至った。
成人検査に脱落したなら、記憶は消えないかもしれない。
過去の記憶を失わないまま、「彼ら」は脱落してゆくのかも、と。
(…もしも、そうなら…)
いっそ、それでも良かったかも、という気がする。
「本当の自分」を、失わないでいられるのなら。
生まれ故郷も両親のことも、覚えたままでいられるのなら。
(……だけど、脱落した子供たちが、どうなるか……)
まだ「学ぶべき時ではない」なら、恐らく、それは国家機密に近いものなのだろう。
単に「脱落した」だけではなく、その先に「何か」待っている。
収容所へと送られるだとか、あるいは強制労働だとか。
(…普通の人間には、とても危険で任せられないような作業を…)
彼らが請け負い、劣悪な条件の辺境星区で働くというのは、如何にもありそう。
エリート以外の誰にも知られず、事故死したって、気に留められもしない人生。
「代わり」は直ぐにやって来るから、「脱落者」は次々、補充されるから。
(…そうだとしても…)
過酷な人生が待っていたって、そちらの方が良かったろうか。
懐かしい故郷を、両親の顔を思い出しながら、耐える労働。
「二度と帰れない」のは今と同じでも、「忘れないままでいられる」ならば。
いつか命が尽きる時まで、懐かしむことが出来るのならば。
(…本当に、そうなる運命だったとしても…)
そんな人生でも良かったかもね、と膝を抱えて、ただ丸くなる。
大好きだった両親の顔を、故郷を覚えていられるのならば、それでいい、と。
記憶を奪われたエリートよりかは、「覚えたまま」生きる底辺で、と。
何故なら、今も「帰りたい」から。
機械が奪ってしまった過去へと、帰りたくてたまらないのだから…。
脱落したなら・了
※成人検査に脱落した子供は、処分されるという現実。けれど、一般市民は知らない模様。
だったらシロエも知らないかもね、と考えた所から出来たお話。脱落を希望しそうなシロエ。
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