永劫の問い
「自分を信じることから道は開ける」
「事の善し悪しは、全てが終わってみなければ分からないさ」
遠い日、まだアルテメシアに潜んでいた頃、僕がジョミーに贈った言葉だ。
この言葉が、今もなお、途切れることなく、心の奥深くで巡り続ける。
本当に、僕は正しかったのか。
取り返しのつかない誤った教えを、ジョミーに伝えていないだろうか。
メギドに飛ぶ前、シャングリラの中にいた時、目だけで、ジョミーにこう伝えた。
「長とは、どうあるべきか、これが君に伝えられる、最後のチャンスになるかもしれない」
僕の中には、キースを察知して目覚めた時から、予感があった。
キースと、彼の背後の脅威を滅ぼし、禍根を断っておくべきなのだ、と。
だから迷いなく、メギドへと飛んだ。
あの選択は、正しかったろうか。
あそこで飛ぶより、ジョミーと共にナスカへと降り、皆を連れ戻すべきだったかもしれない。
結果論になるとはいえ、そのための時間は充分にあった。
ジョミーと僕のサイオンがあったら、力ずくでも、皆を眠らせることは可能だった。
そうしておいたら、皆をシャトルに積み込んで脱出させられた。
目覚めた時には船の中でも、「ナスカは滅びた」ことを知ったら、文句は出なかったろう。
そちらの道を取っていたなら、ジョミーの心に刻まれたものは、違っていた。
「一人でも多くの命を救わないといけない」。
反対意見の者であっても、手段を尽くして「救うべきだ」と。
似たような言葉なら、あの日、ジョミーに伝えた。
「我々にとっての勝利は、一人でも多くのミュウが生き残ることだ」。
僕は、「ミュウ」としか言いはしなかった。
言葉足らずな部分があったことを、否めはしない。
ジョミーが受け止めた言葉は、額面通りで、こうだったのだろう。
「一人でも多くのミュウが生き残ることだ」。
ナスカから後のジョミーは、僕の言葉に、忠実すぎるくらいに従い続けた。
「一人でも多くのミュウ」が生き残るために、血に染まった道を歩んでいった。
救難信号を発信している人類軍の船さえ、容赦なく破壊し、仲間たちにさえも恐れられた。
破竹の勢いで地球を目指して、ジョミーは、確かに「勝った」と言える。
自分自身の命をも捨て、グランド・マザーも、マザー・システムも完全に倒した。
とはいえ、それが「正しかった」と、誰が確信を持って言えるだろう。
もっと戦略的な方法で、駆け引きしながらの侵攻であれば、犠牲者は減らせた。
地球までの道は回り道でも、あそこまでの数の命は、失われていない。
ジョミー自身も、命を落とすことなく、円満に全てを終わらせる道はあったと思う。
恐らく今も、多くの者たちが、両方の道筋を思い描いて、思考を巡らせているだろう。
「ジョミー・マーキス・シン」は、本当に「正しかったか」。
採るべき道は他に無かったのか、「恐るべき侵略者」だった部分は無かったのか、と。
あの日、ジョミーに「長としての、あり方」を示した僕も、未だに答えを見いだせない。
ジョミーが正しかったのなら、僕にも悔いはない。
もしも、逆であったら、ジョミーに、間違えたことを伝えたのは「僕」だ。
ジョミーが歩んだ血塗れの道で、失われていった命に、責任を負うのも、僕でしかない。
救命艇ごと破壊された命に、何と詫びればいいのだろう。
ジョミーが「一人でも多くの命を救わないといけない」と考えていたなら、結果は違った。
彼らは救われ、シャングリラに迎え入れられた後、捕虜として人類軍側に引き渡された筈だ。
そんな具合に、失われた命が多すぎた戦い。
僕の言葉が間違っていたなら、取り返しのつかないミスでしかない。
「事の善し悪しは、全てが終わってみなければ分からないさ」
この言葉が指し示す「善し悪し」、どちらだったか、今も答えは出て来ないまま。
少しずつ青くなってゆく地球が、青い水の星に戻る頃には、全てが終わったと言えるだろうか。
僕は今でも、蘇りつつある地球を見ながら、自問自答を繰り返している。
こう言ったならば、魂が縛られたままのように思えるけれども、多分、そうではないだろう。
目に映る地球は、夜であったり、いきなり昼に変わっていたりと、目まぐるしく変わる。
本当の「僕」の魂は、とうの昔に生まれ変わって、何処かで「普通に」暮らしていそうだ。
ただ、魂に刻まれた「問い」が大きすぎて、夜に見る夢の合間に、引き戻されるだけ。
翌朝、目覚めた「今の僕」には、地球を見ていた記憶も、自問自答も、残っていないだろう。
永劫とも言えるくらいに長い時間を、僕は、自分に問い続ける。
いつの日か、地球が青くなったら、「事の善し悪し」が分かって、永劫の問いは終わるだろうか。
そうあって欲しいし、そうであって欲しい。
良い方であろうと、悪い方であろうと、答えが出るなら、僕は喜んで、それを受け入れよう。
出来ることなら、答えが出る時、「今の僕」が、青い地球の上にいれば嬉しい。
たとえ一本の花であっても、蘇った地球の風に吹かれて、水の星の息吹を感じ取れたら…。
永劫の問い・了
※アニテラのブルーが逝った日から、19年。未だに追悼作品を書く人、他にはいないかも。
おまけに原点回帰とも言える中身で、暗くて、すみませんです。
最後に出て来る「一本の花」は、アニテラ最終話のラストシーンをイメージしました。
作者、コレ書いてる合間に、アーモンドチョコとか食べてますんで、ご心配なく。
