チョダブラムとはシェルパ語で『女神の首飾り』という意味である。
神々が住むと伝わるヒマラヤの高峰の多くは今もシェルパ語の名で呼ばれている。
夏でも消えぬ雪を頂き、蒼天に聳える白き神の座。
これは神たちの物語………。
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「行ってらっしゃい」
それが別れの言葉だった。
「帰って来たら、また君の抱く地球を見せてくれ」
すぐに戻るよ、とあの人は言った。微笑んで私を抱き締めてくれた。頷き返して、シャトルに乗り込んでゆく背を、紫のマントを見送った。
盲いたこの目は開かないけれど、心の瞳で見る事は出来る。だから信じて送り出せた。
あの人は約束を違えない。
すぐに、ナスカに残っている仲間たちを説得したら必ずすぐに戻って来る。
そうしたら二人で地球を見ましょう。
今や忌まわしい星となってしまった私が名付けた赤い星……ナスカの代わりに、私の地球を。
托された補聴器が不安を掻き立てたけれど、フィシスはブルーを信じていられた。
遠い昔にユニバーサルから自分を救い出してくれたミュウの長。
あの日から「ぼくの女神」と優しく暖かい声音で呼ばれ、ただ大切に愛しまれてきた。
シャングリラに住むミュウたちは皆、揃いの制服を身に着けるのに、自分だけは柔らかく上質な布で仕立てた優美な衣装を与えられた。
ブルーのマントの色にほんの少し赤味を加えたような、桃色とも藤色ともつかぬ色合い。
仲間たちのために立ち働くにはおよそ不向きな長い引き裾と袖を持ったそれに、フィシスは戸惑ったものだけれども。
「君は女神だ。ぼくの、ミュウたちの大切な女神。それだけが君の役目なんだよ。それに…」
その服は君にとても似合う、と柔らかな笑みを浮かべたブルーに逆らう気持ちは起こらなかった。ブルーがそれを望むのならば、そのように。
他のミュウたちのように何らかの役割を担うでもなく、日々、テーブルの上のカードをめくって時を費やし、カードが指し示すさして変わり映えのしない未来に溜息をつくだけの生であっても…。
ブルーはフィシスが持って生まれた地球の映像をこよなく愛した。
それがゆえに自分を救ったのかと時折錯覚を覚えるほどに、ブルーは青い地球を求めた。
「地球を抱く女神」、「ぼくの女神」と。
タロットカードを繰り、ブルーが望む時に手と手を絡めて青い地球を見せる。それがフィシスの唯一の役目。
いつしか占いは神格化され、託宣と呼ばれて誰もが伺いを立てるようになっていった。
そして、ブルーと釣り合いの取れる外見で止めてしまった自分の時がどれほど長いかを物語る背丈よりも長く伸びた髪。床に届いてなお余りある金色の髪もまた、特別である証であった。
こんな髪ではいざという時に役に立てない、と訴えた時は踝まで届きそうであったのだけれど、ブルーは首をゆっくりと左右に振った。
「いけないよ、フィシス。…髪には力が宿ると言うから」
どうかそのままに、と穏やかに諭され、結い上げることすら叶わないまま金色の糸は伸びてゆく。前髪だけは切る事を許されていたが、それはブルーに出会った時から切り揃えられていたからだろう。
何もかもが「特別」なミュウたちの女神。
しかし、その前にフィシスはブルーだけの……ブルーだけが親しく触れる事が出来る、ブルーのための女神だったのだ。
ソルジャーと呼ばれ、仲間たちを救い導くミュウの長、ブルー。
皆に慕われ、シャングリラをその手で守り続ける、生ける神にも等しい存在。
攻撃的なサイオンを持つタイプ・ブルーはブルーしかおらず、戦える者もまた彼一人のみ。
それがどれほどの孤独を彼に齎すか、思い至る者は誰もいなかった。
ブルーはミュウたちを導き護るけれども、ブルーを導く手はこの世には無い。
孤高の戦士が自らの標に、心の支えにと焦がれた星が母なる地球。
その地球の鮮やかな映像を身の内に抱くフィシスに惹かれ、女神と呼んで慈しんだのは自然な流れであると同時に必然だった。
ブルーが神ならば、彼が敬い慈しむ者も、また神となる。
そうしてフィシスは女神になった。
シャングリラを守る銀の男神と、金の髪を持つ神秘の占い師、麗しき女神。
二人は生まれ落ちた時からの対であったかのように、互いに互いを求め続けた。
男女の仲などというものではない。
結ばれているものは互いの心で、その肉体はただの器にすぎない。
手を絡め、抱き合うことはあっても、それよりも先には進まなかった。
恋人でもなく、伴侶でもなく、文字や言葉ではとても表せない絆。
それが在ったから、フィシスは信じた。
ブルーは必ず戻って来ると。
「ブルー…。生きて戻って…。信じています」
ナスカに向かった筈のブルーが戦いの場へと赴いたことに気付いたフィシスは祈り続けた。
ブルーに托された補聴器を握り、ただひたすらに自らの半身が無事に戻ることを。
……それなのにブルーは戻らなかった。
フィシスを残して、ミュウたちを残して逝ってしまった。
一人でも多くのミュウを救うために、ミュウの未来を切り拓くためにその身を贄としてしまった。
二度と還らぬ人の形見がフィシスの手の中に残されたけれど。
愛した人の思い出として、秘めてしまっても良かったのだけれど。
「…ソルジャー・シン。これはきっと……ブルーがあなたに遺したものです」
ブルーがいなくなってしまった青の間にソルジャー・シンを呼び、フィシスはそれを手渡した。
いつもあの人と共に在った補聴器。
あの人が最後に渡してくれた大切な形見。
出来るならば持っていたかったけれど、ブルーはそれを望まない。
ミュウたちのために戦い、散ったブルーが見ていたものはミュウたちの未来。そこへと皆を導くためにはソルジャー・シンが、彼を導くにはブルーの三世紀に渡る記憶が必要とされるであろうから。
……ブルー、あなたが望むのならば。
わたくしもそれに従いましょう。
あなたの記憶は欲しかったけれど、全てはあなたの心のままに……。
ブルーの補聴器を引き継いだソルジャー・シンは人類との戦いを決意する。地球のシステムを末端から一つずつ破壊するべくアルテメシアへと進路を定めたシャングリラ。
フィシスの占いに頼ることなく、ソルジャー・シンがそう決めた。
これから先のミュウの未来に自分は必要ではないかもしれない。
占いしか出来ず、幻に過ぎない地球を抱くだけの女神など誰も顧みなくなる日が来るかもしれない。
それも仕方のないことなのだ、とフィシスは思う。
誰よりも自分を求めてくれた銀色の神は、翼を広げて永遠の彼方へと飛び去って行った。
いつか彼を追ってこの世から旅立つ時が来るまで、対となる者は居はしない。
二人で一人とまで想い慕った神が居ないなら、女神も要らない。
そう、いつの日にかブルーの許へと……その傍らに逝く日だけを思い、生きてゆくしかないのだろう。
この胸が鼓動を止めてはくれず、この息が絶えてくれぬのならば…。
残されたフィシスを慰めてくれるブルーの記憶はソルジャー・シンに渡してしまった。
最後に抱き締められた温もりと、耳に残る声だけを頼りに長い時を一人、生きられはしない。
けれど……。
私にはまだ望みがあるから、とフィシスは自分の部屋へ向かった。
天体の間の奥深く設えられた、他のミュウたちとは比べ物にならぬ広すぎる居室。
この部屋を与えられた時もまた、フィシスは「私にはあまりにも過ぎたものです」と言ったのだけれど。ブルーは否を言わせなかった。
「この部屋はぼくも使うから。…二人なら広すぎはしないだろう?」と。
その言葉どおり、ブルーは幾度も訪ねて来たし、時にはフィシスの膝を枕にうたた寝することもあったほど。
青の間はブルーの私室とはいえ、シャングリラの守りの要でもあった。戦士が、ソルジャーが死守する最後の砦。寝台に横たわって休む時でさえ、ブルーはそれを意識せずにはいられない。
そんなブルーが心から安らげる場所としてフィシスが暮らす部屋を選んだ。
フィシスの部屋はフィシス一人のものではなくて、ブルーの居場所でもあったのだ。
「……ブルー……」
喪ってしまった人の名を呼び、フィシスは二人で長い時間を過ごした部屋の奥へと向かう。
そこには見事な彫刻を施した化粧台が据えられ、鏡に自分の姿が映った。
ブルーのマントと見紛う色の衣装が今は限りなく悲しいけれども、それも慣れるしかないだろう。
そのためにも…、と伸ばした手が銀のブラシを掴んだ。
シャングリラに来てから朝晩、長い髪を毎日梳かし続けた、ブルーに貰ったヘアブラシ。繊細な銀細工のそれには希少な動物の毛が植え込まれている。
「君は大切な女神だから。…それに相応しいものをと思ったんだよ、ぼくのフィシス」
これは本物の猪の毛を使ったヘアブラシなのだ、とブルーは言った。
「髪を傷めない素材だそうだ。ずっと昔から高価なもので、今では殆ど手に入らない」
君のために手に入れてきたんだよ、と渡された時の手の温もりをフィシスは今でも覚えている。そんな高価なものを何処から、と訊いてもブルーは微笑んだだけで答えなかった。
「…ブルー……。あなたは此処にいますか…?」
フィシスは白い指先でヘアブラシを探り、盲いた瞳で覗き込んだ。
植えられた黒い毛に絡んだ金色の糸。いつもなら髪を梳かし終える度に捨てるのだけれど、この数日間、嫌な胸騒ぎに囚われていたために放ったままになっていた。
だから、もしかしたら、この中に……。
「………ブルー………」
フィシスの閉じた瞳から大粒の涙が零れ落ちた。金色に輝く長い糸に混じって、ひっそりと控えめな光を放つ銀色の糸が幾筋か。
それは逝ってしまったブルーが遺したフィシスへの形見。
「行ってくるよ」と抱き締めてくれた時、頬に触れたブルーの銀糸そのままの銀色の髪。
「……ブルー……。居てくれたのですね……」
あなたは此処に、と銀の髪を絡ませたヘアブラシを胸に抱いてフィシスは床にくずおれる。とめどなく頬を伝う涙を拭おうともせず、亡き人の形見をかき抱きながらその名をいつまでも呼び続ける。