「事の善し悪しは、全てが終わってみなければ分からないさ」
遠い日、まだアルテメシアに潜んでいた頃、僕がジョミーに贈った言葉だ。
この言葉が、今もなお、途切れることなく、心の奥深くで巡り続ける。
本当に、僕は正しかったのか。
取り返しのつかない誤った教えを、ジョミーに伝えていないだろうか。
メギドに飛ぶ前、シャングリラの中にいた時、目だけで、ジョミーにこう伝えた。
「長とは、どうあるべきか、これが君に伝えられる、最後のチャンスになるかもしれない」
僕の中には、キースを察知して目覚めた時から、予感があった。
キースと、彼の背後の脅威を滅ぼし、禍根を断っておくべきなのだ、と。
だから迷いなく、メギドへと飛んだ。
あの選択は、正しかったろうか。
あそこで飛ぶより、ジョミーと共にナスカへと降り、皆を連れ戻すべきだったかもしれない。
結果論になるとはいえ、そのための時間は充分にあった。
ジョミーと僕のサイオンがあったら、力ずくでも、皆を眠らせることは可能だった。
そうしておいたら、皆をシャトルに積み込んで脱出させられた。
目覚めた時には船の中でも、「ナスカは滅びた」ことを知ったら、文句は出なかったろう。
そちらの道を取っていたなら、ジョミーの心に刻まれたものは、違っていた。
「一人でも多くの命を救わないといけない」。
反対意見の者であっても、手段を尽くして「救うべきだ」と。
似たような言葉なら、あの日、ジョミーに伝えた。
「我々にとっての勝利は、一人でも多くのミュウが生き残ることだ」。
僕は、「ミュウ」としか言いはしなかった。
言葉足らずな部分があったことを、否めはしない。
ジョミーが受け止めた言葉は、額面通りで、こうだったのだろう。
「一人でも多くのミュウが生き残ることだ」。
ナスカから後のジョミーは、僕の言葉に、忠実すぎるくらいに従い続けた。
「一人でも多くのミュウ」が生き残るために、血に染まった道を歩んでいった。
救難信号を発信している人類軍の船さえ、容赦なく破壊し、仲間たちにさえも恐れられた。
破竹の勢いで地球を目指して、ジョミーは、確かに「勝った」と言える。
自分自身の命をも捨て、グランド・マザーも、マザー・システムも完全に倒した。
とはいえ、それが「正しかった」と、誰が確信を持って言えるだろう。
もっと戦略的な方法で、駆け引きしながらの侵攻であれば、犠牲者は減らせた。
地球までの道は回り道でも、あそこまでの数の命は、失われていない。
ジョミー自身も、命を落とすことなく、円満に全てを終わらせる道はあったと思う。
恐らく今も、多くの者たちが、両方の道筋を思い描いて、思考を巡らせているだろう。
「ジョミー・マーキス・シン」は、本当に「正しかったか」。
採るべき道は他に無かったのか、「恐るべき侵略者」だった部分は無かったのか、と。
あの日、ジョミーに「長としての、あり方」を示した僕も、未だに答えを見いだせない。
ジョミーが正しかったのなら、僕にも悔いはない。
もしも、逆であったら、ジョミーに、間違えたことを伝えたのは「僕」だ。
ジョミーが歩んだ血塗れの道で、失われていった命に、責任を負うのも、僕でしかない。
救命艇ごと破壊された命に、何と詫びればいいのだろう。
ジョミーが「一人でも多くの命を救わないといけない」と考えていたなら、結果は違った。
彼らは救われ、シャングリラに迎え入れられた後、捕虜として人類軍側に引き渡された筈だ。
そんな具合に、失われた命が多すぎた戦い。
僕の言葉が間違っていたなら、取り返しのつかないミスでしかない。
「事の善し悪しは、全てが終わってみなければ分からないさ」
この言葉が指し示す「善し悪し」、どちらだったか、今も答えは出て来ないまま。
少しずつ青くなってゆく地球が、青い水の星に戻る頃には、全てが終わったと言えるだろうか。
僕は今でも、蘇りつつある地球を見ながら、自問自答を繰り返している。
こう言ったならば、魂が縛られたままのように思えるけれども、多分、そうではないだろう。
目に映る地球は、夜であったり、いきなり昼に変わっていたりと、目まぐるしく変わる。
本当の「僕」の魂は、とうの昔に生まれ変わって、何処かで「普通に」暮らしていそうだ。
ただ、魂に刻まれた「問い」が大きすぎて、夜に見る夢の合間に、引き戻されるだけ。
翌朝、目覚めた「今の僕」には、地球を見ていた記憶も、自問自答も、残っていないだろう。
永劫とも言えるくらいに長い時間を、僕は、自分に問い続ける。
いつの日か、地球が青くなったら、「事の善し悪し」が分かって、永劫の問いは終わるだろうか。
そうあって欲しいし、そうであって欲しい。
良い方であろうと、悪い方であろうと、答えが出るなら、僕は喜んで、それを受け入れよう。
出来ることなら、答えが出る時、「今の僕」が、青い地球の上にいれば嬉しい。
たとえ一本の花であっても、蘇った地球の風に吹かれて、水の星の息吹を感じ取れたら…。
永劫の問い・了
※アニテラのブルーが逝った日から、19年。未だに追悼作品を書く人、他にはいないかも。
おまけに原点回帰とも言える中身で、暗くて、すみませんです。
最後に出て来る「一本の花」は、アニテラ最終話のラストシーンをイメージしました。
作者、コレ書いてる合間に、アーモンドチョコとか食べてますんで、ご心配なく。
PR
COMMENT