ほんの数本の髪であっても、ブルーの形見があるならば。
ブルー、あなたが此処に居てくれるのならば、私は生きてゆけるでしょう……。
フィシスの部屋を訪れたブルーが眠ってしまうことは度々で。
そんな時、目覚めたブルーの癖のある銀糸が好き勝手な方へとはねていることもよくあった。
「…すまない、フィシス。ぼくはどのくらい眠っていた?」
「ほんの少しの間ですわ。それよりも、ブルー…」
髪が、と答えるフィシスの声で鏡を眺めたブルーは困ったように笑ったものだ。
「この姿は皆には見せられないな…」
「本当ですわね」
あなたとは誰も気付かないかもしれませんわ、と冗談めかした口調で応じて、フィシスはブルーの髪を直した。ブルーが自分にとくれたブラシで、丁寧に気を付けて梳りながら。
そう、ついこの間もそうだった。
十五年ぶりに目覚めたブルーと一緒に天体の間からこの部屋に戻り、避けようのない不幸が訪れる予感に怯える自分に向かってブルーが何度も「大丈夫だよ」と…。
「ぼくがみんなを守るから」と…。
心を覆い尽くしそうな不安を拭い去るように幾度も繰り返してくれたブルーは「少しだけ眠る」とフィシスに告げると、その膝に頭を預けて眠りに落ちた。
少しと言いつつ一時間は眠っていただろう。はねてしまった髪をフィシスが梳かし、ブラシをそのまま化粧台に置いた。
その時にブラシに絡まった銀糸の密やかな光に、今もブルーの面影が宿る。
ブルーは形見を遺してくれた。独り残された女神の手許に、自らが生きた命の証を……。
愚かだった自分の過ちのせいで喪ってしまった大切な人。
二度と還らぬ人を想って涙し、泣いて泣き崩れて暮らしていてもブルーは永遠に戻っては来ない。
形見になった銀色の髪も、箱に仕舞って眺めるだけではいつ失くすかも分からない。
フィシスは忠実な従者を呼んだ。
「アルフレート」、と。
この船に迎えられた時から彼女に仕え、側に控えて竪琴を奏で続けて来た無口な男。
彼ならば誰よりも信用出来る。
「…これはブルーが遺した髪です。これを……」
この石の裏側に入れたいのです、とフィシスはブルーに贈られた首飾りを細い頸から外した。
全てのミュウが身に付けている赤い宝石。
フィシスの首飾りは誰のものよりも華やかであり、彼女が特別な存在であると知らしめるためには充分なもの。その中央に据えられた石をフィシスはアルフレートに示した。
「この裏に入れて貰えませんか? 私がいつもブルーと一緒に居られるように」
盲いた瞳から涙が落ちる。
従者は預けられた箱と首飾りを捧げるように持ち、静かに退室していった。
アルフレートはフィシスのために懸命に奔走したのだろう。首飾りがフィシスの頸から消えていた時間はたった半日。その日の夜には望み通りの細工を施され、フィシスの許へと戻って来た。
「……ブルー……。これであなたと共に居られます…」
首飾りを裏返し、フィシスは宝石の裏を指先で愛しげに撫でる。
赤い宝石の上に銀色の髪が綺麗な曲線を描いて載せられ、水晶の板で覆われていた。首飾りを外せばブルーの形見が目に入るように。付けた時にはフィシスの頸に優しく触れて添うように…。
化粧台の前に座って首飾りをそっと頸へと回す。
カチリ、と微かな金属音を立てて留め金が嵌まり、赤い石が頸に輝いた。
この石はブルーが遠い昔にくれたもの。そして今は、この石と共にブルーが居る。
命ある限り、ブルーが遺した形見と共に。
その中に今も宿り続けるブルーの魂の欠片と共に……。
「……行きましょう、ブルー」
フィシスは見えない瞳でシャングリラの上に広がる宇宙(そら)を仰いだ。
この果てしない星の海の彼方に青く輝く水の星が在る。
ブルーが焦がれ、行きたいと願った母なる地球。
自分はそこへ行かねばならぬ。
女神と呼んでくれたブルーの夢を、切なる願いを叶えるために。
この手で何が出来るわけでもないのだけれど…。
ただシャングリラに運命を委ねるしかない身だけれども、ブルー、私は地球へゆきます。
あなたが此処に居てくれるから、私はあなたと共にゆきます…。
この石は忌まわしいナスカの色。…けれど、ブルー、あなたの優しい瞳の色を映した赤。
そこから見守っていて下さい。
青い、何処までも青いあの地球の青を、あなたに見せられるその日まで。
その時が来ても、ブルー…
どうか、私から離れてゆかないで。
私があなたの許へと飛び立てる日まで、私の側から離れないで…。
ブルー、あなたが私の地球。
私の魂が還り着く場所。
いつか二人で地球を見ましょう。
そうしたら………ブルー、あなたは私を迎えに来てくれますか?
こんな小さな石ではなくて、あの日、別れたままの姿で…。
「すぐに戻るよ」
「行ってらっしゃい」
「帰って来たら、また君の抱く地球を見せてくれ」
「……はい」
見えますか、ブルー………私の抱く地球が…?
本物の地球に辿り着くまでは、これで我慢していて下さいね…。
行きましょう、ブルー。
あなたが焦がれた青い水の星へ………。
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シャングリラの語源はチベット語で『シャンの山の峠』の意とされる。
シェルパ語はチベット語の方言の一つであり、高地民族シェルパ族が話す言語である。
なお、チョダブラムの名を持つ高峰は実在しない。
現在14座ある八千メートル峰の幻の15座目。
その峰が遠き未来に男神と女神が青き地球で住まう白き座、チョダブラムとなる。
神々の峰に、けして近付くことなかれ………。
チョダブラム ~女神の首飾り~ ・了
※チョダブラムってシェルパ語は嘘ついてないです、お勉強はしてないですけど。
ちょーっと山岳を齧っただけです、アマダブラムとチョオユーって山があります。
アマダブラムは「母の首飾り」、チョオユーは「トルコ石の女神」。
管理人的にはチョダブラムのモデルはアマダブラムです、双耳峰なんですよ。
筑波山みたいに頂が二つあるのが双耳峰。
アマダブラムを見てみたい方は、こちらをクリック→アマダブラム
(あいつがもう少し丈夫だったらなあ…)
ブルーの身体が弱くなければ、とハーレイはフウと溜息をついた。夜の書斎で。
今日も学校で出会ったブルー。小さなブルー。
顧問を務める柔道部の朝練、それが終わった直後に出会った。
まだ柔道着を着ていた自分を、眩しそうに見詰めていたブルー。
「ハーレイ先生、おはようございます!」とペコリと頭を下げてくれたブルー。
少し立ち話をしたけれど。
今日はそれだけ、ブルーのクラスの授業は無い日で、ブルーの家にも寄れなかった日。
そんな日にはふと思ってしまう。夜の書斎で考えてしまう。
もしもブルーが丈夫だったら、もっと一緒に過ごせるのに、と。
小さなブルーは前と全く同じに弱くて、体育の授業も休みがち。
出席した日もサッカーなどの途中で挙手しては休み、体力の温存に努める生徒。
だから出来ないハードな運動、柔道部などは夢のまた夢。
ブルー自身もたまに言うけれど、「ハーレイのクラブに入りたかったな」と言うけれど。
ハーレイの方でもそれは同じで、ブルーにクラブに居て欲しかった。
自分が指導しているクラブに、朝と放課後とに教えるクラブに。
(もしもあいつが柔道部にいたら…)
ハーレイがいるから、と入部して来てくれたなら。
学校で一番のチビであっても、まるで女の子のように見えるチビでも、きっと。
目をかけてやって、伸びるようにと指導してやって、腕の立つ子にしてやれただろう。
ブルーは頑固で努力家なのだし、性格はとても柔道向き。
礼儀正しくて負けず嫌いで、おまけに前世はソルジャー・ブルー。
自分の命を捨ててメギドを沈めたほどの勢い、武道の道でも伸びそうだけれど。
小柄でも強い柔道の選手は少なくないから、ブルーも強くなれそうだけれど。
(…如何せん、元の身体がなあ…)
朝の走り込みだけでダウンしそうな、か弱いブルー。
練習前のストレッチだけで息が上がりそうな、虚弱なブルー。
柔道どころか体育の時間も満足にこなせず、休んでばかりの小さなブルー。
自分でも充分に分かっているからだろう、柔道部への入部届けを出してはこない。
思い込んだら後には引かない性格のくせに、それだけは提出してこない。
却下されると踏んでいるのか、思い付きさえしないのか。
小さなブルーが懸命に書いた入部届けは見てみたいけれど、出て来ないまま。
考えてみると少し寂しい、「入部届けさえ出して貰えないのか」と。
小さなブルーは入れそうにない柔道部。
入れたとしても、次の週には辞めていそうな柔道部。
まるで練習についていけないと辞めてしまうか、保健室送りで辞めることになるか。
どう考えても、小さなブルーと柔道部の時間は重ならない。
柔道部に入ってくれさえしたなら、入れさえしたら、もっと一緒に過ごせるのに。
朝の授業が始まる前に一緒に練習、放課後も時間いっぱい練習。
放課後の部活が終わった後には、二人一緒に帰れるのに。
「お前の家まで乗って行くか?」と車に乗せてもやれるのに。
そうしてブルーの家までドライブ、夕食を二人で食べられる。
今日の部活はどうだったかとか、柔道の話に興じながら。
(遠征試合も行けるんだがなあ…)
他の柔道部員と一緒に、ブルーを連れて。
路線バスに乗って他の学校との試合に出掛けて、見事勝利を収めたら食事。
負け試合でも食事するのは同じだけれども、勝った時には豪華な食事。
「俺のおごりだ」と財布の紐を緩めて大盤振る舞い、部員たちの歓声が上がるひと時。
そういった場所にブルーがいたなら、小さなブルーもいてくれたなら…。
どんなにいいか、と思うけれども、ブルーは其処にはいないから。
柔道部にも入って来てくれないから、入れないから、夢物語。
(もう少し、丈夫だったらなあ…)
一人前の選手にするのに、チビでも強いと評判の選手が育つだろうに。
前のブルーと同じに育てば、それは美しい若武者だろうに。
そういう夢を描いてみる。
柔道着を纏った小さなブルーを、一本背負いを決める大きく育ったブルーを。
叶わないから、夢に見る。
もしもブルーが丈夫だったら、柔道部に入ってくれていたら、と…。
柔道部は無理・了
(こんなものだったな…)
このくらいだった、とハーレイは両腕で輪を作ってみた。
まるで何かを抱き込むかのように、胸よりも少し下の辺りで。
確かめるようにそれを見てみる、自分の両腕が作っている輪を。
こんなものだと、このくらいの感じだったのだ、と。
(こんなに小さくなりやがって…)
そう思うけれど、愛おしい。
自分の両腕が作ってみせる輪、その輪の中に収まる大きさ。
小さな小さな、それは小さなブルーの身体を抱き締めた。
もう一度この腕に抱くことが出来た、遠い昔に失くしてしまった恋人を。
メギドへと飛んで、戻らなかったブルーの身体を。
奇跡のように戻って来てくれた、小さなブルー。
十四歳の子供の身体で、生まれ変わった少年の身体で。
再会の抱擁はほんの僅かな間だったけれど、この腕で確かに抱き締められた。
その時に両方の腕が作っただろう輪、それを何度も何度も作る。
ほどいては作り、作ってはほどく。
このくらいだったと、このくらいの身体を、温もりを抱いた、と。
小さなブルーの命の温もり、それを感じた両の腕。
抱き込んだ胸は自分の熱さで、高鳴る鼓動でもう一杯になっていたから。
どこまでがブルーの温もりだったか、どこまでが自分の熱さだったか、分からない。
今となっては定かではなくて、なんとも頼りなくおぼろげなもの。
確かにブルーを抱いていたのに、抱き締めたというのに、幻のようで。
代わりに腕が憶えていた。
このくらいだったと、この輪の中にブルーが居たと。
(本当に小さかったんだ…)
遠い記憶の中、幾度も抱き締めた恋人の身体は華奢だったけれど。
細く儚く見えたけれども、それでも大人と言えるものではあったから。
今の小さなブルーよりかは、ずっと大きく育っていたから。
抱き締めた時に腕が作る輪は、この輪よりも、もっと…。
(…このくらいはあった筈なんだ…)
こうだ、と愛した人の身体に回していた腕の輪を作ってみた。
小さなブルーの身体に合わせて作っていた輪を、そっと広げて。
(…そうだ、このくらい…)
数え切れないほどに何度も抱き締めた身体、細かったブルー。
けれども、こうして輪を作ったら。
その身体に見合う輪を作ってみたなら、なんという違いなのだろう。
なんと小さな身体なのだろう、今の小さな小さなブルーは。
(…このくらいしかないんだ、あいつ…)
今はこうだ、と輪を縮めた。
小さなブルーの身体に合わせて。腕が記憶していた、その大きさに。
こんなに小さな輪だというのに、それがどれほど愛おしいか。
どれほどに愛しく、何度もこの輪を作りたくなるか。
(…俺のブルーだ…)
此処に帰って来てくれたんだ、と小さなブルーが収まっていた輪を作り出す。
この腕の中にブルーが居たと、小さくなって帰って来てくれたと。
何度も何度も腕で輪を作る、ブルーを抱き締めた両腕で輪を。
そこにブルーはいないけれども、こうするだけで胸が温かくなる。
ブルーは此処に帰って来た。
小さな小さな、こんなに小さな輪にすっぽりと収まってしまう身体で。
(小さくても、あいつは俺のブルーだ…)
もう離さない、と腕で輪を作る。
今度こそ、けしてブルーを離しはしない。
腕の中から飛んでゆかせない、こうして輪を作り、閉じ込めよう。
ブルーは戻って来たのだから。
この腕の輪の中に、確かな命の温もりと共に…。
腕で作る輪・了
内緒だけれど。
ホントのホントに誰にも内緒で、秘密だけれど。
パパにもママにも言えない秘密で、友達にだって言えないけれど。
(ちゃんと恋人がいるんだよ、ぼく)
しかも、先生。学校の先生でうんと年上、二十三歳も上の先生。
ぼくの大好きなハーレイ先生、片想いじゃなくて、ホントの恋人。
ぼくのことを「チビ」って呼ぶけれど。
キスも許してくれないけれども、それでもホントに恋人なんだ。
だって、学校では「ブルー君」だけど、ぼくの家では「ブルー」って。
「俺のブルー」って呼んでくれたりする日だってある、ぼくの恋人。
学校で会ったら「ハーレイ先生」、ぼくの家ではただの「ハーレイ」。
だけど先生、ぼくの先生。
ぼくとハーレイ、出会いは学校。ぼくの学校で初めて出会った。
忘れもしない五月の三日に、ハーレイが転任して来たから。
新しくやって来た古典の先生、会った途端に一目惚れ。
お互いストンと恋に落ちた、って言ったらロマンチックだけれど。
恋した途端にぼくは血まみれ、ハーレイの方は大慌て。
ぼくに聖痕が出ちゃったから。右目や肩から血が溢れたから。
とんでもなかった恋の始まり、出会いの後は救急車。
告白する間も、される間もなくて、見事に気絶しちゃった、ぼく。
ハーレイが一緒に救急車に乗って来てくれたことも知らずに気絶していた、ぼく。
気が付いた時は病院のベッド、もうハーレイはいなかった。
学校に帰って行ってしまって、ぼくの側にはいなかった。
だけど壊れなかった恋。消えてしまわなかった一目惚れ。
ハーレイはぼくを好きなまんまで、ぼくもハーレイを好きなまま。
恋した途端にぼくが気絶で、告白する間も無かったけれど。
されてる暇も無かったけれども、恋はきちんと伝わった。
ぼくとハーレイとは恋人同士で、今だってずっと、恋人同士。
きっと嘘だと言われると思う、こんな恋だと話したら。
告白する間も、される間も無くて、それでも恋人同士だなんて。
しかもお互い、一目惚れ。会った途端に恋をした。
嘘みたいだけれど本当の話、ホントのホントにあったこと。
五月の三日に起こった出来事、学校の先生に恋をしちゃって、先生の方も…。
(ぼくもハーレイも、両想い…)
片想いなんて、していない。ほんの一瞬も、していやしない。
お互いに好きで、一目惚れ。会った瞬間、もう両想い。
告白なんかは要りもしなくて、される必要も何処にもなくて。
ストンと恋に落ちてしまって、もう運命の恋人同士。
ぼくはハーレイしか見えやしないし、ハーレイもぼくしか見ていないんだ。
だって、そういう恋だから。ホントに恋人同士だから。
誰にも言えない恋の秘密は、恋の始まりよりも前。
出会う前から恋人同士で、前のぼくたちの恋がまた始まった。
ぼくもハーレイも生まれ変わりで、生まれ変わる前にも恋人同士。
ぼくたちの恋は前の続きで、だけど前よりもっと素敵で。
(今度はちゃんと…)
学校の先生と生徒でいる間が終わったら。
ハーレイを「先生」と呼ばなくていい日がやって来たなら、もう堂々と恋人同士。
誰にも内緒にしなくてもいいし、手だって繋げる。何処へだって行ける。
前のぼくたちには出来なかった恋が、誰もが祝福してくれる恋が出来るぼくたち。
その日が来るまで、先生と生徒。
誰にも内緒で、秘密の恋。パパにもママにも、友達にだって。
だけど幸せ、ホントに幸せ。
ぼくの大好きなハーレイ先生、ぼくの家ではただのハーレイ。
そんなハーレイに恋をしたことが、ハーレイ先生に恋をしたことが、とても幸せ。
ぼくの恋人は学校の先生、誰にも内緒で秘密だけれど。
いつか秘密じゃなくなった時は、先生はもうぼくの先生じゃない。
ぼくの恋人、ぼくだけの恋人、手を繋いで歩いていける人。
ずうっと二人で歩いて行くんだ、幸せ一杯の未来に向かって…。
恋人は先生・了
回り道の謎:元老になったキース。けれど、疑問に思うこと。何故、軍人として育ったか。
使えない船:サイオンに依存しまくっている船がシャングリラ。サイオンが無かったら…。
間違えた道:シロエが気付いた、成人検査の時の記憶処理。進む道に合わせて違うのかも。
牢獄の由来:ジョミーを迎え入れる時に備えて、ブルーが作らせた特別な部屋。それは…。
優秀さの意味:キースが思い出したこと。シロエが取っていた成績。キース以上ならば…。
悩み多き少年:シャングリラでは恋も出来ない、と愚痴るジョミー。そこへ救いの手が…?
子供の続きに:成人検査は何のためにあるのか、分からないシロエ。いくら考えてみても。
紅茶党の男:ソレイドで、キースが出された紅茶。グレイブ曰く、コーヒーは下品だとか。
失えない命:暗殺計画が絶えないキース。けれど失えない命。「作られた生命体」だから。
アホ毛の底力:ミュウの資質が無いのでは、と言われるジョミー。けれど秘めていた底力。
青い星を目指せ:ブルーが見付けた青い星。ついでに青くなかった地球。同じ行くなら…。
友がいる理由:シロエには、キースの親友に見えるサム。それならば、サムは何者なのか。
最初が肝心:ブルーが悔やむ「刷り込み」なるもの。ジョミーが実践した結果がトォニィ。
傲慢な生命:マザー・イライザがキースを育てるために仕組んだこと。人の命さえ弄んで。
地球の戦士:マザー・イライザが作ろうとする「理想の子」。セーラー戦士を参考にして。
いい子の所に:ピーターパンが迎えに来るのは「いい子」。今のシロエは悪い子なのかも。
文化的な言葉:シャングリラに連れて来られたジョミー。いきなり食らった挨拶が問題…?
イライザの姿:E-1077にいた頃、キースが見ていたマザー・イライザ。その姿は…。
斜めな友情:キースを育て上げるためにと、連れて来られたシロエ。けれど出会ったら…。
飛び越えたい時:シロエが戻りたい故郷。けれど乗れない宇宙船。ワープ出来たならば…。
船と炎上:ソルジャー候補のジョミーを叩きに、炎上しまくるシャングリラ。その力は…。
甘くなった自分:ソル太陽系に布陣したキース。強制収容所のミュウを人質に取っても…。
革命を防げ:シャングリラを乗っ取る話をしていたナスカの子たち。どうする、ジョミー?
雨が無い場所:E-1077には降らない雨。けれどシロエが覚えている雨。それなら…。
ピアスの値打ち:セルジュが苛立つキースのピアス。右耳にピアスはゲイのアピールで…。
役に立つ部下:ミュウを水際で食い止めることを考えるキース。側近のミュウは別にして。
継がれゆく虫:シャングリラに定着してくれない虫。一般社会では激しく嫌われていて…。
記憶が戻るなら:戻ってくれないシロエの記憶。消された記憶が脳に残っているのなら…。
補聴器の盲点:ジョミーがハタと気付いたこと。ブルーが昏睡状態だった間、補聴器は…。
レアすぎる名前:キースが検索してみた自分の名前。広い宇宙にオンリーワンっぽくて…。
話さない秘密:元老就任が近付いているキース。注目を浴びるのだろう、その耳のピアス。
若さの秘訣:アルタミラ脱出後の船で噂の、ブルーの若さ。一番の年寄りなのに若い、と。
青い星の上で:2017年7月28日記念創作。メギドを沈めたブルーが目覚めたのは秋。
両親の面差し:自分は両親に似ていたろうか、と考えるシロエ。血縁関係は無い時代でも。
糸の宝石:ブルーがシャングリラに迎えたフィシス。地球を抱く少女。似合いの二人は…。
持っていない過去:子供に戻ってしまったサムを考えるキース。自分には無い、子供時代。
忘れた誕生日:シロエが故郷で暮らしていた頃、楽しみだった誕生日。けれど、今では…。
呼び名が問題:ソルジャー候補になったジョミーを、どう呼ぶのか。悩める長老たちに…。
左手の罪:シロエの船を落とした時の夢を見たキース。撃墜したことは、正しかったのか。
見損ねた鯨:キースの教室を覗きに出掛けたシロエ。「幼いね」と思った上級生たちは…。
十周年の日に:アニテラ放映終了から10年の記念創作。同窓会を企画した登場人物たち。
掴めない実力:国家騎士団総司令のキース。其処まで昇進できたのは、自分の実力なのか。
忘れないで:シロエが懐かしく思う両親。いつか会えたら、と。けれど両親の記憶が問題。
楽しみなガチャ:ジョミーの訓練に手を焼く長老たち。其処でブルーが提案したものは…。
水槽の悪夢:キースが見た夢。水槽の中に浮かんでいる自分。E-1077にいた頃で…。
本があるから:今もシロエが大切にしているピーターパンの本。もしも、本が無ければ…。
友と話せたら:サムが壊れていなかったら、と考えるキース。色々なことを話せた筈で…。
何を消されても:マザー・イライザにコールされたシロエ。その度に消えてゆくものは…。
ヒトの未来へ:ユグドラシルでキースが収録しようとするメッセージ。人類たちに向けて。
両親の子供:シロエが思い出せない、両親の顔。それに故郷も。どれもぼやけて曖昧で…。
コーヒーの名前:マツカが淹れる美味なコーヒー。けれどキースは豆の名前さえ知らず…。
泣くための場所:マザー・イライザの目から逃れて泣くシロエ。故郷の家にいた頃なら…。
いつか行く道:神の領域を侵して作られたキース。いつか命が尽きた時には、行く先は…。
ぼくだけの呪文:カフェテリアでキースを見かけたシロエ。キースの飲み物は、いつも…。
作られた孤独:自分の正体を知ったキースが、囚われる思い。一人きりで生きてゆく孤独。
過去が無い幸福:フロア001に入って捕まり、逃れたシロエ。個室で隠れている間に…。
神の一人子:キースが、クリスマスの日に思ったこと。神の子と自分を比較してみると…。
機械と部品:機械弄りをしていたシロエが、ふと気付いたこと。ビスは単純な部品でも…。
恐れない者:ミュウとの戦いに艦隊を送り出すキース。軍人たちは死を恐れないものの…。
選ばれた子供:ネバーランドを夢見るシロエ。いつか行けると思う其処には、どんな子が?
レクイエムの意味:E-1077を処分したキース。其処で捧げて来たレクイエムには…。
鳥だった方が:自分の名前について考えるシロエ。そうして見付けたセキレイという名前。
生命の価値:書類の端で切れた、キースの指先。流れ出す血の色は、ミュウと同じでも…。
父に会えたら:もしかしたら父に会えるかも、とシロエが思い付いたこと。会えたなら…。
終わらない罪:キースに下った、暴動鎮圧の命令。何人殺せば、役目が終わるものなのか。
青くない星へ:2019年・ブルー追悼作品。ブルーが青くない地球を見たら、という話。
羊になる日:シロエが忘れまいとする、僅かに残った故郷の記憶。でも、もしかしたら…。
処理される記憶:ノアの宙港に来る移民船。ミュウのキャリアも。キースが思うことは…。
仕組まれた自由:キースの正体を知って追われるシロエ。床下に隠れて息を潜めながら…。
敵わない敵:元老のキースが受けた取材の申し込み。くだらなくても、体制に必要なこと。
忘却の意味:薄れてゆく記憶を繋ぎ止めたくて、その方法を探し続けるシロエ。けれど…。
滅ぶべきもの:人類の中から生まれて来ない優秀な人材。だからこそ機械が作ったキース。
劣等生なら:優秀だったから、ステーションに行けたシロエ。けれど、違っていたならば?
一人きりの重荷:キースを狙う暗殺計画。もしもキースが殺されたなら、代わりの者は…。
鳥のいない場所:「鳥が見たい」と思ったシロエ。自分の翼で、自由に空を舞う鳥たちを。
孤独の内に:キースが最期に呟いた言葉。「最後まで、私は一人か」と言わせたものは…。
処分される道:エリートコースに入ったシロエ。けれど、成人検査をパスしなかったら…。
作られた理由:キースは持たない親というもの。養父母に託されずに育ったことの意味は?
全ての命へ:2020年・ブルー追悼作品。メギドへと飛ぶブルーの独白。皆の盾に、と。
次の子が来たら:シロエが忘れられない両親。けれど両親が、新しい子を育てていたら…。
持っていない者:虚弱でも、役に立つマツカ。もっと丈夫なら、とキースが考える内に…。
二つ目の角を:シロエが行きたかったネバーランド。辿り着くためには、二つ目の角を…。
いつも失くす者:サムを見舞った後、キースが囚われる深い悲しみ。友達だったサムは…。
夢の中でなら:両親の夢を見たシロエ。夢の中では、両親の顔はぼやけていなかったかも。
悔いが残る過去:ステーション時代を思い返していたキース。もしも反抗的だったなら…。
家に帰っても:シロエが帰りたい故郷の家。いつか帰った時には、両親が迎えてくれる筈。
マザーの誤算:メギドでソルジャー・ブルーと対峙したキース。彼が生還できた理由は…。
運命の星:シロエが行きたいと願っている地球。遠い昔に滅びて、今は蘇っている筈で…。
不合理な生まれ:無から作られたキースは、人類。もしもキースが、ミュウだったなら…。
憧れた場所:シロエが行きたい場所はネバーランド。けれど地球の存在を知った時から…。
死神を待つ夜:ユグドラシルでフィシスが来るのを待ちながら、キースが考えることは…。
本の中の世界:シロエが思い付いたこと。ピーターパンの本の中の世界に入れたならば…。
ぼくの女神へ:2021年・ブルー追悼作品。メギド消滅後の、ブルーの独白。魂の祈り。
失われてゆく命:キースの暗殺計画で命を失った下士官。名も無い彼が持っていた可能性。
予想外の真実:フロア001に入ったシロエ。其処で見た、様々な成長段階の「キース」。
敗北の時:ミュウは進化の必然だった、と知らされたキース。人類は負けるしかなくて…。
一人きりの道:マザー・イライザに苛立つシロエ。けれどシロエを心配してくれる者は…。
生かされる命:もしもマツカがいなかったなら、キースは何度も死んでいる筈。ならば…。
脱落したなら:成人検査が憎くてたまらないシロエ。けれど、脱落する者もいるわけで…。
足りなかったもの:キースが気まぐれで助けたマツカ。遠い日に、同じことをしたなら…。
見放されていたら:コールされる度、記憶が薄れてゆくシロエ。コールされなかったら…。
競えただろう者:出世の道を突き進むキース。彼を蹴落とす能力を持った者はいなくて…。
物語の中なら:自分の人生は、実は物語の中なのかも、と考えるシロエ。全ては虚構で…。
持っていない名前:キースは、いつから「キース・アニアン」なのか。人間だったなら…。
思い出せたら:記憶喪失について考えるシロエ。何かのショックで記憶が戻るのならば…。
青い地球よりも:2022年・ブルー追悼作品。十五年の眠りから覚めた、ブルーの独白。
気弱な暗殺者:国家騎士団総司令のキースを守り続けるマツカ。けれど、出会った時は…。
滅びの呪文:マザー・コンピューターも機械なのだ、と気付いたシロエ。機械だったら…。
失敗作なら:マザー・イライザの最高傑作がキース。そう決まったのは、いつだったのか。
ブラウニーの記憶:シロエの母が得意だったブラウニー。食堂で見付けて、持ち帰って…。
計算の外で:マツカを側近にしているキース。彼を側近に据えた時点で、機械の計算は…。
分からない番号:シロエの個室に置かれた通信機。候補生なら誰でも持っている機械で…。
後を継ぐ者:人類の指導者になるために、作られたキース。彼の寿命が尽きたら、誰が…。
愛さなかったら:両親を忘れられないシロエ。けれど、両親を愛していなかったならば…。
アフロディーテ:ブルーとフィシスの秘められた過去。アニテラBlu-ray発売の記念に。
この命さえも:暗殺を免れ、生き続けているキース。いつの日か、ミュウに敗北したら…。
知りすぎた秘密:フロア001に入ったシロエ。けれど予想したモノは、其処には無く…。
悔やみ続ける心:シロエの船を撃墜したことを、悔やみ続けるキース。そうなる理由は…。
本がある理由:シロエが大切にしているピーターパンの本。今でも持っていられるのは…。
必然の目覚め:2023年・ブルー追悼作品・ブルーが長い年月、眠り続けていたのは…。
失ったもの:マツカが死んだ直後のキース。心を落ち着けようと、コーヒーを頼んだら…。
消えた衛星:結婚するためにEー1077を去ったスウェナ。もしかしたら、シロエも…。
持たない因子:キースには無い、ミュウ因子。機械が、それを組み込んで作っていたら…。
覚えていなければ:キースには過去の記憶が無い、と聞いたシロエ。それが自分ならば…。
水が違う世界:初の軍人出身の元老、キース。国家騎士団の頃とは、まるで違う世界で…。
遥か地球より:2024年の元日の地震、翌日の羽田空港の事故。本年の無事を祈って…。
心の守り人:地震の被害が拡大する中、1月3日の未明に書いた作品。ブルーの一人語り。
俯くな、仲間たち:地震の被害は拡大する一方。アニテラのキャラたちから貰いたい言葉。
端末の向こうに:シロエの部屋にある端末。ステーションの中でしか使えないようでも…。
決められた好み:キースが好きな飲み物はコーヒー。けれど、彼が育てられた環境では…。
もしも選ぶなら:地球は本当に素敵な場所か、疑うシロエ。機械が嘘をついているなら…。
生きていたなら:最高の医師にも匙を投げられたサム。もしもシロエが、サムのように…。
逆らい続けたら:システムに逆らい続けるシロエ。コールされる度に記憶が欠け落ちて…。
友達がいたら:友達を作る気が無いシロエ。子供時代に友達がいたら、その頃の記憶は…。
青い星の君へ:2024年・ブルー追悼作品・運命の17話から、17年。ブルーの想い。

過去が無くても:子供時代の記憶を持たないどころか、体験さえもしていないのがキース。
親との別れ方:成人検査で両親と引き離されたのがシロエですけど、別れ方が違ったら…。
期待される者:地球の地の底、グランド・マザーの所へ降りてゆくキース。心の中では…。
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